何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「WALKING MAN」感想 なめんななめんななめんな!!って言いたくなる

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どうもきいつです


ドラマ映画「WALKING MAN」観ました

人前で話すことが苦手な青年が
ラップと出会い底辺から抜け出すために
奮闘する姿を描いた青春映画

「スカイハイ」などで知られる高橋ツトムが
企画、プロデュースを務め
ラッパーのANARCHYが本作で
初の監督を務めています
主演を演じるのは野村周平

 

あらすじ
川崎の工業地帯で生活している
貧しい母子家庭で育った佐巻アトムは
不用品回収のアルバイトで生計を立てていた
ある日、母が事故で重傷を負うことで
さらに生活が苦しくなるアトムたち
そんな過酷な日々を過ごすアトムは
ラップと出会い運命が動き出す

 

感想
底辺から抜け出そうとする
主人公の姿がとても心に刺さる
自分に重なる部分もあり
共感も出来ました
ちょっとステレオタイプな
ストーリーではあったけど
面白く観れる作品でした

 

以前からとても注目していた作品
ラッパーのANARCHYがはじめて
監督を務めるということで
どんな作品が出来るのか興味津々でした


ラッパーが監督ということもあり
ラップの世界やラッパーの姿を描いた作品だと
はじめは思っていたんですが

実際に観てみると
思ったほどラップのシーンは多くなく
ラッパーの姿と言うよりも
1人の人間の姿を描いた作品

ラップに出会ったことをきっかけに
人生を変えようと奮闘する男の物語でした

この映画はラップ映画ではなく
ヒップホップ映画だと思う


ラップとヒップホップって何が違うんだよ
って思う人もいると思うけど

ラップは言葉を並べて韻を踏んだりして
それを表現する方法

ヒップホップはそれらを含めた文化そのもの
みたいなことです

で、個人の感覚的には
ヒップホップは人の生き様や根本にある信念の
現れのようなものにも思っているので

この映画は主人公の生き様や思いを形にした
ヒップホップ映画だと感じました

 

そして、映画の内容の話をすると

ラッパーとして成功してカリスマ的な人が
作った映画なんですけど
意外と堅実に作られた映画でしたね

何かで成功してある程度の地位や名誉を
手に入れた人が作った映画って
すごく我が出てる作品が多いと思うんですよ

特にお笑い芸人が監督した映画とかは
俺のセンスすごいだろ!!
みたいなのが全面に出ていたりする

でも、この映画の場合は
そんな押し付けがましいものは無く
かなり普通の映画

悪い言い方をすると
普通すぎて面白味があまりない

ただ、普通に感動できるし普通に面白く観れる
ちゃんと心に刺さるもののある普通に良い映画

初監督作品で普通に良い映画を撮れるのは
すごいと思いますよ


そして、そんな中にも
ラッパーのANARCHYだからこそ描けるものも
しっかりと描かれている

それは、貧困に苦しみながらも
自分の人生を変えようと必死にもがく
主人公の姿や
ラップ、ヒップホップの世界の表現

そんなのにとてもリアルさを感じれる


特に主人公のアトムの様々な感情は
強く伝わってきました

自分の生まれ持った性質、家庭環境により
不幸に飲まれてしまっている現状
それを他人からは自己責任と吐き捨てられ
馬鹿にされ続ける人生

抜け出したくても抜け出せない
言いたくてもなにも言えないやるせなさ

心の奥底で煮えたぎっている強い思い

そんなアトムの姿が
自分にも重なったりして
とても感情移入してしまっていました


僕自身はここまで不幸で過酷な人生を
歩んできたわけではないですけど

それでも理不尽なことには振り回され
他人に馬鹿にされたり
自分の思い通りの人生なんて歩めていない

自分の気持ちや言いたいことを
圧し殺して生きていたりもする

そんな自分を
アトムに投影して観ていたかもしれない


だからこそ、アトムが変わっていく姿には
心打たれるし勇気付けられます

 

この映画はサクセスストーリーではなくて
スタート地点に立つまでの物語だと思う

成功することよりも
戦うこと
立ち上がることの
意味を描いている作品

「ロッキー」や「ザ・グレイ 凍える太陽」
なんかと同じだと思います

どんなに最悪の状況、どん底の人生でも
それに飲まれて諦めるのではなく
立ち上がって抗うことの重要さ

例え戦って負けてしまったとしても
立ち上がったことにこそ
生きる意味があるんじゃないのか

ということが伝わってくる作品です


この映画では必要以上に
救いのない世界が描かれている

助けてくれる人なんて1人もいない
優しい人間は登場するけど
その人が助けてくれるかというと
全然そうじゃない

だからこそ、そんな地獄みたいな世界から
這い出すには
結局、自分自身が立ち上がるしかない
というのがより強く感じられます

やっていることは正解かどうかは
わからないけど
どこかで勝負にでなくちゃダメなんですよね


アトムがラップにハマったのは
一見、唐突にも思えるけど
なめんななめんななめんな…
という言葉がアトムの気持ちとリンクしたから
あそこまでハマったんだと思う

後のアトムの
なめんななめんななめんな…
という言葉にはとても強い意思を感じるし
世界をひっくり返してやろうって思いが
ストレートに伝わってきました


演じている野村周平がすごく良かったのも
ありますし
アトムという人物がすごくリアルで
彼の姿がとても心に刺さる

自分自身も立ち上がらなければ
という思いにもさせられました

 

個人的にはすごく好きな作品
とても勇気付けられる映画でした


でも、やっぱり粗さを感じる映画でも
ありますね

全体的にぶつ切り感のある映画だったと思います

感情移入する前に
次の展開へ進んでいったり
淡々とアトムが成長する姿も
ちょっと過程が抜けているようにも見えてしまう

メリハリがあまり無かったようにも思えます

アトムがラップにハマる瞬間
ラップで勝負すると決意する瞬間
そんなターニングポイントの場面でも
他の場面と同じようにあっさりしてる

それだけでもアトムの気持ちは伝わりますが
そんな重要なシーンではもう少し強く見せても
いいんじゃないかと思いました


アトムがラッパーになりたい
ラッパーで成功したいって部分も
明確な目的が存在しない

ラップで成功した金持ちを目の当たりにするとか
めっちゃカッコいいラッパーに出会うとか
そういうのが無いから

ラッパーになって貧困から抜け出す
って動機にいまいち説得力が無いよな
とは思ってしまいます

ちょっとした気まぐれにも
見えてしまいますし…


あと、主人公のアトムの描きかたには
リアルさを感じれるんですけど

その他がちょっとテンプレ過ぎるようにも
思います

エピソードにしろ登場人物にしろ
なんかありがちな話になってしまってる

そこがあまりにも作り物のように
見えてしまうんですよね

ANARCHY自信が実際にハードな人生を
送ってきている訳ですし
もっとリアルな描きかたができたようにも思う

これは脚本の問題もあるんでしょうが


他にも雰囲気だけの映像の見せ方も
少し気になりました

漫画のコマ割りみたいに
画面を分割した見せ方
これにあまり意味が感じれなかったし
こんなことするなら
普通に見せたほうが良いように思った

この見せ方に重要な意味が込められているなら
全然いいと思うんですが
いまいちなにも伝わってこなかったので…

 

最後に
野村周平のラップはとても良かったです

はじめのたどたどしいラップも
リアル感がありましたし

2回目のラップバトルでは
上手くはないけど気持ちのこもったラップを
表現できていました

ラストのラップは完全にANARCHYでしたしね

これはやっぱり
監督がラッパーだというのと
野村周平の実力のすごさで
生まれているものだと思います

ラップの場面はとてもリアルに描かれていました

これだけでもなかなか見応えがあったと
思いますね

 

粗さのある映画ではありましたが
これが初監督作品ですし
普通に面白い映画を作れているのは
すごいことだと思います

普通の面白さすらない映画も
たくさんありますしね…

個人的にはとても心に刺さりましたし
とてもいい映画でした

ANARCHY監督の次の作品があるのなら
それにも期待ですね

 


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