何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「青くて痛くて脆い」感想 愚かで見苦しいけど 青春なんてこんなもの

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どうもきいつです


青春映画「青くて痛くて脆い」観ました

「君な膵臓をたべたい」などの佐野よるによる小説を映画化した青春サスペンス映画
大事な友達を奪われた青年が
その復習を果たすために計画を企てます

監督は狩山俊輔が務め
出演するのは吉沢亮、杉咲花などです

 

あらすじ
人付き合いが苦手な大学生の田端楓は
空気が読めず周りから浮いている秋好寿乃と出会う
2人は世界を変えると大それた目標を掲げ
秘密結社サークル「モアイ」を立ち上げた
それから月日が経ち秋好が姿を消してしまう
ただの就活サークルと成り下がり秋好を奪った「モアイ」を潰すため
楓は「モアイ」を潰す計画を企て実行に移す

 

感想
まさしくタイトル通りの内容
青くて痛くて脆い楓の言動がグサグサと心に刺さる
愚かで滑稽な姿が自分にも重なりました
この映画は観る人によって捉え方が変わるかもしれません


映画館で予告を目にしてからとても気になっていたので観てきました

観る前は
友達を殺した相手に復讐するクライムサスペンスみたいなのを想像していましたけど
全然違った

サスペンスを期待していた人からすれば
なにそれ?
みたいな内容の映画です

物語の流れも
意外性のある展開なんかも用意されてますけど
なんとなく先が読めてくる

たぶんこういうことなんだろうな
と思っていたら大体その通りです

後半になってくると主人公の楓が暴走して独り相撲状態になってくるし
全然サスペンスではなくなってくる

若干、宣伝詐欺なところもあるので
気にくわない人もいるだろうなと思う


ただ、個人的にはこの裏切りはすごく良かった
たぶんただのサスペンスならここまで心に刺さらなかったかも

この作品は面白いかどうかより
心をすごく揺さぶられました

過去の自分と重ね合わすと心が痛すぎる
まるで自分の姿を見ているようでした


とは言え
この映画は観る人によって全然見えかたが変わってくると思います

普通につまらないと思う人もいるでしょうし
僕のようにすごく心に刺さる人もいると思う

これはその人がどんな青春を送ってきたかによって受け取りかたが違ってきます

簡単に分けてしまうと
学生時代に友達が多くてワイワイやるのが楽しかった人と
友達が少なくて少ない友達と親密な関係を築きたかった人
そのどちらかによって
感情移入できるかどうかが変わります

楓の考えか秋好の考えかで
この映画の感想も変わってくる

秋好側の学生生活を送ってきた人は
この映画が不快で気持ち悪いと思うかもしれません

逆に楓のような学生生活を送ってきた人は
気持ちがわかりすぎてすごく感情移入できるはず
学生時代の嫌な気持ちがよみがえってくる

そんな観る人によって見え方が変わってくるのが本作の面白さでもあると思います

 


で、本作で最も重要なのは
主人公の楓の存在

序盤はサスペンスのように見える本作ですが
話が進んでいくうちに
この物語全てが楓の独り相撲だとわかってきます

簡単に言えば
全て楓の逆恨みで
ただ勝手に自分の気持ちを晴らそうと奮闘している

この映画には悪者なんて全くいなくて
あえて悪者を選ぶとしたら楓

コイツが本当に厄介な奴です

自分の勝手な思い込みで勝手に恨んで

自らコミュニケーションをとることもなく
全てが他人まかせ

そのくせ悪いのは全て他人だと決めつけ
身勝手に復讐しようと暴走してる

イタいしキモいし最低な奴なわけです


だから、この映画を観た人の中には
楓が嫌いだと思う人も多いはず
楓を気持ち悪いと思えば
この映画自体も気持ち悪く思うでしょう


でも、楓のこの気持ちを
わかる人は痛いほどわかると思うんですよね

僕はめちゃくちゃわかりました
実際、僕の大学生時代はマジでこんなだった

少人数だと充実していた友達関係も
大人数になってくるとすごく疎外感を感じたり

仲のいい友達がなんか思ってた感じではなくて
腹が立ってしまったり

大学に入ったばかりの時の繋ぎの友達関係は
僕だけじゃなくみんなが経験する大学生あるあるですよね


20歳前後の未熟な人間だからこそ
人間関係がすごく面倒くさくて
それに落ち込んだり苛立ったり

でも、結局一番面倒くさいのは自分自身だったりする


この楓というキャラクターは
それをすごく体現している存在です

あの頃の自分を具現化したような存在

しかも、それはすごく嫌な部分で
今思えば完全に黒歴史のような
そんな自分の痛いところをグサグサと突き刺してきます

 

そして、何よりも
この映画にこんなにも感情移入できる理由は何なのかを考えると

この映画は完全に楓目線の物語なんです
全てが楓の目に見えた世界

登場人物や「モアイ」も全部
楓が見るそれなんですよ

 

なので、実際の所の真実は見えてこない

楓以外の登場人物はみんなどこか掴み所が無く
何を考えているのかわかりづらいし

「モアイ」の活動も本当にヤバいことをやってるのかやってないのか
その辺はあまりはっきりとしない

重要キャラの秋好でさえ何考えてるかわからない

全部がかなり曖昧で
サスペンス映画として見てみるとどうかと思うような内容


でも、楓が体験する青春ストーリーとしては
これはすごくリアルです

実際の人間関係も
相手が何を考えてるか
本当はどんな人間なのか
そんなのは全然わからなくて

それをどうにか手探りで関係を築いていきます

だからこそ曖昧な相手の言動に惑わされたり
理想と現実のギャップに追いつけなかったり
気が付けば何が正解なのかもわからなくなってくる

そうなれば疑心暗鬼になって
楓みたいな気持ちになるのはすごくわかる

楓のあの行動はさすがにやり過ぎだろうと思いつつも
あれほどまで気持ちが爆発してしまう気持ちも
痛いほど理解できてしまう自分もいる


自分だけでなく人間関係に振り回された人をたくさん見てきたし
これは、結構いろんな人たちが体験してきている感情だとも思います

 

本作で特に心に刺さったのは
終盤の楓と秋好の気持ちがぶつかり合うところ

ここがちょっと泣けてくるんですよ

普通ならこんなお互いに気持ちをぶつけ合うシーンなら
最後に分かり合えるようなもんですけど

本作の場合はこんなにぶつけ合ってるのに
全然2人が噛み合わない

なんかすごく2人の気持ちがズレてる
楓が言いたいことが全く秋好に通じていない
挙句の果てに楓は秋好に気持ち悪いと言われてしまう

この気持ち悪いという言葉で
全てが崩れ去ったような気がしました

楓からすれば秋好は
世界平和を野望にしている変な女の子で
本当にそれをしてしまうんじゃないかと一目置いていたわけです

でも実際は俗っぽいやつらと俗っぽい生活を送って楽しんで
普通に恋愛なんかもしていて
最終的に世界平和とか言ってたくせに
気持ち悪いなんてあんな暴力的な言葉を浴びせられる

そりゃキレるよ
思ってた人間と全然違うもん
裏切られたと思って当然


ただ、これは楓を肯定しているわけではなくて
青くて痛くて脆いからこそ
勝手に理想的な人間に作り上げた友達が
現実では思ったのと違ったからブチギレる
というかなり愚かな行為

そんな未熟な人間が必死に足掻いている姿が
めっちゃ心に響いて泣けてくる

自分も誰かに理想を押し付けてたことはあったよなと
懐かしさと恥ずかしさを感じました

 


ただ、ちょっとラストが薄い気がしました

あの時ああしてればの妄想のシーンは
すごく切なくて好きですけど
そこから後はあっさりしすぎかな…

秋好に謝りたいという気持ちだけでは
原動力としては弱く感じます

なぜ謝りたいのかや
自分の過ちに向き合う姿など
そういう描写を深掘りしても良かったと思う

急に楓がいい子になったって感じで
あまり気持ちが追いつきませんでした

1番最後の後先考えず勇気を振り絞る
という終わり方はすごく良かったと思いますけど

そこに至るまでを深く見せてほしかった

 

あと、楓が秋好に恋愛感情があったのかどうかは
個人的には無かったように思えた

もしあったのなら
最後の妄想は恋人になってる妄想のはずだけど
サークルでみんな仲良くやってる妄想だったし

人間として尊敬していたからこそ
実は普通の女の子だったことに苛立ったていたように感じました

 

この映画を観たら
昔のことをすごく思い出してしまった

学生時代の未熟で愚かな人間を
すごく上手く表現している映画でした

正直、パリピみたいな学生時代を
楽しく謳歌していたような人たちには全然刺さらなくて
ただの気持ち悪い映画にしか思えないかもしれない

でも、暗い学生生活を送っていた人なら
すごく刺さると思います

僕の知り合いや友達は
この気持ちをわかってくれる人が多そう

 


青くて痛くて脆い (角川文庫)