何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「スチームボーイ」感想 ストーリーが壊滅的 映像だけがすごい作品

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どうもきいつです


アニメ映画「スチームボーイ」観ました

19世紀のイギリスを舞台に
驚異の発明スチームボールをめぐる
少年の冒険を描いた2004年のSFアドベンチャー

「AKIRA」などの大友克洋が
手掛けた作品です

 

あらすじ
19世紀の産業革命のイギリス
ある日、レイのもとに祖父ロイドから
スチームボールと呼ばれる
蒸気を使った発明品が届く
すると、それを狙った謎の集団に襲われ
レイはスチームボールをめぐる争いに巻き込まれていく

 

感想
設定、世界観、メカデザインは
とても素晴らしく
映像のクオリティがものすごく高い作品
ただ、それ以外は…

 

大友克洋作品はとても好きなんですが
本作は観れていなかったので
今さらですが観てみました

「AKIRA」は漫画も持ってるし
映画も何回も観ているほど大好きです

だから本作にも期待して観たんですが
ちょっと期待外れでしたね

映像のクオリティは
とても素晴らしかったんですけど
ストーリーがあまりにも微妙でした

正直言って全然面白いと思えなかった

期待していただけに
かなり残念な気持ちです

 

映像に関しては
本当にすごいと思います

細かいところまで描きこまれた
精密な描写はハンパないクオリティで
絵だけど本物以上のリアリティを
感じれると思う

19世紀の蒸気機関をベースに
大友克洋らしいSF的なセンスが加わった
メカの造形はめちゃくちゃカッコいいし

それを背景に作り上げられた世界観は
とてもワクワクさせられます


それに、ただ背景やメカデザインが
すごいというだけでなく
アニメ表現のクオリティも
ものすごく高いと思います

キャラクターの動きはとても細かいし
アクションシーンなんかは
めっちゃ派手でカッコいいです

映像の見せ方や演出も上手いです
映像を流れるように見せてくれて
細かい描写が多い絵なんですが
ごちゃごちゃしていなくて
とても見やすいんです

世界トップクラスのアニメ技術だと
納得できるほどの
すごいクオリティのアニメ

この映像を見るだけでも
価値はあると思います

 

だからこそ
このストーリーはもったい

こんなにもアニメ表現に力を入れれるなら
脚本にもその力を注いでほしかったです

こんなにすごいアニメ映画が
この酷いストーリーのために
評価が地に落ちてしまう

それくらいストーリーが壊滅的なんですよ


何がそんなに酷かったのかと言うと

この物語が一体何を見せたいのかがわかない
というか、何をしているのかがわからない

登場人物たちは
何をしたいのかがよくわからないし
物語がどこへ向かっているのかも
いまいち掴み所が無く
観ていてなんかよくわからなくなってくる

そして、何よりも
主人公の目的、原動力、意思が
全く無いんですよね
だから、全然物語に集中できないんです

観終わった後に残るのは
映像はすごかったな
という感想だけです


この映画は
主人公が事件に巻き込まれていくタイプの
物語なんですが
それだけで終わってしまっている
というのが問題だと思う

物語の始まりはそれでいいと思います
でも、この映画は最後まで
それが続いてしまう

主人公のレイが巻き込まれていく中で
自分なりの目的をみつけたり
自分の使命に気づいたりというのが
全く描かれない

ただレイが周りの人間の指示に
従っているだけでこの映画は終わってしまいます


特に中盤以降のレイは物語の蚊帳の外状態で
主人公として全く機能していませんでしたね

父親のエドワードと祖父ロイドの
親子喧嘩みたいな抗争や
オハラ財団やイギリス軍の思惑などが
物語の中心で

そんな中でレイが
どう行動するのか
どう思うのか
というものは全然描かれずに

ただ、中心の物語の外側を
ウロウロと走り回っているだけのような
すごく中途半端な主人公になっていました

レイが何をしたいのかがわからないので
感情移入も全くできず
あまり入り込んで観ることができない


確かにレイは物語の中心人物ではないですが
大きな出来事に巻き込まれていく中で
自分の感情や信念を見せつけたり
物語を大きく動かす行動をしたりすることで
物語の原動力も生まれると思うし
観る側もより入り込む事ができると思います

それに、そういう描写が無いから
レイの成長なんかも感じれないし
最終的に何かを成し遂げたみたいな
感動も生まれませんよね

レイのキャラ描写が薄くて
観ていてかなりダレてきます

映像の迫力や美しさで
ある程度は観ていられるんですけど
やっぱり途中からはしんどくなってきますね

 

それに、主人公だけでなく
他の登場人物たちも
あまり目的がわからなかったり
物語上で機能してないようなキャラが多い


レイの父親エドワードは
ラスボス的な立ち位置なんですけど
目的が漠然としすぎていて
結局何がしたいのかが見えてこない

科学力を世界に見せつけたい
というのはわかるけど
その先に何があるのかは不明

やってること、考えていることに
具体性が全く無くて
最後まで掴み所が無いんですよね

息子や家族に対する気持ちや
科学の発展に対する考えも
なんかフワッとしていて
何を考えてるかわからないまま終わっていきます


エドワードと対立している
レイの祖父ロイドも
エドワードに反対しているけど
具体的に何を反対しているのかがわからない

命懸けでいろんなことをやってますが
なぜそこまでやるのかが伝わらないので
ただの頭のおかしいジジイにしか見えない


終盤のレイの邪魔をする敵は
なぜ邪魔をするのかがわからない

理由もないのに邪魔をして
ただアクションシーンを作り出すためだけの
要員ですよね


他にも何がしたいかがわからないキャラが
わんさかといる
この映画のほとんどのキャラが
何を原動力に動いているのかがわかりません


その中でも
ヒロイン的立ち位置のスカーレットが
全く無意味な存在だと思う

キャラクター的には面白いんですが
ヒロインとして全然機能していません

彼女がいることで
レイの気持ちに何か影響を及ぼすかと言えば
そうでもなく
レイが行動を起こす原動力にもなっていない

物語の中で重要なカギを握っている
というわけでもない

物語をかき乱す役割も担っていません

結局、何のためのキャラだったのか?
いてもいなくても何も変わらないでしょ

とりあえずヒロインは必要だろ
くらいの気持ちで作られただけの
キャラのように思えます


全体的にキャラクター描写が
あまりにもずさんだと思う

テキトーに考えたのかな?
って思ってしまうほど酷い脚本です
脚本にもっと力を入れれなかったんですかね…

 

大友克洋だからって
期待は禁物の映画でした

素晴らしい映像を拝むだけなら
いいかもしれませんが
あまりの脚本の酷さに映像を観ているのも
苦痛になってくる

世界トップクラスのアニメーションを
つまらなくさせてしまうほど
ストーリーが足を引っ張っていました

本当にもったいない

 


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