何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「バジュランギおじさんと、小さな迷子」感想 回りくどくて長過ぎる映画だけど そこが魅力

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どうもきいつです


インド映画「バジュランギおじさんと、小さな迷子」観ました

インド人の青年が
迷子のパキスタン人の少女を親の元へ
送り届けるための壮大な旅を描いた
2015年インドのドラマ映画

主演は「ダバング大胆不敵」などのサルマーン・カーン
パキスタンの少女を演じたのは
5000人の中から選ばれたハルシャーリー・マルホートラです
監督は「タイガー 伝説のスパイ」で
サルマーンと組んだカビール・カーンが
務めています

 

あらすじ
声が出ないパキスタンの少女シャヒーダは
母親とインドのイスラム寺院に願掛けに
行った帰りにはぐれてしまった
そんな迷子の少女を、
ヒンドゥー教徒のパワンが保護することに
そして、パワンは少女を家に送り届けるため
長い間激しく対立するインドとパキスタンの
国境を越えることを決意する

 

感想
ベタだけどとても良い映画でした
インドらしい作風に
笑いや感動が詰め込まれている
あまり知らなかったインドとパキスタンの現状や
宗教的な価値観も知れて勉強にもなりました

 

普段インド映画はほとんど観なくて
今までも数えるほどしか観たことがないんですが
この映画は前から気になっていた作品だったので
観てみました


インド映画って歌って踊って楽しい映画
みたいなイメージがありますが
本作もそんなイメージ通りの
楽しめるエンターテイメントな作品だったと思います

でも、インドとパキスタンの国同士の深い溝や
宗教観の考えの違いなど
重たい題材も描かれている

楽しめるエンターテイメントでありながら
深いメッセージの込められた作品でもありました

 

ストーリーに関しては
わかりやすくてものすごいベタな内容です

迷子の少女を親元へ送り届ける
というだけの話
特に意表をついた展開も無いですし
ラストも想像通りのハッピーエンド

ストーリーだけを取ってみると
何の変哲もないロードムービーです


しかし、そのストーリーを彩っている要素が
ちょっと異質だったりします

インド映画特有の唐突な歌とダンスだったり
あまりにも回りくどい演出や
必要あるのか?って余計な展開が多かったり

言ってしまえば
かなりテンポが悪い映画なんですよね
上映時間が159分ですから
シンプルなストーリーの割には
かなり長い映画だと思います


例えば、インド映画特有のミュージカルシーン
キレキレのダンスにポップな音楽で
とても楽しめるシーンですが
かなり長いです

ディズニーなどの普通のミュージカルと
比べると明らかに長いですよ
倍ぐらいの長さはあります

曲に関しても同じ繰り返しになってますし
フル尺の歌を聴かせられてる感じですね


他にも、必要ないだろ
ってシーンがたくさんあったりします

主人公の生い立ちの説明も
いくらなんでも長すぎる気がするし
バジュランギが少女を助けに行くシーンも
なかなか長いですよね

もっと短くできるだろってところが
たくさんあります

だから、本題の少女を親元に帰す旅が始まるまでも
かなり時間がかかります
1時間くらいたってやっと旅が始まりますから
始まってからも、かなり回りくどい展開が多いですけど

 

で、僕個人的には
テンポが悪いのがあまり好きじゃない

こんな余計なことするなら
ちゃっちゃっと話を速く進めてくれとか
同じことを何回も繰り返すのはくどいから
観ているのが苦痛とか思ってしまいます
できるだけ簡潔にしてほしいんですよ


でも、この映画に関しては
そういう事を全く感じませんでした

むしろ、このテンポの悪さがこの映画の
魅力にもなっていると思います

 

なぜそう思えるのかと言うと

そもそも、この作品の物語自体が
遠回りをしながら進んで行く話だから
テンポの悪さが逆に物語にピッタリと
合致してるんじゃないでしょうか

ゴールに向かうためには無駄だと思えるような
言動や遠回りになるような道のり
でも、最終的にはそんな無駄があったからこそ
人の心を動かしゴールにたどり着けるような物語です


さらに、主人公バジュランギことパワン
彼の常人離れしたほどの要領の悪さが
このテンポの悪い作風にすごくフィットしてる

全く嘘がつけず、彼の信念はテコでも動かない
観てる側からすれば
もうちょっとでも頭を柔らかくすれば
全て丸く収まって上手くいくのに
とツコッミたくもなりますが
その頭の固さこそがバジュランギの魅力にも繋がっています

そんな、要領が悪く回りくどい性格の主人公が
織りなす物語だからこそ
無駄に思えるテンポの悪い演出、展開が
違和感なく入ってくる

無駄なようで実は全部に意味があるんじゃないのか
と思えてくるんですよね

 

そして、本作の1番の魅力は
キャラクターだと思います

さっきも言った主人公のバジュランギは
もちろんのこと
バジュランギからはムンニーと呼ばれている迷子の少女シャヒーダー
その他の登場人物も個性豊かで面白い


バジュランギとムンニーのやり取りとか
すごく可愛らしくて面白い

馬鹿正直で頭が固いバジュランギの
毎回お約束のような要領の悪い言動

それだけでもなかなか笑えて
面白いシーンなんですが
そこにムンニーの可愛らしい
リアクションがプラスされて
笑える上になんかほっこりして癒される

ムンニーがおでこを叩くリアクションがめっちゃ可愛いです

バジュランギはちょっとイライラするほどの
要領の悪さですが
人一倍に人の良さや優しさのある人間でもあって
全然憎めない
むしろ、その要領の悪さが可愛くて好きになる


そんな2人が旅を通して成長していく姿も
心を打たれるものがあります

最初は国のことに関してや宗教観のこと
それらに対してとても固い考えだったバジュランギが旅の中でいろんな経験や人々との出会いを経て
次第に頭が柔らかくなり
同時に心の寛容さも手に入れていきます

ムンニーもはじめはどこか暗くて寂しそうでしたが
旅を続けていく中でバジュランギに心を開いていき
とても元気で明るい表情に変化していく

重くて複雑な背景の中で描かれるドラマなんですが
2人と出会う人々との交流はとてもコミカルで
重さはあまり感じずに楽しめながらも
感動できる描かれ方をしています

 

本作は感動できて笑える面白い映画
というだけでなく

インドとパキスタンとの国の対立
ヒンドゥー教とイスラム教との宗教的な対立
というものが背景として描かれていて
そこからいろいろと考えさせられるものがあります

この映画では国や宗教の壁を乗り越えることが描かれているんですが

国、宗教の対立によって
旅する2人には様々な大きな壁が立ちふさがる
でも、そんな最悪な状況の中でも
人の優しさによって壁を乗り越えて行きます


結局、この映画のメッセージは単純で
優しさが世界を変えるすべだということなんです

正直言って
この映画で描かれていることは
かなり理想化されている世界だと思う

人々は無条件で優しすぎるし
最終的には全て上手くいってしまう
ありえないような綺麗ごとの物語


でも
こんな物語ありえない 実現するわけない
と吐き捨てちゃダメだと思う

こんな世界を目指さなきゃいけないんですよ
でないと争いなんて無くならないわけで

この映画がインドで作られたということには
大きな意味があると思います


それに、これはどこかの国の話ではなくて
日本でも当てはまることだと思う

日本は紛争、戦争は無いですけども
決して外交が上手くいってるわけじゃない
特に韓国とか

国同士の関係だけでなく
人間同士の個人の関係も同じだと思います

お互いに憎しみ合っていては
わかり合えるわけなんてことはないんです


もし、どちらか片方でも
優しさをもって相手を受け入れる事ができれば
それだけでも全然違うはず

先に折れた方が負け
みたいな変なプライドを持ち続けている間は
争いが無くなることは無いでしょうね


この映画を観ると
そんな堅い考えをちょっとでも柔らかくしろよ
と言われているような感覚です

それを感じ取れれば
少しでも優しい気持ちになれると思います

 


この映画を観ることで
平和とは何か?
ということを考えさせられました

そして、人の優しさ暖かさを
感じることのできる作品でもあります

笑って感動できる面白いエンターテイメント
でありながら
深いメッセージも感じ取れる
とてもいい映画だと思います

 


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