何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「RUN/ラン」感想 逃げたくても逃げれない恐怖

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どうもきいつです


スリラー映画「RUN/ラン」観ました

車椅子生活を余儀なくされる娘と
その娘を溺愛する母親の狂気を描いたサイコスリラー
母親に監視され自由の無い環境の中
娘が母親から逃れようと奮闘します

監督は「search/サーチ」などのアニーシュ・チャガンティ
主演はオーディションで抜擢された新人のキーラ・アレンです

 

あらすじ
生まれつき病気で車椅子生活を送るクロエは
大学進学を望み自立しようと努力していた
そんなある日
食事や体調の管理し進学の夢を後押しする母親ダイアンにクロエは不信感を抱き始める
そして、ダイアンが差し出す薬が
人体にとって危険な物だと判明するのだった

 

感想
ハンディキャップがあるからこその恐怖の描きかたがとても上手い
主人公が陥る状況の怖さだけでなく
心理描写などもなかなか怖い
終始、緊張感が高くスリル満点
最後までハラハラする映画でした

 

「search/サーチ」の監督の新作映画ということで観てきました
設定が面白そうで期待もしていた


「search/サーチ」とは違い
奇抜さのない普通のスリラーでしたけど
普通に面白いスリラーでした
とても丁寧に作られた映画の印象です

矛盾してる気もするけど
安心して観れるスリラーです

怖がらせかた
スリルのある展開
ラストのオチ
どれもが求めているレベルのもので
すごくちょうどいいなと思った

映像として奇抜なわけでもなく
特別ひねった展開があるわけでもないですが
安定して面白い

ストーリーの流れに関しても
それほど新しいものでもなくよくある流れだと思いますし

想像の遥か上をいく予想外の展開なんかもありません
想定内かなというものが多い


ただ、主人公の足が不自由で車椅子を使わなければ移動もままならなかったり
母親の異常さや狂気などの要素が
とても上手く生かされていて
そこに新鮮さを感じさせられます

 

特に足の不自由な主人公というのは
最大限に活用していて
本作を盛り上げる1番の要因です

ハンデを背負っているからこそ
より恐怖が増幅され
観ているこちら側もすごくスリルを感じることができます

車椅子だと家から出るのですら難しいですからね
車椅子を奪われてしまえば逃げることすらままならない

そんな限定的な状況での
逃走劇や窮地に追い込まれる展開には
普通のスリラー以上にスリルを感じることができるんです

その上、本作の主人公クロエは
足が不自由なだけではなく
喘息などの他の病気を抱えているし
さらに母親には行動を制限されていたりもする

これでもかと言うほど主人公にハンデを背負わせ
ほぼ無理ゲー状態の映画

そんな無理ゲーだから
主人公の奮闘にはハラハラさせられるし
応援する気持ちも生まれます

閉じ込められた自分の部屋から屋根をつたって脱出するだけでも命がけ
階段で下の階に降りるのも命がけ

ハンデさえなければ何てこともない状況なのに
ハンデがあることで
こんな状況もギリギリの命がけに変貌してしまう

それを乗り越えるためにクロエが頭を使い試行錯誤して
真相に迫ったり危機から脱する
というのもこの映画の面白さで
ハンデがあるからこその頭脳戦も見せてくれる

クロエは頭が良いし諦めない性格なので
ギリギリな状況でもイライラしない

こんな映画にありがちな
主人公が馬鹿だから窮地に追い込まれる
って展開はなくて

逆に
最悪な状況だからこそ
頭を使って道を切り開いていく
という知的さがあります

主人公が馬鹿ではない描きかたになっているので好感が持てるし
無駄なツッコミどころも少なかったですね

 

そして、ストーリー展開もすごく良くて
こんなに追い込む?
って思うほどドSな映画でもあります

とにかく主人公が追い込まれる
困難を乗り越えて安心したのもつかの間
息つく暇もなく新たな困難が押し寄せる

テンポもいいですし
次から次へとハラハラさせられるので
最後まで全然飽きません

追い込まれれば追い込まれるほどスリリングで
その最悪な展開の連続が
ラストにはカタルシスを生み出しています

2転3転とどんどん物語が展開していき
ジェットコースター的な面白さもあって
気付けばあっという間に映画が終わっていました


その展開と同時に
比例して母親の本性が露になっていく様子がすごく良くて
序盤と終盤の母親のギャップがめっちゃ怖い

サイコパスがただヤバいことをしている怖さと言うより
人間が暴走してしまっている怖さと言うか

序盤から不穏な空気はあって
この母親は普通ではない感じはしますが
話が進むにつれ
想像以上のヤバさを発揮してきますから

過保護だとか
行き過ぎた愛情だとか
精神的な病だとか
そういうの匂わせておいて

結果、シンプルにサイコパスでした
ってのは気持ちよくもある

 

あと、オチもめっちゃいいですね
久しぶりにラストでこんなゾクッとさせられた気がする

これは怖い…

単純にハッピーエンドで終わるのもいいけど
やっぱり後味悪い終わりも魅力的

それに本作は
1度やさしいラストに見せかけておいて
最後の一瞬で鳥肌を立たせるっていうね…

センスのある終わりかただと思います

 

それと、この映画で良かったのは
障害者や精神疾患を取り扱ってるけど
変にメッセージ性の強い作品になっていないところです

大体こんな題材を扱う作品って
ちょっと深い考えさせられる系の映画になりがちだけど

本作の場合は
それらの要素があくまでも物語を盛り上げるための要素の1つでしかない

だからこそ本作がシンプルに楽しめる映画になってますし
余計なことを考えずエンターテイメントとして楽しめます

こんな題材ってデリケートなものではあるけど
本作のようにエンタメに徹底して
ただの1要素でしかないという扱い方は
腫れ物に触るような扱いなんかよりは
全然好感が持てます

結果的にこのエンタメな描きかたによって
足が不自由な大変さが痛いほど伝わったし
精神的な病の危うさにも気づける

深いメッセージ性はないけど
伝わってくるものはあるんですよね

 

シンプルなスリラーではあるけれど
とても丁寧に作られた完成度の高い作品だと思いました

最後までハラハラドキドキで楽しめる映画です

 


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