何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「レミニセンス」感想 女々しい男の哀愁

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どうもきいつです


SF映画「レミニセンス」観ました

海に水没寸前の近未来の世界を舞台に
記憶に潜入するエージェントの活躍を描いたSFサスペンス
主人公がとある事件の真相を握る女性の行方を追っていきます

「ダークナイト」などの脚本を担当してきたジョナサン・ノーランが製作を手掛け
監督を務めるのはリサ・ジョイ
主演は「グレイテスト・ショーマン」などのヒュー・ジャックマンです

 

あらすじ
多くの都市が水没し水に覆われてしまった世界
ニックは記憶を呼び起こす装置を使い
顧客に思い出の追体験を提供していた
ある日、彼の前にメイという謎の女性が現れ
やがてニックとメイの関係は恋愛へと発展する
しかし、突然メイが姿を消し
ニックは彼女との思い出に入り浸ってしまう
そんな時に検察から記憶潜入の依頼が舞い込むのだった

 

感想
思った以上に地味な映画
予告と本編のギャップは大きい
この映画はSF大作というより湿っぽい恋愛映画
そこにハマれば好きになれるかも

 

前から気になっていたので
観に行ってきました


この映画
予告とのギャップをすごく感じました

予告では「インセプション」みたいな壮大なSF大作
って感じの雰囲気を醸し出してるけど

実際に本編を観ると
なかなか地味だし
恋愛メインのストーリーだし
思ってるのとちょっと違った

予告では記憶の中に潜入するとか言ってるけど
本当は記憶に潜入ではなくて
記憶を見ると言うほうが正しいかも

そんな予告とのギャップを受け入れられない人もいるだろうし

実際に観ると
求めていたものが見れなかった
という人は多かったと思います

そういうのもあって
本作の評判はちょっと悪いのかな…

客引きのためとは言え
宣伝のやり方が悪いですね
これは予告詐欺と言われても文句は言えない…

 

ただ、個人的には面白い映画だと思いました

予告のような派手なSF大作ではなかったけど
主人公や世界観がとても魅力的で
僕のツボにハマる作品でもあった


まず、サスペンスの部分ですが
これはちょっと微妙なのは否めない

少しずつ謎を解き明かしていくタイプの映画だけど
前フリが悪いのか
真相が明かされた時のカタルシスがあまりない

最終的にニックとメイの恋愛は本物だった
というところにカタルシスを生み出そうとしてるのはわかるけど
そこにそこに至るまでに
メイがニックを騙していた悪い女
という風に見えていないのが問題ですよね

メイにも事情があってそんな行動を起こしているのは見え透いています

利用されているのか苦肉の策なのかは明白ではないけど
なんとなくメイは悪い人ではないのは
途中から見えてしまってます

殺人の真相にしたって
でしょうね…という結末で驚きはない


とは言え
様々な人の記憶を見ることで真相に迫っていく
という過程はなかなか面白くて
設定も上手く生かせていました

なので退屈な映画なわけではなかったです

意外なところからヒントが現れたり
いろんな人の記憶が繋がって真相が見えてきたり
そういうところは本当に面白くて
どんどんとストーリーに引き込まれたのは間違いない

終盤のメイがニックに残したメッセージも
記憶の装置を上手く使った感動的な演出になっていました

正直言えば
粗を探せばツッコミどころは多いし
世界観にしたって
そんな舞台設定必要なのかな?
と首を傾げてしまうけど

設定は上手く使いこなせていたんじゃないかと思います

 

サスペンスとしては少し弱い映画だとは思うけど
主人公のニックと
彼が歩んでいくストーリーはとても魅力的で
そこにこの映画の良さを感じます

本作は愛する女性を追い続けるニックを中心としたラブストーリー
しかも、からっとした幸せなラブストーリーではなくて
湿っぽくてジメジメとした暗いラブストーリーです

結末なんかも
本当にこれ幸せなのか?
と思ってしまうなんとも言えないラスト

その点でも好き嫌いが分かれそうなのが映画ですね


ニックの性格に関してもとにかく湿っぽくて
あまりにも女々しく未練タラタラな男です

あの強い男ヒュー・ジャックマンがめちゃくちゃ弱々しく見えてしまう
体はムキムキなのに全然強さを感じません


自分の前から姿を消した女性をひたすら追い求める
というストーリーで
その時点で女々しい物語ですが

ニックの頭の中が彼女のことばかりで
言動がかなり身勝手
周りの制止も押しきって
やたらと突っ走っていきます

その上、身勝手に突き進む行動力があるわりに
強い意志で彼女を信じているってこともなく
どこか彼女を信じ切れてなかったり
メイに対する気持ちが疑心暗鬼でフワフワとしてるんですよね

それにやることなすこと全然上手くいかず
基本やられっぱなしの男
自分勝手に進んでいくけど周りの優しさに助けられらことが多い
特に相棒には心配かけっぱなしだし

でも、そんな相棒の優しさも無下にして
さらに身勝手に突き進んでいく

身勝手だし弱々しいし頼りないし
最低な男ではあるけれど
一人の女性に固執する女々しさに哀愁すら感じれて
なんかこの男を嫌いにはなれない
むしろ、この愚かな男が好きなんですよね


このニックのキャラクターやストーリーと
記憶を追体験するという設定もリンクしていて
よりニックの後ろ向きで女々しい姿が強調されます

この装置自体が過去を追体験して幸せに浸るという後ろ向きな装置だし

ニック自身も何度も彼女との思い出を追体験して
最終的には記憶の世界に閉じ籠ってしまうわけですから
めちゃくちゃ過去に執着してる

でも、それが究極の愛にも思えて
その行為に納得させられてしまいます

すごく愚かな男だし愚かな選択をしてるようにも思うけど
恋愛なんて所詮愚かなもので
突き詰めれば突き詰めるほど愚かなんですよ

それ故にニックの愛には真実があって
もはや格好いいんです

 

そして、本作の世界観もすごく良く
この映画がより魅力的になっていると思う

映像的にも
水の中から伸びるビル群や水浸しの街並みが
美しくあり見映えも良い
映像のクオリティもかなり高いです

それだけでも満足ですけど
物語ともリンクしていて
この映画の魅力をより引き立てています

正直、サスペンスとしては
この世界観があまり機能していないし
必要性もあまり感じれないけど

女々しい主人公とストーリーには完璧にマッチしてるんですよね

ジメジメとした水浸しの街並みが
後ろ向きで未練たらしい物語にはピッタリで
この映画の哀愁を際立たせています

たまに見せる美しい風景と
陰湿で暗い雰囲気の風景が
恋愛の美しさと愚かさの両面を象徴してるようにも感じれる

映像の相乗効果で作品の質も上がっていると思います

 

まあ、予告とのギャップはマイナスすぎる

この映画はSFサスペンス大作ではありませんでした
でも、恋愛映画として観れば
哀愁漂うなかなか面白い映画です

女々しい主人公は魅力的で
僕はこの映画が結構好きです

 


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