何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「Arc アーク」感想 哲学的なようで実は薄っぺらい映画

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どうもきいつです


SF映画「Arc アーク」観ました

SF作家ケン・リュウの短編小説「円弧(アーク)」を実写映画化した作品
不老不死が実現した近未来を舞台に
永遠の命を得た女性の運命が描かれます

監督は「愚行録」「蜜蜂と遠雷」などの石川慶
主演を務めるのは芳根京子です

 

あらすじ
放浪生活を送っていたリナは
やがて人生の師となるエマと出会い
遺体を生前のような姿に保つボディワークスという仕事に就くことになる
一方、エマの弟の天音は
その技術を発展させた不老不死の研究に取り組んでいた
そして、30歳になったリナは不老不死の処置を受け人類で初めて永遠の命を得るのだった

 

感想
哲学的な映画にしたかったんだろうけど
正直、かなり薄っぺらい
雰囲気だけは重苦しいけど中身はカラッポ
無駄な演出、説明不足、世界観の押し付け
そんなのが多いので観ていてとても退屈でした

 

予告を見て気になっていたのと
芳根京子が好きなのとで
この映画を観に行ってきました

不老不死をテーマにした作品ということで
興味をそそられ期待もしていました

実際に観てみると
なかなかつまらないな
という印象

それにこの作品の作りがちょっとズルくて
あまり好感が持てませんでした


この映画を好きという人や
絶賛している人なんかもいますし
その気持ちがわからなくもないですが

正直言って
騙されてると思いますよ


この映画のズルさって
つまらないと言っちゃいけない空気を出してるところなんですよね

なんとなく凄そうな映画で
なんとなく深そうな映画
批判する奴はわかってない
みたいな

実際に
独特な雰囲気のSFな世界観であったり
アートっぽいビジュアルや演出であったり
生と死をテーマにした哲学的な物語だったり

それっぽい要素がたくさん詰め込まれています

面白くはないけれどアートで深いメッセージ性のある映画
って感じの作品になっている

でも、実は
全然アートでもないし全然哲学的でもない
抽象的にしておけばそれっぽく見えることをいいことに
いろんな事から逃げてる手抜き映画です


そんな作風が自分的には
どうも好きにはなれないし
むしろ腹立たしくもある
ちょっとなめられてる感じがしますしね

 

まずはSF映画として本作がどうなのかですが
かなり雑だと思います

とても独特な世界観で
第一印象はどこか魅力的ではありますが

映画を観ていくうちに
この映画がいかに雰囲気で誤魔化しているのかがわかってきます

SFの設定や表現を手抜きしているのは間違いない


序盤に出てくるボディワークスという職業なんかは
なんとなくそれっぽい映像で
未来っぽい雰囲気は出せています

ただ細かい部分はかなりテキトーで
ツッコミどころが多いです

エマが糸みたいなのを引っ張り死体のポーズを作っていますが
そもそも、この作業が何なのかよくわからん

その上
これはエマにしかできないこと
とかセリフで言わせてるけど

なにそれ…?って感じですよね
いまいちそういう部分は説明不足で

そういう世界観だから
で誤魔化してるんですよ


この映画って基本的に
説明が難しかったり
作り込みが面倒くさそうな設定だったりは
‘’そういうもんだから”で誤魔化してる

嘘でもこじつけでもいいから
SFをやるのなら
設定は作り込んでほしいですよね

 

それ以外にも
この映画は世界観も雰囲気で誤魔化してます

設定は近未来なんですが
本作は全然未来っぽくないです

はじめは物語の背景がどこか無機質で
未来っぽい感じはするんですよ

ただ、後半になると現代の田舎の島が舞台になります

そしてそこに住んでいる老人たちは
どう見ても昭和初期生まれのおじいちゃんとおばあちゃんばかり

途中でアナログカメラを懐かしいと言っていたり
昭和臭いネズミのおもちゃを子どもにあげていたり

設定上では
この老人たちは今現在の子供たちであるはずなのに
何故か価値観が昭和なんです

たぶん何も考えずにこの映画を作ってるんでしょうね

老人=昭和
っていう思考停止した発想なんですよ


で、リナが島の外へ出て都会へ行く場面がありますけど
この時の都会の背景が
ただの今の都会
この背景は東京のビル群だろうけど

あと煙が上がる工業地帯をむやみに見せてたり

工夫も何もない


長い年月を生きる女性を描いた作品なら
背景や人物の見た目
世界の価値観
そういうものの変化は絶対に見せるべきだと思う

この映画って
背景も全然変化しないし
人物の服装などの見た目の変化も無い
時代の移り変わりなんかも全く描かれていなくて

全ての時間が止まってるのかよ
と思ってしまう


主人公の時間が止まっているんだから
その周りの時間は動いていないと
この映画のテーマに沿ってなくない?

 

そして、問題なのが
不老不死の扱い方がちょっとおかしいです

この映画の世界で行われている不老不死の処置って
実はただのアンチエイジングです
別に人が死ななくなった訳じゃないです

それはそれで別に悪くはないけど
不老と不死をごっちゃにしていることが問題

これもやっぱり設定の詰めが甘いからでしょうね

何も考えずに
歳をとらなければ死なない
って馬鹿な発想

世の中、老衰で寿命を全うするなんて少数ですよ

で、そういう部分の説明もなく
雰囲気で不老不死みたいにやってる

 

とにかく、SFとして本当に詰めが甘い
テキトーに作った手抜きです

 


でも、そういう部分を誤魔化すズルさはあって
なんとなくいい映画っぽく見せてます

中でも
生と死をテーマにした
なんとなく重くて深そうな雰囲気

それがあるから文句を言いにくい映画に仕上がっています


しかし、実際は表面的な事ばかりで
核心には触れていません

登場人物の内面などは全く描かず
出来事ばかりを並べているだけ

感情移入なんて全くできないし
普通の人間以上に長生きしている主人公ですけど
本当に薄っぺらい人生です

主人公の人生を描くことで
生と死について切り込まなければなないはずが
そもそも、この主人公が何も考えてないですからね

周りの意見に流されてるだけの女です


結末に関しても
長生きするのやーめた
で、普通に老化してます

都合が良すぎて
よりこのテーマを薄っぺらくしてますよね


他にも
この映画の中の架空の社会問題なんかも見せられるけど
架空の世界の架空の問題なんて
全然ピンとこない

それを深く描くならまだしも
たいして説明もしないし軽く流すし
なんかそれっぽいだけで
そこからは何も伝わってこない

深いっぽいけど
中身はカラッポです

 


それと、演出に関しても
雰囲気だけで中身が無いですよね

なんとなくアートっぽくはあるけど
やってることは意味不明でただ雰囲気だけ

途中からずっとモノクロになるけど
あれ本当に意味わかりません

無駄にモノクロにしてるだけ


それ以外では
ボディワークスの依頼に来た人や
島の入居希望の人たちなど
なんかドキュメンタリーっぽくやってたけど
無駄に長いし意味不明
狙いが全くわかりません


基本、無駄なシーンがすごく多い映画でもありました

 

この映画って
誤魔化すことばっかりで

SF映画としても
メッセージ性のある映画としても
アート映画としても
全く向き合って作られていないなと思った

なんとなくすごそうな映画だし
文句を言えない雰囲気があるし
ある意味成功してるんじゃない?

僕はこの映画には騙されない

 


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