何もかもが滑稽

何もかもが滑稽

映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」感想 歴史を超えた復讐が痛快

f:id:kiitsu01:20190904031227p:plain

どうもきいつです

タランティーノの9作目となる監督作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」観ました

落ち目の俳優とそのスタントマンの2人の
友情と絆を軸に
1969年ハリウッド黄金時代の光と闇を描いた作品
ハリウッド女優シャロン・テートが
カルト集団マンソンファミリーに殺害された
実際の事件を背景に作られたフィクションです

監督は「パルプ・フィクション」「キル・ビル」
などのクエンティン・タランティーノ
主演はレオナルド・ディカプリオと
ブラッド・ピッドの2人が務めています

 

あらすじ
人気が落ちてきたテレビ俳優リック・ダルトンは
映画俳優への転身に苦心していた
そんなリックをサポートするのは
彼に雇われたスタントマンで親友でもある
クリフ・ブースだった
そんなある日、映画監督ロマン・ポランスキーと
その妻シャロン・テートがリックの家の隣に
引っ越してくる

 

感想
かなりクセの強い作品でした
タランティーノ作品をあまり知らなかったり
シャロン・テート殺害事件を知らなかったら
内容についていくだけで精一杯
でも、込められた情熱はとても伝わってくる

 

実は僕
タランティーノ作品を観るのは本作が初めて

今まで何度か観ようとしたことはあったんですが
「パルプ・フィクション」はレンタルDVDが
序盤で止まってしまう不具合で観れずじまい
「キル・ビル」はレンタルしたけど
時間が無く観ないまま返却

毎回タランティーノ映画を観ようとすると
なぜか観れない

で、本作が公開されることを知って
どうせ観たことがないのなら
新作を映画館で観ようと思い
本作までタランティーノ映画は我慢していました


そして、初タランティーノの感想は
クセが強い

なんとなく話では聞いていましたが
かなり独特な作風ですね

物語にはいまいち掴み所が無いし
会話がメインの作風で
なかなか頭が追いついていかない

しかも、その会話の内容が
無駄話がダラダラ続く感じで
すごくフワッとしてるんですよね

でも、それが無意味な事なのかと言うと
そうでもなくて…


さらに、シャロン・テート殺害事件という
実際に起きた事件をベースに作られた作品で
最低限その事件を知っていないと
作品の本質が見えてこない

ただ、本作は完全なフィクション作品でもあって
リアルな現実を描いている作品じゃない


もう、なんだかよくわからなくなってくる
何なんですか?この映画

正直言って
1回観るだけじゃ
ついていくのがやっとで
全然消化しきれませんでした

 

なので、もう1度観てきました

1回目の前にも事件については
軽く調べていたんですが
事件についてももう1度復習して

せっかくならとIMAX上映で観ました

 

2回目を観ると
見え方が変わってきましたね

全体の流れや作風がわかっていると
前には気付けなかった事にも気付けました
面白さも感じれたし
監督がやりたかったことも
なんとなく伝わってくる

ラストもしっくりくりきて
感動できました

 

この作品は
基本的に明確なストーリーが無く
かなり掴み所が無い内容です

なので、あまり意味がわからなくて
一見つまらないようにも思いますが

なぜか引き込まれる魅力がある

キャラクター、映像、音楽
その見せ方がどれもセンスを感じる
しかも、なんかすごく自然に感じるんですよ


登場人物の見せ方なんかも
すごく自然で
でも、ちゃんと伝わってきます

リックとクリフの会話は
本当にただの無駄話
不毛な会話の連続なんですが

その会話だけで2人の関係性や
それぞれの人となりが完全に把握できます

しかも、最初の数分の会話だけで
彼らが親友であること
それぞれのキャラクター性が
しっかりと伝わってくるんです

しょうもなくてコミカルな会話だけで
こんなにも人間味が感じれる


それに、会話の内容も
全然説明的ではなく
普通の日常会話のようなやり取りで
すごく自然に感じました

喜怒哀楽もとても自然
普通に泣いたり、普通に怒ったり

とにかく、会話のシーンが生々しくて
すごくリアル感があります
みんな生き生きしているんですよね


これは、俳優の力もあるのだと思いますが

この独特なセリフ回しなんかを見ていると
監督が会話シーンにとてもこだわりをもって
作っている映画なんだと感じれます

 

そんな自然な会話シーンから生まれてくる
キャラクターには魅力も生まれています

この映画を観れば
リックとクリフの2人が大好きになってると思う
ずっとこの2人を見ていたいです

2人とも人間臭くて
完璧な人間には程遠いんですが
全然憎めない愛すべきキャラクターに
仕上がってる

ネガティブ思考でガラスのハートのリックと
楽観的で図太い性格のクリフ
この正反対の2人が織りなす場面は
いちいち面白いですね

単体でも面白いし
2人揃っても面白い

特にリックの物語は
胸が熱くなるものがありました

落ち目の俳優の哀愁が漂っていて
でも、やるときはやる
爆発的なものも見せてくれる

リックの演技には感動させられました

 

その他のキャラもみんな存在感がありましたね

シャロン・テートはもちろん
可愛らしくて魅力的
事件のことを知っていると
より彼女について
いろいろ思いを巡らせてしまいます

事件の結末を知っていれば
彼女の姿がとても切なく映る

それ自体がこの作品の
大きな仕掛けでもあるんですが


他にも
ヒッピー集団、子役の女の子、犬のブランディ
みんな良いキャラしていて
存在感がとてもありました

ブルース・リーに関しては
扱いが酷いような気もしましたけどね
あれは批判されても仕方がない
個人的には面白かったんで全然ありですけど

 


そして、本作で1番大事なのが
シャロン・テート殺害事件

ハリウッドで実際に起きた殺人事件です

正直言うと
この事件のことを知らなければ
本作で監督がやりたかったことが
あまり見えてこないんじゃないかと思う

それくらい本作では重要な要素です


この事件の内容を簡単に説明すると

チャールズ・マンソンの命令を受けた
カルト集団の信者たちに
子供を身篭ったシャロン・テートと
その友人たちが殺されてしまったという
残忍な事件

その理由も
シャロンたちが住む前に
その家に住んでいた住人を殺そうとしていたのが
前住人が引っ越していたために
シャロンたちが殺されてしまいます

逆恨みですらないような
全くもって理不尽な事件です


で、本作はその事件を知っている前提で
作られているので
映画内ではその事に関する説明は全く無い

なので、ある程度事件の概要を知ってから
観るのがいいと思います


この事件を知っていれば
本作のラストの意味も
見えてくるんじゃないでしょうか


ラストは本当にすごい終わり方
歴史を捻じ曲げてしまいます

このラストについて
個人的に考えてみると

変えることのできない理不尽な過去に対しての
復讐なんじゃないかと思う

過去は変える事はできないけど
創作物の中なら
その鬱憤を晴らせるんじゃないですかね


この事件を知っているなら
本作のラストは痛快に思えるはず

リックとクリフという
本作オリジナルの架空の人物が
シャロンを救ってくれてとても安心できる


タランティーノからすれば
この事件が無ければ
今の映画界がちょっと違っていたんじゃないのか
という気持ちも込められてるのかもしれない


なので、ここでのとても残虐なシーン
これにも爽快感が生まれてる

目をつむりたくなるほどの
なかなかに残虐な場面ではありますが
ここまでしなきゃ鬱憤が晴らせない

ここまでやるからこそ気持ちが晴れるんですよ

まあ、笑わそうとしてる見せ方とかも
してたりするんですが

ここはちょっと笑っちゃいます


この映画はこのラストのための映画
ここが感動できるポイントでもありました

 


初タランティーノ映画
すごく見応えがありました

タランティーノが人気があってすごい監督
というのが本作を観るだけで伝わりました

普通じゃない変な監督ですね
本当に面白い

他の作品も観なくちゃいけないです

 


キル・ビル Vol.1 & 2 ツインパック [DVD]