何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「アメリカン・サイコ」感想 サイコパスの殺人鬼が怖い映画だと思ったら…

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どうもきいつです


サスペンス映画「アメリカン・サイコ」観ました

衝撃的な内容で話題となったブレット・イーストン・エリスの小説を映画化した2000年の作品
マンハッタンのウォール街を舞台に
一流企業の副社長である一方で
快楽殺人を繰り返す主人公を描いたサイコサスペンス

監督を務めるのはメアリー・ハロン
主演はクリスチャン・ベールです

 

あらすじ
1980年代、好景気に沸くニューヨーク
ウォール街にある証券会社のエリートとして
誰もが羨む贅沢な生活を送るパトリック・ベイトマン
容姿には恵まれ、高級マンションに住み、美しい婚約者がいる彼は
社会的な成功を全て手に入れたような人間だが
彼の心には深い闇が広がっており
夜の街をさまよいホームレスや娼婦を殺害していたのだった

 

感想
よくあるサイコパスが人を殺しまくる
殺人鬼が怖い映画かと思いきや
最後にもっと怖いものを見せつけられる…
サイコなのは世の中なのかも
クリスチャン・ベールのサイコっぷりも素晴らしかった

 

以前から気になっていた映画だったので観てみました

観る前はシリアルキラーが人を殺しまくる
ただのサイコサスペンス映画なのかな
と想像していました

実際にその通りの内容でもあるんですが
ラストには衝撃を受けた
ただのサイコサスペンスではなかった

でも、正直言って
あのラストは全然意味がわからなかったんですよね
と言うか、この映画自体が全体的によくわからない

わからないと言うよりも
混乱すると言うほうが正しいのかもしれないです


でも、この映画の内容って全然複雑ではないんですよ
主人公のベイトマンがどんな日常を送っているのか
それをただ淡々と見せているだけの内容

その中でベイトマンの闇の部分である
殺人を犯す姿が描かれていくわけです

なので、劇的なストーリーが描かれるわけでもなく
ベイトマンのエリートでイケてる表面上のエピソードと
殺人を繰り返すシリアルキラーの裏の顔のエピソードを
交互に見せているような物語で
複雑に入り組んだ人間関係もなく
複雑な謎解きサスペンス要素があるわけでもない

なので、特別に難しい映画ではないはずなんです


なのに何故こんなにもややこしいのか?

それを考えてみると
この映画は登場人物がすごくややこしい

誰が誰だかわからなくなってくる
そもそも名前を覚えれないんですよね

男も女もみんな見た目が似かよっていて
顔は違うけど服装、髪型などが量産型と言うか
とにかく見分けがつきにくい

その上、登場人物同士で名前を間違ったりするし
本人たちも誰が誰だかわかっていない状態

主人公の名前ですらなかなか覚えれませんでしたからね


そんなのもあって
この映画を観ていると意味がわからなくなってきて
正直、つまんねーな
退屈だな
となってきます

終盤まで大きな展開もありませんし
所々面白い場面もあるけども
それだけじゃ興味が持続しない

基本的にこの映画で見せられるのは
自分が如何に周りの人間よりもイケてるかの
マウントの取り合いと
クリスチャン・ベールのサイコっぷり

それだけなんですよね


なので、この映画は面白い映画ではないです

頭がこんがらがるわりに内容はほとんどなく
結局、何を観ていたのかわからなくなる

 

しかし、この映画はラストまで観ると
なるほどと思わされる

終盤になると物語が大きく展開します

ベイトマンは殺人衝動が抑えれなくなり
とにかく人を殺しまくってしまう

街中でも殺し、警官も殺し、ビルの警備員も殺し

本人もこれは隠しきれないと諦めて
電話で顧問弁護士に全てを自白する

で、そこからの衝撃のラスト


はじめはこのラストに全然ピンとこなかった
はぁ?って思ってしまいましたよ

ベイトマンが今までしてたことは全部彼の妄想だったのか?とか
実は主人公はベイトマンじゃなかったのか?とか
いろんなことが頭をめぐりましたが
なかなかしっくりとこない

それに繋がるような描写なんて全然なかったし
むしろ、そう考えてしまうと辻褄が合わなかったりもしてしまう

もう意味わかんねーよ
と、エンドロール中は放心状態です


でも、深く考えていくと
このラストの意味が見えてくる

このラストは人間の無関心を表した表現だと思います
そう考えれば全てが繋がる

この映画で描かれていたのは
自己顕示欲むき出しのマウント合戦
自分がどれだけ他人よりイケてるか
それだけにしか興味がない人間たちです
主人公のベイトマンも同じ

そして、それと同時に
彼らはそんな自分にしか興味がなく
他人のことなんて全く見ていない
そんな無関心も描かれている

本作のラストは
そんな人間たちへの皮肉がたっぷりと込められたラスト

そう考えればすごくしっくりくる

いくらベイトマンが人を殺しまくろうが
世間は全くそんなものを見ていない

他人の名前すら覚えていなくて
殺された人間が死んでいることにすら気づいていない

ここに至るまでの
登場人物が誰が誰だかわからないってのも
このラストへの伏線だと思えば納得できます


彼らは自分を見てもらいたいという気持ちしかない自己顕示欲、承認欲求のバケモノ
そこから生まれる他人への無関心
これにはちょっと恐怖すら覚えますね


そして、これは映画だから大袈裟に描かれてはいますが
現実にも繋がってくる話だとも思う

むしろ、本作のメッセージは今の時代にこそハマる内容かもしれません

SNSの普及なんてまさにそれ

Twitterやインスタなんて
自己顕示欲や承認欲求が爆発してるじゃないですか

如何に自分を見てもらうか
自分を認めてもらうか
それだけにしか興味がなくて
他人になんて全く興味無いんだろうな
って人で溢れ返ってたりします

そういう人って自分の話ばっかりで人の話聞かないし
コミュニケーションが取れない

結局、こんな人たちの欲望を満たすものって
空っぽだったりして
何も得てなかったりもするんですよね

この映画も同じで
空っぽなものを競いあうだけで
得てるものなんて何もない

そんな空っぽなものばかりに目が行って
最終的に大きなものが見えていない
本質を見ることができていない

この映画はそんな人間の滑稽で愚かな姿を
表現している映画なのかもしれません

 

あと、この映画で印象に残ったのは
クリスチャン・ベールのサイコ演技
これがすごく面白かった
人を殺してるのに笑えてしまうところが多々あります

セックスの場面なんかも笑っちゃいました
セックスしながら自分の筋肉を見て爽やかな笑顔
ナルシストぶりが素晴らしい

誰も聞いてないのに音楽の蘊蓄をベラベラ喋り続けるのも滑稽だし

そして何より、終盤の全裸チェーンソーは最高ですね
チェーンソーを持ってる時点でもなんかおかしいですけど
全裸でチェーンソーを振り回して女を追いかけるのシーンは本当に最高でした

このシーンが見れただけでも満足できてしまうほど

クリスチャン・ベールが演じるベイトマンのサイコっぷりは見事でした

 

このラストには衝撃を受けたし納得もできる
クリスチャン・ベールのサイコ演技も素晴らしかった
とは言え、総合的にはちょいつまんないくらいの映画かもしれません
もう少し中身があってもよかったかもしれない

でも、全然観て損のない映画だと思います
このラストのためだけでも観る価値はある

 


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