何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「アンテベラム」感想 1つの仕掛け一点張りの映画

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どうもきいつです


スリラー映画「アンテベラム」観ました

境遇の違う2人の女性の姿が同時に描かれるスリラー映画
社会学者として華やかな日々を送る女性と
黒人奴隷として辛い日々を送る女性の運命が交錯していきます

「ゲット・アウト」などのプロデューサーであるショーン・マッキトリックが製作
監督は本作が長編監督デビュー作となる
ジェラルド・ブッシュとクリストファー・レンツです

 

あらすじ
広大なプランテーションの綿花畑で
黒人奴隷として過酷な重労働を強いられている女性エデンは
日々、白人たちに強いたげられる生活を余儀なくされていた
一方、社会学者で人気作家でもあるヴェロニカは
家族とは幸せな毎日を送り
ニューオリンズの講演会では喝采を浴び
輝かしい日常を過ごしていた

 

感想
実はこうでした
という仕掛けには驚かされますが
実はそんなに大したことはやってないような気が…
その仕掛け一点張りで
他は普通すぎてかなり微妙かも
その上、メッセージ性重視の少し頭でっかちな映画

 

以前から気になっていたので観に行ってきました

あらすじなどもほぼ読まず
全く無知な状態で観てきたんですが
それは正解でしたね

この映画は何も情報なしで観るのがベストだと思います

いわゆるネタバレ厳禁の映画なので
観るのであれば情報はシャットアウトしてください

そして、この映画を語るにはネタバレ必須なので
ここからはガンガンネタバレしていきます

 


この映画は
ある1つの仕掛けが全てで
そこが面白いっちゃ面白いんですけど
それ以上でもそれ以下でもない
てか、それ以外には何もない映画

この仕掛けに
驚かされた!
納得させられた!
と満足できる人ならいいんですけど

この仕掛けだけじゃ物足りないな
と思ってしまう人は
あまり面白いと思えないんじゃないでしょうか

僕はこの映画の真実が明かされた時に
もしかしてこれで終わりなのか?
と不安がよぎりましたが
それが的中
あまり面白いとは思えませんでしたかね

 

本作は大きく分けて3部構成です

1つめは南北戦争時代のプランテーションらしき場所での黒人女性の物語
2つめは現代でバリバリ活躍する活動家の黒人女性の物語
そして、最後は全ての真相が明かされてからの結末

そんな3つの物語の構成になっています


2章までは完全に前フリで
この2つの物語を踏まえて
全ての真相が明かされたときのスッキリ感が本作の最大のポイントだと思います

この仕掛けにすごいと思える人はたくさんいるだろうけど
冷静に考えると
実はそれだけの映画なんですよね

さらに、この仕掛け自体も
発想は面白いけどそんなに大したことをしてるわけではなかったり

ちょっと反則的なことはしてますよね
まあ、その反則を思い付いたアイデア力は認めざるを得ないですけど


この映画の仕掛けを簡単に言うと
別人だと思ってた2人は実は同一人物だった
ってだけです

その方法は
あえて2人を別人だと思わすような見せ方をして
同一人物だったことに驚きを持たせている

本作は時系列を入れ替えることで1人の人間を別人のように見せているわけです

明らかに大昔の南北戦争時代っぽいエデンの物語は
実は現在進行形の話で
逆に現代の大都会でのヴェロニカの物語は過去の話なんです

この2人は同じ人が演じていますが
そこを輪廻転生を思わせるようなミスリードで上手く隠してたりします


後から考えれば
かなり強引な手法の気もしてしまいますが
このアイデアは普通に面白いと思わされましたし
真相が明かされれば納得させられるんですよね

なので
アイデアの勝利と言えばそうなんですけど
この仕掛けだけの映画だというのは否めない

これ以外の部分はあまり面白いとは言えません
仕掛けがブッ飛んでるから奇抜な映画に思えるんですけど

仕掛け抜きにしてしまうと
めちゃくちゃ普通と言うか
もはやちょっと退屈なくらい


特にタネ明かしがされるまでは
冗長だし伏線を散りばめることだけで
物語としても面白くはない

終盤のカタルシスのためとは言え
黒人奴隷の場面はダラダラと黒人が強いたげられる姿を淡々と見せられるので
不快さより退屈さが上回っていたり

ヴェロニカの華やかな生活も
タネ明かしの時の驚きのためではあるんだけど
ダラダラと充実した彼女の生活を見せられるだけなので
単純に退屈な時間でしかないんですよ

タネ明かしがされるまでは
ひたすらそのための助走って感じで物語の展開は全く無いし
自分は一体なにを見てるんだろう…?
がずっと続く


で、タネ明かしがされてからは
主人公がその場所から脱出を試みる脱出劇に転じていくわけですが

ここはそれなりにスリルがあって
やっと動きのある展開が来たな
と期待が膨らむんですけども

普通のよくある脱出劇で終わってしまうので
これで終わりなんだ…
と、ちょっと期待はずれ

ここからも大きな変化はなく
ただ脱出して終わってしまいます


実は同一人物でした
という仕掛け以外は面白い部分は無いんですよね

しかも、この仕掛けに関しても
実はどんでん返しにもなっていなくて
ただの設定の説明なんですよ

実はこういう設定でした
ってだけで
物語的には別に大きく変化してるわけではない

ストーリーは単純に誘拐された人が頑張って脱出する
って話なだけです

結局この映画にあるのは
1回の“なるほど”だけなんですよね
そのための1時間46分はしんどいかと…


僕はやっぱりそれでは満足できないというか…

もっと終盤にかけてすごい展開が待ってるとか
前フリの部分も面白く見せて欲しいとか
そんなものは求めてしまう

 

あと、この映画で気になってしまうのは
メッセージ性を押し出し過ぎて
頭でっかちな映画になってますかね

黒人差別問題をテーマにしていて
言いたいことは伝わってきます

差別が少なくなってきたとは言え
いまだに根深いものがあるのは理解できる

ただちょっと重すぎるかな…
一応エンタメ映画だと思いますし

その重さのわりにメッセージ性が少し浅い気もします
表面的な差別の酷さや白人の凶悪さしか描かれてない

問題解決のために一石投じるみたいなのは
この映画には無かったですかね


それと、終盤の展開は暴力的
差別問題を掲げた作品なのに
こういう展開はいかがなものかと思います

言ってしまえば
この映画がやってることって復讐じゃないですか

酷い仕打ちをした白人たちをぶっ殺すみたいな
そこにカタルシスを生み出してる映画でもあります

「キャンディマン」を観たときにも思いましたが
やられたらやり返すの精神は少し怖い

僕は個人の復讐劇はありだと思うんですよ
そういう気持ちは大事だと思う

ただ、人種だとか民族だとかの単位になると
その精神って危険ですよね
これの行き着く先は戦争です

黒人たちの恨み辛みは十分理解できるし
白人たちのやってきた仕打ちを許せとまでは言わないけど
だからって暴力的な解決法なんて無いですよ

これは難しい問題ですけども
本作の安易な暴力の描写にはあまり好感を持つことができませんでした

 

確かにこの映画の仕掛けは面白いアイデアだし
発想には素直にすごいなと思わされました

とは言え
それ以外は正直言って微妙だと思いますし
メッセージ性に関しても
重いわりに上手くはいってないかな…

個人的にはそんなに好きな作品ではありませんでした

 


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