何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「凪待ち」感想 絶望の中に希望を感じる 最後には優しい気持ちになれる映画

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どうもきいつです


ヒューマンドラマ映画「凪待ち」観ました

人生につまづき落ちぶれた男の
喪失と再生を描いたヒューマンドラマ

主演は香取慎吾
脚本を「クライマーズ・ハイ」などの
加藤正人が務め
監督は「孤狼の血」「凶悪」などの
白石和彌が務めています

 


あらすじ
木野本郁男はギャンブルから足を洗い
恋人の亜弓と亜弓の娘の美波と共に
亜弓の故郷である宮城県の石巻に移住し
印刷会社で働きはじめる
ある日、郁男は亜弓と口論になり
激昂した郁男は彼女を車から降ろし
その夜遅く亜弓は遺体となって発見される

 

感想
どうしようもないダメ男に
心揺さぶられる
暗くてつらい映画だけど
その中に希望を感じれる作品
とても良い映画でした

 

白石和彌監督の映画は
好きな作品が多いので
本作も観に行ってきました

白石監督の作品は
過激で生々しくストレートに人間を
描いているというイメージで
本作もそんならしさが感じれる作品です


本作はとてもつらくて重たいネガティブな
物語ではあるんですが
人間の優しさや希望を感じれる
爽やかな気持ちになれる映画でもありました


この映画では
どん底に陥った人間が
再生するまでの物語を描いています
舞台が震災の被災地ということもありますし
人間の再生というのが
大きなテーマであると思います


主人公の郁男は本当にどうしようもない男
ギャンブル依存症で恋人のお金を
盗んだりもしてるし
仕事に対してはどこか力が入っていない
すぐに感情的になって暴力を振るったり

恋人や恋人の娘とは
しっかりと向き合おうとはせず
結婚を切り出す事もできない

基本的に何に対しても逃げてしまう男

そこに不幸が降りかかってきたりもしますが
自業自得なところも大いにあるんです


そんな郁男の姿を見ていると
とてもイライラしてきます

なぜ自分の感情を押さえないのか?
なぜギャンブルを辞めないのか?
なぜ自分の気持ちを言葉にしないのか?
なぜ人の好意を裏切ってしまうのか?

そう考えるとすごく腹が立ってくる

でも、その反面
自分にも共通する部分があるな
とも思えてきます

自分は郁男を非難できるような人間なのか
と自分を客観的に見る事もできました

郁男は人としていろいろ欠けた人間ですが
観ている側の自分たちもまた
同じように欠けた部分はあるんじゃないかと
思わされる

郁男がなぜそんな人生を歩んでいるのか
過去にどういう事があったのか
という部分は語られないので
郁男の言動は理解しきれず
いまいち掴み所が無いのですが
どこか共感できるものもあるんですよね

彼の心の葛藤や変わりたいという意思も
伝わってきますし
心の奥にある優しさや思いやりも
感じる事ができます

だからこそ、自分を押さえれない
愚かな行動を見せられると
すごく重たいものを感じる

変わりたいけど変われない
変わることの難しさを痛感します

自分自身にもそういう弱さがあって
自分への甘さ故に現実から逃げてしまったり
これでいいかと妥協してしまったりと
共感できるところはたくさんある

この映画を観てると
自分の愚かな部分を見せられてるような
気もして重い気持ちになるし
しんどくなってくる

 

ただ、そんな人間の暗い部分や愚かな部分を
見せるだけの映画ではなくて
人間の優しさや情
そんな明るい部分も見せてくれる映画です

主人公の郁男の周りには
彼を利用する人間であったり
恋人を殺した犯人もいるわけで
とても残酷な世界なんですが

そんな中にも
郁男を助けようと手を差し伸べてくれる
人がいますし
彼を信頼している人もいる

暗闇の中にも希望の光が存在して
救いを感じます


郁男は
都会から来た人間ということで
色眼鏡で見られていて
犯人と疑われたときにはまともに弁解もできず
犯人と決めつけられる

仕事場などでも感情にまかせて
暴れ回ったりもしてしまいます

借金をしてまでもギャンブルにつぎ込み
優しさで貸してくれた金でさえ
全部使ってしまうクズ人間


それでも、亜弓や美波、亜弓の父は
見捨てずに救いの手を差し伸べる

それはやっぱり、最低な男の郁男ですが
そんな彼の内面の優しさや人の良さに
彼女たちは気付いているから
だから見捨てる事はできないんです

そんな人たちが周りにいるということが
希望になると思うし
そんな人たちがいるからこそ
どんなにどん底の人生であろうと
再生することができると思わされました


この映画では郁男が完全に成長をするわけでなく
彼が幸せになれたわけでもありません
でも、人の優しさに触れて
立ち上がる姿を見せてくれる
人が変わる瞬間を見せてくれます

このラストにはなんか勇気を貰えるし
この映画を観た人も希望を感じれるんじゃ
ないかと思いました


これは復興を目指す被災地にも
通じるものがあると思います

理不尽に全てを奪ってしまった残酷な世界
絶望的な世界でも
人の思いやる気持ち優しい気持ちがあれば
再生することができる
そういうメッセージにも感じ取れました

 


物語や演出がとても良かった映画ですが
役者の力もすごかったです

全員素晴らしいキャストだったんですけど
特に主演の香取慎吾がすごかった

SMAP時代は映画やドラマでは
キャラクター性が強い元気で明るい役
みたいなのばかりで
正直、俳優というイメージが
あまりありませんでした

でも、今回の映画での演技を見て
すごい人だなと思った

いつもニコニコして優しそうな人が
こんな闇を抱えた顔するんだな
と驚いた反面
でも、香取慎吾ってこういう人だよな
とも思えました

香取慎吾って昔からちらほらと闇の部分が
垣間見える人だったし
この役にピッタリでしたね

彼の優しくて愛嬌のあるイメージと
時々出てくる闇の部分が
この郁男という存在に説得力をもたらしています
だから郁男が実在する人間のように
思えてくる

それと、暴れるシーンとかが
大迫力でしたね
体の大きさやパワーのある重量感がすごい
感情の表現も激しかったし
今までに見れなかった香取慎吾が見れました

SMAP、ジャニーズから抜けることで
彼の俳優としての力が解放されたのかな
とも感じます

 

あと、ちょっと気になったところを言うと

亜弓を殺した犯人の見せ方が
なんか腑に落ちない

まず、先入観でこの人が犯人
ということが大体わかってしまう

あの人が演じているから
たぶんコイツはヤバい奴だろうな
というのを最初に思ったら
実際にそうでした

この映画はサスペンスではないと思うし
犯人の正体はそんなに
重要ではないと思いますが…


それと、犯人の動機もあまりに描かれなくて
ちょっと納得できません

なんとなく想像はできるけど
明確ではないし
郁男に対する接し方に
どういう真意があったのかというのは
最後まで謎のままで
なんかモヤっとする

映画全体で見るとそこは
必要ないのかもしれませんが
少し気になって引っかかりました

 

とは言え
心に刺さるとてもいい映画でした

人間の弱さに心揺さぶられ
しんどい気持ちになりますが
人の優しさに心を救われ
ほっこりする映画です

素晴らしい作品だったと思います

 


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