どうもきいつです
数々の賞を受賞した映画「スリー・ビルボード」観ました
架空の田舎町を舞台に
娘を殺害された母親が
警察を批判する看板を設置したことから
巻き起こる事件を描いた
2017年の作品です
監督は「セブン・サイコパス」などの
マーティン・マクドナーが務めています
あらすじ
ミズーリ州の田舎町
娘を殺されたミルドレッドは
犯人を逮捕できない警察にいら立ち
警察を批判する3枚の看板を
道沿いに設置する
それをきっかけに事態は
思わぬ方向へ動き始める
感想
善と悪では割り切れないものが
描かれている
この映画では
誰もが悪いと言えるし
誰も悪くないとも言える
ラストには救いを感じました
見たいと思っていた作品でしたが
劇場公開時には観れずに
今さら鑑賞してみました
なかなかいろいろ考えさえられる映画でした
人によって評価が変わりそうな
作品でしたね
ちょっとわかりにくい映画かもしれません
わかりにくいと言っても
難解な内容というわけではなく
この映画が何を伝えたいのかが
見方次第では伝わってこないと思う
この映画をサスペンスや
娯楽エンターテイメントとして
観てしまったら
なにこの映画?
誰にも感情移入できないし
結末も納得できない
終わり方が中途半端過ぎる
と感じてしまうかもしれません
でも、この映画って
サスペンスでも娯楽映画でもないと
思います
視点を変えて観てみると
この映画が何を伝えようとしてるのか
何を表現しようとしているのか
それが自然と見えてくると思います
ミルドレッドの娘を殺した
犯人の正体や犯人が捕まるのかどうか
という部分を中心にして観てしまうと
この作品の本質的な部分は
見逃してしまうと思う
この映画はミルドレッドを中心に
巻き起こる不毛な事件全体と
そんな中でミルドレッドや他の人物たちの
心が救われるのには一体何が必要なのか
そこが重要
被害者という善の存在が
犯人や仕事をしない警察官という
悪の存在を打ち負かす
みたいな単純な話では無く
善悪が存在しない
答えを出すのが難しい人間ドラマを
描いている
そんな中で彼女たちが
どこへ行きつくのかという物語
そんな物語の中での
それぞれの人物の描き方は
人間の1面だけを見せるのではなく
状況や視点が変わることで
人間のいろんな面が見えてくる
主人公のミルドレッドの場合
はじめは弱い被害者
という面が描かれています
家族の幸せが
娘が殺害されることによって
奪われた可哀そうな人
警察が職務怠慢で
事件の捜査を真面目に
やってくれないことで苦悩する人
そんな人物に思えるんですが
話が進んでいくと
彼女自身の問題点も見えてきます
いくら被害者だからって
やって良いことと悪いことがあって
彼女はそのラインを
超えてしまっていたりする
言っていることは一方的で
相手の意見は聞く耳持たず
感情的になって暴言は吐くわ
暴力は振るうわで
挙句の果てには放火です
人として欠けてる部分が
大いにある
彼女の家族に関しても
事件のせいで崩壊したのではなく
もとから不安定な家族だった
というのがわかってきます
母と子供の関係性は良くないし
夫婦関係は完全に終わってる
ただ、それでもミルドレッドの
想いや苦悩もしっかりと描かれているので
ただの嫌なババア
ってわけでもないんですよね
彼女なりの信念なんかも
見えてきますし
そして、警察側の描き方も
ただ腐りきった警察官
ってだけではなく
トップであるウィロビー所長は
人格者で町の人たちからも
慕われていたりします
警官のディクソンに関しても
はじめはただ馬鹿で傲慢
自分勝手で仕事に不真面目な男
クズ人間のようなんですが
後々、彼の悩みや家庭環境が
明らかになり
最後には自分の身を犠牲にして
他人のために行動する一面も
見せます
ディクソンもただのクズ人間
というだけではないんですよね
そういう風に
人間の内面を流れるように
移り変わっていく姿を
見せられる事で
自分がいかに他人の一面だけを見て
判断してしまっているのかを
思い知らされました
この映画の中では
ミルドレッドの看板をきっかけに
いろんな人が傷つきます
これは誰が悪いのかと言うと
誰も悪くはない
でも、みんなが悪いとも言える
こんなことはコミュニティがあれば
絶対起こりうることで
この映画では大げさな見せ方をしているけど
現実の世界でも大なり小なり
なにかしら起きています
そして、そんな複雑な人間たちが
巻き起こす殺伐としたこの事件
そこで描かれるものは
とても嫌なものばかりですが
最後まで観ると
爽やかさが残る映画でもあります
それは、怒りや憎しみが渦巻く中
人を赦すということが描かれているから
匿名でビルボードの費用を払った
ウィロビー所長
ビルボードに火をつけた元夫に
怒りをこらえて酒瓶を差し出すミルドレッド
大けがを負わせた相手へ
オレンジジュース置いてやるレッド
そして最後は
ミルドレッドとディクソンが
お互いに許し合っているように
思えます
ここで彼女の気持ちも少しでも
晴れたように思える
この映画が
ただリアルに嫌な現実を
見せつけてくるだけじゃなく
その中に少しの希望も見せてくれる
人を赦すということが
怒りや憎しみなどの負の連鎖を断ち切る
唯一の手段だと感じます
やられたらやり返すの精神じゃ
結局生まれるのは負の感情だけで
誰も幸せになることなんてできない
そう思わされました
そして、この映画に
あなたは人を赦す度量が
ある人間なのか?
と問われてるような気もします
面白くなかったと思う人も
見方を変えてみると
いろいろ考えさせられる
深い映画に感じれると思います
観て損はないと思う
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