何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「透明人間」(2020年)感想 サスペンスというり、もはやホラー 見えないことが怖い

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どうもきいつです


サスペンス映画「透明人間」観ました

H・G・ウェルズの小説「透明人間」を原作とし
1933年に公開された映画「透明人間」を
現代風にリブートした作品
自殺した恋人が透明人間になって
自分に近づいてくると感じる女性の恐怖を
描いたサスペンススリラーです

「ゲット・アウト」「パージ」シリーズのプロデューサーのジェイソン・ブラムが制作を担当
「アップグレード」などのリー・ワネルが監督を務めています

 

www.nanimokamogakokkei.com

 

あらすじ
天才科学者エイドリアンに束縛さらる日々を送るセシリアは
ある夜、彼の家から脱出を試みる
脱出に成功したセシリアだったが
彼女の逃亡にショックを受けエイドリアンは自殺し
セシリアに莫大な財産を残したと聞かされる
そして、それからセシリアの周りでは不可解な現象が起き始める

 

感想
ホラー的な表現が多くて
サスペンス映画というよりはホラー映画でした
見えないことの恐怖というのが上手く表現できていたと思う
最後までハラハラドキドキで最高に楽しめました

 

予告を見てとても面白そうだったので
前から期待していた映画

透明人間という題材はちょっとチープにも思えましたけど
予告を見ただけでも
その題材をすごく上手く調理してるように感じれて
めっちゃ面白そうだったんですよね


そして、実際に本編を観てみても
すごく面白かった
個人的にもかなり好みの映画でした

 

そもそも本作は
過去のモンスター映画をリブートする企画
ダークユニバースの作品の1つとして作られる予定
だったらしいですが

このダークユニバースがほぼ打ちきり状態で
過去の作品とは関係のない単体の作品として
本作が作られたようです

まあ、これは正解でしたね

「マミー 呪われた砂漠の王女」なんかは
無駄にクロスオーバーを意識しすぎてすごく微妙な出来になってた

もし本作もその流れで作られていたなら
たぶん、中途半端にクロスオーバーを意識した
アメコミもどきの安易なアクション映画になっていたかもしれません


そう思えば
そんなダークユニバースが打ちきり状態になったことで
この映画が重苦しく緊張感が張り詰めたサスペンススリラーとして完成したのは
すごくいいことだったのかもしれませんね

 

そして、本作の内容の話ですが

終始、緊張感が張り詰めていてハラハラドキドキで
最高に楽しめました

ジャンルでいえば
サスペンスやスリラーになるのかもしれませんが
内容はほぼホラーで結構怖かったりします

過去にも透明人間を題材にした作品は多いと思いますし
いろんな作品に透明人間が登場したりしてるわけですが

ここまでホラーな透明人間は無かったんじゃないでしょうか?

見えないという恐怖をかなり上手く表現している作品です


この映画では
そこに何もいないのに何かいるような恐怖
見えないからこそ見えてくる人間の悪意
そういうのが本当に面白く描かれています

見せ方がすごく上手いというか

画面上には誰も映っていないのに
何かいるんじゃないのかと思わせるようなシーンが多く
終始、不穏な空気が漂っていて緊張感が張り詰めています

まだ、何も起きていない序盤のほうの
セシリアがキッチンのコンロを消し忘れるシーン
無駄に誰もいないキッチンを映しているんですが

後々に考えれば
その時点でそこには何かいたと思える
そう思うとゾッとする

その他にも意味深に空白を映す場面が多くて
その何もいないようで何かいそうな雰囲気に
観てるこちら側も段々と精神を削られていきます

 

そして、アイデアも面白いんですよね

DV男を透明人間にするという発想が面白い
この組み合わせはベストマッチだと思う

普通のサイコパスな殺人鬼が透明人間になるよりも
ストーカーDV男が透明になってしまう方がよっぽど怖い

1人の人間に異常に執着して
殺すわけでもなくじわじわと精神的に追い詰めるような陰湿な男を透明人間にしてしまうという…

これがあるから
より透明人間の怖さが引き立っているし
見えないからこそ感じれる人間の悪意が強調されて
精神的に嫌な気分にさせられるんですよ

周りの人がセシリアを精神異常者に思うように仕向けたり
セシリアに直接危害を加えず知人を狙ったり
やってることが本当に策士な上に陰湿で
最悪なんです

だから、セシリアも精神的に追い詰められ
周りからの信頼も失い八方ふさがりになってくる
そんなものを見せられると
こっちも気持ちがざわざわして
なんか見てれなくなってくるくらいしんどい

 

終盤に近づくと
ちょっと強引な展開も増えてきてツッコミどころも多少ありますが
アクションや意外な展開など派手な要素も多くなってくるので
そのへんはあまり気にならず

むしろ、盛り上がりがあって
ラストに向けて加速していく感じが
より映画に引き込まれる展開になっていると思います

セシリアが脱走するシーンはアクション多めの
派手な場面で
このアクションが同監督作の「アップグレード」の
アクションに通じるような画面がぐるぐる動く演出で
これも面白いシーンです


ラストもすごくいいですよね
あのラストはなかなかカッコいい

すっきりするラストではあるものの
どこか恐怖を感じるラストでもあって
余韻に浸れました


あと、セシリアを演じるエリザベス・モスの顔が素晴らしいです
すごくホラー顔なんですよね

やっぱりこういう映画って
怖がる人、怯える人の顔が怖ければ怖いほど
その感情が直接伝わってくる

てか、顔が怖いから普通に映像的にも怖い

ラストの全て吹っ切れたときの表情も
本当に良かったし

彼女の顔がこの映画の顔と言っても過言じゃない

 

すごく面白くて
すごく好きな映画ではあったんですが
1つ思うことがあって

セシリアが感じている透明人間の存在が
現実なのか妄想なのか
そこをもっと曖昧にした方が
さらに怖くなって面白くなったように思うんですよね

この映画ははじめから透明人間がいる前提で
全ての物語が進んでいくから
観客はセシリアの言うことを全部信じてしまって
セシリアの目線で全てを見てしまっていると思うんです

だから、途中セシリアがはめられて
妹や同居人から見捨てられるときは
周囲の人がすごく薄情に感じて
もう少しセシリアを信じてやれよと思ってしまうんですよ

でも、セシリアを
もっと精神が不安定で何を考えているかわからない人物として描けば
そのへんは納得できるでしょうし
何が真実がわからなくなりサスペンス的にも
もっと面白くなったかも

特に序盤はそんな曖昧な表現だったほうが
絶対に良かったんじゃないですかね

そして、終盤の展開もさらに盛り上がったと思うんです

恋人のエイドリアンのヤバさだけでなく
主人公のセシリアのヤバさや危うさみたいなものが
もっと感じれれば
すごい映画になっていたような気がする

 

とは言え、普通に面白くて怖い映画でした
透明人間ってこんなにホラーにできるんだなと
感心させられた
いないようでいるという表現は
日本のホラーにもどこか通じるところがありますよね

最初から最後まで重苦しく緊張感があって
精神がやられました
個人的にもかなり好きな映画です

 


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