何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「愛なき森で叫べ」感想 いろんな意味で気持ち悪い でもそれが魅力

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どうもきいつです


バイオレンス映画「愛なき森でですね」観ました

実際に起きた猟奇殺人事件に着想を得て作られた
2019年10月からNetflixで配信されたNetflixオリジナル映画
巧みな話術と大胆な行動で他人の心を操る
冷酷な男、村田が巻き起こす常軌を逸した世界が描かれます

「愛のむき出し」などの園子温が監督を務め
椎名桔平、満島真之介、日南響子、鎌滝えり
などが出演しています

 

あらすじ
上京してきたばかりのシンは
偶然知り合った仲間たちと共に自主映画を作ることになり
知人の妙子と美津子に出演を依頼する
そんな中、引きこもりの美津子の前に村田という謎の男が現れ
紳士的な村田に美津子は次第に惹かれていくが
彼の正体は冷酷な詐欺師だった

 

感想
いろんな意味で不快な映画
エロ、グロは当たり前
人物描写や出来事も気持ち悪い
でも、園子温らしい勢いとパワーがすごくあって
最後まで釘付けだった
やりたい放題な映画でした

 

ずっと観ようとは思って後回しになってましたが
やっと観ました

園子温の映画は好きですが
最近は観ていなくて
結構、久しぶりに観たと思います


そして、本作なんですが
やっぱり園子温らしい映画です
Netflixの配信作品というのもあってか
昔みたいなやりたい放題な作品

とにかく作りたい映画を作ったって感じ

だからクセがかなり強いですね
これは好きな人は好きだけど
嫌いな人はとことん嫌いな映画かも
嫌いな人の方が多いんじゃないか?

いろいろと不快な描写が満載で
その上、セリフ回しは演劇的
と言うか、大袈裟で過剰な演技だし

ストーリーもあるようで無いような
なんか掴み所が無かったりもする
そして、基本的に胸くそ悪い

一言で言えば
気持ち悪い映画

だからこそ、園子温らしい映画とも言えます
そもそも、この人の映画ってこんな映画ばっかりだし
今さらそこをツッコむ必要もない
むしろそれが観たいわけですし


本作や園子温の作品が嫌いな人は
今言ったような要素が嫌いな人が多いと思うけど
好きな人は逆にそんな所が好きなので

これは表裏一体
長所であり短所である

僕はそんな所がとても好きなので
本作も十分楽しめました

 

まず、本作は実際の事件に着想を得て作られた映画ですけど
リアリティは全くありません

さっきも言った通り演技は過剰だし演出も過剰
内容もかなりぶっ飛んでいて
あまり現実味はない

このリアリティの無さに文句を言う人も
たぶん多いんじゃないでしょうか

実際の事件を基にするならもっとリアルに伝えるべき
この事件の恐怖をリアルに描くべき
みたいに思う人もいると思う

ただ、本作は
この事件の真実やそれによる教訓を伝えるために作られた映画ではなく
この事件からインスピレーションを受けた園子温が
自分の世界を映画として表現した作品

だから、はなから現実を描く気なんて毛頭なくて
実際の事件なんて完全に無視の虚構だらけのフィクションを描いているわけです

だから、現実味が無いからこの映画はダメ
っていうのは、ちょっとナンセンスな気もする


むしろ、この嘘っぽい独特な園子温の世界に
浸れるかどうかの映画で
それによって完全に好き嫌いが別れると思います

 

まず、僕がこの映画で一番魅力的に思うのは
気持ち悪い登場人物たち

とにかくみんな気持ち悪いです

気持ち悪い奴と気持ち悪い奴が出会うことにより
より気持ち悪くなるという化学反応

独特なセリフ回しも相まって
すげー気持ち悪い


その中でも、椎名桔平が演じる村田が素晴らしいです
胸くそ悪すぎて魅力的

最低な詐欺師で
登場人物のほとんどをマインドコントロールして
好き勝手やり放題の鬼畜の所業
観ていてすごく胸くそ悪い

はじめは最低な奴だな… 嫌いだな…
と思って観てるんですけど
映画が進むにつれて好きになってくるんですよね

自分も騙されてしまってるのか?
と思ってしまう

村田が最低な奴なのはわかるけど
他にも最低な登場人物がたくさん出てくるので
そんな最低な奴らを痛い目に遭わせてくれたりするから
ちょっと気持ちよかったりするんですよね

最初から最後まで
悪が悪を制してるような映画で
そこにカタルシスみたいなものも感じる

そして、村田の胡散臭い喋り方
こんな奴を誰が信用するんだよってレベルの胡散臭さ

でも、これも観てるうちにクセになってきて
いつの間にかこの喋りを求めてしまってる
椎名桔平の渋い雰囲気も合わさって
すごく魅力的に感じてきます


他のキャラみんなインパクトが強くて
そして気持ち悪い

妙子を演じる日南響子もすごく良かった
普通に美人な風貌というのもあるし
声がすごくカッコよかったです

演技力もあると思うしすごく印象に残る人
彼女が登場すると画面を見入ってしまうような
魅力を持っています


満島真之介も絶妙なキモさを醸し出していてすごく好き

あの濃い顔がキャラクターにマッチしていて
すごく気持ち悪い
独特な顔立ちでもあるので
見ようによっては普通にイケメンでもあるけど
本作に限ってはキモい方向に傾いていて
素晴らしい魅力を放っていました

 

あと、やっぱりバイオレンス描写も
園子温らしくて好きですね

ほんとに嫌な暴力を描くのがうまい
観ていてゾワゾワしてきます

めっちゃグロテスクというのもあるけど
それよりも暴力を奮っているシーンがほんとに嫌なんですよ…
なんであんな嫌な暴力を描けるのか…

いろんな痛々しい場面がたくさんありますが
どんな痛々しいシーン、グロいシーンよりも
僕は村田のビンタが1番嫌です

ビンタなんてそんなに痛くはないと思いますよ
でも、あんな暴力的で嫌なビンタ見たこと無い
すげー嫌ですよ、あのビンタ

精神を追い詰めながらの
ペチ、ペチ、ペチと
見ているだけで精神が削られる

 

ストーリーに関しては
特にわかりやすく何かが起きて何かが解決するようなストーリーではなく
ひたすら村田による鬼畜の所業を見せられるような内容

普通に胸くそ悪くて不快なものが続きますが
ラストの展開は
なかなか気持ちがいい

全てを牛耳っていたと思っていた村田が
実は手のひらの上で転がされていたという

全然スッキリするラストではないけど
ここの怒濤の展開は気持ちいいですよね

はじめからあそこまで村田に従順だった2人に
すごく違和感があっただけに
ここの展開で少し納得させられた

結局全員悪い奴じゃん
全員自己中じゃん
と、あまりにもみんなが頭おかしくて
むしろ清々しい気持ちにもなりますよ

気持ち悪すぎて気持ちがいい


とは言え、このラストが唐突な気もしたし
ちょっと説明的すぎる気もした

急に回想シーンとか詰め込んでくるし
言葉で全部説明したりするから
取って付けた感は否めない

もう少しスムーズにラストも見せてほしかったかも


それと、やっぱり強引な映画でもあるので
そこが合わない人もいると思います

ほぼ、全編を通して力業でねじ伏せるような
めちゃくちゃな演出ですし
雑に個性をぶつけてくるような独特な作品

それが受け付けないのなら
この映画を楽しむことはできないと思います
受け付ける人の方が少ないだろうし

ただ、園子温全開のパワフルな強引さが好きな人からすれば
やっぱり最高な映画なんですよね

これに関しては好みの問題
無理矢理に好きになれというのも無理な話
みんなにおすすめできる映画ではないですね

 

個人的には園子温ワールド全開で
とても好きな映画でした
エロ、グロ、バイオレンス最高!!

気持ち悪さを最高に堪能できる素晴らしい映画
ゾワゾワと嫌な気分に浸りたいのなら
おすすめの映画です

 


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