何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」感想 エヴァにけじめをつけた作品 止まった時間が動き出す

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どうもきいつです


アニメ映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」観ました

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの完結編
大ヒットアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を再構築し
4部作で描かれた劇場版の第4作目です
3作目「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」から8年ぶりの新作
汎用ヒト型決戦兵器 人造人間エヴァンゲリオンに搭乗する碇シンジたちの戦いが描かれます

「エヴァンゲリオン」シリーズを手掛けてきた庵野秀明が総監督を務めています

 

あらすじ
ミサト率いるヴィレは
大破したエヴァンゲリオン2号機、8号機のパーツを入手するため
赤く染まるパリの街で戦闘を繰り広げる
その一方で
シンジ、アスカ、レイの3人は
ニアサードインパクト後の崩壊した世界を放浪していた

 

感想
エヴァらしくありエヴァらしくない作品
庵野秀明の思いが強く込められた作品だと思います
難解と言われているエヴァだけど
今回は意外とわかりやすい
エヴァンゲリオンの最終章として納得の映画でした

 

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの最終章
ということでとても楽しみに観に行ってきました

僕は世代的にも
テレビアニメのエヴァを観てきましたし
新劇場版はリアルタイムで追ってきました

めっちゃ詳しいとかめっちゃ考察しまくってる
みたいなコアなファンって訳ではないけど
それなりに思い入れの強い作品ではあります

この映画について詳しく解説したり考察している人はたくさんいると思うので
僕はこの映画を観て感じたことを中心に書いていきたいと思います


まず、エヴァと言えば
難解で考察ありきの作品というイメージも強いですけど

本作はそんなの抜きでも普通に面白く観ることができると思います

てか、本作だけでなく
これは今までの作品全てに言えることでもありますが

映像的にもシンプルに魅力的だと思えるシーンがとても多くて
観客の気持ちを上げる見せ方も上手いです

これがエヴァの魅力でもあって
何も考えずに観てもカッコいいアニメなんです

みんな考察とか深読みに行きがちですけど
実はそんなに深く考えなくても楽しめる作品

それは本作でも健在で
冒頭のパリでの戦闘シーンから
めちゃくちゃカッコいいシーンの連続

やっぱりアクションはこのシリーズの目玉でもあって
巨大なエヴァンゲリオンが派手に街をブッ壊しながら戦う姿は
とにかくテンションがブチ上がる

巨大な戦いはウルトラマンやゴジラなどの特撮の影響でしょうけど
そんな特撮のよさを残しつつ
アニメだからこその
いろんな角度からの見せ方やありえない動きなど
戦闘シーンにはかなりのこだわりを感じます

で、激しく戦ってる映像をただ派手に見せてるだけではなく
どこかデザイン的で見映えもすごくカッコいいんです
一時停止で動きを止めて場面を切り取っても
それだけでカッコいい画になると思う

こんなアクションシーンさえ見せてくれればまず満足ですよね

アクションだけに限らず
こだわりの強さは庵野秀明の趣味の色が大きく出ています

設定やテーマを深く考察するのもいいですが
造形や背景のデザイン的なこだわりや
古今東西様々な作品のオマージュなども豊富なので
そこを楽しむのもいいと思います

 

そして、やはりエヴァはそれだけでは終わらず
深く考えさせられるアニメでもあります
本作もいろいろと考えさせられました

細かい考察とかは多くあると思いますけど
そういうのは抜きにして

僕がこの映画で1番強く感じたのは
先へ進むこととけじめ
これが重要なテーマだと思うんです


本作は今までのエヴァ作品以上に
かなりストレートにテーマやメッセージが描かれています

そこがちょっとエヴァらしくなく少し驚いたくらい

TV版や旧劇場版なんかは特に
遠回しにそれっぽいことをにおわすような作風で
だからこそ難解でみんな考察していたわけです

ただ、今回の作品は
何を伝えたいのかがわかりやすく伝わってくる
そして、この作品を通して何をしたいのかもなんとなくわかる

何よりも
エヴァンゲリオンという作品はどういった作品だったのか
それが理解できて府に落ちた


本作をラストまで観ると感じるのが

エヴァンゲリオンという作品は庵野秀明そのものだったんだな
ということ

監督がこの作品に自己投影している部分は大いにあるし
監督が作品に向き合う姿勢
監督の趣味嗜好が多く詰め込まれてもいる

そして、この映画を作ることでけじめをつけたんだと思うんですよね

本編の中でも“けじめ”という言葉が何回か発せられます
これは登場人物の決意の気持ちでありながら
監督の作品に対する気持ちでもあると思う

1995年にテレビ版の放送が始まり26年の時が経ちますが
長い時間の中で
作品が大ヒットして旧劇場版が公開され
新劇場版も順番に公開されてきました

その長い歴史に幕を閉じるという強い気持ちが
本作から強く伝わってくる
自分の手でエヴァンゲリオンという作品に
終止符を打たなければと使命感があったのかもしれない


そして、エヴァンゲリオンを終わらせる本作で
主人公のシンジが先へ進む姿を描いたんじゃないでしょうか


今回のシンジは
今までの作品以上に明確に大きく成長します

これまで描かれていなかった父親との対峙や
他者へ救いの手を差しのべる姿
ずっと後ろ向きだったシンジが未来だけを見つめ決意し行動する

明らかに今までのエヴァと違う方向へ物語が進んでいくんです


特に
シンジと父親ゲンドウとの対峙の場面では
2人の対比とシンジの出す答えが
先へ進むこと
エヴァンゲリオンを終わらせること
それを浮き彫りにしていると思う

本作のラスボスでもあるゲンドウは
失った人を取り戻し
自分の心地良い世界での永遠を求める

それに対しシンジは
失った人や今生きている人たちの想いを受け継ぎ
さらにその想いを誰かに託すことを選ぶ

シンジは未来へ進むことを選択するんです

最終的には
全ての人を救いエヴァンゲリオンの無い世界に旅立つ


この結末を観て
本作がエヴァンゲリオンの卒業式のようにも思えました

登場人物たちはエヴァンゲリオンの世界から旅立ち

庵野秀明はこの作品を締めくくり次のステージへ上がっていったのかも

そして、観客である自分たちは
この映画を観てそろそろエヴァンゲリオンを卒業しろよ
と言われているような気がした


長年エヴァを観ていろいろと難しく考察してきたファンたちは
この映画で言うゲンドウと同じ立ち位置なのかもしれない

大人になれない大人たちがエヴァの世界に留まっているところを
いつの間にか大人になっていたシンジに
そろそろ未来を見て先に進もうよ
大人になれよ
と諭されたような…


ただ
大人なんだからアニメなんて観るな!!
みたいなキツイ言い方でもないんですよね

本作の終盤は実写の映像が使われたり
撮影のセットの中で戦ったりと
現実の世界を感じさす演出があります

この実写の手法って
旧劇場版版でも使われていたんですが
今回はその時とちょっと意味合いが違うように思います

旧劇場版はそれこそ
アニメなんて観てないで現実見ろよ!!
って感じだったんですけど

本作の場合は
どこかアニメと現実の境界線が曖昧でもあって
アニメと現実の世界が地続きのように感じれる

これって
エヴァの世界から旅立ってもその世界は確実にあって無ではない
今までの時間も良い思い出でで
それを糧にこの先も生きて行こう
みたいなことのように思えた


これは庵野秀明自身のことでもあるだろうし
作品を観てきた自分たちのことでもあると思う

たとえ作り物のフィクションであろうと
現実を生きて行くための救いになる存在

物語の存在意義を感じることができました

 

本作もこれまでのエヴァと同じく
意味深なシーンがあったり
伏線を回収していない部分があったり
全部を説明しているわけではないです

そういうこともあり、いろいろと考察したくもなりますが

実はエヴァンゲリオンって作品は
もともと考察することなんて重要じゃなくて

本質は
エヴァンゲリオンという作品は庵野秀明そのものということ

そこがこのシリーズの面白い1番の要因なんですよ

1人の人間の歴史を観ているような作品なんです

だから今回の最終章は感動できる

エヴァンゲリオンの歴史
庵野秀明の歴史
それがあるからこそ描けた映画で
唯一無二の作品なんです

こんな素晴らしい最終章を観れたんだから
いままでエヴァを追ってきて良かったと思えました

 


ここまでいろいろと御託を並べましたけど
結局はアニメ作品としてシンプルに面白い

正直、万人ウケのアニメではないです
ストーリーがどうとか伏線がどうとか
そこにこだわる人には微妙かも…

でも、今までエヴァを観てきて好きだった人は大満足の作品だと思います

僕はこの映画を最高の作品だと思う

 


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