何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「獣道」感想 いろいろ面白い要素はある でも、まとまりがなくて何を伝えたいのかよくわからない

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どうもきいつです


青春コメディー映画「獣道」観ました

大人に翻弄され社会の底辺をささまよう若者たちが
居場所を求めてもがく姿を描いたブラックコメディー
実話をベースに作られた2017年の作品
親の愛情を受けずに育った少女が
居場所を求めて転々としていく姿を
地方都市特有の人間関係の難しさを絡めながら
描かれていきます

監督は「下衆の愛」などの内田英治
伊藤沙莉と須賀健太が主演を務めています

 

あらすじ
宗教団体を渡り歩く母親によって入れられた宗教施設で7年間を過ごした愛衣は
教団が警察に摘発されたことにより保護され
中学校に通い始めるがそこに彼女の居場所はなかった
そんな愛衣は居場所を求めて様々な家庭を転々とする
一方、愛衣の理解者で彼女に思いを寄せる亮太は
半グレたちの世界に居場所を見つける

 

感想
キャラクターが魅力的で所々笑える箇所もあり
面白い要素はたくさんある
ただ、ストーリーがとっ散らかっていて
結局、何が言いたいのかよくわからない映画
あまり中身が無いようにも思えました
伊藤紗莉の体当たり演技はすごかった

 

前から存在は知っていたけど観ていなかった映画
アマゾンプライムビデオを物色していたら見つけたので
何となく観てみました

 

全体的にはコメディー要素が多めの作品で
笑えるところもあります
でも、なんか面白くなかったな
ってのが率直な感想

いまいち感情移入がてきなかったし
コメディー要素も最初のうちは多いけど
終わりに近づくにつれて少なくなっていき
終盤はすごくシリアス

笑いを誘ってるのかな?
って場面もあるけどわかりづらくて笑えなかったり

結局、この映画は何をしたかったのかな?
と疑問が残る作品でした

笑わしたいのか
恋愛を見せたいのか
メッセージを伝えたいのか

なんかよくわからない

どの描写も中途半端だし伝わってこない

短い時間に全部を見せようとしすぎたのか
掴み所がなくて
観ているとちょっとしんどくなってくる
ストレスが若干溜まりました

 

この映画の一番の問題は
どの登場人物にも感情移入ができないところだと思う

主人公の愛衣と亮太や
その他登場人物たちが何を考えているのか
全然わかりません

この作品は
ひたすら出来事だけを連ねてるだけなんですよ
こんなことがありましたよ
っていうのをただ見せられているだけ

その中で登場人物たちの心は全く描かれていない
なぜそんな行動をとるのか
そんなことを言うのか
そんな感情が生まれるのか

その辺の描写が全くなくて
エピソードの羅列が最初から最後まで続きます


特に酷いのが主人公の1人の亮太
こいつが本当によくわからない存在
ただのナレーターと言っても過言ではない

バックボーンは全く見せられず
彼が起こした行動だけを見せられる
何を考えての行動なのかも不明

不良グループの仲間になるけど
なぜなのかわからない

愛衣のことが好きで執着してるけど
その感情がすごく薄く感じる

この町から出たいと言うけども
この町の何が嫌なのかが伝わってこない

基本的に亮太が謎過ぎる
ミステリアスな立場のキャラなら全然いいけど
この映画が亮太視点の物語なので
ミステリアスさなんて邪魔でしかない

この映画が亮太の物語でもあるのに
全く感情移入できないのは問題ですよ

段々と何を見ているのかがわからなくなってくるんですよね
誰が中心の物語かもわからないし
何を伝えたいのかもわからない

亮太も自分の居場所を求めてさまよっている
らしいですけど
その辺がよくわかりません

そもそも何が不満なのかもわからない状態で
ストーリーだけが先走っていく
不満がわからないから求めているももわからない
だから、テーマが全然見えてこないんですよ

 

もう1人の主人公の愛衣に関しては
彼女の生い立ちは描かれます
どういう人生を歩んできたのかはわかる

ただ、これも結局は出来事だけをただ連ねてるだけ
その中でのドラマはとても薄く
愛衣が何を考え何を求めているのかは不明確

彼女の場合は母親から見捨てられ
自分の居場所を求めているというのはわかるけど

その居場所って
家族のことなのか
自分を必要としてくれる人がいる場所なのか
その辺が曖昧

そこを突き詰めていく物語なのかと思いきや
結局、最後まで曖昧で
その物語を通して何を伝えたかったのかは
いまいちわかりませんでした

愛衣が住む場所によってそこに染まっていく
という描写は面白かったんですが
それも愛衣が空っぽな人間ってだけで終わってしまうのは
何か納得できないものを感じてしまう

子供時代の環境によって彼女が空っぽな人間になってしまったのはわかるけど
芯の部分には絶対に自我があるわけで
そこを見せてほしかった

てか、そこを見せなければならないと思う
彼女が自我を見せることでドラマが生まれると思うんですが
愛衣の場合も最後まで何を考えているのがわからないまま終わってしまいます


それと、ストーリーの見せ方も悪いと思う

話がいろんなところに飛んで
何が中心なのかわからないんですよ

はじめは亮太のナレーションで始まり進んでいくので
亮太が中心なのかと思うんですが
そこから愛衣の回想が始まる

で、亮太と愛衣のラブストーリーが中心と思いきや
ヤンキーの抗争みたいなのが始まってしまい
しかも、その抗争の原因はわからないので
全然気持ちが入っていかない

途中から主人公以外のキャラの物語が中心になって
亮太や愛衣が放ったらかしになったりもするし

それで、いろんな要素を詰め込んでるけど
それぞれがすごく薄くて
全く心に響かない

ストーリーにまとまりがない
話があっちこっちに飛ぶから見てるのがしんどい
物語の筋が見えてこないからちょっとイライラしました

 

とは言え
魅力的な要素もたくさんある
だからこそもったいなくも思います

キャラクターも表面的にはすごく魅力があると
思うんですよ
役者がいい味出している

特にお笑い芸人のアントニーはめっちゃよかった
存在感があって演技も悪くないし
キャラクターにもハマってました

須賀健太や伊藤紗莉もすごくいい俳優だと思う
中身のないキャラクターを補えてるほどの
存在感は発揮してたと思いますよ

伊藤紗莉なんておっぱい出してましたからね
それだけでも観る価値はありますよ
かなりの体当たり演技でした


あと、笑いの部分もそんなに悪くない

シュールな笑いが多いですけど
ストレートに笑わされる描写もありました

特にヤンキーの滑稽さはとても笑えました
「○○高校なら○○さん知ってる?」
「知らないです」
のやり取りの繰り返しはすごく笑った

この映画はヤンキー関係のギャグ描写は基本笑えました
ヤンキーをいい感じにバカにしていてよかった

だから、終盤にシリアスになりすぎたのがもったいない
もっとコメディー要素を詰め込んでもよかったように思います

 

この映画はもっと人間ドラマを描くべきだったと思います
ただエピソードだけを連ねられても
そこからは何も伝わってきません
重要なのは面白いエピソードよりも
人間を描くことだと思う

そうすればメッセージが伝わってくるし
感動することもできるはず
そこを見せてほしかったですね

それと、エンドロールの
餓鬼レンジャーwith伊藤紗莉の主題歌はすごく好き

 


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