どうもきいつです
ファンタジー映画「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」観ました
カナダ人作家ヤン・マーテルが2001年に発表した
世界的ベストセラー小説「パイの物語」映画化した作品
家族と渡航中に嵐に襲われ
獰猛なトラと共に救命ボートで大海原を漂流することになった少年の運命を描いています
「ブローバック・マウンテン」などのアン・リーが監督を務めています
あらすじ
インドで動物園を経営する父親のもとで育ったパイは
ある日、家族と共にカナダに移住することになる
そして、カナダへの渡航中に嵐に襲われ船が難破してしまった
唯一生き残ったパイは命かながら救命ボートに乗り込むが
そこには獰猛なベンガルトラも乗っていた
感想
少年とトラの友情ファンタジーと思っていたら…
ただの美しいファンタジー映画ではなく
深い意味が込められている作品でした
宗教、物語はなんのためにあるのか?
そこを考えさせられる
とても好きな映画ですが
前に観たのはもう何年も前で
あらためて久しぶりに観てみました
この映画の第一印象は
少年とトラが漂流しながら友情を深めていくファンタジーアドベンチャー
みたいに思う人が多いと思います
実際にそんな感じの映画です
ただ、最後まで観るといろいろと覆されてしまう
今まで観てたのは何なの?
どういうこと?
と、頭が混乱して
ちょっと恐怖すら感じる
そして、今まで感じていた違和感に
納得もさせられる
この映画は娯楽エンターテイメントのようで
実は哲学的、芸術的な作品だと思います
で、いろいろと意味が込められている映画だけど
考察が難しい…
この映画で重要なのは
宗教や物語とは人間にとって何なのか?
という部分だと思います
この映画のメッセージは言葉で説明するよりも
実際に映画を観るのが手っ取り早い
この作品自体が感覚に訴えかけてるものがあるし
人によって解釈や捉え方が変わってくるとも思う
この映画を普通に観ると
必要以上に美しく描かれた
ちょっと嘘っぽいファンタジー映画に感じてしまいます
特に終盤の展開なんて明らかにリアリティが無い
起きていることも都合がよすぎたりする
そもそも、トラとボートの上で一緒に漂流する
ということ自体があり得ないですしね
そんな
ぶっ飛んだファンタジーな作品が苦手な人が観ると
この映画を単純につまらないと感じるかもしれません
ただ、最後まで観ると納得させられます
この必要以上に美しい映像
こ都合主義のように上手くいく展開
なんか嘘みたいな話
この映画はそこに意味があるんですよ
終盤になるとパイの口から
トラとの漂流とは違う残酷な物語が語られます
そして、最終的に
嘘みたいな美しい話と現実的な残酷な話どちらがいい?
と質問を投げ掛けられる
この質問に真理が込められています
僕の解釈としては
パイとトラの美しい漂流物語はパイが作り上げた創作物
現実は最後に語られる残酷な漂流物語
ただ、この2つの物語は全く別物ではなくて
リンクしている部分がある
はじめボートに乗り込んできた動物たちは人間の比喩になってるし
パイ=トラという見方もできる
意味深なシーンもたくさんあって
それらが空想と現実を繋げている部分だと思う
パイとトラの物語は
残酷な現実と戦うパイの心の中を映し出したものに思えるし
残酷な現実から逃避するために
パイが作り出した妄想の世界のようにも思える
作中でも言われている通り これは神話なんだと思います
残酷な現実を生き抜くために作り出された物語は
パイにとっての唯一の救いだったのかもしれない
そして、そこから
宗教とは何か?
物語とは何か?
それは人間にとって必要あるのか?
という話に繋がってくる
この映画を観ると
人々が信仰している宗教や神話なんかは
所詮誰かが尾ひれをつけて作り出した作り物
映画、小説、漫画などの創作物は所詮嘘っぱち
と、否定的しているように感じる
でも、逆に
そんな宗教や嘘の物語に人間は救われて
人生を豊かにすることができる
と、肯定しているようにも思えます
神を信仰する人を見て
神なんていないのにと否定したり
映画を観て泣いている人を見て
あんなの嘘の話なのにと馬鹿にしたり
ゲームに没頭する人を見て
あんな不毛なこと続けて何になるんだよと見下したり
そんな人も多いと思う
実際にそういうものは必要ないようにも思える
だからその気持ちもわかるけど
ただ、そんな宗教や嘘の創作物の裏側には
確実に現実が存在して
それがあるから生み出されている
嘘のようだけど嘘ではない
だから、そんなものには学ぶべき事が込められているし
人生を豊かにする糧になると思う
神話にしたって
とんでもないようなことが綴られているけど
そんな物語が生み出された背景には
本作のような残酷な現実があったのかもしれない
そんな現実に尾ひれがつけられて生まれた嘘の物語は
もはや嘘ではなく本当だと僕は思う
だからこそそこには教訓があり
人間を導いてくれる道しるべがあると思うんです
神なんていない
神話なんて嘘
それも間違った考え方ではないけども
僕は現実的な残酷な物語よりも嘘みたいな美しい物語を選ぶ
あと、この映画はエンターテイメントとしても
普通に楽しめる映画です
トラとの漂流はこの先どうなるのかとワクワクさせられるし
何よりも映像が美しくて引き込まれる
この映像美を目の当たりにするだけで
良いのも観たな
って気持ちにさせられます
映像表現も面白いですしね
違和感を感じるほど
必要以上に美しく描かれている映像で
船が沈没する絶望的な場面まで美しい
パイの髪の毛や髭が全然伸びていなかったりもする
動物の死体もいつのまにか消えてたり
そして、それがある意味伏線になっていて
最後の展開に生きてくる
こんな表現はこの映画くらいでしか見れないと思います
なかなか面白い表現ですよね
たくましく生き抜こうとするパイを
いつのまにか応援してしまうし
トラもだんだん可愛く見えてくるし
普通に映画の中に自分も引き込まれてしまっていました
ラストの展開は必要ですけど
それ無しでも見れる作品にはなってると思う
ちょっと特殊な内容で
考察するのもなかなか難しかったですけど
個人的にはとても好きな作品
ラストを知った上でもう一度観ると見え方が変わってきて
また違った面白さを味わうこともできます
なかなか素晴らしい映画だと思います
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