何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「エミリー・ローズ」感想 ちょっと中途半端な映画

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どうもきいつです


ホラー映画「エミリー・ローズ」観ました

悪魔払いの儀式後に謎の死を遂げた
エミリー・ローズの死をめぐる裁判を
描いた2005年の実話を基にしたホラーサスペンス

「地球が静止する日」「フッテージ」などの
スコット・デリクソンが監督を務めています

 

あらすじ
19歳の女子大生エミリー・ローズが死亡した
彼女の悪魔祓いを行ったムーア神父は
死の原因を作ったとして過失致死罪で起訴される
そんな中、有能弁護士エリンは教会の依頼で
ムーア神父の弁護を担当することになる

 

感想
宗教観的に日本人には
とっつきにくい内容だと思う
それ抜きにしても
少し面白みに欠ける内容だったと
思いました

 

とても有名な作品で評判も良く
実話を基にしているということもあって
興味を惹かれて観ました


この映画、ホラーというよりも
法廷劇の要素が強い作品です

裁判の中で悪魔は存在するかどうか
という答えの無いものを突き詰めていく話

なので、よくあるホラー映画を想像していると
全然思ってたのと違う
ってなると思います

それに、悪魔がいるかどうかの裁判なんて
日本では絶対あり得ないし
その部分でかなりとっつきにくい映画に
なっていると思います

この映画で示される問題定義や
メッセージ性なども
西洋の宗教観が前提になっていると思うので
ちょっと日本人には理解しがたい


この映画で描かれるのは
信仰心の深さ故に生じてしまう歪みや
そこから生まれる価値観のズレなど

そこに対して深く考えさせられる内容の
作品だと思います

そういった点では観る価値のある作品だと思えます

 

ただ、そんなに面白い映画ではなかった
ちょっと中途半端だと思います

法廷劇を見せたいのか
ホラーを見せたいのか
どっちつかずになっています

この2つが同時進行で進んでいくので
この映画の本質的な所からも
ズレてしまっている

この映画ではホラー要素は
薄くするべきだったんじゃないですかね


本作は実話を基にしている映画でもあるし
だからこそオカルト的な部分だけでなく
人間の闇とか、人間の愚かな部分を
もっと掘り下げて描いていくべきだったと思う

この物語は心霊とか悪魔とか
そんなオカルトなもので収まるんじゃなくて
より深い部分まで切り込むことで
もっと強いメッセージや問題提起を
投げかける事ができたと思います


しかし、本作はただのホラー映画で
終わってしまっている

この映画を観ても
純真無垢な人間たちが悪魔によって
人生を狂わされてしまった話にしか
見ることができないと思います


でも、それはそれで
ホラー映画として面白ければ
別にかまわないんですが

そこもいまいち中途半端で
そんなに怖くないし
ホラーならではの面白みにも欠けます


基本的にホラー演出があるのは
過去の回想場面だけで
それ以外の場面ではほぼありません

確かにビジュアル的にはゾッとするものは
見せられるんですけど
結局、それらは過去で起きていただけの
もう終わってしまっている事なんですよ

なので、ホラーならではのライブ感が全然無く
スリルや恐怖が全く感じれません

それに、あくまで実話という体があるので
あまりぶっ飛んだ描写というのも無く
結構こじんまりしてしまってました

ホラー的な見どころは
エミリーの動きがすごい
ということくらいしかなかったですね

 

そして、法廷劇の方はどうだったかと言うと
こっちはこっちで面白くない
法廷の場面はかなり退屈でした

ただ淡々と悪魔がいるかどうかを
議論しているだけのシーンになっています

その中で人間ドラマはほとんど描かれないし
それぞれの感情も伝わってきません

論破され論破するやり取りだけが
ひたすら繰り返される

まあ、現実はそうなのかもしれませんが…

でも、これは映画なんでね
そこは面白く見せてほしい


それに、法廷劇では人間ドラマは
かなり重要だと思う
いろんな人間の感情や思惑が交錯して
そこに生まれるドラマが面白さに繋がると思います

しかも、この悪魔がいるかどうか
という裁判には明確な答えがあるわけでなく
真相を言及するサスペンスとしては
描けないわけで
だからこそ、もっと人間ドラマを重視するべき
だったんじゃないでしょうか

 

あと、この映画が実話をもとにしている
ということもあって
これが現実に起きたことだと思っている人も
いますけども

これフィクションですからね


確かにモデルとなった事件はありますが
この映画の人物像は脚色されたものですし
ホラー描写は明らかに
ホラー映画だから悪魔がいるように見せている
そもそも、エミリー・ローズは存在しませんから


この描き方のせいもあってか

悪魔と戦った神父が
無実の罪を着せられた物語
のように見えてしまうし

この映画を観た人の中には
悪魔って本当にいるかもしれない
みたいな感想を持つ人もいたりする

でも、それは本質から
ズレてしまっていると思います

この映画で重要なのは
悪魔がいるかどうかより

宗教信仰の裏と表や
価値観の違いから生まれる悲劇
そういうものについて考えることだと思う


でもそれは
結局この映画の描き方が悪いんですよ

ホラー映画として作ってしまったから
本質とずれた見え方がしてしまう

 

軽くモデルになった事件を調べてみましたが

この映画なんかより全然現実的ですし
いろんなものが交錯している事件だと
思います

悪魔がいるかどうかなんてことよりも
もっと深い闇を抱えている事件です

これをそのまま映像化しても
面白い映画ができるんじゃないかな
と思えるほど


実際の事件と比較してみても
本作はホラーを重視してるんだな
ということがわかりました

ホラー映画ということにしてしまえば
それなりにとっつきやすくなるし
いろんな人に観てもらえる
というのもあったんでしょうが

そのせいで重要な部分が
ブレてしまったんじゃないですかね

 

この映画を観て考えさせられることも
たくさんありましたが
やっぱり少し中途半端な作品だったと
思いました

もうちょっとリアル路線でも
よかったんじゃないかなと思う

 


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