何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「AWAKE」感想 淡々と静かな映画だけど熱い

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どうもきいつです


ドラマ映画「AWAKE」観ました

棋士の夢に破れた青年がAI将棋のプログラミングの世界で
新たな夢を見い出していく姿を描いた青春ドラマ
2015年、実際に行われた棋士とコンピューターの対局から着想を得て作られた作品

本作が長編初監督となる山田篤宏が監督を務め
主演は「キングダム」など話題作にへの出演が続く吉沢亮です

 

あらすじ
幼い頃から棋士を目指していた英一は
20歳の時に同時代の浅川に破れたことでプロへの道を諦める
大学に入学し無気力な生活を過ごしていた英一だが
コンピューター将棋に出会いプログラミングに興味を抱く
そして、プログラミングにのめり込む末に「AWAKE」を開発する

 

感想
将棋がわからずとも熱い気持ちがガンガン伝わってくる
将棋にかける思いが強い2人の戦いには感動させられた
地味な雰囲気の映画だけど
とても熱い映画だったと思います
ただ、ちょっと暗すぎる映画なのは否めないですが

 

公開当時に観たいとは思ってたけどスルーしてしまった映画
Netflixで配信が始まったので観てみました

コンピューター将棋をテーマにした作品で
そこがとても興味深い

内容は青春スポ根に近くて
地味な雰囲気のある映画ですけど
とても熱い映画でもあります

僕はそんなタイプの映画は好きなので
とても楽しめましたし
心打たれる部分もありました


そもそも僕は
将棋に関してはかなり無知で
基本ルールを知ってるくらいです
それとプロ棋士になる難しさは多少理解できてるくらい

なので将棋のゲーム内容については
全然理解できないんですけども

この映画は将棋のゲーム内容の面白さよりも
将棋に対する熱い思いを中心に描いているので
その点では心配なく楽しんで観れました


ストーリーの流れは王道のスポ根って感じで
ライバルの2人が切磋琢磨して高みを目指していくような内容

ただ、コンピューター将棋がテーマになっていて
そこはかなり特殊です


主人公の英一は将棋の夢は諦めて
その代わりにコンピューター将棋のAI開発にのめり込んでいきます

自分では見れなかった世界をAIに託し
高みを目指していくんです


一方、ライバルの浅川はプロ棋士として活躍し
より高い場所で強敵たちと戦い
勝ちにこだわっていきます


この2人を中心に
将棋に対する熱い気持ちが描かれる

全体的に淡々と物語が進んでいきますし
映像的にも動きが少ない映画でもあるので
地味な映画なのは否めません

万人が楽しめる将棋映画にするには
ドラマ重視にもなってしまうので
おとなしめの作風になってしまうのは仕方ないと思う

とは言え
登場人物たちの熱い思いというのは上手く表現されていて
表面的には涼しげな雰囲気が漂ってるけど
奥の方では熱いなにかが煮えたぎってるような

主人公の葛藤や成長もしっかりと描かれていて
そこに感動もさせられます

ドラマはとても練って作られていると思う


特に主人公の描写はとてもよくて
天才になれなかった人間を上手く描いています

英一は子どもの頃から将棋一本で孤独にひたすら努力を続けます
自分の思い描く理想の将棋を打ちたい思いも強くて
それを糧に将棋を続けるんですが

ライバルが自分の目指すような将棋を打ち
その勝負で負けてしまい将棋の道を諦めてしまう

ここに至るまでが切なくあり
現実の厳しさや残酷さがひしひしと伝わってくる

友達も作らず将棋だけに時間を費やし
それが英一の自信にもなるんですけど
英一の同世代の人に対する眼差しから後悔や迷いも感じられて

些細な描写なんですが
そこに、なぜ英一が天才でないのかが表現されていると思うんです

他にも
英一がプログラミングにハマることで
将棋に対する執着や熱い気持ちが伝わるし
父親の存在もいい効果になってましたし
主人公の描きかたはすごく良かったです

 

そして、本作のテーマでもある人間対AIの勝負
これの落としどころも悪くないかなと思います

結論から言えば
人間以上の計算能力のあるAIにもプログラムだからこその落とし穴もあり
だから人間は勝てるし
逆にそこをつかなければ勝てないということでもある

この決着は
人間とAIどちらが優れているのかの論争の答えでもあるように思います

AIは正しい答を導くことに優れていて間違いを犯すことがないわけです
ただ、人間はあえて間違うことができる
そこがやっぱり人間とAIの大きな違いだと思うわけです

ここだけはAIが人間と全く同じにならない限りは埋まらない部分ではないしょうか

 

全体的に熱くて面白い映画ではありましたが
やっぱり暗すぎる作風はちょっと気になってしまいます

観終えた後にちょっと暗い気持ちになってしまう映画かもしれません

最終的には
将棋は楽しいものだよ
みたいな感じの終わりかたなんですけども

さすがにラストのワンシーンだけでは
この映画から将棋の楽しさは伝わってこないんですよね

基本的につらい描写がすごく多いのもあるし
辛気くさい展開も多い

主人公もプログラミングに出会って
希望を見い出し成功もするんですけど
なんかネガティブさは拭えていなくて
楽しさは伝わってこないんですよね

ライバルの浅川にしたって
プロとして頑張ってるんですけど
暗い雰囲気が常に漂っていて
こっちはこっちで将棋が楽しそうには思えない


英一や浅川の姿は将棋に囚われすぎて楽しさを見失う
という表現だとは思うんですよ

だとしたら
せめて子どものころは楽しんで将棋をしてる姿を見せてほしい

この映画って
子どもの頃から将棋を楽しむ描写がなくて
はじめからなんかしんどそうなんですよね
最初から最後までストイック過ぎると言うか…

英一なんて
友達も青春も捨ててひたすら努力
でも報われない
って地獄みたいな青春ですし…

父親と楽しんで将棋をしてる描写とかを深く見せていれば印象も変わったかも

始めたきっかけは父親との将棋だけど
それ以上は深掘りされてないですし


それと、ライバルの浅川がなぜ天才なのかを
もう少し対照的に見せたほうがよかったかもしれませんね

特に子どもの時代は英一ばかりに焦点があたって浅川の描写が薄いんです

ここで浅川が楽しんで将棋を打ってる
みたいな姿があれば
2人の対比になるし才能の違いも表現できると思う

それに大人になってからの描写にも深みが生まれると思うんですよ

ここがちょっともったいないかなと感じました

 

あとは
ちょっとテンポが悪いのも気になる
物語があまりスムーズではないですかね

結構同じような場面が繰り返されてたりするので
退屈な時間もそこそこあるし

話もそんなに進まない
結局はプロ棋士対AIってだけの話で
そこを中心に行ったり来たりの内容

てか、この映画は予告以上のものはないかもしれません
予告で見せてるのもがほぼ全てで
想像通りの映画です

唯一、勝負の結末だけは予測できないけど
それだけですかね

 

それともう1つ気になったのが
取って付けたような登場人物が邪魔だったかな…

浅川のお姉さんとか
磯野の妹とか
出てくるけどあまり意味はない

男だけだとむさ苦しいから
綺麗な女子を出してみましたって印象しか受けませんでした

他には
現在は記者の英一と同じく奨励会出身の人とか
こんな人いたっけ?って感じの登場人物
唐突に現れて良いこと言うけど
なんかピンとこない

奨励会時代に英一たちと切磋琢磨してた
みたいなエピソードがあればわかるけど
誰だかもわからないキャラなのでいまいちな存在でした

同じような場面を繰り返すくらいなら
そんなキャラと英一や浅川の関係性をもっと深掘りしてもよかったと思いました

 

そんなに悪くない映画で
熱くて面白いことは間違いありませんが
この題材ならもっと面白くできたようにも思います

でも、コンピューター将棋という目の付け所はいいですし
青春ドラマとしても感動できました

ひねくれもの演じる吉沢亮はやっぱりハマり役だと思う

 


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