何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「ほんとうのピノッキオ」感想 子供向けだろうけど 子供が観たら泣きそう

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どうもきいつです


ファンタジー映画「ほんとうのピノッキオ」観ました

イタリアの児童向け文学「ピノッキオの冒険」を実写化した
イタリアのファンタジー映画
ジェペットじいさんの家を飛び出したピノッキオが
不思議な生き物たちと遭遇しながら大冒険を繰り広げます

監督を務めるのは「ドッグマン」などのマッテオ・ガローネです

 

あらすじ
貧しい木工職人のジェペットは
貰った丸太から人形を作り始める
すると完成した人形はまるで命を吹き込まれたかのように喋りだしたのだった
ピノッキオと名付けられた人形は
ジェペットの言い付けを無視し飛び出し
そこから冒険が始まる

 

感想
独特な世界観やビジュアルには魅力を感じます
ただ、支離滅裂で単調な物語は観ていて少し疲れたかも
子供向けの物語をそのまま実写化したような映画
そのわりに子供が観たら
泣いてしまいそうなキモさと怖さ

 

予告を見て気になったので観に行ってきました

ディズニーの「ピノキオ」は昔観ましたけどほとんど覚えておらず
原作は読んだことがありません

とは言え
有名な作品ではあるので
大まかな流れはだいたいわかってます

 

本作を観てはじめに思ったのは
あらすじや予告と実際に観たときのイメージに若干ズレを感じた

宣伝などではダークファンタジーとして推していますけど
実際はそんなにダークではなく
普通のファンタジーって感じ
おそらく原作を忠実に実写化してるんじゃないでしょうか

キャラクターのビジュアルや作品の空気感は
少し暗くて気持ち悪さを感じますけど
基本的には子供向けに作られた作品なんだろうな
という印象です

なので、ちょっと宣伝のやり方はマイナスかな…
邦題の“ほんとうの”ってのもズレてる気がします

あのピノキオがダークファンタジーに?
という部分で注目は集めれるだろうけど
悪い意味でのギャップが生まれていました

 

で、ここからは本作の内容の話

本国イタリアでは評判がよく評価されている作品のようですが
個人的にはあまり面白くなかったかな…
という印象

部分的には好きなところはたくさんあるけど
全体的に見ると
なんか退屈な映画でしたね

観ていると疲れがくる映画だった
終盤はなかなかしんどかったです
時間を長く感じました


何故そんなに退屈で疲れてしまったのかを考えてみると

基本的にはストーリーがなくて
掴み所がなかったからかもしれません

本作は小さいエピソードの積み重ねでピノッキオの成長を描いています
それに一応
ピノッキオがジェペットと再開するとか人間になるとか
軸となるストーリーもあります

ただ、目的を見失ってストーリーが進みがちだし
それぞれのエピソードはバラバラだし
なにより支離滅裂な展開が多かったりするので
まとまりはよくないですよね

ピノッキオが何を目指して進んでるのか
何をもって成長したのか
というのがすごくわかりづらいです

よくわからんエピソードが繰り広げられ
よくわからん結末を迎え次のエピソードに
って感じの繰り返し

しかも、同じようなことを繰り返していたりします
だいたいピノッキオが忠告を無視して痛い目を見る
みたいなこと

 

でも、これってたぶん原作を忠実に再現してるのかな
とも思えます

僕は原作を読んでないけど
児童文学ってこういうところがあって
教訓とか学びがメインだったりするわけですよ

本作もエピソード単体で見れば
そこから教えを受けとることができます

人の忠告は素直に聞くこと
嘘をつかないこと
勉強をすること
人に優しくすること
そんな教訓はちゃんと伝わってきます

子供向けに作っている作品だろうし
そんな狙いは外していない

支離滅裂だったりご都合主義だったりも
児童文学ではよくあることで
そこに深い意味を求めるのが野暮だと思う


そんなことを理解した上で
やはり映画としては退屈なのは間違いなく
大きな展開やカタルシスは少なくて盛り上がりに欠けます

最終的にピノッキオが人間になる場面も
やっぱり盛り上がらなくて感動もできない

そこに至るまでの過程が薄すぎるんですよね

ピノッキオがそんなに人間になりたいようには見えないし
ジェペットとの関係性もほぼ描かれてないし
そもそもピノッキオに感情移入ができていない

教訓のあるエピソードが積み重なってるだけで
肝心なドラマの積み重ねが蔑ろだったりします

映画としての感動にはドラマが重要だと思うので
そこはもっと力を入れてほしかったですかね

ドラマがなく登場人物の感情や目的も曖昧なので
言動が支離滅裂に見えてしまいますし
そのせいでキャラクターの掴み所もなかったり…


それと実写でリアルだからこその弊害も見えてきます

例えばピノッキオの存在が普通に受け入れられてるのとか
とても違和感がある

妖精が助けてくれる
コオロギが喋る
顔面動物人間がたくさんいる
カタツムリおばさん
子供がロバになってしまう
そもそも木の人形が生きている

いろいろとぶっ飛んだものが唐突に説明もなく現れてきます

これって文字で読んだり絵本で見たり
アニメだったりすると
そんなに気にならないと思うんですよ

ただ、本作は実写で
しかもリアルさにこだわってたりもします

それ故に現実離れしたものが浮いて見えてしまうんですよ
説明なしにそんなものを見せられると
すごく引っ掛かってしまうのは否めない

これに関しても
原作に忠実になんだろうと思う

でも、ここも映画化するにあたって
映画的に見せる工夫は必要だったのかもしれません

 

そんなマイナスなことばかり言いましたが
本作には好きな部分もあります

それはなんと言っても
ビジュアル面です

登場人物の造形であったり
街並みなどの世界観や空気感
それがとても独特で魅力的

そして、キモくて怖い

この独特な映像が本作の最大の見所です


登場人物たちの造形は
基本的に若干キモいというか
怖いというか…

内容はかなり子供向けの作品なのに
この見た目は子供が泣いてしまいそう
ほぼホラーのようなビジュアルです

そもそもピノッキオがちょっと怖い
あまり可愛くは見えません

本作は特殊メイクでキャラクターの造形を作り上げているようで
CGでは出せないようなリアリティも感じます

妙なリアルさで不気味さを感じてしまう

その上、造形のセンスが子供向けのわりに
なんか斜め上のような…

コオロギとかカタツムリとか
マジで怖すぎる
その日の夜に夢に出てきそうですもん


でも、これは狙っているようにも思えません
あえて怖くキモく作ろうとしてるわけではないと思うんです
本作は子供も大人も楽しめるように作られているみたいだし

おそらく
監督の趣味趣向であったり
リアルさを追求するあまりに
結果的にすげー気持ち悪くなってると思うんですよね

真面目にファンタジー映画を作った結果
狂気じみた映画が完成した
そんな気がしてしまう

以前に観たミュージカル映画「キャッツ」にも似た
真面目が故の狂気
みたいなものを感じました


子供が観ればトラウマになる可能性もあるかもしれませんけど
個人的には本作の造形はとても好みで
この狂気じみた世界観に浸れたことで
満足感はあったかもしれない

特殊メイクへのこだわりが十分あって
それが本作のクオリティを底上げしている要因だと思います

 

映画としては少し退屈なので
あまり面白い映画ではなかったかな…

ただ、子供への教訓はしっかりと描かれているし
造形へのこだわりの狂気に見応えがありました

いろんな意味で独特な本作は
唯一無二の作品なのかもしれません

 


ピノッキオの冒険 (望林堂完訳文庫)