何もかもが滑稽

何もかもが滑稽

映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「人数の町」感想 設定は面白いけどなんか中途半端

f:id:kiitsu01:20200917211328p:plain

どうもきいつです


ミステリー映画「人数の町」観ました

衣食住を保証され自由を手に入れることのをできる謎の町を舞台に
そこにやって来た主人公の姿を描いたミステリー映画
第1回木下グループ新人監督賞の準グランプリ作品を映画化した作品です

監督は本作が長編映画の初監督となる荒木伸二
主演は「水曜日が消えた」などの中村倫也が勤めています

 

あらすじ
借金取りに袋叩きにされていた蒼山は
黄色いつなぎを着た謎の男に助けられる
居場所を用意してやると言われた蒼山はとある町に連れてこられる
そこは離れることはできないが衣食住を保証された自由な町だった

 

感想
設定やメッセージ性は面白くて
世界観が魅力的な映画でした
でも、ちょっと詰めが甘くて全体的に雑な印象の映画
特に終盤はいろいろ唐突で
結局、何がしたかったのかあまりわからなかった

 

前からちょっと気になっていた映画だったので
見に行ってきました

ダークな雰囲気に魅力を感じていましたが
まさしくダークなミステリーって感じ
現代社会に対する皮肉的なメッセージも込められていて
なかなか興味深い映画だったと思います

ただ、ちょっと物足りなかったというか…
なんか中途半端な映画だったのも否めない

目の付け所やテーマは面白いけど
だからこそ惜しい映画でもありました


まず、設定の話をすると

衣食住が保証されセックスするのも自由
この町から出ずに命じられた作業をこなしていれば
何の不自由もなく生きて行ける世界

その町で生きていく中で
生きるとは何か?
自由とは何か?
を描いている作品です

思考停止して楽な生活を送ることははたして自由なのか
という問題提起をしていて
そこに主人公が向き合っていく

この町で生きている人々がただの数としての存在という描写は
現代社会に対する皮肉でもあったりします

そんな数に左右される社会の曖昧さ
例えばTwitterでバズるとか
テレビが言う世間の声とか
行列のできるお店
選挙

数字で表されるそれらは本当に信憑性があるのか?
と疑問を感じさせられる映画です


そんな独特な世界観に引き込まれて
そこが魅力的な作品で

この町は一体なんなのか?
主人公はどうなってしまうのか?
本当の自由とは?

謎だらけで先が気になる設定に
興味をそそられてどんどんこの世界に入り込んでいく

ミステリアスな雰囲気がとてもいい映画なんですけど

最後まで観ると
結局それだけだった

最後に大きい何かを期待していたけど
大して何もなくて
雰囲気だけで終わってしまった印象


そもそも、よく考えると
この映画はほとんどストーリーがなくて

主人公の蒼山がこの町にやって来て
そこからはこの町がどんな町なのかの説明ばかりなんですよね

終盤に差し掛かると少し物語が展開しますけど
そこに至るまではほとんどなにも起きてません

町で生活する蒼山や町の住人たちが
何をやって過ごしているのか
ただそれをひたすら見せられるだけ

蒼山がなぜこの生活を受け入れてるのか
何を考えているのか
そんな描写はほぼ描かれません


まあ、そんな生活の中で
風刺や皮肉のメッセージを見せてはくれます

なので別につまらなくはないんですよ

この町自体が興味深い存在なので
町の説明だけでも結構面白く観れる

この町にはどんな人間が住んでいるとか
ネットで何かを絶賛したりディスったり
他人の選挙券で選挙に行ったり

そんな描写はとてもユーモアがあって
この映画の魅力でもあると思います


でも、そこはやっぱり掴みの部分であって
観ている側はそこから先にも期待している

この町は何のためにあるのか?
そんなシステムに歪みはないのか?
主人公はこの先どんな答えに行き着くのか?
次の展開がどうなるのかを観たいわけです

で、本作はと言うと
そういう部分がすごく薄いです

この町ではこんなことをしている
って部分を見せるだけで
物語やキャラクターが全然描かれてない

さすがに町の説明だけでは飽きてきます
最初はワクワクしながら観てたけど
途中からは別にワクワクもなくなってくる

町でやってることに関しても
内容は違うけど基本的に同じようなことの繰り返しだったりするし

そして、次第に
この物語はどこに向かってるの?
主人公は何がしたいの?
てか、全然なにも進んでないよな…
みたいな気持ちになってくる

人間ドラマもさほどないし
スリルや謎解き要素もないし
すごく薄っぺらいことに気付いてくるんですよ


得体の知れない異常な集団の恐怖を描いてるにしてもちょっと弱いと思うし

この町で暮らす人たちは普通の人たちよりかなり良識あります

欲望に関してはセックスばかりでちょっと頭が悪くも見える

「ミッドサマー」みたいにしたかったのかもしれないけど
あれに比べると異様さもなくて
気持ち悪さや恐怖を感じることも全くありませんでした

 


そして、後半になってくると
妹を探しに町にやって来る紅子が登場しますが
彼女が登場してからは
さらに雑で唐突な展開が始まります

正直、ここから先はなかなか酷いと思わされてしまった

紅子の目的は
妹の緑とその娘を町から連れ出すことなんですけども
紅子の筋が通ってないからすごくイライラさせられるんですよね

紅子が感情だけで暴走してるようにしか見えない

そもそも、この町で暮らすことの何がダメなのか
って部分が全然ないんですよ

僕はこの映画を観て
普通にこの町で暮らすの便利だし楽だしいいな
と思わされてしまった

で、そのあとも全然問題もなく
みんな楽しそうに暮らしてるんですよね

むしろ、後から急に来た紅子がその和を掻き乱すようで
すごくこいつウザいなって印象しか受けない

ここは、外から来た紅子に
この町がいかに異常なのかを語らせなきゃならないと思うんですけどね

でも、肝心の紅子は
なんの哲学も思想もなく
ただ行き当たりばったりで
他人の気持ちも考えず
自分の感情だけで突っ走っていく

しかも、その感情がどこから来たのかの原動力も謎だし
結局こいつは何したいんだよって状況が最後まで続きます


蒼山も紅子が来てから急に馬鹿になってしまい
目的も気持ちもよくわからんまま
強引に脱走しようとしだす始末

蒼山と紅子の恋愛も唐突すぎて全然ついていけませんでした
こいつらいつそんな関係になったんだよ

そんな無計画で行き当たりばったりの2人が
最終的に脱走を成功させるけど
そのあともあまりに無計画すぎてイライラしっぱなしです

子供ができたのとかさすがにアホすぎると思う

どの状況で子供作ってるんだよ

町であんなに避妊具が用意されてたんだから少しくらい持っていけよ
車で生活してたんならセックスのときは妹の娘を外に追い出してたのか
みたいなツッコミどころがめっちゃある

 

で、結局この映画は何を伝えたかったんでしょうか

途中まではなんとなくいい感じのメッセージがあるような気がしてたけど
終盤の強引な展開を見せられたら
なんかよくわからなくなりました

あの町の何がダメなのか言及してないし
ラストに主人公が自由になったのかどうかも説明不足だし
てか、主人公の内面が空っぽすぎて何をしてるのかわからなかったし

いろいろ中途半端で結局なにを言いたかったのかわからないんですけど

戸籍がなくなってて外の世界でまともに暮らせないってのも
やりたいことはなんとなくわかるけど
それでなんなんだよ

その先がないからメッセージが伝わってこない

いろいろと伝えたいことがあるのは理解できるんですが
具体性が無いと言うか…

それでなに?
の部分が描かれてないから
問題について考えるにしても
何を考えればいいんだよって状態なんです

町のシステムや主人公の言動など
どれも核心をついてないから全部フワッとしたまま終わってしまいました

観る側に答えを委ねるような作品にしたのかもしれないけど
いくらなんでも説明不足すぎるし描写不足すぎる
いろいろと投げっぱなしで終わっちゃうので

最後まで観ても
居心地良さそうだからこの町で暮らしたいな
って思ってしまいますよね

 

入り口が興味をそそるし
世界観はとても魅力的でしたが
それだけかな…って映画でした

この映画は設定を見せてるだけのように感じました
もう少し人物描写をしっかり描くべきだったんじゃないかと思う

もっとストーリーやキャラクターを深く描けば
もっと面白くなったかも