どうもきいつです
ミュージカル映画「ディア・エヴァン・ハンセン」観ました
トニー賞で6部門を受賞したブロードウェイミュージカルを映画化した作品
どこにも居場所がない少年の人生が
とっさについた嘘をきっかけに大きく変化していきます
監督は「ワンダー 君は太陽」などのスティーヴン・チョボスキーが務め
主人公エヴァンを演じるのは舞台版と同じくベン・プラットです
あらすじ
社交性不安障害を抱え
家にも学校にも居場所がない高校生エヴァン・ハンセンは
自分自身には宛てた手紙を書いていた
しかし、その手紙を同級生のコナーに持ち去られてしまう
後日、校長に呼び出されたエヴァンは
コナーの両親からコナーが自殺したことを知らされる
コナーの両親はエヴァンの手紙を見つけ2人が親友だったと勘違いしているのだった
思わずエヴァンはコナーと親友だったと嘘をついてしまう
感想
エヴァンの気持ちが痛いほどわかる
そして、噛み合っているようで噛み合っていない登場人物たちの関係性は
見ているだけて辛くてしんどい
スッキリする映画ではないけど
この映画には救われる人は少なからずいるのではないでしょうか
予告を見て前から気になっていました
僕はそんなにミュージカル映画は観ないですが
それほどミュージカル映画が嫌いでもない
それに本作は
ミュージカルなのにテーマがミュージカルっぽくないので
そこにも少し期待していました
この映画は少し賛否が分かれているようです
実際にも観てみると
確かに賛否が分かれるだろうな
という内容なのは間違いないと思う
ミュージカル映画だからという部分でも賛否が分かれているんだろうし
主人公や物語の部分でも賛否が分かれそうですよね
その人が映画に何を求めているのか
その人がどんな人生を歩んできたのか
それによってこの映画の見え方は全く違ってくるんじゃないでしょうか
だから、この映画の好き嫌いも大きく分かれるのだと思います
まず、本作の賛否が分かれる理由の一つとしては
感動のミュージカルという先入観だと思います
予告とかでも感動を売りにしている所は大いにあるんですが
実際の映画の内容はと言うと
その期待にはそぐわないのかなと…
むしろ、いわゆる感動的な映画ではない
この映画では気持ちよく泣けないですよね
泣ける映画を求めてる人って
やっぱり気持ちよく泣きたいと思うんです
でも、この映画ではそんな欲求は満たされない
泣けたとしても全然気持ちのいい涙ではありません
辛くてしんどくて泣けてくる
みたいな…
それと同時に
ミュージカル映画としても
みんなが求めているものとはズレがあるのかな
とも思います
ミュージカルって
楽しく主人公たちが歌って踊って
周りの人たちもそれに合わせて踊る
そんな華やかで明るいイメージが強いですが
本作のミュージカルはそんなに楽しくないんですよね
基本的に1人で歌ってるだけのシーンが多いし
歌詞の内容もなかなかネガティブ
すごく暗いです
ディズニー映画とか「ラ・ラ・ランド」「グレイテスト・ショーマン」みたいなのを期待してしまうと
全然思ってたのとは違います
みんなが思い描くミュージカルと
本作のミュージカルは大きく異なっていて
そこで置いてけぼりにされる人は多いのかもしれません
その次に賛否が分かれる理由としては
主人公の性質とすっきりしない物語だと思います
主人公のエヴァンは簡単に言えば
クラスに1人はいる
教室の片隅にいつも1人でいる孤独な同級生
って感じです
このエヴァンに共感できるかどうかで
本作は全く違ったものになると思います
エヴァンに共感できれば
ストーリーもすんなり入ってくるんですが
共感できなければ
この映画のストーリーには不快感すら感じてしまうかもしれない
共感できるかどうかは
観る人の人生に委ねられてるとも思う
そういうのもあり
やはりこの映画は万人ウケの映画ではないのかも
この映画に救われる人もいれば
この映画がとにかく嫌いと思う人もいるでしょうね
そこがこの映画の面白さでもあると思う
僕はと言うと
まさしくエヴァンのような学生時代を過ごしてたので
共感はすごくできました
さすがにこの歳になると
そんな時代は乗り越えてきたわけで
今さら救われるようなことはなかったけど
それでもこの映画はとても心に刺さったし
好きだなと思わされた
本作の中心は
エヴァンがついた嘘で
この嘘がきっかけで
エヴァンの人生に変化が起き
その嘘が膨らみ多くの人を巻き込み
そして人を傷つけてしまいます
この嘘を軸に
全ての物語が動いていく
で、重要なのが
この物語は嘘をついたエヴァンが赦しを請う話ではないし
エヴァンがコナーの家族と和解したり
エヴァンがみんなから認めてもらえる
というような結末を向かえるわけでもありません
ましてやコナーの死の原因は発覚することなんて全くなく
何かが解決するような物語ではない
最後まで観ても結構モヤモヤするんですよ
そこもやっぱり好き嫌いが分かれる要因でもあると思うんです
エヴァンの嘘に振り回される人たちがいるし
エヴァンはその罪を償う姿が深く描かれるわけでもない
なので、本作に不快感を抱く人も多いと思う
ただ、この映画で最も重要なのはエヴァンの気持ちで
エヴァンの嘘の罪がどうとか
物語の結末がどうとか
そこにこだわりすぎて本作を観るのはどうなのかな
僕は思うんですよね
この映画の中でエヴァンはコナーと親友だったという嘘をついていますが
実はそれ以外のエヴァンの言葉って
全く嘘が無いんですよ
コナーの思い出を語っている時だって
エピソードは嘘なんだけど
でも、これって
エヴァンが求めているもので憧れているもの
嘘のエピソードではあるけど
これが本当のエヴァンの気持ちそのものなんです
その後も
エヴァンの言葉には嘘が無くて
だからこそコナーの家族はエヴァンのことが好きになるし
エヴァンのスピーチを聴いた人たちが心を救われるわけです
そして、この映画を観ている人たちも
そんなエヴァンの姿を見ていると
どこか心を救われる
みんながみんなではないけど
少なくともエヴァン側の人生を送っている人は
エヴァンの姿に心を打たれると思います
それと、やはりこの映画から強く感じる気持ちはしんどさです
しんどくて泣ける映画
感情移入していればしているほど
嘘の上に築かれた人間関係や幸せには
見てれなくなるほど心を締め付けられます
噛み合ってるようで噛み合っていない居心地のわるさたるや…
嘘をついているエヴァンはもちろん愚かだけど
エヴァン以外の登場人物たちも
実は弱くて愚かなんですよね
みんなどこか欠けていて
最終的に全てが崩れ落ちてしまう理由は
エヴァンの嘘だけではない
そんな人たちだから
どの人にも感情移入できてしまって
とにかくいろいろ辛くなる
泣けてくる
ただ、そんな愚かな人たちだけど
優しさに溢れているのも間違いなくて
それがこの映画の救いですよね
この優しさにも泣けてくる
これに関しても
好きになれない人は好きになれないかもしれませんね
人の愚かさに気持ち悪さを感じてしまえば
ただ不快な映画でしかない
でも、自分の弱さを知っている人なら
この映画の人々の姿には心を打たれるはず
あと、ミュージカル映画としても
なかなか面白い作りの作品だと思います
本作はミュージカルという手法を使ってるからこそ
孤独というものを上手く表せています
そもそも、ミュージカルって
華やかで明るいイメージがあります
みんなで踊り狂ってるみたいな
そんなイメージを逆手にとって
孤独の辛さを痛々しいほど表現できている
冒頭のエヴァンが学校に行くまでのミュージカルシーンは
ただひたすらエヴァンだけが歌って
周りの人は歌って踊るどころか
エヴァンをガン無視
ミュージカルだからこそ
この場面だけでエヴァンがどれほど孤独なのかが伝わってきます
本作で1番楽しいミュージカルシーンですら
ただの嘘と妄想というね…
とのかく本作のミュージカルシーンは
キラキラ感なんて全く無くて
でも、そこに込められた気持ちはひしひしと伝わってくる
独特なミュージカル映画にはなっているけど
僕はこの作風には面白いと思わされた
賛否は分かれるだろうけど
刺さる人にはすごく刺さると思う
決して楽しいミュージカル映画ではないけど
孤独な人ほど本作には心を救われるんじゃないでしょうか
僕はこの映画が好き