何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「ザ・コール」感想 過去に追い詰められるといる逃げ場のない絶望

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どうもきいつです


サスペンス映画「ザ・コール」観ました

イギリスの映画「恐怖ノ黒電話」を原案に作られた韓国のサスペンス映画
異なる時代の2人の女性が
同じ家の電話で繋がることにより生じる歪みが描かれます
2020年11月よりNetflixで配信されています

手掛けるのは本作が長編初監督のイ・チュンヒョン
「#生きている」などのパク・シネが主演を務めています

 

あらすじ
幼い頃に火事で父を亡くしたソヨンは
母が入院中で無人となった実家を久々に訪れる
来る途中でスマホを落としたソヨンは
家の古い電話を引っ張りだし使うことに
すると20年前にこの家に住んでいたヨンスクという女性から電話がかかってきた
2人の出会いが大きな歪みを生んでいく

 

感想
最後まで先の展開が見えず
スリル満点でハラハラドキドキさせられる
現代VS過去という構図はとても面白かったです
前半と後半のギャップもすごくいい

 

Netflixで配信されているのを見て
前から気になっていた作品
最近になって観てみました


まず言いたいのは
Netflixでの作品のあらすじが若干ネタバレしている
中盤あたりの意外な展開が
これを読んでしまうとちょっとわかってしまいます

確かにこの部分は
本作の売りの部分でもあると思うので
そこを書かなければ
作品の方向性もいまいち示すことができないのはわかりますが…

まあ、知らないほうが驚きは大きくて
よりこの映画を楽しむことができると思います

観るのなら
あらすじスルーがおすすめ

 

とは言え
例えネタバレされようが
この映画は面白い
最後までスリル満点でハラハラと楽しめました

ここからは多少ネタバレもあります

 

この映画は
いわゆる“過去を変える”タイプのサスペンス

ただ、本人が過去に戻るというタイムリープものではなくて
主人公と過去の人間が交信することで過去を変えてしまう
という内容です

日本でリメイクもされてる韓国のドラマ「シグナル」なんかと似た設定
僕が最近観た「嵐の中で」も同じタイプの作品です

設定は今までのよくあるタイムリープものとは少し違いますけど
結局やってることは同じと言えば同じ

あの名作「バタフライ・エフェクト」なんかと似た雰囲気
特に前半部分は
よくある、過去を変えて幸せをつかむ話ですし


でも、この映画は
ただのタイムリープものでは終わっていなくて
設定を生かした工夫も凝らされている
サスペンス映画としてすごくクオリティが高いと思います

ここまでハラハラさせられるサスペンスは久しぶりだったかもしれません

 

本作は
前半と後半で大きく雰囲気が違います

前半はポジティブな雰囲気で

登場人物が友情を深めたり
お互いを助け合ったり
ハートフルな物語になっています

少し気持ち悪い場面もありますが
それも2人が乗り越えるべきハードルのように見える

この部分だけ観ると
すごくいい話の感じはするし
心温まる描写が多くあります


ただ、後半になると一転し
めっちゃ怖いホラーサスペンスって感じ

気持ちが追い付かないほど
怖い展開や描写のオンパレード

このギャップには
完全に映画の中に引き込まれてしまいました

前半の幸せ描写があるだけに
後半の絶望的な空気感には
もうこれ以上はやめてくれよ!!
と心の底から思ってしまう


前半のいい話路線もなかなか面白いんですが
やっぱり後半のサスペンスがめっちゃ面白いです

先の読めない展開
現代と過去の駆け引き
バイオレンスな描写
狂気じみたキャラクター

個人的にも大好きな要素がてんこ盛りで
本当に楽しめました


特に設定を生かした展開がとても良かった

主人公である現代を生きるソヨンと
過去で暴れまわるヤバい奴ヨンスクが
電話を通じて駆け引きをするわけですが

ここが斬新な戦いですごく面白いです

普通のタイムリープなら
現代の人間が過去を知っているぶん
圧倒的に有利な立場の場合が多いけど

本作の場合は
いくら知識があったところで過去には干渉できず
逆に未来を知ってしまった過去の人間は
いくらでも未来を変えことができるので圧倒的に有利

しかも
なにも知らない昔の自分が過去にいるので
ある意味、自分を人質に取られている状況での
ギリギリの戦いなんですよね

そんな中でも
過去を知る利点を生かして立ち向かっていったりもするので
そこが面白かったり

しかし、終盤なんて
ほば無理ゲー状態で
いくらなんでも勝ち目が無さすぎます

だからこそ緊張感が高まってスリルがすごい

ソヨンの父親が消されたり
子供の頃のソヨンが監禁されてしまったり

電話で声をかけることしかできない現代ソヨンからすれば絶望しかないですよね…
この絶望感はあまりにも怖すぎる

 

それと、過去が変わる度に
舞台となる家が変化するのも
映像的に面白いです

はじめは寂れた暗い家だったのが
幸せ家族のマイホームに変化し
ボロボロの廃墟に変化し
最後にはなんじゃそりゃってサイコな家へと変貌する

物語の展開に合わせて変化するので
次はどんな変化が起きるのか楽しみにもなってきます

 

あと、やっぱりヨンスクの狂気ぶりもめっちゃ良かったです

はじめはただただ可哀想な女性ですけど
ソヨンに命を救われてからの暴走っぷりが
本当に怖い

本性を現してからの
サイコな振る舞いはマジでシビれます
あんなの悪魔です

死体入りゴミ袋を殴りまくるシーンとか
たまらん


ヨンスクが人を殺しまくったりするので
なかなか刺激的なシーンも多いですが
意外と直接的なものはなく
そんなにグロくはない

ただ、すごく嫌な見せ方が上手くて
直接的ではないけど気持ち悪さはとてもあります

バラバラ死体が入ってるゴミ袋なんて
中身はほぼ見えてないけど
すごい気持ち悪いし

過去のソヨンが危害を加えられて
現代のソヨンに影響が及ぶ場面も
間接的だけどすごく痛々しい

そんな描写が所々にあるので
より緊張感を高めてくれました

 

それから
このタイプの作品につきものの
パラドックス的な矛盾ですけども
後から思い返せば
ん?
と思ってしまうことも多々あります

でも、それを言い出したら「バック・トゥ・ザ・フューチャー」だってあるし
「バタフライ・エフェクト」だってある
過去改変をテーマにすれば大なり小なり矛盾は生じるわけで
それをいかにごまかすかも大事

本作はとてもテンポがいいし勢いもあるので
観てる間は矛盾もさほど気にならないです

人間ドラマもちゃんと描いてたりもするし
いい具合に矛盾に気付きにくい作りになってます

矛盾に気付いてしまう作品って
退屈な時間が多くて粗を探しがちになってしまうけど

本作は退屈な時間がないほど勢いがあって
まるでジェットコースターのように最後まで突っ走ってくれる

 

で、この映画の結末ですが
これもすごく良かった
こんなラストは大好き

ハッピーエンドなんてクソ食らえ

 

クオリティの高いサスペンスで
とても面白く見れました

こんな映画を観る度に思うけど
やっぱり韓国映画はクオリティが高い
面白い映画が量産されてますね

同じ題材を扱ったとしても
邦画はここまでのものを作れないだろうな
と残念な気持ちもあります

最後までハラハラドキドキで最高の映画でした