何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「スウィング・キッズ」感想 タップダンス最高 音楽最高 と思ってたら… こんなん精神不安定になるわ

 

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どうもきいつです


韓国映画「スウィング・キッズ」観ました

朝鮮戦争中の巨済島捕虜収容所を舞台に
戦争捕虜たちで結成されたダンスチームが
タップダンスを通して結束していく姿を描いた
ドラマ映画です
ビートルズやデビッド・ボウイ、スウィングジャズのベニー・グッドマンの「シング・シング・シング」など数々の名曲が物語を彩ります

監督は「サニー 永遠の仲間たち」などのカン・ヒョンチョル
K-POPグループ「EXO」のD.O.が主演を務めています

 

あらすじ
朝鮮戦争中の1951年
巨済島捕虜収容所に新しく赴任してきた所長は
対外的イメージアップのため戦争捕虜で
ダンスチームを結成を計画する
前職はブロードウェイタップダンサーの黒人下士官ジャクソンのもとに
朝鮮人民軍の問題児ロ・ギスをはじめ個性的なメンバーが集められ
そんな寄せ集めのダンスチームにある公演の話が舞い込んだ

 

感想
戦争映画なのにポップでコミカルな作風
タップダンスシーンは圧巻
このダンスシーンだけでもこの映画は
観る価値がある
すごく楽しい映画
…と思っていたら
すごく重たい映画だった…

 

「サニー 永遠の仲間たち」がとても好きで
同監督の作品ということでとても楽しみにしていた映画
予告の時点でもすごく面白そうでかなり期待していました

その期待通りとても楽しんで観ることのできる映画でした
と言うか、楽しめるだけではありませんでしたが…

楽しい映画である一方
やはり戦争を題材にしているだけあって
超重苦しくて心がズシンと沈み込んでしまう映画でもあった

ちょっとどういう気持ちで観て良いのかわからない
観終えたときには精神が不安定になってしまいました

 

まず、前半部分はと言うと
朝鮮戦争中という重い舞台背景ではあるんですが
それを感じさせないくらい
コミカルで明るくて楽しい雰囲気の映画になっています

簡単に言うと
個性豊かでバラバラな5人がタップダンスを通じて
徐々に団結していき成長する姿を
コミカルで楽しく描いた青春物語って感じ

こんなバラバラでまとまりの無いチームが
いろいろと困難を乗り越えて
お互いに気持ちが繋がっていくタイプの物語は
個人的にもすごく大好物

こういうのってすごく熱い気持ちにさせられるしワクワクもさせられる
最終的に一致団結して何かを成し遂げたときには
爆発的なカタルシスも生み出されるし感動もできるわけです


そして、こんなタイプの作品で重要なのは
登場人物たちがいかに魅力的に描かれているかという部分なんですけど
本作はとてもみんな魅力的で
このチームがすごく好きになる

主人公は朝鮮人民軍の一員で収容所で1番のトラベルメーカのロ・ギス
チームを作りまとめるリーダー的な存在の元ブロードウェイタップダンサーの黒人下士官ジャクソン
4ヵ国語を使いこなす通訳者のヤン・パンネ
行方不明の妻を探す民間人捕虜のカン・ビョンサム
ダンスがすごく上手い栄養失調の中国人捕虜シャオパン

みんな1クセも2クセもある個性的な登場人物で
みんな見ている方向も別々でバラバラ

そんな奴らの団結していく姿を見せられるだけでこの映画に引き込まれるし
このメンバーの化学反応を見ていると
笑えるし楽しい気持ちにもさせられる

はじめはいがみ合っていたり
相手のことをバカにして認めることすらしていなかった
相容れないような人間たちが
タップダンスや音楽を通して
いつの間にか
人種や立場や争いなどを取っ払った本物の絆が生まれていくのには
平和へのメッセージを感じることもできます


でも、それを決して重かったり感動的に見せるのではなく
あくまでコミカルで楽しく
音楽やダンスの素晴らしさを伝えつつ表現している


なんと言っても
この映画はタップダンスシーンが素晴らしいですね
それだけでこの映画を観る価値があると思います

劇中で流れる選曲のセンスもすごく良いと思いますし
それに乗せて見せられるダンスシーンが圧巻

まず、主演を務めるD.O.のタップダンスがすごい迫力
映像の見せ方もありますけど
単純にタップダンスがすごく上手い

タップダンスのシーンになると
画面の中に引き込まれていくような魅力を感じます

タップダンス以外にも
音楽が流れている場面は基本的に楽しくて
常にノリノリな気分で映画を観てしまっています

 

前半部分は超楽しい映画なんですよ

でも、やっぱり韓国映画ですね
後半になるとくそ重苦しい…

これでもかと言うくらい現実を突きつけてくるんですよ
しんどくなってくるくらい

特にこの映画の結末なんて…

楽しませて楽しませて
最後にはどん底に突き落とす
これぞ韓国映画

もう精神が不安定になりますよ…
気持ちが追いつかない
まあ、それが最高とも言えますが


前半はあまりに楽しい映画の作りに
戦時中の話だということを忘れさせられていたんですが
終盤に近づくにつれて
やっぱり戦争中の話なんだよな…
と現実が見えてくるわけです

確かに現実世界ではいまだに韓国と北朝鮮の問題は
解決しているわけでもなく
この時代にも悲惨な出来事が散々あったわけで
そりゃそうなんですよ

ハッピーエンドなんてありえない

それくらい戦争というものは無意味で不毛
この映画の後半の展開からはそれがひしひしと伝わってきます


前半が夢に溢れるとても楽しい映画だっただけに
この後半の落差を見せつけられると
戦争やイデオロギーがいかにクソなのかを
ストレートに感じることができる

個人がどんなに夢や希望や平和な世界を思い描いていても
結局、戦争や国のお偉いさんの思想
巨大な国の思惑など
そんなものに簡単に踏みにじられてしまう

どんなに音楽やダンスの素晴らしさで
それを訴えたところで
全くの無力だと思い知らされる

ロ・ギスや他のメンバーたちの心が成長して
戦争中の不毛な価値観から解き放たれたとしても
そんなものは大きな時代のうねりに簡単に飲み込まれてしまう

ただタップダンスを踊りたいだけなのに
周りの人間はそれを許さない
それを振り切って無理やりにでも前に進んだとしても
最終的には押さえつけられてしまう

戦争やイデオロギーがいかに無意味なものか
この映画を観るとそう思わされました


この映画の終盤の展開はあまりに衝撃だし
賛否が分かれそうですね

はじめが楽しい映画だっただけに
この結末は受け入れられない人も多いと思う

鬱映画と言っても間違いないような展開です

ただ、これがハッピーエンドになってしまったら
メッセージも薄れてしまうし
現実味も無いですからね

終盤の展開は正解なのかもしれません


ただ、エピローグ的な最後のダンスシーンは
ちょっと抽象的すぎるような気もします

最後のダンスシーン自体は素晴らしくて迫力もあるし
映画的には引き締まった終わりに見えるんですけど
いまいち何を言いたいのかが伝わってきませんでした

映画の最後だからこそ
この物語全体を通して主人公たちが見いだした答えは
一体どういうものだったのかを見せてほしかった

現実的な問題提起はされるけど
そこから先の希望や人間はどうあるべきか
みたいな部分は感じることができなかったですね

同じ韓国映画の「パラサイト 半地下の家族」を観たときにも思いましたが
問題提起は十分伝わりますが
そこから先の作り手の思想みたいなものはあまり感じられず
作品を通して観客に何を訴えたいのかが描かれていないように思います

まあ、そこは自分で考えろ
ということなのかもしれませんけど
せっかくならこの映画を通しての1つの答えくらいは
見せてほしい気持ちはありました

 

とは言え
この映画は十分観る価値のある映画だと思います
単純にダンスシーンがスゲーですし
エンターテイメントとしてもすごく楽しめる内容

音楽やダンスの素晴らしさ
戦争やイデオロギーの不毛さ
そんなのが詰め込まれたとてもいい映画です

感情が揺さぶられすぎて
観終えたときにはすごく疲れる

 


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