どうもきいつです
ドラマ映画「Hukushima 50」観ました
2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所で起きた事故で
未曽有の事態を防ごうと現場で奮闘した人々の姿を描いたヒューマンドラマ
多くの関係者への取材を基に書かれた
門田隆将のノンフィクション「死の淵を観た男 吉田昌郎と福島第一原発」を原作に
実写映画化された作品です
「沈まぬ太陽」などの大作を手掛けてきた若松節郎が監督を務め
佐藤浩市、渡辺謙ら豪華俳優陣が出演しています
あらすじ
2011年3月11日、大地震が発生し
それに伴う巨大な津波が福島第一原子力発電所を襲った
善電源が喪失し原子炉の冷却装置が動かず
このままではメルトダウンの危機が迫る中
現場に残る作業員たちが
最悪の事態を防ぐために奮闘する
感想
エンターテイメント的に災害映画として
面白い出来の映画だったと思う
現場で必死に戦う人々の姿には
熱い思いにさせられました
だからこそ、リアリティティが損なわれていると思う
事実を基に…と謳っているぶん
この映画を鵜呑みにしてしまいそうになる
この問題はまだ終わってないよ
あれから9年経ちましたが
いまだに日本人の心にトラウマを刻み込んでいる
あの東日本大震災を描いた映画と言うことで
この映画は、日本人として観に行かなければならないんじゃないか
というちょっとした義務感も感じつつ
本作を観てきました
観る前から
いろんな意味で面倒くさそうな映画だな
って印象があって
いろいろ不安も感じていたんですけど
実際に観てみて
やっぱり思っていたことが的中していた部分もありました
いろいろ言いたいこともある
でも、普通に面白い映画でもあったので
素直にハラハラさせられましたし
感動もした
その点ではそんなに悪い映画ではありません
エンターテイメント的な面白さは十分にある
災害映画として出来の良い作品だったと思います
全体的にわかりやすい作りになっています
原発事故を防ぐために
現場の人たちが必死に奮闘する
そんな中で様々な障害が彼らたちに降りかかる
極限の状態でも
家族のため、周辺の町のため、日本のために
無理かもしれないけど
ひたすら最後まで戦い続ける現場の人たちが
戦う姿をヒーロー的に描いている作品です
そんな作風なので
現場で戦う人たちの姿を見て
胸を熱くさせられますし
人々の絆や友情に最後には感動させられる
ギリギリの状況の中で様々な障害に塞がれていく展開に
ハラハラドキドキもさせられます
映像的にも
巨大津波のシーンは迫力がありますし
セットもかなり頑張っていて
映像からも絶望的な状況が伝わってくる
地震や津波による危機的状況は
映像を通して実感できました
所々に専門用語が飛び交って
会話の内容とかは若干理解しがたかったりもしますが
現場の人たちが何をすべきか
目的は何なのか
という部分は明確に提示されるから
よくわからないなりにも物語にはついていけます
それに、重要な部分は
しっかりと解説するようなシーンが入っていたりもするので
親切な作りでわかりやすい
とにかく、それなりに面白い映画なんです
ちゃんとエンターテイメントにしようと
頑張っている作品だったと思います
この映画に心を打たれ
感動する人はたくさんいると思う
ただ、僕個人の感想としては
エンターテイメント性なんていらなかった
実際に起きた大災害による大事故だからこそ
面白さより事実を伝えることのほうが大事だと思うわけです
本作はエンタメなんてなげうって
リアリティ重視のドキュメンタリーのような作風に
するべきだったんじゃないかと思う
実際、現場では何が起こっていたのか
どんな問題が生じていたのか
そんな状況をリアルに見たかった
本作でもそんな部分は描かれていますけども
面白くするために脚色されたり誇張されているのは明らかで
素人が観ても明確にわかる
泣かせようと感動を誘うシーンや音楽
迫力重視の津波シーン
わかりやすく善と悪に分かれた構図
それらがリアリティを損なわせているし
思想の偏りも感じてしまう
特に
現場の人間たちはヒーロー
現場のこともわからず口だけの総理、東電本店は悪
という極端な描き方
これはさすがに引っかかる
総理大臣の描き方なんて
あまりにも傲慢で馬鹿に見せ過ぎですよね
これは悪意に満ちている
確かにそんな一面もあったかもしれないですよ
でも、それだけじゃないでしょ
この映画での総理大臣は
ただの邪魔者で馬鹿で滑稽な悪者にしか見えない
逆に現場の人たちはあまりにもクリーンすぎる気もします
家族のため、日本のために命をかけてくれた人たちですから
そりゃ聖人扱いしたくなりますが
その中ではいろんな問題も起きるだろうし
こんな単純な美談ですませていいのかな
と少し疑問に思う
エンタメ的にはわかりやすくヒーローがいて
わかりやすい悪がいれば
わかりやすく面白い映画にはなりますけども
この映画に関しては
そんな事よりも大切なことがあると思うし
単純に善悪を分けてしまうような描き方は
ちょっと違うように思います
本作の狙いとしては
無能な政治家であったり
現場を知らず無理難題を押し付ける企業の上層だったり
そんなのに対する警鐘の意味合いもあるのかもしれない
ただ、この映画では
そこよりも先にやらなきゃならないことが
あったんじゃないかと思うんですよね
それはやっぱり現実を伝えることです
あの大惨事が風化しないためにも
面白いエンタメなんかより
実際に何が起きたかを伝えるリアリティが
必要だったと思う
そう考えると
本作はリアリティを損なう演出がとても多い
過剰にいい話にしようとしすぎている節があります
例えば家族の描写とか
父と娘の関係性とかそんなに掘り下げる必要がないように思うし
家族の再会とかも必要なのかなって気がする
映画的にはそのほうが感動的だけど
やっぱり重要なのはそこじゃないと思うし
取って付けたような家族愛が嘘っぽくも見えてしまう
他にも
アメリカ大統領が登場するシーンはすごくチープ
アメリカ軍もすごくチープ
全部嘘っぽく見えてしまう
世界的にもこの災害が注目されている
ということの表現かもしれないけど
アメリカ人が登場するシーンは全部無駄にしか思えなかった
こんなシーンが無くても全然成り立つし
世界のニュース映像の場面とか
チープすぎてすごく変でした
あと、回想シーンの多さも気になりました
人間ドラマを見せたかったんでしょうが
回想シーンが映る度に
これって作り物なんだなって気持ちにさせられる
アメリカ軍のおっさんの回想シーンが始まった時は
さすがに、これ正気か?
って思った
こんなの必要ないでしょ
あからさまな観客に対する解説シーンや
総理大臣が佐野史郎だとか
他にも結構リアリティを消してしまってる要素が
とても多い
総理大臣なんてキャラとして登場させる必要が
あったのかなぁ?
実際のニュース映像を使って
総理がこんなこと言ってますって表現で
あとは、その他の登場人物の反応で見せる
みたいな方法もあったと思うんですけど
僕が思うに
本作はわかりやすさや面白さを捨ててでも
リアルにどんなことが起きていたのかを
ドキュメンタリーのように伝えるほうが
よかったんじゃないかと思うんです
如何に現場の人たちが危機的状況の中で
動いていたのか
地震や津波による恐怖はどんなものなのか
例え意味がわからなくても
感動できなかったとしても
実際に起きたことをリアルに伝えることに
意味があるんじゃないかと思う
世の中には面白くなくても心に刺さる映画はたくさんあるわけで
この映画もそんな映画であるべきだったんじゃないかと思います
しかし、本作の場合は
目先の感動、面白さ、わかりやすさを重視して
どこか嘘っぽくなってしまっていた
このエンタメ的な美談を
事実を基にしているということだけで
鵜呑みにしてしまう人もたくさんいると思うし
そこはちょっと危険にも感じる
ラストの桜並木の美しいシーンで
綺麗なハッピーエンドのように終わって見えてしまうけど
この問題はまだ解決してない
まだ終わってないんですよ
そこは絶対に忘れちゃいけないことだと思います
普通のディザスタームービーなら楽しんで観れたかもしれないけど
題材が題材だけに
この描き方は違うんじゃないかな?
と疑問に感じた
日本映画の悪い部分が出ていたようにも思いました