何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「デッド・オア・リベンジ」感想 なんか惜しい 終盤になるまでのテンポ悪さがもったいない

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どうもきいつです


バイオレンス映画「デッド・オア・リベンジ」観ました

地雷を踏んでしまった男と恋人の女とそこに現れた地元の男との出会いから始まる
壮絶な復讐劇を描いた2015年ジョージアの映画
ポルト国際映画祭で観客賞を受賞し
世界各地の映画祭で注目を集めた作品

監督を務めるのはレヴァン・バギアです

 

あらすじ
アメリカからジョージアへトレッキングにやって来た男女3人
その中の1人クリスが戦争時に埋められた地雷を踏んでしまうが
それは三角関係のもつれを恨むダニエルの罠だった
この状況にうろたえるクリスと恋人のアリシアの前に地元の男が現れ
事態はさらに悪化してしまう

 

感想
胸くそ悪さよりテンポの悪さにイライラしてしまう
やりたいことやメッセージ性は伝わってくるだけに
もったいない映画だと思いました
終盤の勢いが全体にあればよかった

 

前から気になっていた作品だったので観てみました

予告を見た時点でかなり胸くそ悪そうな映画だとは思っていましたが
全くその通りでした

この映画に救いは無いと思ってください

序盤から中盤にかけてはゲスいことの繰り返しで
終盤になると虚しさしかない
嫌な気分にさせられる映画だということは間違いないです

冒頭ははカップル2人とその友人3人での楽しいキャンプ
って感じで始まりますが

はじめのうちからこの3人はちょっと訳ありだな
と思わされます

案の定カップルの彼女が彼氏の友人と浮気をしていて
それに彼氏だけは気づいていない
みたいなちょっとドロドロした恋愛関係

そもそも、この3人で遊びに行く時点で
この女の頭はどうかしてるんじゃないのかと思わされますが
そこは置いといて


なんだかんだあって主人公のクリスが
地雷を踏んでしまい身動きがとれなくなる
それを助けようとするダニエルとアリシアなんですけど

実は全て浮気を恨んだダニエルの計画通りで
ダニエルはそれを明かして早々とどっか行っちゃうんですよね

じゃあ、ここからどうするんだよ
地雷を踏んだ男とそれを助けようとする女だけで
どう物語を展開していくのかと思ったら

新たに地元のおっさんが登場して
そこから物語が急展開していくという内容

 

この映画のメインは大きく2つあって

身動きがとれない状態で理不尽なものを見せつけられるやるせなさと
それがきっかけで起きる復讐劇

これが描かれています


序盤から中盤にかけては
地雷をんだクリスと助けようとするアリシアの弱味につけこんで
地元のおっさんイリアが理不尽な要求を吹っ掛けます

助けてほしかったらこれをしろ
みたいなことを言ってくる

ここでの要求は基本アリシアに屈辱的なことやエロいことをさせたり
かなりゲスい内容

はいているパンツをよこせだとか
投げたパンツを犬みたいに拾ってこいとか
最終的にレイプまでしてしまう

このへんは単純に胸くそ悪いし気持ち悪い

ただ、この映画の面白いところは
「ファニーゲーム」みたいに単純に暴力を振るわれる胸くそ悪さじゃなくて

主人公は何もされないけど
目の前で好きな人がめちゃくちゃされてしまうのを
見せつけられる胸くそ悪さ

助けたいけど助けることができない絶望感を
描いている作品なんですよね


胸くそ悪い映画はたくさんあるけど
本作のようなタイプの映画はあまり見たことない気がする

胸くそ悪い映画ってたいてい主人公も酷い目に遭いますから

このアイデアは面白いと思います

人もいない電波も届かない場所で
地雷を踏み身動きがとれない中で
誰でもいいから助けが欲しい
ってシチュエーションも悪くないと思いますし

イリアのクズ男っぷりもなかなか不快感が凄まじくて
こんなやつ死ねばいいのに
と思わされます
この世で一番嫌なエロおやじって感じ

言ってることは支離滅裂だったり
何がしたいかわからなかったり
こんな厄介なおやじには絶対に関わりたくないですよ

ここで観ている側もすごくイライラさせられて
胸くそ悪さが頂点に達したところで
終盤の展開に切り替わります

 

終盤はイリアに対してクリスが起こす復讐劇が描かれます

でも、この復讐劇がすっきり爽快なのかと言うと
全然そうではなくて
むしろ、こっちの方が見ていて辛くなってくる

普通ならあんなクソおやじに復讐すればすっきりするだろうし
観客もそれを望んでいるはず

確かに復讐が始まったくらいの時は
スリリングな展開にワクワクさせられるし
イリアがひどい目に遭っても
もっとやったれやったれ
って気持ちで見てしまってるけど
段々と見てられなくなってくる


よく漫画とかの主人公のセリフである
復讐は何も生まない
ってことを完全に表していると思います

復讐の虚無さがこの映画を観るとストレートに伝わってくる

正義のヒーローの言葉なんかよりも
この残酷な映画を観た方が
よっぽど復讐の無意味さが心に刺さると思います

特にラストシーンは
すごくあっけないけど
すごく重たい

復讐を果たしたはずのクリスの表情からは
何の満足感も感じれないし
むしろ、後悔や罪悪感だけしか残っていない

でも、これが全ての答えですよね
どんなに腹が立って
相手に同じ事をやり返したとしても
得るものはあれなわけですよ

クリスには全く非が無いし
イリアのしたことを考えれば
どんなに酷い仕打ちをされても文句は言えないけど
復讐したところで結果は虚しいだけ

この映画は実際の復讐を観ることで
復讐の無意味さを学ばせてくれる映画だと思います

 

そんな感じで
メッセージは伝わってくるしアイデアも面白い

だからこそ、ちょっともったいなく思います

地雷を踏んでから終盤になるまで
テンポがすごく悪いです

クリス、アリシアとイリアとのやり取りが
同じことの繰り返しなんですよね…
やる、やらないの押し問答がほとんどで
話が一向に進まない

で、話が進んでも毎回やってることは同じで
アリシアが強引に無理難題をやらされるだけ

スリル感もないし観ていて退屈になってきます

実際にあの状況になればああいう不毛なやり取りが
繰り広げられるかもしれませんけども
もうちょい映画的に盛り上げてくれてもよかったかも

特にレイプのシーンは無駄に長かったですし

あれで観客の胸くそ悪さを煽ってるんだとは思うんですが
あそこまで長かったら
胸くそ悪さよりもテンポの悪さへのイライラが勝ってしまう

たぶん、この映画は削れば90分くらいでおさまったと思います


復讐が始まってからはテンポがいいし
スリルもすごくあるんですよ

クリスがいつ行動を起こすのかとか
何の罪もないイリアの家族がどう巻き込まれるのかとか
怖いけど先が気になるみたいな
怖いもの見たさでとても興味がそそられるし
最後まで退屈しません

この終盤のテンポのよさやスリル感が全体的にあれば
退屈しなくてすんだと思う

そう考えるともったいないですよね

 

それと、やっぱりツッコミどころもあります

特に気になるのが
イリアのあのクズさに説得力があまり無い

ただのヤバいおっさんと言ってしまえばそれで終わりですが
その割に普通に幸せな家族を持っているし
家族との関係性も良好に思える
家族への愛情も感じれるし

終盤になると
あんなに酷いことをしていたおっさんには思えない

あの時は酒を飲んでいたとか言ってましたけど
理由としては弱すぎるし
人が1人死んでるわけですからね

中盤のクリス、アリシアとイリアの
退屈で不毛なやり取りを繰り返すだけなら
そこに伏線を散りばめたり
なぜイリアがあそこまでヤバい奴なのかの描写が
あってもよかったと思います


あと、全ての元凶であるダニエルが放ったらかしなのもちょっと気になる

まあ、あそこにダニエルまで入ってきたら
余計にややこしくなるし
フェードアウトが正解だったのかもしれませんが

 

とは言え、なかなか面白い映画
メッセージ性やアイデアはとても良かったし
内容の胸くそ悪さからしたら
人を選ぶ作品ですけども
普通に良い映画だと思います

最後だけでなく
全体的に盛り上がる要素が散りばめられてたら
もっと面白い作品になっていたんじゃないでしょうか

 


デッド・オア・リベンジ (字幕版)