どうもきいつです
伝記映画「MINAMATA ミナマタ」観ました
日本の水俣病の惨事を世界に伝えた
アメリカの写真家ユージン・スミスの姿を描いた伝記ドラマ
水俣で暮らし公害に苦しみながら闘う人々の日常を撮影したユージンの
1971年からの3年間が描かれます
監督を務めるのはアンドリュー・レヴィタス
主演は「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなどのジョニー・デップです
あらすじ
1971年
ニューヨークに住むフォトジャーナリストのユージン・スミスは
アメリカを代表する写真家と称えられたが
現在は酒に溺れる日々を過ごしていた
ある日、彼の前にアイリーンと名乗る女性が現れ
日本の大企業チッソが工業排水を垂れ流し
それにより病に苦しむ人々を撮影してほしいと訴える
そして、ユージンは取材のため日本を訪れるのだった
感想
過去の出来事でとっくの昔に終わったことだと思っていたけど
本作を観ることで
この事件は忘れてはいけないし
終わっていないことだと思い知らされた
これは日本だけの問題ではなく世界が抱えている闇
日本の事件を題材にした映画で
興味があったので観に行きました
ちょっと重い映画ではありましたが
この映画を通して思うことは多いです
僕は水俣病に関しては学校で習ったくらいの浅い知識しかなく
実際にどのようなことが起きていたのか
今現在この問題はどうなっているのか
ということはあまり知りませんでした
過去に起きた大きな事件だけど
もう終わったことだと
この事件を深く知ろうともしていなかった
でも、この映画を観ることで考えを改めさせられました
そう思わせてくれるだけで
この映画には価値があると思います
まず、本作はエンタメ性は少し弱いです
カタルシスを感じて感動する
という作品ではない
あくまで
この事件を風化させないための記録のような作品です
科学会社チッソが引き起こした産業公害と
それに苦しめられた人々
そして、病に苦しめられる人々とチッソの闘いも描かれていきます
実際の映像や写真も使われているし
水俣病の痛々しい姿を逃げずに描写している
当事者からすれば
思い出したくない過去でトラウマを呼び起こしてしまうかもしれません
でも、そこを現実的に表現することによって
本当に起きた出来事だということを
観た人に感じさせることに意味があると思います
そして、本作はただ史実を忠実に再現しているだけでなく
脚色や誇張している部分も大いにあります
史実をねじ曲げているということに
引っ掛かってしまう人もいると思います
ただ、本作は映画
映画という方法でユージン・スミスや水俣病を描く理由は
より多くの人間に
この事件や公害問題のことを伝えるため
史実を再現したとてもリアルな作品でも
つまらなければ誰も観てくれない
いくらメッセージ性が強くても観てくれなければ意味がないわけです
ある程度、映画としてまとまっていて面白い作品なら多くの人の興味を引けます
世界的に有名な俳優ジョニー・デップが主演なのも
人々の注目を集めるという点では大きな意味がある
それに、脚色や誇張がされてるとは言え
根本的な部分には嘘はありません
大切な部分はしっかりと史実を忠実に描いています
で、本作はユージン・スミスを描いた映画なわけなので
全てがユージン目線の物語
水俣病の映画と言うよりはユージン・スミスの映画なんですよね
そういうこともあり
水俣病に苦しむ人々や裁判なんかはユージンの目を通した出来事なので
あまり深くは描写されません
正直、もっと深く掘り下げたほうがよかったんじゃないか
とも思うんですが
ユージンの客観的な目線から見たこの問題
というのも重要なのかなと思えます
多くの人に観てもらうという点で考えれば
当事者目線の壮絶な世界よりも
ユージンの少し離れた場所からの目線のほうが
本作のメッセージなどはスッと入ってくるんじゃないでしょうか
実際に映画を観る自分たちも第三者なわけで
あまりに辛いものを直接見せられればシャットアウトしてしまうかも
ユージンのような部外者が主役なら感情移入もしやすいし
この問題について客観的に見ることができると思います
それに、ユージンが写真を使いこの問題を世界に知らしめたことは
本作がやろうとしていることともリンクしている
そう考えれば
ユージンを通して水俣病の問題を世界に発信することは
大いに意味があるように思えます
そして、なによりも
本作が作られ公開されたことで
水俣病の問題があらためて表に出てくる
水俣病の印象って
僕の世代やそれよりも若い人たちからすれば
学校の教科書の片隅に載っている些細な事件
くらいの人が多いと思う
多くの人が
昔にあった終わった事件
だと思っている
国はこの事件のことを無理やり終わらせてたりもします
でも、実際は
いまだに病に苦しむ人は多くいるし
満足な補償を受けてない人も多い
水俣に住んでいなくても被害を受けている人だっています
そんな状況も
この映画が公開されることで事件があらためて注目されれば
少しでも良くなる可能性があります
本作を観て
ユージン・スミスに興味が湧いた
水俣病について詳しく知りたい
そう思う人は絶対にいます
僕もこの映画を観たことで
水俣病やユージン・スミスについて少し調べましたし
そんな人が少しでも増えれば
この問題を解決する力になると思うんですよね
本編終了後に世界各地で発生している公害事件が紹介されます
映画として見てみれば
この部分は蛇足のようにも思えますが
本作の場合はここにも意味があると思う
水俣病だけでなく世界各地で同じような事件が発生し
それに苦しめられている人がたくさんいます
日本だって近年に福島第一原子力発電所の事故が起きています
この事故でさえ過去のことのように風化してしまっている面がある
でも本当は全然なにも終わってない
多くの人はこのような事件が起きても他人事で
時が経てば忘れていきます
しかし、無関心でこのような問題を野放しにしていると
結局、自分たちに降りかかる可能性だってあるわけです
これは自然災害ではなく人災
起こした人間は責任を取らなければならないし
罰を受けてしかるべき
それを放っておいてしまえば
どこかで同じことが繰り返される
次は我が身です
多くの人がこのような事件に感心を持ち世界中が注目すれば
悪い奴らは簡単に言い逃れ出来なくなると思う
本作が公開されたことで
水俣病の問題が少しでも良い方向に進んでいけばと思います
この映画の内容に関しては賛否両論あると思いますが
本作が世界に発信されたということは
大いに意味がある
この映画をきっかけに
水俣病だけでなく
様々な公害問題に感心を持つ人が増えれば
少しだけでも世界は変わっていくんじゃないでしょうか