何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「ウルフウォーカー」感想 ストーリー、映像、音楽 どれも美しい 素晴らしいアニメ

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どうもきいつです


アニメ映画「ウルフウォーカー」観ました

アイルランドのキルケニーに中世から伝わる伝説を基に作られたアニメ映画
眠ると魂が抜け出し狼に変身するウルフウォーカーと
ハンターの父を持つ少女との友情を描いています

アイルランドのアニメスタジオであるカートゥーン・サルーンが
「ブレンダンとケルズの秘密」「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」に続くケルト3部作の完結編として製作
監督はトム・ムーアとロス・スチュアートです

 

あらすじ
中世アイルランドの町キルケニー
少女ロビンはハンターの父と共にイングランドからキルケニーにやって来た
ある日、ロビンは父を追いかけ森に入る
そして、人間とオオカミが1つの共存するウルフウォーカーのメーヴに出会う

 

感想
独特な画風が美しくとても魅力的
ストーリーはシンプルだけど
だからこそ伝わるメッセージを感じます
絵本のような暖かい作風で子供も楽しめる
でも、とても深い作品でもありました

 

本作を手掛けるカートゥーン・サルーンの作品
「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」を以前に観てすごくよかったので
同スタジオの作品である本作も観たくなり
楽しみにして観てきました

他の作品はちょっとまだ観れてませんが
作風は同じ感じなんじゃないかなと思う

本作は3部作の完結編と言われていますが
べつに前作とストーリーが繋がってるわけではなく
1つの作品として完結しています

なので本作だけを観ても全然理解できる内容
前作を観てなくても安心して観れます

 

本作の1番の特徴は
やっぱりアニメ表現だと思います

かなり独特な画風でとても印象的

日本のアニメとも違った表現だし
ディズニーなどのCGアニメとも全く違う
あまり見たことがないような映像だと思います

基本的にかなりデフォルメがされています
キャラクターや背景がリアルさよりもデザイン性が重視されている
とても装飾的な表現なんですよ

例えば
立体感によるリアルさの表現は完全に捨てています
立体感を作り出す透視法などはほぼ使われておらず背景はとても平面的
そこが不思議な映像になっていて独特な世界観を生み出せている

ただ、遠近法は使われているので
完全な平面ではなく奥行きは感じられる
かなり絶妙なバランスの画風なんですよ

それに、それがただ奇をてらっただけの画風ではなく
デザイン的に見栄えがよくなるように考えられた構図なんです

キャラクターの顔をしても
ぱっと見て誰が誰なのかすぐにわかる
顔の形、体のフォルム、パーツの配置など
どれもバランスがいいし
その組み合わせでキャラクターの個性すらも表せている

このデフォルメされたデザインが可愛らしさや暖かみも生んでいます
特に動物はすごく可愛い
癒される

こういう部分は子供にも受け入れられやすいでしょうし
子供に見せたい映画だなと思わされる要因です

そんなデフォルメされた絵は写実的ではないけれど
そこにはリアルさすら感じるたりもするんですよね


それと
人間の住む町とオオカミの住む森との描き分けも素晴らしい

この2つの描き分けで
町と森の相容れなさや住む世界の違いなどを
わかりやすく表現できています


町の表現は
四角や三角の形が多用されていて
どこか堅苦しい雰囲気を感じます
それに版画のような画風で
線のタッチもちょっと強め

建物が規則的に並ぶ様からも
自由のないまさしく檻の中のような世界を感じさせられます


一方、オオカミの住む森は
手描きのスケッチのようなタッチで
とても優しさを感じられる

線の動きは丸みがありとても自由で
鉛筆で描いたような暖かみもある

それでもデザイン性はしっかりとあって
構図などもとても美しい
アールヌーヴォーのような装飾性があるんですよね

ここから森の自由さや広大さがうかがえて
解放感を感じられます


この2つの描き方の対比が
本作のテーマをより際立たせていて
すごくいい役割を担っていました


で、そんな平面的でデザイン重視な世界の中で
キャラクターを生き生きと動かしている
そこがこの映画の最もすごいところかもしれない

これってかなり難しいことだと思うんですよ

写実的な世界の中でリアルに動かすのは
そんなに難しくないと思う
ただ、本作はかなり抽象的な映像でもあって
その中で無理なく動きをつけるのなかなか難しいと思います

でも、本作はむしろキャラクターが生き生きとしていて
躍動感があるし表情が豊かだし
写実的ではないのに全てにリアルさを感じれるんですよ

こんな映像はなかなか見れないと思います
これだけでこの映画を観る価値がある

アニメは日本のものって風潮ありますけど
こんな作品を見せられると
アニメは日本が最先端ではないようにも思わされる…

それくらい本作はレベルの高いアニメなんですよ

 

そして、ストーリーですが
これはかなりシンプルです

言ってしまえば
かなり「もののけ姫」に似てます

町側の人間とオオカミ側の人間との友情を描いている物語です
そこから人間と自然はどうあるべきかという部分に踏み込んでいくわけです

複雑な設定なんかはほぼなくて
単純明快なストーリーだから子供でも全然理解できる内容で
そんなシンプルな内容だからこそ
ストレートにメッセージも伝わってくる

主人公ロビンの成長物語がとても心に刺さります
父親の思いやメーヴとの友情
それに翻弄されつつも
自分なりの答えを見つけ出そうと奮闘し
最後には自分の意思で戦うことを決意する

とても感動的だし心を揺さぶられました


で、本作のラストは
ハッピーエンドって感じの終わり方ですけど
個人的にはちょっと切なく感じた

ロビンとメーヴが家族やオオカミと共に新天地を目指す
という結末なんですけど

これって結局
人間と自然は相容れなかったというラストだと思わされる

ロビンやその父親はメーヴたちオオカミと共に生きることを選んだけど
町の人間たちはオオカミを受け入れなかったし
イングランドから来たロビンたちも町に受け入れられなかった
という風にも感じれるんですよね

ただ、これは真理にも思える
個人ではわかり合えても
グループ単位ではわかり合えない
ってことはよくあることで
だから戦争もなくならない

ラストにはすこし現実を突きつけられたようにも感じました
だから教訓にもなるんだろうと思います

 

あと思ったのが
以前に観た「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」はエンタメ性が弱かったんですけど
本作はエンターテイメントとしても面白く観れました

ストーリーの展開もワクワクさせられたりスリルがあったり
最後には感動させられます

映像もスピーディーに動くシーンもありますし
テンポよく楽しいシーンもある
音楽と映像の調和もすごくよかった

観ていてとても心揺さぶられて楽しめる映画にもなってると思います

 

単純にかなりクオリティの高いアニメ映画だと思います

最近の海外のアニメ映画はリアルの先を描こうとしてるのが多いですよね
リアルな表現だけで終わってる日本のアニメはちょっと危ういんじゃないかと思わされる

芸術的でありエンタメとしても楽しめる本作は
ほんとに素晴らしい作品だと思います
いろんな意味でいい映画
これを映画館で観れてよかったです

 


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