何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「新聞記者」感想 とても面白かった でも、この映画を全て鵜呑みにしていいのか?

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どうもきいつです

 

サスペンス映画「新聞記者」観ました

東京新聞記者の望月衣塑子の
同名ベストセラーを原案に
若き新聞記者とエリート官僚の
対峙と葛藤を描いた社会派サスペンス

「オー!ファーザー」「デイアンドナイト」
などの藤井道人が務めています

 

あらすじ
東都新聞の記者の吉岡は
大学新設計画にまつわる極秘情報の
匿名FAXを受け取り調査を始める
一方、内閣情報調査室の官僚の杉原は
現政権に不都合なニュースを
コントロールする任務に葛藤していた
そんな2人の人生が交差し
真実が明らかになっていく

 

感想
サスペンスとしてとても楽しめる
エンタメ作品でした
その一方で
この映画で描かれていることを
そのまま鵜呑みにしていいのか
と少し疑問に思う

 

以前から気になっていた作品で
期待しつつ観てきました

タイトルやあらすじからもわかるように
現代社会に対するメッセージが込められた
社会派ドラマに仕上がっています

かと言って
小難しくてわかりにくい映画ではなく
とてもわかりやすい上に
エンターテイメントとしても楽しめる内容です

ただ、社会的なメッセージが
込められてるからこそ
この描き方で本当に正しかったのか?
と違和感のある作品でもありました

 

まずは映画的に面白かった
という話をすると

サスペンスの謎解きやスリルが
とても楽しめましたし
人間ドラマもしっかりと描かれていて
深い内容になっていたと思います


ストーリーは
正義の味方が悪に対峙する
というような勧善懲悪のヒーロー映画
みたいな構図でとてもとっつきやすく
物語の流れもシンプルなので
ライトな気持ちで観ても全然ついていけます

謎解き要素に関しても
順序良くわかりやすく謎が
解き明かされていきますし

この先どうなるんだろう?
と興味を惹きつける見せ方もするので
最後までストーリーに没頭できます

要所要所にスリルのある展開や
登場人物の葛藤なども散りばめられていて
最初から最後まで飽きずに
楽しめて観れる映画でした


演出面はとても淡々としていて
かなり地味な映像が続きますが

登場人物の葛藤、決断などを
しっかりと描き込んでいる内容なので
それが物語の推進力となり地味さなどは
全然気にならないですね

それに、その地味な映像が
リアルさにも繋がって
この事件が実際に起きている事かのような
気持ちにもさせてくれます


全体的にサスペンス映画としての
バランスがとても良かったと思いますし
わかりやすくエンターテイメントな作品に
なっているので
意外と軽い気持ちでも楽しめるんじゃないでしょうか

 

そんな風にエンターテイメントとしては
楽しめる良い映画でしたが

反面、この映画のエンターテイメント的な描き方が
本作の本質的なメッセージと
相反してるように思えるんです

正直、偏った思想の映画になってしまっている


この映画が現代の政治的な部分に
切り込んだ作品
というのはとても好感が持てます

こういう邦画は全然無いので
あえてそこにぶつかってく心意気は
すごく攻めてると思います


本作が伝えたい事は
メディアに翻弄されるな
情報に踊らされるな
自分で考えて自分で行動しろ
真実は自分で見極めろ
というような事だと僕は感じました


この映画では
内調が世間の情報をコントロールし
真実を隠蔽している闇の部分を
新聞記者がその真実を暴く姿を
描いています

その切り口やテーマは
全然悪くないと思いますし
そう言ったものを描くことで
日本国民に問題提起する事ができる


ただ描き方が良くないと感じました

そんな政治的な問題を
単純な勧善懲悪で描いてしまったのは
ちょっと安易なんじゃないかと思う


物語の全てが吉岡、杉原の
正義の味方目線で進行して行き
内調は完全な悪として描かれている

特に内調の見せ方は極端すぎです

明らかに内調のオフィスの場面では
不自然なほど画面が暗くなり
そこで働く人々は機械のように
無機質で気持ち悪く描いている

田中哲司演じる多田は
滑稽なほどに悪の組織のボス
のような見せ方です

この組織自体が
特撮ヒーローの悪の秘密結社みたいに
なってしまっています


一方、新聞記者の吉岡と
内調のやり方に疑問を抱く官僚の杉原は
と言うと

一点の曇りなく正義として描かれる
この映画の中では彼女らの行動は
何の間違いもなく正しい行いとしてしか
描かれていない


現実の世界ではこんな単純に善悪が
分かれている訳も無く
特に政治的な話となると
さらにそこは曖昧で白黒つけづらいと思う

だからこそ個人個人で
考えるべきことでもあるわけで


この映画ではそこが
あまりに一方的で偏っている

 

そして、この映画がフィクションである
ということで
本作のメッセージに矛盾を感じてしまう

現実の事象をモデルに作られている
映画ではありますが
この映画はフィクションです

特に終盤の事の真相が明かされていくと
かなりリアリティに欠けると
思わされるのも否めないです


そんな勧善懲悪の偏ったフィクションを
リアルに感じるように描き
今の政権を批判するような内容なので

この作品が偏った思想のもと
作られた映画のようにも見えてしまう


そして、本作は
この映画の中での内調のように
偽物の情報で国民をコントロールして
しまっているという
矛盾が生まれてしまってる


とは言え映画なんて
それぞれの人たちの考えを決める
判断材料の1つでしかなくて
この映画にそんなに罪はないと思う


でも、この映画の感想なんかを観てると
大絶賛の人たちもたくさんいて
この思想に感化されている人も見受けられる

この映画の
メディア、情報に踊らされるな
というメッセージに相反して
この映画を観た人たちは
この映画を何も疑わずに鵜呑みにしてしまっている


そもそも、情報に踊らされずに
自分で考えて真実を見極めることなんて
当たり前のことで
このメッセージ自体が今さら感があるとも
思ってしまいましたけど


そういうこともあるので
やっぱり映画などの作品は中立であることが
大事だと思わされます

 

個人的にはあまり良い映画だとは
思いませんでした
ただ、この映画を観ていろいろ考えさせられた
という点では良い映画だったのかも

でも、こういう映画が
作られることは良いことだと思う

この映画がきっかけで
現代の政治に切り込んだ作品が
もっと増えていけばいいなと思います

 


新聞記者 (角川新書)