何もかもが滑稽

何もかもが滑稽

映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「もう終わりにしよう。」感想 哲学的で独特で難解な映画 正直、面白くはない

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どうもきいつです


スリラー映画「もう終わりにしよう。」観ました

イアン・リードが2016年に発表した同名小説を原作としたスリラー映画
恋人との将来に不安を抱きつつ
恋人の両親に会いにいく女性が描かれます
2020年よりNetflixで配信されている作品です

監督を務めるのは「エターナル・サンシャイン」の脚本などを手掛けてきたチャーリー・カウフマン

 

あらすじ
ある冬、ジェイクは恋人を両親に紹介するため
彼女を連れて車で実家に向かっていた
彼女は何かを終わらせたがっていたが
気持ちを押し殺して彼についていく
そして、ジェイクの実家に到着するが
不思議な感覚に見舞われていき
何が現実なのかもわからなくなっていく

 

感想
終始ややこしくて
何を言ってるのか何をやってるのか
全くわからない映画でした
考察ありきの知識ありきでやっと理解できるインテリ映画
正直言って自分には全く面白いとは思えないし
この映画について深く考えようとする気持ちは湧かなかった

 

Netflixで配信されてるのを見つけ
気になったので観てみました

最初から最後までどういうこと?
って感じの映画でした

いろいろ意味が込められてる作品なんだろうな
というのはなんとなく理解できるし
哲学的なこと言ってるな
というのも伝わってきます

こんな作風の映画を好きな人もいるんだろうな
ってのはわかる
好きな人は好きだと思います

ただ、僕はこの映画を観るのが
かなりしんどかった

深い内容の作品なのはわかりつつ
つまらなかったという印象がすごく大きいです


まず、この映画は
終始、登場人物たちの会話がなに言ってるかわからないです

何の話してるの?
って状況が最後までずっと続く

深そうことを言ってるんだろうな
とは思うけど
会話のやり取りが不毛すぎてなかなか頭に入ってこない

そもそも、ストーリーもほぼ無いような作品で
大まかな流れは

結婚をしようとする男女が
男側の両親に彼女を紹介しに行く
という内容

ただ、最後までこの物語がどこを目指しているのか全く掴み所がなく

所々に伏線らしい意味深なシーンがたくさんあるけど
最終的にわかりやすく解決するわけでもなく
観る者に答えが委ねられる結末だったりもする

だから、ラストもかなり曖昧な終わりかたで
どういうこと?って感じで幕を閉じます

基本的にこの映画は深く考えて考察しなければ理解できない映画で
それありきの作品になってます

なんとなく観てるだけじゃ絶対に理解できない


さらに本作は
様々な作品が引用されている映画でもあって
それがオマージュの域ではなくて
そんな作品を知っている前提で作られている

特にミュージカル「オクラマホ!」を知っていないとこの映画は理解できないらしい…

僕はそんな知識は全く無いし
正直、全然理解できなかった

後から考察などを読んでやっと意味がなんとなくわかったくらい
とは言ってもまだよく意味はわかってなかったりします

ただ難解なだけではなく知識も必要な映画なんですよね

この映画の意味を詳しく知りたいなら
考察している人のサイトを見れば詳しく書いてくれています

 

本作は批評家からの評判がとてもいいらしくて
すごい映画なんだろうとは思うけど

ただのインテリ映画で
個人的には全然好きにはなれない

単純に面白くないんですもん

難しくて理論的で哲学的なことをやってる映画なのかもしれないけど
そんなの知らん

知識があって頭のいい人なら楽しめるかもしれないですが
そうでなければ
たぶん面白いと思う人はいないんじゃないでしょうか


でも、この映画をクソ映画と言ってるわけでなく
映画鑑賞に何を求めているかで
好き嫌いが別れる映画だと思うんですよね

この映画が好きな人は
映画に知的なものを求めていて
考察や深読みが好きな人なんだと思う

この映画が苦手な人は
直感的に面白いかどうかを判断する人
とにかく楽しめるかどうかで判断する人だと思います

僕は圧倒的に後者で
直感的に面白ければいいというタイプ

なので、その感覚で観れば
この映画はどうも面白いとは思えませんでした

面白いと思えなければ
そこから先もっと深く考えてみようと気持ちも湧かず
すげー面倒くさい映画だなって印象しか残らない

この映画に興味が湧かないんです

この映画をもっと知るために「オクラマホ!」を観てみよう
って気持ちも全く生まれない

今まで観たたくさんの映画の中の1つとして消えていってしまうと思います

 

もう少し文句を言うならば

この映画は監督の自己満足になってるんじゃないかと思うんですよ

確かに監督のやりたいことや伝えたいこと
そういうのを理論的に詰め込んでる作品で
芸術的な映画だと思います

ても、伝わらなきゃ意味ないよな
とも思うんです

本作は特定の人にしか伝わらないでしょうし
ほとんどの人がポカーンとなってしまうはず

別に哲学的な作品や芸術的な作品が悪いとは思わないけど
もっと興味をひいて欲しいなって気持ちがあります

この映画は楽しませるとか興味を持たせるって要素がかなり少ない
と言うか、無いですよね…

すごく退屈な映画なんですよ

まるで学校の授業のような退屈さ
理解しようとすれば知識を深めれるし
勉強になって自分のためになる
でも、つまらないから理解しようとする気持ちになれない

とにかく本作は理屈臭くて
こちらが入り込む余地がない

楽しめるだけのバカな映画がいいと言ってるわけではなくて
理屈っぽくても楽しませる姿勢はあってもいいのかなと…

僕が映画を好きになったのは
エンターテイメントな楽しめる映画を観たことがきっかけで
楽しいから好きになった

正直言って
本作のような映画を観て映画を好きになるいう人はほぼいないと思います

結局、どんなにすごいことをやっていても
興味を持てなければ
理解するまでには至らないんじゃないでしょうか

 

インテリな映画玄人には評判がいいかもしれませんが
単に映画が好きなだけの人からすれば取っつきにくい
難しいだけで面白味がないのは
やっぱり観ていてしんどいだけだと思う

人に何かを伝えるのは難しいことで
この映画はちょっと押し付けがましかった

 


もう終わりにしよう。 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

映画「mid90s ミッドナインティーズ」感想 懐かしく思えなければこの映画は微妙かも

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どうもきいつです


青春映画「mid90s ミッドナインティーズ」観ました

監督自身の経験を基につづられた青春ドラマ
1990年代のロサンゼルスを舞台に
少年がスケートボードを通して仲間たちと出会い成長していく姿を描き
90年代のヒット曲たちが物語を彩ります

「マネーボール」など数多くの映画に出演してきた俳優ジョナ・ヒルの初監督作品です

 

あらすじ
1990年代のロサンゼルス
13歳のスティーヴィーは母親と兄の3人で暮らし
力の強い兄にはいつも負けてばかりいた
そんなある日、スケートボードショップで出会った少年たちに憧れを抱き
少しずつ少年たちと交流を深めていく

 


感想
雰囲気や音楽がとてもよくて魅力的な映画
ただ雰囲気重視の映画でもあるので
それに乗れるかどうかで感想が変わると思う
自分はあまり共感ができなくて最後までいまいち乗り切れなかった

 

特に観たいと思っていたわけではないんですが
丁度いい時間に上映されていたので観てきました

ただ、個人的には主人公と同じくらいの世代
僕の子供時代は90年代だったので
何か刺さるものがあるかも
と少し期待もしてました

そして、実際に観てみると
確かに共感できるものもあるんですが
なんかあまり乗り切れませんでした

たぶん、この映画って中学生くらいの年代の頃
どんな青春を過ごしてきたかで
見えかたが違ってくると思います

それによって共感できる人はすごく共感できるだろうけど
できない人は全然できないと思う

その上、本作は雰囲気映画な部分が大いにあって
乗れなかったら最後まですごく微妙な気持ちで観ることになってしまいます

 

でも、つまらない映画ではなくて
共感がなくてもそれなりに退屈はしないですみます

全体的に雰囲気がいいので
引き込まれる映画ではあります

映像のセンスも感じるし
音楽の使い方も心地よくてとてもいい

なんかオシャレな雰囲気が漂っている映画

なので、主人公たちに共感さえできてしまえば
最後までどっぷりこの世界に浸れて
ノスタルジーな気持ちを味わえると思います

感動したり切ない気持ちになったり
泣ける人もいるかもしれない

ラストなんかも
いろいろ辛いこともあったけど
思い返せばいい思い出だったな
って終わり方はなかなか面白いと思う

そう思えば普通にいい映画で
さほど文句の言うところもないかも

 

とは言え
やっぱり共感や感情移入ができなければ
この映画はそんなに面白いとは思えない

個人的には全然乗れませんでした

つまらないとは思わないけど
そんなにいいとも思えなかった

まず、90年代のアメリカ
ここが全然ピンととこない

この時代背景は本作にとっては重要で
ここに思い入れを見い出せるかどうかでも
見えかたが変わると思います

僕は日本生まれ日本育ちの生粋の日本人なので
同じ90年代を生きたと言えど
そこには全くなにも感じなかった

本作で流れる音楽なんかも
いい曲と思えるし映像とマッチしてるなとも思える
でも1番重要なノスタルジーは感じれない

スケボーなどヒップホップ文化も日本では馴染みがないし
人種問題なんかも実感が湧きません

唯一懐かしさを感じたのは部屋にあったスーファミくらいですかね

これってアメリカ人のための映画なのかな
とは思わされます

まあ、そこはアメリカの映画だし当たり前っちゃ当たり前で
仕方がないことですよね


次に主人公なんですが
これも人によって共感できるかどうかは違うと思う

これに関しては国ではなく
子供時代にどう過ごしていたかですよね

本作の主人公スティーヴィーは
不良に憧れて大人に近づこうと背伸びして
やんちゃな日々を送りながらも
その中で少し成長していく
みたいな感じ

子供時代の普遍的な懐かしさは感じることができるけど

個人的にはスティーヴィーとは境遇が違うのはもちろんのこと
考え方も違う子供でした

僕の中学生くらいの頃は
まずこんな友達がいなかったし
不良に憧れる気持ちも少なかった

確かに悪いことがカッコいい
みたいな気持ちがないことはないですが
それよりも優先する価値観がありましたし
背伸びするみたいなことも全然なかったんですよね

僕は絵を描くのが好きだったり漫画を読んだりテレビやラジオが好きだったり
なにより1人の時間が好きな子供で
そこに居場所を見い出していたのが大きいのかもしれない

学校では友達がいないとかいじめられるとか辛いこともあったけど
自分の居場所があるから全然耐えれたし
そこまで辛さも感じてなかったのかもしれません

で、本作のスティーヴィーはと言うと

自分の居場所を見つけるために四苦八苦して
その中で人と出会い絆を深め
時には仲違いをして
その中で成長して行きます

正直、スティーヴィーの青春は僕の青春とは完全に真逆で
そこにはやっぱり共感や感情移入が生まれない

この映画って
どちらかと言えばイケてる人間側の苦悩や成長を描いている映画で
イケてない側の人間は存在していないんですよね

この映画には僕の入る余地が無いんです

友達と楽しくやったりケンカしたり
そんな子供時代を送っていなければ
なんか疎外感があると思う


しかも、この映画は雰囲気映画で
極力説明が少ない作りになっています

登場人物の感情や思いなども説明ではなく雰囲気で伝えようとしている
そしてそんなに深掘りもされません

ストーリー関しても明確にあるわけではなく
ある少年のとある思い出の日々を切り取りました
って内容で具体性はあまりない

あとは音楽や映像の雰囲気でそれを表現してたり

そうなってしまうと
やっぱり僕みたいな人間は余計に入り込む余地がなくて
共感も感情移入もなくて
ただの他人事のようにしか思えないんですよ

だからって
もっと説明的にしたり
登場人物たちを深く掘り下げたりするのも
なんか違うし

これは単に僕とこの映画の相性がとても悪かったんだと思います


まあ、その中でも
スティーヴィーのお兄ちゃんと
スティーヴィーとはじめに仲良くなったルーベンの気持ちはなんとなく感情移入できました

お兄ちゃんはスティーヴィーに暴力を振るったりしているけど
決してスティーヴィーのことが嫌いなわけでなく
むしろ大切だし心配している
ただ母親があれなもんだから
そのモヤモヤをスティーヴィーにぶつけてしまってるって感じだと思う


ルーベンは
自分の居場所を後から来たスティーヴィーに脅かされることで
不安になってあの態度に出ているのがすごくわかりますよね

はじめのスティーヴィーに対して
俺の方が上だよ感を出してるのは
ちょっと可愛くも思える

イケてるメンバーに属してるけど
ルーベン自体はあまりイケてない
ってのはどこか共感もできました


所々に感情移入できる部分もあるけど
メインのスティーヴィーには最後まで思い入れが生まれなくて
なんかフワッとした印象の映画に見えてしまいました

 

この映画は雰囲気重視なだけあって
ハマれなければ心に刺さるものは少ないかもしれない

ノスタルジーなんて人それぞれで
僕にとってこの映画はどうも郷愁的ではなかった

音楽や映像は魅力的だし
ハマれなくてもそれなりに飽きずに観ることはできると思います

 


マネーボール [Blu-ray]

 

 

映画「ようこそ映画音響の世界へ」感想 軽く思っていた映画の音の偉大さに気付かされた

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どうもきいつです


ドキュメンタリー映画「ようこそ映画音響の世界へ」観ました

ハリウッド映画の映画音響のスポットを当て
その世界に迫っていくドキュメンタリー映画
映画における音楽や環境音など
様々な映画音響の歴史や裏側に迫っていきます

監督を務めるのはミッジ・コスティンです

 

あらすじ
1977年にそれまで普通だった無声映画に代わり
初めてのトーキー「ジャズ・シンガー」誕生する
それ以来、様々な映画の誕生と共に映画音響も日進月歩で進化してきた
普段は裏方で現場を支える映画音響技術者たちにより
映画音響の歴史や裏側について
経験や創作活動を通して見てきたものが語られる

 

感想
映画を観る中で軽く聞き流していた音に
どれだけのこだわりがあるのかを思い知らされました
映画製作に携わってきた人たちが語るエピソードはどれも興味深い
映画音響の歴史は知らないことばかりで
すごく勉強になったし好奇心が掻き立てられました

 

映画音響のことはあまり詳しくなく
この映画にはとても興味を持っていました

この映画はすごく勉強になった
いろんな映画を今まで観てきましたけど
知らないことはたくさんあるなと思わされます

そもそも、映画音響って
ただ映画を観るだけのファンにとっては未知の世界です

映画を勉強してたり実際に作っていたりする人からすれば
こんなの当たり前なのかもしれない

ただ、ほとんどの人は映画が好きでも
裏方である音響の知識はないでしょう

その音響のことまで詳しく知ろう
とはあまりならないと思います
ましてや、その歴史までなるとなかなか手を出せませんよね

本作はそういうものをすごくわかりやすく説明してくれている映画です

映画における音がどのようにして生まれて
どう進化していったのか
どんな苦難を乗り越えてきたのか

そこを映画の歴史ともに解説してくれて
時代の中で映画と向き合ってきた人々の言葉を実際に聞きながら
映画音響がどれほど映画にとって重要な役割を担っているのかを教えてくれます

映画が好きな人は
この映画を観ればこれからより深く映画を楽しむことができると思うし
単純に歴史や裏側を知れることに楽しみを感じれるかも

僕はとても興味津々で最後まで楽しんで観ることができました


本作で取り上げられてる映画は
とても有名な作品が多くて
だから映画好きなら観たことがある映画が多いと思いますし
観たことがなくてもタイトルは聞いたことあるような作品ばかり

なので、すごく入り口として入りやすいです

あの映画もある
この映画もある
みたいな感じで知ってる映画が登場すれば
ちょっとテンションも上がります

監督も有名な人がたくさんで
誰でも知ってるような人ばかり出てきますし

 

で、この映画のいいところは
ただの勉強映像になってないところですね

歴史や裏側を淡々と解説する作品ではあるんですけど
退屈な授業みたいな映像にはなっていなくて
普通に映像作品として面白く観ることができます


まず、冒頭なんですけど
ここですごく気持ちを掴まれます

ここでは「プライベート・ライアン」のとあるシーンを取り上げて
この作品がどれだけ音響にこだわっているのかを解説してくれます

「プライベート・ライアン」という
誰もが知ってるような作品を取り上げている時点でとても興味をそそられます

このチョイスが完璧だと思うし

その内容に関しても
映像の外側の見えてない部分を音で表現してるとか
主人公の心情を無音で表してリアリティを出してるとか

映画においてどれだけ音が大切なのか
というのをすごく端的に解説してくれる

普段はあまり意識して聞いていなかった音に
これほどのこだわりが込められていたのか
と、この冒頭の部分だけで理解させられます

そして、映画音響ってすごそう
もっと映画音響について知りたい
という気持ちにさせられるんですよね

そこからは淡々と映画と音響の関係性や
歴史、エピソードなどが語られていって
あまり抑揚のない解説が続くんですけども

最初に完全に気持ちを掴まれているから
普段なら退屈に思えるような説明も
すごく興味深く聞くことができて
さらにもっと知りたいという思いにもさせられるんです

もし、本作の入り口が
映画音響って難しそう
だったら、たぶん最後まで退屈だったと思う

ドキュメンタリーのような
少し小難しそうな作品ってやっぱり掴みが大切で
本作はその掴みが完璧だったと思います


その後の歴史の解説も
淡々としてると言ったものの
それでも普通に面白い内容で全然飽きないです

知ってる作品、知ってる監督などの
道程やエピソードには普通に興味津々で
知らなかったことを知れる楽しさが満載なんですよね

今は大御所で大成功している監督たちも
いろいろと失敗を繰り返し
理不尽なこともたくさん味わっていることを知ることができました

映画業界全体も
いろいろと面倒くさいことだらけで
全然順風満帆じゃないし

映画業界の上の人間と
実際に映画を作っている現場の人間との
考えの違いなんかもすごくあって
現場の人たちはめちゃくちゃ苦しまされてきたんだなと…

こんな歴史やエピソードは勉強なるだけじゃなくて単純に面白い
エンターテイメント的な楽しさも感じられました

 

そして、映画に携わる人たちのインタビューなんですけども
これが本当に素晴らしかった

歴史の中で映画音響が蔑ろにされていた時代も長くて
それでも監督や音響技術者たちは音にこだわり続けて
苦難や苦悩を乗り越えてきたわけです

そんな結構しんどい思いをしてきた人たちなんですけど
インタビューで昔のことを話してる時
すごく楽しそうなんですよね

これだけで映画音響の仕事がいかに素晴らしいかが伝わってくる

みんなやりがいを感じてるしこだわりを持ってるし
この仕事はすごくいい仕事なんだろうな
というのがガンガンと伝わってくるんですよ

この映画を観たら
映画音響の仕事に就きたいと思う人がたくさん生まれるんじゃないでしょうか

ここまで仕事を楽しんでる人たちを見ると
ほんとに羨ましいと思わされますね

 

あと、それぞれのエピソードも興味深いものが多くてすごく面白い

中でもとても印象に残ったのが
「トップガン」のジェット機の音の作り方
これは本当に面白いです

本物のジェット機の音じゃ弱々しいから
動物の声を重て迫力を出したという

リアルさを出すために現実的なものから離してしまう
これがとても興味深い

この映画以外でも
リアルな音を表現するために
全く別の道具を使って表現をしていたりもするんです

これって絵画に通じるものもあります

絵ってリアルなものを描くにしても
意外と誇張してたりデフォルメしたり
色も現実とは全然違う色を使ってみたり

要所的に見ればリアルじゃないけど
全体を通して見ると写真よりもリアルに感じたりすることがあります

映画音響もやってることは完全に同じで

これってもはや映画音響も芸術だよな
とも思わされました

こんなクリエイティブな部分もあるから
映画自体もよりリアルに感じることができるんだと思います


それ以外にも
紹介されている映画ごとに
様々な音の使い方や作り方がされていて
いちいち感心させられる

「スター・ウォーズ」の様々な場所での音集め
「ブラック・パンサー」の音楽の成り立ち
「ROMA/ローマ」の映像に合わせ移動する声

何気なく観ていた作品の音にも
いろんなこだわりが込められていて
そこに感情を揺さぶられたりリアリティを感じれたり

あらためて音の重要さ偉大さを実感することができました

 

この映画は本当に素晴らしいと思いました
当たり前にさりげなく存在する音だからこそ
それはとても重要な存在で蔑ろにしてはいけない

映像だけじゃ映画は成り立たなくて
音の良し悪し1つで映画の出来も大きく変わってくるんだろうなと思う

なにより、この映画を観れば
映画音響の仕事が素晴らしい仕事だと知れます

こんな楽しそうに仕事をする人たちには憧れる

 

 

映画「おんなのこきらい」感想 カワイイは武器 あざとい女は努力をしてる

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どうもきいつです


恋愛映画「おんなのこきらい」観ました

可愛いことが女の価値だと信じる女性の恋愛を通し
女心をポップで毒気を含んで描いた2014年の恋愛映画
ふぇのたすの楽曲「女の子入門」から着想を得て作られた作品です

監督は加藤綾佳が務め
主演は人気モデルで女優の森川葵です

 

あらすじ
OLのキリコは過食症で可愛い食べ物を食べては吐いていた
キリコは職場や合コンでは男たちにちやほやされ女性からは嫌われているが
彼女は女の価値は可愛いことだと信じて疑わない
そんなキリコの前に彼女になびかない幸太が現れる

 

感想
キリコが可愛いし普通に好きになる
ぶりっ子を貫くキリコは卑怯どころかむしろカッコよくも見えました
可愛さというのは武器の一つだと思わされる
でも、それだけじゃ上手くいかないのもまた現実

 

前からなんか気になっていた映画で
最近になってやっと観ました

低予算だろうし
見たことのない俳優ばかりのB級恋愛映画
って感じでしたけど
なかなか面白かったです
短くて観やすい映画でしたし

知らない俳優ばかりというのもあって
なんかすごくリアルにも感じられる映画

描かれているストーリーもどこか身近に感じれて少し親近感もあります

正直言うと
劇的な物語ではないので
インパクトは弱くて印象に残りづらい作品だろうなとは思う

映像や演出もチープで安っぽいのは否めません


でも、本作の主人公キリコはとても魅力的で
現実にいる女の子のようなリアリティもあります
キリコの魅力がこの映画の魅力と言ってもいいと思います


キリコはいわゆる“ぶりっ子”や“あざとい女”
と言われるタイプの女の子で
女性からはめちゃくちゃ嫌われています

しかも、それは天然ではなくて
完全に計算して男に媚びている人なんですよ

服装、仕草、喋り方
どれを取っても男が好きそうだな
ってことを自然とやってのける

だから、男からはちやほやされて
女からはとことん嫌われる
典型的なそういう系の女の子なわけです

そんなキリコの成長を描いた物語で
そこにグッとくる映画でした


僕はそもそも
ぶりっ子やあざとい女性に対する印象は全然悪くなくて
むしろ、好感が持てるくらいだったりします

こんな女の子って
特に女性からは忌み嫌われていたり
陰で悪口を言われまくっていたりして
テレビなんかではいつも悪者扱いされてたりします

確かに嫌われる理由もすごくわかるけど
男目線で見ればぶりっ子やあざとい女の子は
普通に可愛く思えるし
それに、そんな女性ってモテるために頑張ってるわけで
そこを悪く言えないよなと思うんですよね

よく男はそんな女に騙されてる
なんて言われることもあるけど

実は男もそこまで馬鹿ではなくて
自分の利益のためだけにたぶらかしてくる女は相手にしないし
相手にしても軽く扱ったりします

本作でもそういう部分が描かれていたりもする


まず、キリコなんですけども
めちゃくちゃ可愛いです

見た目が可愛いのは勿論なんですけども
あざとい女としての可愛さが完璧
そんな女を体現したようなキャラクター

自分の見た目の可愛さに自信を持っていて
それを最大限に生かす武器として活用している

しかも、周りの女性たちから何を言われようと
それを曲げない絶対的な信念も持ち合わせています

可愛さがあれば幸せを掴み取れると信じてやまない女の子なんですよね

キリコは純粋に可愛さを貫こうとしている

ここまで1つのことを貫いていれば
もはやカッコよくて尊敬の念すら抱いてしまいます

周りから陰口を叩かれて最低な女扱いをされているけど
キリコはすごく無理をしてるし努力してるんですよ

むしろ、周りで文句を垂れている女どもが
努力もせずただ他人の足を引っ張ってる愚かな人間にすら見えてくる


ただ、キリコがやってることが正解なのかと言うとそうでもなくて
やっぱりそこには歪みががある

世の中、計算高く男に媚びていれば全て上手くいく
というわけでもなく
自分の幸せのためだけに行動していても
本当の幸せは掴めない

キリコ自身も可愛ければ幸せになれるという信念に依存しているところがあって

心の底では
自分に可愛さが無ければ何も残らない
ということには気づいています

それを認めたくないから可愛くあり続けようとする

それが可愛いお菓子を食べては吐くという
不安定な生活に現れています


そして、男性関係にもその歪みは現れていて

キリコに言い寄ってくる男は

可愛い女の子と関係を持つことが
自分のステータスの一部としか思っていなかったり

本当に好きな男性からは都合のいい女としか思われていなかったり

見る目のある男性にはそのあざとさが全く通用しなかったり

キリコは幸せを掴むための可愛さだと信じていたけど
結局、可愛いだけじゃ何も手に入れることができないと気付いてきます

そんな中で
自分に全くなびかない幸太と出会いふれあうことで
キリコは幸太のことを本当に好きになり
自分の本当の魅力を見い出していきます

結果的には失恋で終わってしまうけど
それを経て本物の可愛さを手に入れる

ラストの表情とかマジで可愛すぎますから
これまでも可愛いと思えてたけど
それをあっさりと超えるほどの可愛さ


キリコを見てると
これを演じる森川葵が完璧なハマり役だと思わされました

序盤のあざといキリコはナチュラルにそういう人に見えるし
その後の気持ちの変化や感情が爆発する姿も
すごくリアルなんですよね

最後の成長したキリコの可愛さは
今までと全然違う可愛さを出せてます

森川葵のハマりっぷりが
この映画のレベルを押し上げてると思いました

 

個人的にはすごく好きでいい映画だと思いましたけど
これいらないなと思ったのが
歌のシーン

所々に本作の基となった楽曲を手掛けるふぇのたすが登場して歌うという場面が入るんですけど
これの意味があまりわからない

このシーン自体が夢なのか現実なのか不明だし
この歌がキリコにどう影響を与えてるのかもよくわかりません

キリコの気持ちを歌ってるのは理解できるけど
この歌がなくても全然伝わってくるものを
もう一度歌で説明されてる感じもしてちょっとくどい

それがストーリーと繋がってるわけでもなくて
とりあえずサブカルっぽい演出をしてみました
で終わってるから
このシーンだけすごく浮いてて
ただ安っぽいだけなんですよね

歌を入れるのは悪くないと思うけど
もう少し作品全体とリンクするように見せてほしかったです

 

歌のシーンはあまり好きじゃなかったけど
全体的にはすごく好きな映画でした
キリコが可愛くてリアルでとても魅力的

あざとい女は努力してるし無理してるし思い悩んでいる
そこを理解できる作品でした

 


おんなのこきらい [DVD]

 

 

映画「コンジアム」感想 超怖かった 終盤の勢いが素晴らしい

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どうもきいつです


ホラー映画「コンジアム」観ました

韓国の有名な心霊スポットである実在する廃病院を舞台にした2018年韓国のホラー映画
閉鎖された廃病院に訪れた若者たちが
恐怖に巻き込まれていく姿をPOV形式で描かれています

監督はチョン・ボクシムが務めています

 


あらすじ
ネットで恐怖動画を配信する人気チャンネル「ホラータイムズ」が一般参加者を募り
有名な心霊スポット「コンジアム精神病棟」に潜入することとなる
様々な機材を持ち込み撮影を開始するが
彼らは次第に恐怖に飲まれていく

 

感想
王道な展開だけど怖くて楽しめる
POVの映像も今の時代だからこその表現になっていて面白いです
ちゃんと怖がらせてくれる安定したホラー映画でした

 

おすすめされていて前から気なっていた映画
ちょうどアマゾンプライムビデオで配信されていたので観てみました


B級っぽい雰囲気だし
そんなに期待せずに観たんですが
これがなかなか面白かった

B級には変わりないですけど
ちゃんと怖くて面白く観れるホラー映画です


やってることは王道で奇をてらっているわけでもなく
POVの作風も今となれば別に珍しいわけでもない

ただ、ちゃんと怖い演出があって
印象に残る怖いシーンもありました
ラスト30分くらいは怒濤の恐怖展開で
すごく盛り上がるしすごく怖い

ビビってる自分を実感できる内容でした

まあ、いわゆるお化け屋敷的な映画で
ストーリーもほぼなく深い内容なんてないですが
だからこそ純粋にホラー映画として楽しめます

 

本作はPOVという設定を存分に生かしている作品です

POVなんてもうやり尽くされていて
目新しさは全くない

本作も同じで
他のPOV映画とそんなに変わらないと思う
特別変わったことをやろうともしていません

でも、なんか本作はPOVに真摯に向き合って
作ってるように思えるんですよね

とりあえず低予算だからPOVにすればそれっぽくなるだろ
じゃなくて
POVだからこその怖さや面白さを突き詰めようとしている

そこがこの映画の面白さなんじゃないかと思います

 

まず、POVにユーチューバー的な要素を取り入れることで
今の時代だからこそ共感しやすい作りになっています

再生数のために無茶をする
というのが
違和感なく主人公たちの原動力にもなってます

POVでありがちな
何でずっと撮ってるんだよとか
何で早く逃げないんだよ
みたいなツッコミどころを解消できてます

今までのPOVって
なんのために撮ってるんだよと思うことも多かったけど
本作の場合は
とにかく再生数のために無茶をする若者たち
で納得することができる

それに、軽い気持ちでYouTubeを使い金儲けしたい
って若者の軽くて調子に乗ったノリも
ホラー映画にはぴったりです

主人公たちがワイワイ楽しそうにやって
心霊スポットではおどけてたり
ホラーの前フリとしては完璧ですよ

そんな奴らが恐怖におののく姿は最高です
これはホラーには大事な要素


撮影機材の豊富さも
本作の場合は面白く機能してます

撮影機材の多さなら「ブレアウィッチ」にも少し似てるんですけども
それに比べると本作は豊富な機材を上手く活用できてる

正直「ブレアウィッチ」は機材の多さに意味がなくてマイナスにしかなってなかったけど
本作はこの機材の多さもホラーとしてちゃんと意味をなしてる

それぞれのカメラの映像によって恐怖を演出してます
特に顔のアップはすごくいいです

単純に表情で怖さを表現できてる

終盤の黒目でパヒョパヒョ言うやつは
めちゃくちゃ怖い
あの顔をアップで見続けなければならないし

ヘッドセットカメラの存在があるから
あの恐怖の顔面アップもちゃんと理屈が通ってるんですよね

顔を覆おうとする手なんかも面白い見せ方だと思う
怖いけど面白い見せ方でしたね


所々に設置してるカメラは「グレイヴ・エンカウンターズ」に似てます

と言うか、この作品自体がすごく似てます
全体の流れとかノリとか

もしかしたら参考にしてるのかもしれません

かなり似てる作品ではあるんですけども
本作の方がよりホラーな作品なのは間違いないです

「グレイヴ・エンカウンターズ」はそこまで怖くはないんですよね
驚かされる場面はあるんですが
やっぱり洋画的なホラーなのでそんなにゾクゾクはさせられない

それに比べると本作は
日本のホラーに通じるものもあったりして
恐怖心をとても煽られます

音やビジュアルで驚かす場面もあるけど
じわじわと迫る恐怖や得たいの知れない不気味さなど
静かな恐怖でしっかりと気持ちを煽ってきます

化け物じみた者が
迫ってくるわけでもなくそこにいる
という表現はすごく怖かった

全体的に緩急の付け方がとても上手くて
本当にめちゃくちゃビビらされましたよ

 

あと、時空の歪みはPOVと相性がいいなと思いました

POVってリアルタイムに見ている感覚や
自分もその場にいるような臨場感が味わえるので
少しブッ飛んだ世界の方がより体験として楽しめるんだと思う

急に外から建物の中に入ってしまったり
突然、出口のない部屋に閉じ込められたり
時間が歪んで見えたり

臨場感があるからこそ不思議な世界に
より引き込まれていくんですよ

そして、それが恐怖にも繋がっていく

本作は世界観も上手く作られていて
物語が進むにつれ加速して異形の世界に引き込まれていきます

終盤の怒濤の展開は最高に怖くて楽しいんですよね


それと、ストーリーの薄さもPOVには向いてる

本作はストーリーがほぼなくて
病院の謎が解明されるわけでもないんですが
POVというところでそこをカバーできてる

POVはストーリーを楽しむことより
体感することを楽しむ部分が大いにあります

体感する楽しみさえ充実してたら
ストーリーなんて正直どうでもいい

むしろ、謎めいた得たいの知れなさが
より恐怖を引き立ててくれたりもします

この映画は意味がわからなくて怖いという感情をすごく感じれました

最後には謎だらけの余韻にも浸れるし
変に謎解き要素を入れていなかったのは正解ですね

思い出したら怖いな
という気持ちにもなります


全体的に怖さを突き詰めようとしてる映画なのは観ていてすごく感じれました

 

そんな感じで
最後まですごく面白い映画なんですけど

文句があるとすれば
エンジンがかかってくるのが遅い

始まって1時間くらいはほぼなにも起きません
終盤のフリになる要素はありますが
それにしてもちょっと退屈

調子に乗る若者を見せることで
後の恐怖演出が生きてくるのは確かです

でも、ちょっとくどすぎる気もする

途中の水遊びはさすがにいらないですかね…

病院に入ってからもちょっとグダグダが多くて
すごく長く感じました

エンジンがかかれば怒濤の展開ですごいんですけど
そこに至るまでがちょっとしんどい

終盤のテンポのよさが序盤にもあったらな
とは思わされます

 

それと、いい点で言えば
女の子がみんな可愛い

やっぱりホラー映画は女の子が可愛いに越したことはないですね

可愛い女の子が恐怖で顔を歪めていくのは最高です

 

本作はPOVホラーとしてとても質が高い作品だと思います
文句もちょっと言いましたけど
超怖いし超面白いし最高に楽しめました

黒目のやつは夢に出てきそうなくらい印象に残った
あれは怖すぎる…

 


コンジアム [Blu-ray]

 

 

映画「青くて痛くて脆い」感想 愚かで見苦しいけど 青春なんてこんなもの

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どうもきいつです


青春映画「青くて痛くて脆い」観ました

「君な膵臓をたべたい」などの佐野よるによる小説を映画化した青春サスペンス映画
大事な友達を奪われた青年が
その復讐を果たすために計画を企てます

監督は狩山俊輔が務め
出演するのは吉沢亮、杉咲花などです

 

あらすじ
人付き合いが苦手な大学生の田端楓は
空気が読めず周りから浮いている秋好寿乃と出会う
2人は世界を変えると大それた目標を掲げ
秘密結社サークル「モアイ」を立ち上げた
それから月日が経ち秋好が姿を消してしまう
ただの就活サークルと成り下がり秋好を奪った「モアイ」を潰すため
楓は「モアイ」を潰す計画を企て実行に移す

 

感想
まさしくタイトル通りの内容
青くて痛くて脆い楓の言動がグサグサと心に刺さる
愚かで滑稽な姿が自分にも重なりました
この映画は観る人によって捉え方が変わるかもしれません


映画館で予告を目にしてからとても気になっていたので観てきました

観る前は
友達を殺した相手に復讐するクライムサスペンスみたいなのを想像していましたけど
全然違った

サスペンスを期待していた人からすれば
なにそれ?
みたいな内容の映画です

物語の流れも
意外性のある展開なんかも用意されてますけど
なんとなく先が読めてくる

たぶんこういうことなんだろうな
と思っていたら大体その通りです

後半になってくると主人公の楓が暴走して独り相撲状態になってくるし
全然サスペンスではなくなってくる

若干、宣伝詐欺なところもあるので
気にくわない人もいるだろうなと思う


ただ、個人的にはこの裏切りはすごく良かった
たぶんただのサスペンスならここまで心に刺さらなかったかも

この作品は面白いかどうかより
心をすごく揺さぶられました

過去の自分と重ね合わすと心が痛すぎる
まるで自分の姿を見ているようでした


とは言え
この映画は観る人によって全然見えかたが変わってくると思います

普通につまらないと思う人もいるでしょうし
僕のようにすごく心に刺さる人もいると思う

これはその人がどんな青春を送ってきたかによって受け取りかたが違ってきます

簡単に分けてしまうと
学生時代に友達が多くてワイワイやるのが楽しかった人と
友達が少なくて少ない友達と親密な関係を築きたかった人
そのどちらかによって
感情移入できるかどうかが変わります

楓の考えか秋好の考えかで
この映画の感想も変わってくる

秋好側の学生生活を送ってきた人は
この映画が不快で気持ち悪いと思うかもしれません

逆に楓のような学生生活を送ってきた人は
気持ちがわかりすぎてすごく感情移入できるはず
学生時代の嫌な気持ちがよみがえってくる

そんな観る人によって見え方が変わってくるのが本作の面白さでもあると思います

 


で、本作で最も重要なのは
主人公の楓の存在

序盤はサスペンスのように見える本作ですが
話が進んでいくうちに
この物語全てが楓の独り相撲だとわかってきます

簡単に言えば
全て楓の逆恨みで
ただ勝手に自分の気持ちを晴らそうと奮闘している

この映画には悪者なんて全くいなくて
あえて悪者を選ぶとしたら楓

コイツが本当に厄介な奴です

自分の勝手な思い込みで勝手に恨んで

自らコミュニケーションをとることもなく
全てが他人まかせ

そのくせ悪いのは全て他人だと決めつけ
身勝手に復讐しようと暴走してる

イタいしキモいし最低な奴なわけです


だから、この映画を観た人の中には
楓が嫌いだと思う人も多いはず
楓を気持ち悪いと思えば
この映画自体も気持ち悪く思うでしょう


でも、楓のこの気持ちを
わかる人は痛いほどわかると思うんですよね

僕はめちゃくちゃわかりました
実際、僕の大学生時代はマジでこんなだった

少人数だと充実していた友達関係も
大人数になってくるとすごく疎外感を感じたり

仲のいい友達がなんか思ってた感じではなくて
腹が立ってしまったり

大学に入ったばかりの時の繋ぎの友達関係は
僕だけじゃなくみんなが経験する大学生あるあるですよね


20歳前後の未熟な人間だからこそ
人間関係がすごく面倒くさくて
それに落ち込んだり苛立ったり

でも、結局一番面倒くさいのは自分自身だったりする


この楓というキャラクターは
それをすごく体現している存在です

あの頃の自分を具現化したような存在

しかも、それはすごく嫌な部分で
今思えば完全に黒歴史のような
そんな自分の痛いところをグサグサと突き刺してきます

 

そして、何よりも
この映画にこんなにも感情移入できる理由は何なのかを考えると

この映画は完全に楓目線の物語なんです
全てが楓の目に見えた世界

登場人物や「モアイ」も全部
楓が見るそれなんですよ

 

なので、実際の所の真実は見えてこない

楓以外の登場人物はみんなどこか掴み所が無く
何を考えているのかわかりづらいし

「モアイ」の活動も本当にヤバいことをやってるのかやってないのか
その辺はあまりはっきりとしない

重要キャラの秋好でさえ何考えてるかわからない

全部がかなり曖昧で
サスペンス映画として見てみるとどうかと思うような内容


でも、楓が体験する青春ストーリーとしては
これはすごくリアルです

実際の人間関係も
相手が何を考えてるか
本当はどんな人間なのか
そんなのは全然わからなくて

それをどうにか手探りで関係を築いていきます

だからこそ曖昧な相手の言動に惑わされたり
理想と現実のギャップに追いつけなかったり
気が付けば何が正解なのかもわからなくなってくる

そうなれば疑心暗鬼になって
楓みたいな気持ちになるのはすごくわかる

楓のあの行動はさすがにやり過ぎだろうと思いつつも
あれほどまで感情が爆発してしまう気持ちも
痛いほど理解できてしまう自分もいる


自分だけでなく人間関係に振り回された人をたくさん見てきたし
これは、結構いろんな人たちが体験してきている感情だとも思います

 

本作で特に心に刺さったのは
終盤の楓と秋好の気持ちがぶつかり合うところ

ここがちょっと泣けてくるんですよ

普通ならこんなお互いに気持ちをぶつけ合うシーンなら
最後に分かり合えるようなもんですけど

本作の場合はこんなにぶつけ合ってるのに
全然2人が噛み合わない

なんかすごく2人の気持ちがズレてる
楓が言いたいことが全く秋好に通じていない
挙句の果てに楓は秋好に気持ち悪いと言われてしまう

この気持ち悪いという言葉で
全てが崩れ去ったような気がしました

楓からすれば秋好は
世界平和を野望にしている変な女の子で
本当にそれをしてしまうんじゃないかと一目置いていたわけです

でも実際は俗っぽいやつらと俗っぽい生活を送って楽しんで
普通に恋愛なんかもしていて
最終的に世界平和とか言ってたくせに
気持ち悪いなんてあんな暴力的な言葉を浴びせられる

そりゃキレるよ
思ってた人間と全然違うもん
裏切られたと思って当然


ただ、これは楓を肯定しているわけではなくて
青くて痛くて脆いからこそ
勝手に理想的な人間に作り上げた友達が
現実では思ったのと違ったからブチギレる
というかなり愚かな行為

そんな未熟な人間が必死に足掻いている姿が
めっちゃ心に響いて泣けてくる

自分も誰かに理想を押し付けてたことはあったよなと
懐かしさと恥ずかしさを感じました

 


ただ、ちょっとラストが薄い気がしました

あの時ああしてればの妄想のシーンは
すごく切なくて好きですけど
そこから後はあっさりしすぎかな…

秋好に謝りたいという気持ちだけでは
原動力としては弱く感じます

なぜ謝りたいのかや
自分の過ちに向き合う姿など
そういう描写を深掘りしても良かったと思う

急に楓がいい子になったって感じで
あまり気持ちが追いつきませんでした

1番最後の後先考えず勇気を振り絞る
という終わり方はすごく良かったと思いますけど

そこに至るまでを深く見せてほしかった

 

あと、楓が秋好に恋愛感情があったのかどうかは
個人的には無かったように思えた

もしあったのなら
最後の妄想は秋好が恋人になってるはずだけど
サークルでみんな仲良くやってる妄想だったし

人間として尊敬していたからこそ
実は普通の女の子だったことに苛立ったていたように感じました

 

この映画を観たら
昔のことをすごく思い出してしまった

学生時代の未熟で愚かな人間を
すごく上手く表現している映画でした

正直、パリピみたいな学生時代を
楽しく謳歌していたような人たちには全然刺さらなくて
ただの気持ち悪い映画にしか思えないかもしれない

でも、暗い学生生活を送っていた人なら
すごく刺さると思います

僕の知り合いや友達は
この気持ちをわかってくれる人が多そう

 


青くて痛くて脆い (角川文庫)

 

 

映画「事故物件 怖い間取り」感想 やりたいことはわかるけど 方向性が間違ってる

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どうもきいつです


ホラー映画「事故物件 怖い間取り」観ました

テレビ番組の企画で「事故物件住みます芸人」として
実際に事故物件に住んできた松原タニシの
実体験を記したノンフィクション書籍を映画化した作品
テレビ出演のために事故物件に住み始めた
若手芸人が様々な怪奇現象に遭遇していくホラー映画です

監督は「リング」シリーズなどの中田秀夫
主演はジャニーズの亀梨和也が務めています

 

あらすじ
売れない芸人の山野ヤマメは
テレビ出演のために殺人事件の起きた物件に引っ越すことになる
部屋で撮影した映像には不可解なものが映り
音声が乱れるなどの現象が起き
出演した番組はとても盛り上がった
新たなネタを求めヤマメは事故物件を転々とすることとなる

 

感想
素材はとてもいいし
序盤はホラーな雰囲気がとても良かった
ただ、終盤の展開は酷すぎる
やりたいことはわかるけど
さすがにこの原作でこれをやるのはズレている
方向性を見誤っている映画でした

 

以前に原作の本を読んでいたので
それがどのように映画化されるのか
とても気になっていたので本作を観てきました

原作はなかなか面白くて
ストーリーがあるような内容ではないですが
実際に事故物件に住んだ芸人の体験談としては
とても興味深い本でした

だからこそ、ストーリーの無い原作が
どのように映画になるのか
というところに注目していました

 

で、実際に本作を観てみると

原作を忠実に再現した映画ではなくて
原作を基にして作られた完全なフィクション映画

主人公も原作者の松原タニシではなくて
それをモデルにしたフィクションの人物
心霊エピソードも元ネタから話を広げ脚色して作られたフィクションです

原作の内容は結構うろ覚えだったんですが
なんとなくこんなエピソードがあったな
と思いつつも
こんな大げさな話では無かったよな
とも思いました

全体のストーリーは完全に映画オリジナルで
映画として面白く見れるように
いろいろと付け足されています

原作者の実際のエピソードを基にしているのかどうかはちょっとわからないです


特に終盤の展開は原作とはかなりかけ離れている超展開で
これに関しては賛否が分かれると思います
てか、ほとんど否でしょうけど…

 

個人的な感想としては
普通に面白くなかったな…
って感じですね

素材はとてもいいのに全くそれを生かせてなかった

本の話題性に乗っかっただけの
安易な映画化だったと思います


全体的にチープで怖くないし
終盤のギャグっぽい展開も正直スベってる
ストーリーも中途半端で特に面白さはありませんでした

 

まあ、序盤はまだそんなに悪くないです

主人公がピン芸人になり仕事が無い中で
プロデューサーの無茶ぶりで事故物件に住むことになる
という導入はホラー映画としてはちょっと珍しくて引き込まれる要素だし

1件目の事故物件では
お約束なホラー演出が楽しめました
殺人現場が再現されるシーンはなかなか怖かったし
赤い服の女の不気味さもすごく良かった

ただ、そこから先は
同じようなパターンの演出がほとんど
慣れてしまって怖さも面白さも全くありません

それに、ちょっとオバケを見せ過ぎかなとも思います
はっきり見えすぎて逆に怖くない

なにかいそうでいない不気味な空気感や
なにかはわからないけど迫ってくる恐怖とか
日本的なホラー演出は少なくて

急に異形の化け物が出てきてびっくりさせる
みたいなのが多かった

その上、見せ過ぎてるからこそ
すごくチープにも見えてしまいます

明らかにメイクみたいなオバケが毎回登場して
ビジュアルが作り物すぎます
CGなんかもよく使ってましたけど
CGと丸わかりのエフェクトなのですごく萎える

見た目が本当に安っぽいんですよ

チープならチープで全然いいですけど
そこを誤魔化す工夫はしてほしいです

実話を基にしてるんだから
カメラに不可解なものが映った本物の心霊映像みたいなのを
もっと見せてくれてもよかったのに

こういうところがあまり気が利かないですよね

 

そして、ドラマパートがすごく邪魔

主人公のヤマメと相方の関係とか
ヤマメが芸人をやっている理由とか
ヤマメとスタイリストの梓との恋愛とか

これも全部チープだしつまらない内容なんですよね

しかも、無駄にドラマパートに時間を割いてるからテンポも悪い
梓の近況シーンとかマジでいらなかった

ヤマメだけをメインにして
あとはオマケ程度でいいだろうと思う

こんな薄っぺらいドラマを見せるくらいなら
テンポ良く事故物件で起きる怪奇現象を
淡々と見せてくれる方が面白かったですよね

テンポ良く次から次へと事故物件に移り住んで
オムニバス形式で様々な心霊現象に巻き込まれていく
みたいな作りほうが良かったと思う


あと、ヤマメのキャラクターが中途半端
心霊現象を怖がっているのか平気なのか
どっちつかずなのでキャラクターがブレています

原作者の松原タニシは
霊に関してはまあまあ鈍感で
あまり霊を怖がるタイプの人ではないんですよね
だからこそ事故物件に住み続けることができるんですけど

ヤマメも同じように鈍感な怖いもの知らずのキャラクターに徹底した方が絶対によかった

ホラー映画の主人公としては斬新で面白いし
怖がるのは他の登場人物に任せればいい

主人公が霊に対して鈍感で怖がらないって
他のホラー映画とも差別化できると思うし

 

あと、結末に関しても中途半端な終わりで
いまいちぱっとしない終わりかたでした

これは、最後にヤマメが売れて終わりでよかったと思うんですよね

事故物件2件目くらいで本が売れて人気者になってたけど
いくらなんでも売れるの早すぎるし

いろんな事故物件を経て
その経験を本にして売れました
って終わり方のほうが綺麗でまとまりも良かったと思う

 

そして、最大の問題点
終盤の超展開ですけども

これは完全に方向性を見誤っていますね

やりたいことはわかるんですよ
同じホラー映画で言えば「来る」や「カルト」のような
王道ホラーだと思っていたら全然違った
みたいなのをやりたかったんだと思う

ただ、この映画でやる必要ないでしょ

あくまで原作はノンフィクション
これを基にこの超展開をやるのはセンスが無い

100歩譲ってそれを受け入れたとしても
最後のあの超展開は全然上手くないですし

前フリが全然無いんですよ

急に変なことをしだすから
観てる側からすれば
は?って思うだけ

急なギャグ描写もすごく邪魔
不動産屋の江口のりこや謎の高田純次
単体で見たら面白いかもしれないけど
この映画の中では完全にスベってる

最後のバトルみたいなのも
盛り上がるわけでもなく笑えるわけでもなく
めっちゃスベってる

あまりにもスベってるので
ちょっと観てるのが恥ずかしくなりました


細かいツッコミどころも多いけど
そんなのどうでもいいレベルなんですよね

フードの奴はなんだったのかって謎が残っているけど
そんなのどうでもいいわ
って思ってしまいました

もともとストーリーの無い本の映画化ですが
この方向性はズレてますよ

 

ちょっと期待してた映画ではありましたが
蓋を開けてみるとかなりつまらない
原作の良さを全然出せていませんでした

主演の亀梨和也は関西弁を頑張ってたし
ヒロインの奈緒は可愛かったりもするので
出演者目当てならこんな作品でも
それなりに許容できるんじゃないでしょうか

ホラー映画としては駄作だと思う

 


事故物件怪談 恐い間取り