どうもきいつです
スリラー映画「ハウス・ジャック・ビルト」観ました
12年間に渡って殺人を繰り返した
連続殺人犯の内なる葛藤と欲望を
過激な描写で描いたサイコスリラー
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「ニンフォマニアック」などの
ラース・フォン・トリアーが
監督を務めています
あらすじ
1970年代、建築家を夢見る
独身の技師ジャックはある事をきっかけに
アート製作するかのように殺人を
繰り返すようになる
そんな彼の12年間の軌跡が
5つのエピソードを通して語られる
感想
クセが強すぎる
面白いかどうかの映画じゃない
好きか嫌いかの映画
ハマらなければつまらないと思う
本当に変な映画でした
トリアー監督らしい作品だと思います
1回観ただけじゃなかなか内容を
消化しきれなかったので
2回観てきました
まず、面白い映画なのかどうか
と言うと面白い映画ではないと思う
ストーリーなんて無いようなもので
ほとんどが淡々と
シリアルキラーの犯す殺人を見せられるだけ
その殺人の場面も
ホラー的な演出というわけではなく
殺人鬼であるジャックの目線で
全てが語られるのでスリルも無いです
そんな中にもユーモアは
込められていて笑えますけども
悪趣味すぎるので万人ウケは
絶対にしないと思う
ジャックの語る考えなんかは
明らかにサイコパスなことを
理論立てて難しく語ってるから
感情移入もできないし
ややこしいことを淡々と喋るから
ちょっと眠くもなります
この映画はなにが面白いかどうかの前に
好きか嫌いかで観る人を選ぶ映画
好きと思えば
この映画はなにが面白いのか?
なにを意味しているのか?
と深く考えよう思えますが
嫌いと思ってしまえば
最後まで笑うこともできないし
心になにかが刺さることも無いと思います
カンヌ国際映画祭で途中退場者が
続出しただけはありますね
賛否両論というのも頷けます
個人的には好きな映画でした
好きじゃなけりゃ2回も観に行きませんしね
そもそも、この映画は
真面目な映画というよりは
ちょっとバカな映画
と思って観るのが丁度いいかもしれない
カリスマ的なシリアルキラーが
スタイリッシュに次々と
人を殺していく映画ではなくて
本作の主人公ジャックは
殺し方がグダグダしてたり
動きが滑稽だったりと
ちょっと抜けてる殺人鬼です
だから、そこが滑稽で笑ってしまうし
なんか不思議な魅力を感じる
でもやっぱりすごく悪趣味
というのがあるので
笑えるか笑えないかは
観る人の気持ち次第にはなってきますけど
1つ目のエピソードでは
車が故障して途方に暮れてる女性が
殺されてしまうんですが
この女がなかなかいけ好かない女で
ベラベラとしょうもないことを
ひたすら喋る
助けてもらってる分際でなんか偉そうだし
ジャックにも嫌な事めっちゃ言うし
正直言って殺された時
ちょっとスカッとします
1つ目のエピソードは
スカッとジャパンみたいな感じです
2つ目のエピソードが
個人的には1番笑えました
このエピソード全体が
コントみたいになってて
普通に面白いと思う
ジャックとターゲットのおばさんとの
玄関先でのやり取りでは
ジャックの嘘だらけの言動と
それに対する
おばさんの不信感丸出しの顔とか
面白いですし
結局、おばさんが家に入れてしまうのも
笑ってしまう
おばさんを殺してからは
強迫性障害と潔癖症のせいで
何回も部屋に戻っては
血痕が残ってないか確認してから
部屋の床を拭いての繰り返し
そんなとこに血着いてるわけないだろ
ってとこを毎回確認するから
面白くなってくる
その後の警官とのやり取りでも
ジャックの振る舞いがすごくダサいし
滑稽で面白い
3つ目では子供の死体を笑わしたり
4つ目ではオッパイ財布
5つ目では死体で建てた家
と、どのエピソードにもインパクトのある
要素が詰め込まれていて
それらは確かに残忍で悲惨な
殺人鬼の姿を描いてはいるんですが
そこにはユーモアやセンスが光っていて
ただ残酷なだけの映像にはなっていないんです
子供を殺したり
人の死をもてあそんだ描写があったりと
不謹慎で悪趣味ではあります
そのタブーを破って表現する
というのがこの作品の意味なのかな
とも思いました
エピローグの地獄めぐりのシーンは
いまいち意味は分からないけど
なんかすごいシーンでした
映像や音楽の演出が急にファンタジーに
切り替わって驚かされますし
とてもインパクトがあって
面白い映像を体感できます
おそらくここにもいろいろと
込められたものはあるんでしょうが
僕には完全に理解する事ができませんでした
そして、この映画では
芸術というのもかなり重要な要素です
ジャックは芸術のため人を殺します
ジャックにとって人を殺す事は
芸術なんです
芸術のために人を殺すなんて
倫理的に間違ってるしやってはいけない事
僕も殺人はダメだと思うし
ジャックの言い分は理解できない
でも、芸術に対する姿勢は理解できる
終盤の死体で建てた家を見た時
芸術ってこういうもんだよな
と不謹慎ながらもカタルシスを感じました
この映画を観て
芸術ってこういうもんだよ
とあらためて思わされた
世間は倫理観を持て、ルールを守れ
と言いますし
それがあるから人間は秩序を保てるわけですが
芸術ってその範疇に
収まらないものでもあります
てか、そういう価値観の外側にあるもの
なのかもしれない
最近、芸能界の薬物事件が話題になってて
ピエール瀧も捕まってましたけど
その時にテレビのコメンテーターが
薬物を使って音楽を作るのは
ドーピングしてるようなもの
みたいな事を言っていて
僕はいまいちそれが納得できなかった
その理由もここにあると思う
そもそも芸術は順位や優劣をつけるもの
じゃないと思う
だから、ドーピングも何もない
薬物をやってすごい作品を作るのは
社会的には悪いことをしてるけど
芸術的には悪いことはしてないと思います
僕は薬物をやってもいい
と言ってるわけではなくて
結局、芸術って作者の価値観が全ての
究極の自己満足だと思うわけですよ
そこから先の
他者に認められたい、作品を売りたい
となってくると話は変わってきますが
本作のジャックも
殺人という倫理的には間違った行為を
していますが
彼の価値観の中ではそれは芸術で
自分の表現したいものを殺人という形で
現したに過ぎない
周りの人間がそれを犯罪と言おうが
それは芸術に変わりないわけです
芸術に善悪なんてそもそも存在しない
本作がジャックを
肯定するわけでもなく否定するわけでもない
描き方をしているのは
そういうところにもあるんじゃないかと
思います
そして、そんな不謹慎で悪趣味なものに
切り込んで描いたこの作品もまた
賛否両論で自己満足な芸術作品なんだと
感じました
トリアー監督の芸術性や変態性が
とても出ていた作品でした
最高で最悪な映画だと思います
この作品が好きかどうかは
観る人の価値観に委ねられますね