何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「ホムンクルス」感想 ぽい雰囲気はある でも、浅いかな…

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どうもきいつです


サスペンス映画「ホムンクルス」観ました

山本英夫による漫画「ホムンクルス」を実写化した作品
とある手術をきっかけに
他人が異様な姿に見えるようになってしまった
ホームレスの男の姿を描いたサスペンス
2021年4月よりNetflixで全世界独占配信されています

監督は「呪怨」などの清水崇
主演を務めるのは綾野剛です

 

あらすじ
高級ホテルとホームレスの溢れる公園との狭間で車上生活を送る名越進は
突如目の前に現れた医学生の伊藤学により
報酬70万円を条件にとある手術を受けることとなる
頭蓋骨に穴を開けるトレパネーション手術を受けた名越は
それをきっかけに
右目だけ瞑ると人間が異様な姿で見えるようになってしまう

 

感想
原作のような雰囲気は出せていました
雰囲気は良かったし綾野剛が演じる名越も魅力があったけど
全体的に浅いかな…
原作の上澄みの部分をすくってるだけで
本質は全然描けてなかった
結局、この映画は何を伝えたいのかわからない

 

原作漫画が好きなので
この映画は楽しみにしていました

映画館でも期間限定で公開されていましたが
タイミングがなかなか合わず
その上、何故か割引が利かないというのもあり
劇場での観賞はスルー
Netflixの配信で観ました

全15巻の漫画というのもあり
2時間の映画では全て描ききれないだろうな
とは思っていたので
そこまで期待はしていなかったのが本音です

実際に観てみると
やっぱり思った通りで
だいぶ原作を薄めたなって印象

別に悪い出来ではないと思いましたが
物足りなさはかなりありました


原作を読んだのはかなり前で
結構忘れてる部分も多いんですけども
全体の流れや個々のエピソードはほぼ原作通りで

ただ、岸井ゆきのの謎の女のエピソードは映画オリジナルだし
結末も原作とはちょっと違います

違う要素もそれなりにありますけど
全体の雰囲気はかなり原作に近いように感じました


特にホムンクルスの造形はなかなかよかった
原作でもすごく変でありえない見た目をしているホムンクルスですけど

実写の本作はそれを上手く表現できていたと思います

基本はCGで所々に特殊メイクなんかも使ってると思いますが
若干チープな感じが上手い具合に
原作っぽい雰囲気を出せていました

めちゃくちゃリアルにしてしまうよりも
これくらいのチープな雰囲気が「ホムンクルス」っぽい

狙ってかどうかはわからないけど
ホムンクルスの見た目は悪くないです


あと、綾野剛もよかったかな

原作に比べるとちょっと男らしすぎる気はするけど
この映画のストーリーだと
綾野剛がちょうどよかったのかもしれないです

綾野剛の演技力や存在感が
この映画を最後まで引っ張っていたようにも思う

綾野剛はとても魅力的に感じました

 

原作を読んでいない人なら
この映画の雰囲気にさえハマれば
面白いと思うんじゃないでしょうか

ただ、やっぱりこの映画はかなり浅いですかね

原作を読んでようが読んでまいが
この映画を薄っぺらく思ってしまう人は多いと思います

特に原作を知っていれば
この映画の浅さを明確に感じることができる


この映画って
馬鹿でもわかる「ホムンクルス」
って感じになっちゃってます
何も考えなくてもなんか面白い感じはする
みたいな映画

名越がホムンクルスの姿を見ることで
様々な人の心の闇を解決するとか
ホムンクルスの独特な造形の面白さとか
そういう原作の表面的な面白さはいい感じに描けてるけど

原作で1番重要な本質の部分には全く触れてすらいないんですよね

その部分が原作者の最も描きたかった部分だろうし
そこがこの作品の面白くて深い部分でもあるわけなんですが

この映画はそこを完全にスルーしてるんですよ

そんな核の部分がこの映画にはないので
結局何を伝えたい作品なのかがわからなくなってます

正直、最後まで観ても
結局これどういうことだよ?
って気持ちになるのは間違いないです

個々のエピソードにしたって
すごく浅くて
そのエピソードによって何を伝えたいのかは曖昧

ロボヤクザにしたって砂JKにしたって
この映画では
なぜ解決したのかもよくわからん

トラウマとかコンプレックスを絡めてるから
なんか深い風には見えるけど
実は全然深くなくて意味わからんだけのエピソードで終わってます

原作ではこれらのエピソードは
もっと深掘りされてて
個々のエピソードとしてもそれなりに納得できる
その上、このエピソードがこの作品の本質へ繋がっていくわけです

この映画では
個々のエピソードが独立してて特に繋がっていくわけでもなく
浅くて意味不明なエピソードを連続して見せられてるって感じになってる


さっきから本質本質と言ってますけど
この作品の本質とは何かと言うと
主人公の名越の心の闇なんですよ

名越のコンプレックスや嘘にまみれた本性があらわになってきて
やっとこの漫画の核の部分が見えてくる

今までのエピソードも
名越の精神の部分に繋がってくるわけです


この映画ではそこに一切触れないんですよね

そもそも、名越の過去や内面にもほとんど触れず
ただ事件を解決するキャラクターで終わってしまいます

名越だけでなく他のキャラも精神面は深掘りされず
上部だけの心理カウンセリングみたいな内容になっていて
「ホムンクルス」はそういう話じゃないんだよな
と思ってしまう


後半は映画オリジナルのチープなサスペンスドラマ展開なんですけども
これは完全に逃げたな
と思いましたね

名越の心理描写なんかは完全に捨てて
わかりやすいサスペンスに成り下がってます

こっちの方が万人ウケはするだろうけど
そうなればロボヤクザや砂JKのエピソードなんて全く意味が無くなるし
名越の体にホムンクルスが移るのも意味不明なだけ

で、結局はメッセージがよくわからない
何を目指しているのか謎な映画に仕上がってるんですよね


この作品って
人間の醜い部分や弱い部分など
触れられたくないようなところをガンガンと掘り下げて
人間の心をえぐるような漫画

だからこそ人間の本質を深く描けている作品なんです

そこが1番の魅力で面白い部分なんですけども
この映画はそこから逃げてしまっていて
ただのすごく浅い作品で終わっています

ちょっと半端な映画かなと思います

 

ここまでは原作好きとしての感想でしたが
原作を知らなくても

登場人物たちの言動は
あまりに描写不足で感情移入なんでほぼ出来ないし

取って付けたようなサスペンスドラマも
いまいち面白さに欠けますし

原作を読んでいなくても浅いのは否めない
そこまで面白い映画ではないと思います

正直、雰囲気と綾野剛がいいだけで
それ以外は大したことの無い映画
原作の無駄づかいだったかな…

 

音楽が良かったりもするので
実写化大失敗の駄作とまでは言わないけど

やるのなら原作の本質の部分は描くべきだったと思います

悪くはないけど
映画館で1900円の価値はないかもしれないですね
見放題のNetflixだから許されるくらいの作品でした

 


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