何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「ノマドランド」感想 こんな生き方もありかな

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どうもきいつです


ドラマ映画「ノマドランド」観ました

ジェシカ・ブルーダーによる
ノンフィクション小説「ノマド:漂流する高齢労働者たち」原作に
ノマドと呼ばれる車上生活者の生きざまを描いたロードムービー

「ザ・ライダー」で高く評価されたクロエ・ジャオが監督を務め
「スリー・ビルボード」などのオスカー女優フランシス・マクドーマンドが主演です

 

あらすじ
ネバダ州に暮らす60代の女性ファーンは
企業の倒産で住み慣れた家を失ってしまう
キャンピングカーに全てを詰め込み
ノマドとして過酷な労働現場を車上生活しながら渡り歩いていた
毎日を懸命に行きながら
行く先々で出会う人々と交流を重ねていく

 

感想
様々な生き方がある中で
こんな生き方も悪くないのかもなと思わされる
それぞれの価値観で生き方は選べる
ただ、文化や国柄の違いがあるので
日本人の自分にはいまいちこの映画がピンとこなかったのは否めないです

 

とても評価が高く様々な賞を授賞し
なかなか評判もいいみたいなので観てきました


そもそもエンタメな映画を期待していたわけではないですが
正直言って面白い映画ではなかった印象

とは言え
わかりやすい面白さのある作品ではないけど
賞を取る作品だというのは納得できます

社会派の作品で
この映画からアメリカの現状や問題が見えてくるし
ノマドたちの立場や生き方を知ることができます

ちょっと敷居が高い映画なのかな
と感じました

軽い気持ちで観に行くとちょっと後悔するかも

 

まず、明確なストーリーはほぼなくて
基本的に
主人公ファーンのノマドとしての生活を淡々と見せられる映画です

なので、特別ドラマチックな展開もなくリアル重視な物語

人によっては退屈に思う人もいるでしょうね
眠くなるかもしれません

でも、ドキュメンタリーを観ている気持ちで観れば興味深い内容だし
そこまで退屈しないと思います

ファーンが旅の中で出会う人々は
実際にノマドの人たちで、さらに実名で登場する
そんな要素もあって
この映画はほぼドキュメンタリーみたいなものです

淡々と現実を見せつけるような作風

そこからいろいろと感じれるものがあって
ノマドとはどんな人たちなのかも理解することができます

 

特に
自分らしく生きようとするファーンの姿にはどこか共感できましたし
いわゆる“普通”の社会の生きづらさを感じることもできました

端から見れば
ファーンの生活は不安定で苦労している哀れな人のようにも思えてしまうけど

ファーン自身はその生き方を自ら選択して
そこに生き甲斐を感じていたりもします

何回か“普通”の生活に戻るチャンスが訪れますが
ファーンはそっちの道は選びません

彼女が意地をはって頑なになってるようにも感じてしまうかもしれないけど

実はそういうわけではなくて
ファーンは“普通”の社会に生きづらさを感じていて

無理やりそんな人生を歩むのなら
その日暮らしのギリギリの生活ではあるけど
自由に放浪しながら生きる人生のほうが
自分らしく生きることができると悟っています

だから、彼女の姿を見ても
哀れだとか悲しそうだとかは感じず
逞しさや格好よさの方が強く感じる

確かに楽な生き方ではないけども
ファーンや他のノマドたちの生き方もそんなに悪くはないな
と思わされました

自分も“普通”の社会や価値観に生きづらさを感じているのは間違いなくて
この人たちのように解放され自由に生きている姿には
少し憧れも感じてしまいます

美しい自然描写も相まって
ノマドたちの生き方はとても美しく感じることができました

 

ただ、この映画が100%自分の心に刺さって感動できたかと言うと
実はそうでもなくて

どこかこの映画が他人事のようにも思えてしまいます
自分とは関係のない世界の話に感じてしまう


この映画のレビューなんかを読んでいると
称賛、絶賛してる人がとても多くて
そこにもちょっと引っかかる


そもそも本作は万人ウケの映画ではないと思うんですよ

エンタメ要素は全然ないし
すごく抽象的な映画でもあると思います

観る人が何かを感じ取ってください
ってタイプの映画なんです
明確な答えを見せられるわけでもないですし


何よりも
日本人からすればノマドというものが
あまりにも馴染みのない文化なので
この題材にピンとこない

アメリカの広大な土地があっての
車で放浪するノマドですし

住所もない車上生活の人たちがそれなりに働くことができて
そこまで悪くない生活を送れているのも
ちょっと日本ではありえない光景だと思う

日本とは大きく違う文化でもあるので
あまり共感できなかったりもするし
別の世界の他人事で自分には関係のない話にも感じます

だから、みんながみんな
この映画はすごい
と言っているのにはちょっと違和感がある

絶賛してる人たちの感想は
なんかフワッとした抽象的な感想だったり
それっぽいインテリな感想だったりが多くて

評価の高い映画だからと
ちょっと流されてるような…

それはさすがにひねくれた見たかをしすぎですかね?

 

あと、この映画をポジティブに受け止めてる人も多くて

美しい大自然の景色や
自分らしく逞しく生きるノマドたちの姿
などを見てそう感じているんだと思う


でも、僕は
やっぱりこの映画からは暗さや冷たさも感じて
単に前向きなだけの作品には思えませんでした
ネガティブな印象も強く感じる

確かにファーンは自分らしい生き方を求めて
このノマドという生き方を自ら選んでいるのは間違いないです

ただ、これは
たくさんある選択肢の中から選んだというよりは
消去法でこの道しか彼女にはなかったようにも思えます

自分らしさを求めて逞しく生きるファーンには
美しさや強さを感じる反面
どこか諦めのようなものを瞳の奥に感じる時もありました


それに、自由に生きているとは言うものの
結局は社会に縛られてしまっている側面もあります

Amazonの倉庫などで短期で働いたりしてますが
これは完全に彼女たちが社会に搾取されている姿そのもので

社会から切り離され自由にも思えるノマドでも
低賃金でいいように使われていて
でも、それがなければ生きていくこともままならない


もし、自分が
たくさんの選択肢の中から
ノマドという生き方を選べるとしても
この生き方は選ばないと思う

自分らしさや自由を追い求めるとしても
ノマドの生き方は最終手段のように思えてなりませんでした

ファーンや他のノマドたちを見ていると
いろいろ訳がありこの生活を送っています
その中で生き甲斐や自分らしさを見つけることもできている

ただ、これがこの人たちの本当に求めていた理想の人生ではないとも思う
自由に生きていると自分を納得させて
生きているようにも見えました

やはりノマドの人たちには哀愁や孤独を感じさせる一面もあって
少し暗い気持ちにもさせられてしまいました

 

決して面白い映画ではないですけども
とても興味深い映画ではありました

国の違いで日本人には共感し難い部分はあって
ピンとこなかったのは仕方ないかも

自分はノマドのような生き方は望まないけど
この人たちの思いに共感することはできました

人にはいろんな生き方があって
ノマドのような生き方もありなのかもしれませんね

 


ザ・ライダー (字幕版)