何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「アオラレ」感想 基本B級だけど意外と社会派

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どうもきいつです


スリラー映画「アオラレ」観ました

あおり運転を題材にしたサスペンススリラー
信号で言い合いになった男から
執拗につけ狙われる女性の恐怖が描かれます

監督を務めるのはデリック・ボルテ
過激なあおり運転犯を演じるのはラッセル・クロウです

 

あらすじ
レイチェルは息子を学校に送る途中で渋滞に巻き込まれてしまう
苛立つ彼女は信号が青になっても発進しない車にクラクションを鳴らし追い越す
そして、その車の男が謝罪を要求するが
レイチェルはそれを拒み口論になってしまった
それをきっかけに彼女はこの男に付け狙われてしまうのだった

 

感想
かなりブッ飛んだことをしているエンタメB級映画ではありますが
意外と社会派な一面もあって興味深い内容
あおり運転の根本的な問題点を描いている
社会問題に真摯に向き合っている作品だと思いました

 

予告を見てからずっと気になっていたので観てきました

予告どおりの
サイコなヤバイやつに主人公が狙われる
というスリラー映画で
期待していたものは観れました

結構ベタだけどスリリングな内容に最後まで楽しめた

90分程度の短めの映画で
やってることは現実離れしてる上にバカバカしかったりします
なので、かなりB級テイストの強い作品
観る人を選ぶ映画かもしれないです

逆にこんなタイプの映画が好きならば
十分に楽しめると思います


基本的にかなりシンプルで王道なスリラー映画

わかりやすく怖かったり
わかりやすい展開だったり
そんなに予想外の映画ではない

予告でやってることが全てと言ってもいいかもしれないですね


ただ、ベタなスリラーなんですけども
マンネリと言うよりはお約束

こんなのが見たいんだよ!
というのをちゃんと見せてくれます

とにかく無関係な人が殺されまくったり
じわじわと追い詰められる主人公だったり
終盤の生き残るための駆け引きだったり

スリラー映画のお約束が詰め込まれていて
最後までスリル満点

途中で派手なカーチェイスもあったりするので
映像的にもハラハラさせられます


特にラッセル・クロウ演じるあおり運転男
これのサイコっぷりがめっちゃいい

普通に怖いのもあるけど
やってることが笑ってしまうほどめちゃくちゃ
あおり運転Lv100の男です

すごくねちっこい性格の嫌な男でありつつ
爽快で気持ちがいいほどの暴れっぷり
そして超強い

このあおり運転男がすごく魅力的で
この男の存在だけで最後まで見てしまう

ラッセル・クロウもこの役にかなりハマってましたし


あおり運転男がギャグみたいにめちゃくちゃやっていて
正直、人が死んでも笑ってしまうほどの変なブッ飛び方をしています
完全におバカB級映画なのは間違いない

登場人物たちは至って真剣にやってるだけに
そのギャップが笑えてくるというか


ライトな気持ちで楽しめるエンタメB級映画で
個人的にはかなり好きな映画でした

 

ても、そんなおバカな一面がありつつ
社会派な映画になっている
というのもこの映画の面白さ

邦題がすごくギャグみたいですし
内容もそんな感じなので
第一印象はただのB級になりがちだと思うけど

あおり運転という社会問題に切り込んだ内容にもなっています

あおり運転は日本でもちょくちょくニュースになってたりもして
日本人にとってもかなり身近な問題でもある

だからこそ
この映画で描かれてるものは
日本人の自分達に当てはまるものが大いにあります

この映画が警鐘になっているな
と思わされました


まず、本作は
主人公のレイチェルが可哀想な被害者で
あおり運転男が一方的な悪
という構図になっていないのがミソです

この映画って
善悪という簡単な言葉では片付けられない描き方をしています


レイチェルは映画の立ち位置的には
サイコな殺人鬼に狙われ勇敢に立ち向かう女性ではありますが
人間性にはかなり問題のある女性です

そもそも、かなりだらしない性格で
仕事にしても息子のことにしても
なんか適当なんですよね

その上、車の運転マナーもかなり酷いもので
周りからすればかなり迷惑な運転をしています

あおり運転男につけ狙われるきっかけも
横柄にクラクションを鳴らしたのが原因
その後の口喧嘩も酷いもので
そりゃトラブルにもなりますよね…

彼女はめちゃくちゃ酷い目に合うわけですけど
映画を見ている側からすれば
レイチェルの自業自得だよな
って気持ちはかなり大きいです


で、主人公をそんな描き方にするというのは
明らかに意図があるのがわかります

そこがあおり運転の根本的な問題でもあると思うんですよね


テレビであおり運転のニュースがよく流れていたりするけど
こんなニュースって大体
被害者が一方的に可哀想で
加害者が絶対的な悪として報道されています

そして、そんなニュースを見た人たちが
SNSで加害者を袋叩きにしていたりもする

でも、これって本当に薄っぺらい事で
何の解決にもなっていないんです


重要なのは根本的な原因なのに
世の中の人はそこを深く考えずに
表面的にあおり運転するヤバい奴は悪
みたいに薄っぺらくしか考えていない

本当はすごく身近な問題で
その根っこには社会の闇も隠されている
自分自身が被害者になりえるし
加害者にもなりえる話だと思うんですよ


この映画では
そんなあおり運転の根本的な問題にスポットを当てています

簡単に言えば
あおられてる側も実はあおってるんじゃないのか?
ということなんです

この映画ではクラクションがきっかけですが
交通ルールを破っていたりだとか
急に変な動きをしたりだとか
そんなのがきっかけで起こるパターンは多々あると思います

あおられてる側に非がないこともあるだろうけど
この映画のようなパターンは多いんじゃないでしょうか

あおられている側が原因を作っていることはよくある事で
そこを無視してあおる側を断罪しろと声を上げているだけでは
この問題は絶対に解決しないと思います

 

さらに、この映画では
主人公の身から出た錆の自業自得
というだけで終わってなくて
もっと根本的な原因も描いています


あおり運転の問題だけでなく
世の中で起きる些細なトラブル
そこから発展する事件は
結局、人間同士のギスギスなんですよ

この映画の中では
主人公とあおり運転男
この両方のバックボーンを感じさせるシーンなんかもあって
そこから感じさせられるのは
心の余裕のなさなんです

人それぞれ様々な事情があり
さらに、社会の状況もあまりよくない
そうなると、やはりみんな心に余裕がなくなって不安定な気持ちになるわけです

原題の「Unhinged」はそのまんま「不安定な」という意味ですし
不安定な人間の気持ちと
そこから発生するあおり運転という問題を描いた作品なんです

この問題って
あおり運転を悪だと言ってるだけでは何も解決しなくて
自分自身が誰かをあおっていないか?と考え
そこに向き合わなきゃ解決しない

ほとんどの場合は
多少迷惑をかけてもみんなスルーしてくれている
でも、本作のようなあおり男にそんな態度で接してしまうと
自分の身を滅ぼしかねない

自分を守るためにも
心に余裕を持って他人を思いやる気持ちは大切だと思わされました

 

エンタメ映画として普通に楽しめるB級スリラーで
ハラハラしつつバカな描写に笑ったり
軽く観るのにちょうどいい映画です

でも、そこの中に込められた社会的なメッセージはなかなか真っ当で興味深い

いろんな角度から観ることのできる不思議な映画でした