何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「運び屋」感想 ジジイの哀愁が心に刺さる

 

どうもきいつです



実話を基にした映画「運び屋」観ました

 

「グラン・トリノ」「ハドソン川の奇跡」などの
クリント・イーストウッドが
監督、主演を務めた作品
イーストウッド自身の監督作では
10年ぶりの主演を務めます

 

87歳の老人が1人で大量のコカインを運んでいた
という実際の報道記事を基に
長年にわたり麻薬の運び屋をしていた
孤独な老人の姿を描いたドラマです





あらすじ
家族をないがしろに仕事一筋で
生きてきたアール・ストーンだったが
今は金も無く、孤独な老人になっていた
あるとき、車の運転さえすればいい
という仕事を持ちかけられたアールは
その仕事を引き受ける
しかし、その仕事はメキシコの麻薬カルテルの
運び屋の仕事だった



感想
思ったよりも明るい映画
ほのぼのしてるし
笑えるシーンもあります
そして、イーストウッドの
生き様も感じられる映画でした



宣伝ではとても重苦しい印象でしたが
実際観てみると
意外なほど明るい印象の映画でした

テーマがテーマだけに重いシーンも
ありましたが
基本的にほのぼのした雰囲気の映画
コミカルなシーンもよく出てきます


主人公アールもとても好印象な
キャラクターでした

家族をないがしろにして仕事優先の
典型的などうしようもない父親ですが
人間的にはとても優しく
面倒見のいい人

とても気のいいおじいさん
って感じの人です
そして、マイペースで女好き
すごく面白みのある人物像です

映画を観ている側も
気付けばアールの事が
好きになってると思います


それだけじゃなく
ジジイの哀愁も感じさせられます

今までの人生を後悔している人でもあって
自分の行いのせいで
妻からも愛想を尽かされ
娘とは何年も言葉を交わしていない
唯一、孫は味方でしたけどね

その穴を塞ぐために
仕事に没頭しているという節も
あると思います

家族に疎まれているジジイの姿は
見ているだけで切なくなります


この人物像は
イーストウッドが自身を重ね合わせている
という部分も大いにあると思います

彼自身も仕事人間だったと思いますし
輝かしい賞や世間の称賛の声のために
生きてきた人だったんでしょう

家庭も上手くいってる人とは思えません
離婚してたり愛人だったり

そういう自分を見つめ直し
この映画に映し出したんじゃないでしょうか

これはイーストウッドの生き様を
表した映画でもあったのかもしれません

イーストウッドだからこそ
撮れた映画だと思いました



そして、監督らしい
リアルさ、ユーモア
これが輝いていた作品でもありました
映画としてもとても面白い作品です


犯罪映画だからこそのスリルも
とても感じられる

バレるかどうかのハラハラドキドキや
ヤバい組織に関わっている
という緊張感も伝わってきます

でも、アールのマイペースさや
楽観的な性格が
対照的でギャップを感じます
これがとても面白いです

鼻歌交じりで運転して
麻薬を運んでるんですから


会話のセリフの節々や
キャラのやり取りなんかも
とてもユーモアがあって面白い

人間同士の関係性も
殺伐とした世界なんですが
そのなかにほっこりした人間関係が
生まれてきたり


こういう要素がたくさんあって
最後まで飽きずに観れました

淡々と物語が進んでるようで
意外といろいろ詰め込まれた作りに
なってるんですよね



さらに、社会風刺なんかも
とても気が利いてて
すっと心に入ってくる
全然説教臭くないです

女性のバイカ-集団を男と間違えるシーン
だったり
黒人家族に手助けするシーンだったり
スマホの扱い方だったり

人種問題、差別、スマホ中毒
こういうことをサラッと風刺している

そして、アールがとても頭が柔らかく
そういったとこで学んで成長しています

年齢的にも差別用語を
悪気無く言ってしまってたりしますが
そこで気付いて改めたり
スマホの使い方を自分から学んだり

そういう姿を見せることで

一方的に
それらの事は悪い事だ
と言っているだけではなく

逆に差別だスマホだ過剰に言い過ぎてないか?
それはそれで問題じゃないのか?
というような考えも伝わってきます


こういうメッセージも
面白くわかりやすく表現しているのは
とても上手いと思いました



2時間の中に様々ものが
詰め込まれた濃密な映画でした
イーストウッドにしか撮れない映画
だと思います
面白いし見応えがある
素晴らしい映画でした




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