何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」感想 とてもクオリティの高いアニメ ただ、ちょっと期待しすぎたかも

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どうもきいつです


アニメ映画「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」観ました
2018年にテレビで放送されていた
京都アニメーションによる人気アニメ
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の完全新作劇場版アニメ
テレビアニメのその後の物語が描かれます

監督はテレビシリーズに引き続き石立太一が務めています

 

www.nanimokamogakokkei.com

 

あらすじ
戦争が終わってから数年後
世界は少しずつ平穏を取り戻し
新しい技術の開発により人々の生活も変わり始めていた
「自動手記人形」と呼ばれる手紙の代筆業を務めるヴァイオレットも大切な人への思いを抱え
その人がいない世界を生き抜こうとしていた
そんなある日、1通の手紙が見つかる

 

感想
いつも通りクオリティの高い映像がとても素晴らしかった
感動できるアニメに仕上がっていると思います
ただ、期待以上のものは見れなかった印象
ただの泣ける感動アニメで終わっていて
それ以上の深みは無かったように思う

 

テレビアニメが好きだったので
劇場版の本作も楽しみに観てきました

泣けるアニメと話題になっていた本作ですが
劇場版もブレずに泣ける感動アニメになっています

かなり評判もいいみたいで
泣いたって感想で溢れかえってますよね
僕が観た回でも泣いてる人が結構いました

そんなみんなが大号泣の中
僕は全く泣きませんでしたけど

これはただ斜に構えてるわけではなくて
ちゃんと理由があります

以前に外伝を観たときにも感想を書きましたが
本作の感想はそれと被るところも多いです

良い部分も悪い部分もほとんど同じです
と言うか、テレビシリーズを通しても同じかもしれない

 

まず、本作を観るに当たっては
テレビシリーズを全部観ている必要があります
本作は「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の最終章という位置付けだと思います

個人的にはアニメシリーズで完結してるように思っているので
本作はファンに向けたおまけ作品って感じもする

なので、この映画が初見だと
たぶんさほど感動も涙もないんじゃないでしょうか


正直言って

誉める部分は外伝の感想と全く同じで
アニメ映像が素晴らしい
泣かせる演出がすごく上手い
みたいなほとんど同じ内容で今さら言うことがありません

確実に言えるのは
映像に関しては他のアニメ作品に比べても
ダントツに水準が高い素晴らしいクオリティのアニメ
そこだけは誰もが納得できると思います


そして、悪い部分はと言うと
これも外伝と同じで

簡単に言えば
ただ泣けるだけのアニメ
だと思うんですよね

テレビシリーズにも言えることですが
この作品が泣けるのは
泣かせる演出がすごく上手いからなんだと思うんですよ

美しい映像表現
音楽の使い方
登場人物の表情などの描写
それらを使って泣かす空気を作るのがすごく上手い

こんな作風はお涙頂戴と言われてしまうかもしれないですけど
ここまで貫けば天晴れと思わされるレベルです

ただ、これが通用するのはテレビアニメの尺だからだとも思っていて
本作のような劇場版作品になると話は別だと思うんです

本作はアニメ映画としてもかなり長い作品で
2時間以上もあります

 

で、僕が本作を観て率直に思った感想は
すごく物足りない

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の集大成であり
2時間以上もある映画なので
もっと感動できると思ったし
もっと深いものを見れると思ってました

でも、実際に観終えてみると
ほとんど感情が昂らなかったし
あっさり薄っぺらくも感じてしまいました

この映画は2時間以上もあるのに
人物描写がすごく薄くて
詰め込みすぎなようにも感じた


細かいことを言っていくと

本作の構成がいまいちだと思います

大きく3つのエピソードに分かれる作りになっていて

本編よりも未来の時代の女の子のパート
余命わずかな病気の男の子のパート
ヴァイオレットとギルベルトのパート
この3つが交互に描かれていきます

3つのエピソードを1つの作品で描くのは全然悪くはないと思うんですが
本作の場合はこの3つのエピソードがなんかバラバラなんですよね

大切な人に言葉を伝えるという一貫したテーマはあるものの
物語としてはさほど繋がっていなくて
場面が変わる度に物語がブレてくるんですよ

これってオムニバスで別々に描いても全然伝わるような内容で
それを無理やり絡めて描いてるんです

それぞれのエピソードが作用して
物語の核心に近づいていく作りならこれもありですけど

本作は特にそういうのもなく
単にエピソードを交互に見せてるだけなので
無駄にややこしくもなってるし
それぞれの人物描写も薄まってる気がします


この映画はヴァイオレットとギルベルトの物語の結末を描いた作品で
他のエピソードを描いたとしても
最終的にはそこに繋がるべきだと思うんです

でも、他2つのエピソードはそれぞれ独立しているので
結局、メインのストーリーに良い影響を与えてない
テンポが悪く見えるだけになってました

特に未来の女の子のエピソードなんかは普通にいらないと思います
このエピソード自体がすごく薄いし
メインのエピソードと全く関わりがない

はじめは最終的にこの未来のエピソードに話が繋がっていくのかと思っていたんですが
女の子が歴史を辿ってるだけのエピソードで終わってしまったので拍子抜けでした

この未来のパートって
ただテレビシリーズ10話の感動エピソードをもう一度見せるためだけの役割なんですよ…


もう1つの病気の男の子のエピソードは
メインエピソードと同時進行なので
それなりに繋がってるようには見えますけど

このエピソードを経てヴァイオレットやギルベルトになにか変化を与えたのかと言うと
さほどそうでもなくて

手紙は手紙で良いところがあるし
電話は電話で良いところがある
みたいなよくわからんメッセージを伝えて終わり

ここで言いたいことはわかるんですが
このメッセージ自体がメインエピソードに関わりがないので
結局何を伝えたいんだろう?
と思ってしまう


つまるところ
こんな小手先でエピソードを詰め込むなら
ヴァイオレットとギルベルトのストーリーに絞って
もっとそこを深く掘り下げてほしかったと思うわけです

実際にこの映画を観ていても
肝心のヴァイオレットとギルベルトの内面や想いが
しっかりと描かれていない印象を感じました


ギルベルトなんてただの面倒くさい男にしか見えなくて
全然好感が持てなかったりします

あまりにも身勝手にヴァイオレットを遠ざけようとするわけですが
その理由はなぜ今さら感が否めない
そしてどこかフワッとしていて掴み所もありません

ギルベルトをもっと深く描写すれば
その部分にも納得できただろうし
感情移入もできたと思う


ヴァイオレットに関しても
最後までミステリアスで掴み所がなく
最後に感情をあらわにして涙を流したりもするけど
そこまでの積み重ねが薄い気がします

この2人の関係性や想いにもっと焦点を当て深掘りすれば
本当の意味で感動もできたと思う

表情や映像表現でそれらを伝えようとはしてますけど
それだけじゃやっぱり弱いですよね


テレビシリーズに関しては短い時間の中でも
人物描写を繊細に描いて感情移入できましたし
本作のような薄さはさほど感じなかったんですけどね…

 

とは言え
泣ける映画であることは間違いなくて
泣けるポイントはたくさん用意されている

泣きたい人が観れば
最初から最後まで大号泣じゃないでしょうか

ただ、それも結局は記号的なものでしかなく
本当の意味で感動してるのかと言えばそうではないと思う

泣くためのスイッチって感じですよね


個人的には泣ければいいって思いがそもそもなくて
本当に感動させてほしいって気持ちが強いです
本作だけでなくどんな作品に触れるときも
そう思っているので

本作のような記号的なものに泣けるだけの映画はやっぱり物足りなく感じます


「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は素晴らしいアニメだと思いつつも
どこか自分の中では突き抜けた作品ではない

そう思ってしまうのは
この作品に深みが足りなからなのかもしれない

 

否定的な意見ばかりになりましたが
それはこの作品にとても期待していたから
もっとすごいものを見せてくれるんじゃないのかと思っていたからです

数あるアニメの中でもかなりレベルが高いのは間違いなくて
ここまでのアニメ映像はなかなか見れないと思う

だからこそ、ただの泣けるアニメでは終わってほしくなかった
本当の意味で感動できる作品が観たかったです

 


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