何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「蜜蜂と遠雷」感想 天才にしかわからない世界 自分にはわからなかった…

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どうもきいつです

ピアノの天才たちを描いた映画「蜜蜂と遠雷」観ました

直木賞と本屋大賞をダブル受賞した
恩田陸の同名小説を実写映画化した作品
ピアノコンクールに参加する4人のピアニストを
中心に物語が展開していきます

監督は「愚行録」などの石川慶
主演の松岡茉優や松坂桃李、森崎ウィンなど
有名俳優が共演しています

 

あらすじ
世界から注目される芳ヶ江国際ピアノコンクール
に参加する若きピアニストたち
長年ピアノから遠ざかっていた亜夜
年齢制限がギリギリの明石
優勝候補のマサル
謎めいた天才的な実力の塵
それぞれの思いを胸に挑戦する4人
熱い戦いの中で互いに影響し合い成長していく

 

感想
音楽がわからなくても魅了される説得力がある
それぞれの個性が音楽で表されていて
それが素人でも感じ取れる表現なのは
すごいと思った
ただ、自分は天才ではないので
感情移入はあまりできなかったかも…

 

予告を見た時点で
とても面白そうで興味があった作品
原作の小説は読んだことが無くて
全く無知の状態で観てきました

ピアノのことは全くわからないほどの自分でも
楽しんで観ることができました

ピアノを弾いているシーンは
なんかわからんけどすごい
というのは伝わってくる

それに、すごい能力を持った人たちが
互いにぶつかり合う天下一武闘会
みたいな話はすごく熱いし引き込まれます
個人的には大好きな設定

映画的にも完成度はすごく高かったと思いますし
とてもいい映画だったと思います

 

まず、物語がとてもスムーズでわかりやすかった

説明的なシーンがあまり無いのに
いろんな情報が伝わってくる映画だと思います

冒頭のシーンは
全然説明的じゃないのにキャラクター紹介が
しっかりとされています

亜夜の背中を追うアングルから
他のキャラに視点が映っていき
そのシーンだけでそのキャラの性格や背景が
なんとなくだけどわかる
この人はこういう人なんだろうな
というのがわかるんですよね

さり気なく設定や人間の関係性などを
見せるのがとても上手いと思いました


そんなのがリアルさにも繋がっていて
ちょっとしたドキュメンタリーを
観ているような気にもなってきます

役者の演技もナチュラルでしたし
リアルな世界観が生まれていたと思う

 

そして、音楽の表現が素晴らしいですね

僕はピアノなんて全く聴かないような
教養の無い人間なんですが
そんな僕でもなんか伝わってくる音楽シーンの
見せ方はとても良かったです

たぶんピアノの音楽を聴かせられるだけなら
さっぱりだったと思います

でも、この作品では
それぞれのキャラクターを理解させた上で
そのキャラクターに見合った演奏シーンを演出し
観ている側にもしっかりと伝わってくるように
作られていました

それぞれの人物が奏でる音楽も
その人の音楽だとわかるほど
それぞれの個性を音楽で表せています

それもすごくわかりやすくて
素人でも違いがわかる

人間ドラマと音楽が相乗効果で
互いにより面白くなっていたと思います

 

音楽素人にもわかりやすく
映画としても面白かったんですが

天才の描き方が
ちょっと中途半端だったように思う


本作は天才を描いた作品でもあると思います
天才の苦悩を描いている

しかし、正直言うと
天才の苦悩は天才にしかわからない

だから、僕みたいな
凡人は感情移入できないんですよ


ただ、天才の苦悩を描くのは
全然かまわないんですよ
見る側が天才でなくても
心に刺さるものがあれば納得できます

この映画ではその描き方が少し中途半端で
掴み所が無くなってしまっていました

絶対的な天才を描きたいのか
凡人でも理解できる天才の一面を描きたいのか
どっちつかずのような気もする


この映画のメインは
主人公の亜夜という1度消えてしまった天才が
復活するまでの話

その中で彼女の心の葛藤が描かれるんですが
やっぱり共感はできない

共感できないにしても
なぜ彼女がそんなに思い悩んでいるのか
彼女の心が折れてしまったのはなぜなのか
そんな部分もいまいち伝わってきません


亜夜の幼馴染のマサルや
仕事と家庭を持ちながらピアノを続ける明石
この2人は凡人に近い側のキャラです
2人とも努力の人という感じ

人物の背景もしっかりと描かれていて
とても共感できます

だから観ている側からすれば
この2人に感情移入して
いつのまにか応援しているのもこの2人

でも物語の中心は亜夜なので
そこに少しずれを感じてしまいます


これは天才を表現するためなのか
亜夜の人物描写がとても抽象的なんですよね

ただでさえ掴み所の無い天才という存在に
そのキャラクターの背景までも抽象的に
なってしまうと
完全に自分の理解の外側になってしまうんです

亜夜を通してこの作品は何を伝えたいのかも
あまりわからないんですよ

正直、あの馬が走っている場面とか
どういう意図なのか全然わからなかった

最終的に亜夜が立ち直って演奏大成功で
幕を閉じますが
ここは完全に置いてけぼりで
立ち直ったきかっけもふわっとわかるくらい
1番盛り上がるシーンだけど
あまり気持ちは上がらなかった

あまりカタルシスを感じれませんでした

 

で、凡人に理解できないほどの天才が
説得力のあるように描かれているのかというと
そこもちょっと微妙

この映画は亜夜と塵
2人の天才がどれだけすごいか
という内容でもありますが

天才の描写にあまり説得力がありません

かつて天才少女と呼ばれていた亜夜
ギフトと呼ばれ
周りにも影響を与えるような天才の塵

言葉ではすごい天才なのはわかるけど
実際何がすごいのか
というものがあまり見えてこないんですよ

周りの人が褒めたたえたり
天才っぽい雰囲気は醸し出したりはしてますけど

彼女らの天才たる所以は何なのか?
という部分に掘り下げがない
天才的なエピソードなんかもありませんし

とにかくこの2人は天才です
と強引に推し進めているようにも思えた


それに、塵は人物描写が
あまりにも薄すぎますね

かなりの重要人物で
もう1人の主人公といっても過言ではないのに

あまりにも存在がミステリアス過ぎる
何を考えているのかも掴みにくい
もう少し彼をフィーチャーしても良かったと
思いますよ

 

これは想像ですけども
原作はもっといろんな説明が
あったんではないでしょうか?
人物描写も深く掘り下げていたのかもしれない

それを映画化するにあたって
いろいろはしょって今の形になったんだと思う

それが成功したか失敗なのかはわかりませんが
もう少し天才に入り込める作りにしても
良かったんじゃないかと思います

 

ちょっと否定的な事を並べてしまいましたが
普通に面白い映画だったと思います
音楽の楽しさ、素晴らしさが
すごく伝わってくる内容です

個人的には亜夜よりも明石に
すごく感情移入していました
人物像がもとても好きですし
松坂桃李も好きなので
明石はすごく好きなキャラ

邦画としてはレベルが高いと思うし
良い映画でした

 


蜜蜂と遠雷