何もかもが滑稽

何もかもが滑稽

映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「プラットフォーム」感想 この風刺には納得させられる

f:id:kiitsu01:20210705222058p:plain

どうもきいつです


スリラー映画「プラットフォーム」観ました

中央に穴の空いた部屋で目覚めた男の
極限状態の日々を描いたスペインのスリラー映画
シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀作品賞など4部門を受賞しています

スペインの監督ガルター・ガステル=ウルティアの長編初作品です

 

あらすじ
ゴレンが目を覚ますと
そこは中央に四角の穴のある謎の部屋だった
そこは塔の48階層で上下には無数の部屋が続いている
ゴレンは同じ階にいた老人トリマカシから
1ヶ月ごとに階層が入れ替わること
食事が摂れるのはプラットフォームが自分の階層にある間だけ
というルールを聞かされるのだった

 

感想
独特な世界観な上に抽象的で難解
でも、描かれている社会風刺はストレートで納得させられるものがある
先の展開が読めないハラハラ感もあって
最後まで映画に引き込まれました

 

劇場で公開しているときにとても観たかったんですが観れていなく
Netflixで配信が始まったので観てみました


かなり独特な設定と世界観で
観終えたときは放心状態

どういうことだったんだろう?
この建物は何だったんだろう?
と、頭の中がハテナでいっぱい

結局、謎が謎のまま終わってしまう映画で
なかなか掴み所がなくて難解な印象でした

とは言え、つまらなかったわけではなく
この不思議な世界に引き込まれ
殺伐とした展開やグロくて刺激的な映像
先の読めない物語にハラハラさせられて
面白く観ることができました


まず、この映画の作りって
「CUBE」なんかとすごく似ています

謎の場所に何もわからず放り込まれて
そこのルールに従い脱出を目指す
というシンプルな内容

謎が謎のまま終わっていくのも
「CUBE」と同じですよね


ただ、本作の場合は
かなり社会風刺が全面的に押し出されていて
裏のテーマなんかもありそうです

そんな要素が観ていて理解しがたく
掴み所のない映画にもなっています


でも、スリラー映画としてなかなか面白く
理解できなくてもそれなりに楽しめる

このタイプのスリラー映画の醍醐味と言えば
やっぱり人間の本性が露になる姿
これが観ていて面白く思う反面
とても怖くもあります

自分ならこの状況に陥ったらどうなるのか
などもつい考えてしまいますよね

この映画の場合は
“食べる”ということがかなり重要

設定がとても面白くて
上の階層から順番に
決まった量の食べ物が運ばれてきます

もちろん上の階層の人ほど
好きなものを好きなだけ食べることができる
逆に下の階層の人は全く食べることができません

この設定が人間の愚かさや醜さをあぶり出すのにうってつけと言うか

とにかく人間の嫌な部分をこれでもかと見せつけられる
しかも、これが人間の本質的な部分でもあって
自分もこの人たちと同じなんじゃないかな
とも思わされてしまいます


さらに意地悪なのが
1つの部屋に2人いて
同じ階層で1ヶ月間過ごさなければならない
というところ

これがあるからやっぱり最終的には…

50階くらいまでは
残飯と言えど食べるものはギリギリ残っていて
死ぬことはありません
ただ、それより下は全く食べることはできず
空腹で過ごさなければならない

この極限状態に陥るからこそ
人間としての葛藤が生まれてくるわけです

生きるために罪を犯さなければならない
人間をやめなければならない
主人公もその状況に陥ります
ここは究極の選択になって来ますよね

それに伴って
かなり過激で気持ち悪い映像もたくさんあります

軽いところで言うと
食べ散らかした残飯はなかなか気持ち悪い

はじめは豪華絢爛な食べ物たちが
あっという間に汚ならしく食べ散らかされます
これによって人間の醜さがより表れます


そして、やはり飢餓が続くと…

かなりグロい場面も多くて
不快なんてレベルではないかも
苦手な人は無理な描写の連続です

そんな過激だったり気持ち悪い描写があるからこそ
この映画のテーマが深まっていると思う

単純にそんな描写にゾクゾクさせられて
どんどん映画に引き込まれる魅力も生まれています


終盤の展開はなかなか盛り上がりがあって
この建物の謎に迫っていったりもするので
ますます引き込まれていきます

最下層に近づくにつれて
地獄絵図のようなものが次々と現れる

人がいなければ部屋に止まらないテーブル
下に行けば止まらない部屋がたくさんあるわけですよ

謎に迫っていくワクワク感がありつつも
すごく恐怖心も煽られます

最終的には謎が解けるわけではなく
は?って思ってしまう結末です

でも、希望を感じられる終わりでもあって
どこか満足感もありました


スリラー映画として普通に面白い作品で
個人的にも好きなタイプの映画でした

 

そして、難解とは言いましたが
社会風刺はかなりストレートに描かれています

これは見たままのもので
格差社会や資本主義の社会を風刺している

簡単に言えば
裕福ならば好きなものを好きなだけ食べれるけど
貧困ならその食べ残ししか食べれない
さらに下に行けば行くほど得るものが少なくなってしまう

今の社会そのものだな
と思えるほどストレートですよね


さらに、この映画ではランダムに階層が入れ替わるというシステムがあって
そこから見えてくるものは

結局、裕福であっても貧困であっても
根本は何も変わらない

例え上層で裕福に暮らしていたとしても
下層に行けば途端に生きるために見境なく醜くなってしまう

下層の苦しみを知っていたとしても
上層になれば下層を見下し
下層の人の事など考えもせずに
欲しいものを好きなだけ食らうんです

そこに人間の本性があって
観ていて少しイライラもしてしまう


この映画を観て
人間はここまで醜くはないと不快に思う人もいるかもしれません

でも、現実の世界の人間もこんなもんだったりします

それに気付けてないだけで
自分もそんな醜い人間の可能性はあります

自分の生き方を改めなければならないんじゃないか
と思わされる部分もありました


それともう1つ思ったのが
世界の構造を変えるためには
下から叫んでるだけじゃ無理なのかな
ということ

下の人間がどんなに騒ごうが
世界は何も変わらないんですよね

そもそも下の人間のことなんて気にしていないんですから

結局は上層の人間が立ち上がることでしか
世界が動き出さない

この映画でも
主人公のゴレンが上層に来たとき
世界を変えようと動き出したからこそ
この塔に初めて変化が起きてくる

自分が幸せだから他はどうでもいいのか
自分の幸せをなげうってでも世界を変えようとするのか
これは難しい

この映画を観て
自分ならどうするか
それを考えるだけでも何か得るものがあるのかもしれません

 

あと、この映画は
キリスト教的な価値観でも作られていると思います

この映画の謎を紐解くには重要な要素だと思う
ただ、僕はこのへんの知識には疎いので
あまり深くは理解できませんでした

そんな知識があれば
よりこの映画を深く考察できるのかもしれませんね

 

少し抽象的で掴み所のない映画ではありますが
やってることはとても興味深くて
最後まで目を離せない映画でした

観た後にもいろいろと考えることができて
噛めば噛むほど味わいのある映画なんじゃないでしょうか

一見の価値はあると思います

 


プラットフォーム (Blu-ray+DVDセット)