何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「月に囚われた男」感想 独特なストーリーに引き込まれる

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どうもきいつです


SF映画「月に囚われた男」観ました

地球に必要不可欠なエネルギー源を発掘するため
月の基地に滞在中の男が奇妙な出来事に遭遇する
2009年のSFスリラー作品です

デヴィッド・ボウイの息子ダンカン・ジョーンズ
が初監督に挑んだ作品
サム・ロックウェルの1人芝居にも注目です

 

www.nanimokamogakokkei.com

 

あらすじ
燃料資源を使い果たした未来の地球
3年契約のもと、たった1人で月に赴任したサムは
燃料を詰めたポッドを地球に送る単調な日々を
過ごしていた
ある日、サムは不注意から事故を起こしてしまう
そして、目を覚ましたサムは自分に瓜二つの男に出会う

 

感想
面白いアイデアで
最後まで見入ってしまいました
低予算ながら面白い映画です
ただ、ちょっと物足りなさは感じた

 

「ミッション:8ミニッツ」が面白かったので
同じダンカン・ジョーンズ監督の
デビュー作であるこの映画を観てみました

低予算で初監督作ということがありますが
それを感じさせないような
面白い設定で独特な世界観の作品でした

個人的にはかなり好きなタイプの映画です


CG全盛期のこの時代に
CGを極力使わずにセットでの撮影と
ミニチュアを使った撮影など
とても工夫が凝らされた作品で

しかも、本作は月を舞台にしたSFなわけです

それがこの作品に独特な空気感を生み出して
ちょっと懐かしいSFみたいなものも感じます

 

ストーリーに関しては
かなり地味で抑揚もあまりなく
ちょっと退屈になるかもしれないですが
サム・ロックウェルの1人演技に
引き込まれていきます

それに、ミステリー的な要素も
物語の原動力になっていて
最後まで興味の持続が続きます

独特なストーリー展開ということもあり
最後までなかなか先の展開が読めず
物語の落としどころもあまり予測がつかない

この先どうなるんだろう
という気持ちで最後まで観させられました


ストーリーの進行が停滞することなく
最後まで何かしら動きがあったのも
良かったのかもしれないです

全体的に地味で山もあまりないストーリー
なんですが
常に流れるように展開していくし
全体で100分程度と少し短めだったのも
ちょうど良い長さだったと思います


それと、登場人物は主人公のサムだけなのに
人間ドラマもしっかりと描かれています

いちおうロボットのガーティや
サムはクローンで2人いるわけですが
そんな少ない登場人物だけの中でも
サムの心情が深く描かれています

でも、そういうのを言葉で言わすのではなく
表情や態度、会話のやり取りなどで
行間を読ますような演出をしていて
自然とそういうことを感じ取ることができます

説明臭い演出が無いので
それがこの作品のテンポの良さにも
繋がっていると思います

 

そして、この映画は
クローンを描いた作品でもあるんですが
そのクローンの扱い方も
なかなか面白かったと思います

普通、こういうクローンを描いた作品って
どちらが本物なのかを争う展開に発展する場合が
多いと思いますが

本作はそんな争いは全く描かれず
むしろ2人がとても協力的で
2人力を合わせて困難を乗り越えようとします

状況が呑み込めず
お互いがぶつかり合う場面もあるものの
基本はお互いを尊重し合ってる


さらにこのクローンを通して
人間の尊厳も描いている作品でもあります

彼らはクローンと言っても
性格もあるし思い出もある
それがただ植え付けられただけの
ものだったとしても
彼らは人間であることに変わりはない

そんな彼らを会社が物のように
使い捨てで扱っている

個性や人格があるのに人権が無いわけです


こういうのは現代の社会に
通ずるものが大いにあると思います

世の中ではサムみたいに
使い捨てで物のように扱われている人なんて
たくさんいますし
この作品は心に刺さるものがあると思う

 

地味な映画ながらも
魅力的で完成度の高い作品でした

ただ、ちょっと物足りなさを感じるのも
否めないんですよね


さすがに物語に変化が無さすぎます
大きい展開ってのも特に無い

その中でも
サムが実はクローンだった
というのはまだ大きな展開だと思うし
その後の話の発展に繋がるんですが

これも結構はじめのほうで明かされる事実で
最後にほうにもっと大きな何かが
待っているのかと期待したんですが

そこからラストまでは
ただ淡々と物語が進んでいくだけです

もう少しストーリーに波があったほうが
気持ちも揺さぶられるだろうし
インパクトを感じる作品になったと思う


この映画の結末についても
ちょっと引っかかる部分があって

今まで余計なものをそぎ落としたような
行間を読ます作風だったのにも関わらず

なぜか
最終的にこうなりましたよ
という部分は全部文字で見せてしまってる

これがすごく蛇足に感じます

この説明が無かったとしても
なんとなく想像できるし
これが無かったほうが物語の結末に
広がりも生まれたんじゃないかと思うんですよ

 

あと、説明不足なところが多かったようにも
思いました

サムが幻覚で女性の姿を見たのは
なぜだったのか
ガーティが無条件で協力し過ぎだったり

そもそも月でたった一人で作業してること自体
無理があるように感じる

そういうところに
何か理由とか説明がもう少しあっても
良かったんじゃないかとも思います

 

全体的に淡々とした映画で
インパクトにも欠けるということもあり
あまり話題に上がらない映画なのかも

でも、初監督作にしては
かなり完成度が高い作品だと思います
SF映画としても
とても魅力的な映画だと思いました

 


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