どうもきいつです
ドキュメンタリー映画「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」観ました
レオナルド・ダ・ヴィンチ作とされる絵画「サルバトール・ムンディ」を追ったドキュメンタリー映画
史上最高額の4億5000万ドルで落札されたこの絵画の経緯が明かされていきます
監督はアントワーヌ・ヴィトキーヌが務めています
あらすじ
とある美術商が
ダ・ヴィンチの消えた絵画でないかと思われる作品を1万ドル足らずで入手する
その後、ロンドンのナショナル・ギャラリーの鑑定の末
この作品はダ・ヴィンチの作品として展示される
そして、この絵画は注目を集め
いつしか4億5000万ドルという大金で落札されるのだった
感想
この絵画を取り巻く人々全てが滑稽に見えた
ダ・ヴィンチの作品なのかどうか
どれだけ高額な値が付いたのか
アートの価値ってそんなもので決まるのか?
アート界のバカバカしい一面が浮き彫りにさせられています
なかなか興味深そうな映画だったので観てきました
「サルバトール・ムンディ」に関してはそんなに知らなくて
この一連の騒動もあまり知らなかった
そもそも僕は絵画の値段には全然興味が無く
その上、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品にもあまり興味が無かったり…
観れるのなら1度くらいは「モナ・リザ」を生で観たいという気持ちくらいはありますが
そんな薄い気持ちでこの映画を観たわけですが
「サルバトール・ムンディ」を中心に巻き起こったこの騒動は
普通に面白いです
アートの価値とはなんなんだろう?
と考えさせられる映画でしたし
アート界の闇を目の当たりにすることもできた
まず、この映画はそれなりに美術に興味がないと楽しめないかもしれません
邦題は若干ミステリーっぽい雰囲気を醸し出してるけど
実際はストーリー性は無く
謎解きの要素も無い
「サルバトール・ムンディ」が再発見され高額で落札されるまでに関わった人たちの証言を基に
この絵画の経緯が語られていく
といった内容
なので、少し退屈に思う人もいるかもしれません
エンターテイメントよりも勉強みたいな映画ですから
でも、少しでも興味があれば
アートについて考えさせられますし
アートの見え方も変わるかもしれない
本作が興味深い映画なのは間違いない
はじめは1万ドル約13万円の絵画が
最終的に4億5000万ドル約510億円になるわけですが
この経緯が本当に面白くて
そしてバカバカしい
人間って本当に浅はかで愚かだな…
と思わされます
この愚かさはアート以外にも通じる部分は大いにあるんじゃないでしょうか
本作は様々な専門家、美術商、金持ちなど
登場人物がたくさんいますが
それぞれの思惑が渦巻いて
それが上手く噛み合っているのか
逆に噛み合っていないのか
どんどんと「サルバトール・ムンディ」を中心に
事態が大きくなっていきます
それぞれの考え方、価値観、目的の違いから
「サルバトール・ムンディ」の価値だけがひとり歩きを始める
はじめは掘り出し物のこの絵画を美術商が発見し
ダ・ヴィンチの作品なのではないかと調べ始めます
で、この美術商の目的はと言うと
口ではそれらしい御託を並べているものの
結局は金で
如何にこの絵画が大金で売買できるか
が全てなんですよね
美術商からすれば本物であれば儲けもんなわけです
そんな目的だからこそ
修復と言って無駄に絵を綺麗に塗り直していたりしてるんですよ
それをやっちゃ価値がなくなるだろ
と思うんですけどね…
一方、専門家はと言うと
この人たちは純粋に本物かどうかを知りたくて細かく調べ
それぞれの期待や考えもあり
本物かどうかの賛否はつかない状況だったりします
ただ、厄介なのが
その専門家の中に本物だと言う人が1人でもいるというところ
この本物派がいることによって
金儲けしたい人たちは強気になれる
その結果、ナショナル・ギャラリーは
客引きのために
「サルバトール・ムンディ」をダ・ヴィンチの作品として公式に展示してしまいます
この展示が全ての始まりで
これがきっかけで一気にこの絵画の信憑性が増し知名度も上がり
名画の仲間入り
ここから莫大なお金が動き出すわけです
そこからは騙し騙されで
売る側は如何に価値を吊り上げるか
買う側はこの絵画の経緯や真実も知らず
ただすごい絵画と言うだけで途方もない大金をつぎ込んでいく
この一連の流れは本当に滑稽ですよね
この映画を観ていると
正直、この絵画にそこまでの価値があるとは到底思えない
そもそもダ・ヴィンチの作品かどうかは曖昧なままだし
修復という名のコーティングを施されているこの絵に
歴史的な価値すらも感じれない
結果的に510億円に至る経緯にしても
競売会社のクリスティーズの思惑通りで
みんながこれに踊らされているんですよね
「サルバトール・ムンディ」を鑑賞する人たちを隠し撮りしたCMとか
本当に笑ってしまう
こんなよくわからん絵を観て
みんな感動の表情を浮かべ
中には涙を流してしまう人も
たまたま観に来ていたディカプリオもCMに利用されていたり…
ディカプリオのあの表情なんて笑うしかないでしょ
隠し撮りされていた人たちを見ると
ちょっと恥ずかしさすら感じてしまった
でも、結局は宣伝効果が絶大だったのか
この絵の価値は爆上がり
すごいことになってしまいました
僕がこの映画を観て考えさせられたのは
アートの価値の本質とは何なのか
というところで
510億円の値がついたこの絵画はすごい作品だし
もし、ダ・ヴィンチの本物の作品だったとしたら
それもまた、すごい作品だということは間違いない
ただ、それってアートの価値の全てなのかなと…
むしろ、そんな部分にこだわりすぎて
みんな騙されちゃってるんですよ
大金を払い購入した人たちも
この絵を観て感動している人たちも
ロシア人の富豪が投資目的で購入した際は
仲介の美術商にピンハネされていたし
510億円で落札したのはサウジアラビアの王子と言われているけど
結果的にこの絵を買ったことで
国単位で馬鹿を見てるように思います
この人たちは騙されている側ではあるけど
大してアートに興味もなく
ダ・ヴィンチ作であろう絵画
なんか持ち上げられてすごそうな絵画
という部分だけで判断してるから
結局は後悔することになっている
この絵を観て感動していた人たちも同じで
ダ・ヴィンチ作だという先入観が無く
誰もこの絵に集まっていなかったとしても
同じように涙を流していたのか?
作者が誰なのか
いくらの値段が付いているのか
その視点もアートの楽しみ方の1つではあるけど
絵を目の当たりにした時に思う
すごく上手い、色が綺麗、構図がカッコいい、雰囲気がいい、なんかパワーを感じる
みたいなシンプルな気持ちってとても大切で
これがアートの価値の根本で本質じゃないかと思うんです
そこさえブレなければ
例え購入した絵が偽物だったとしても
自分はこの絵を観て感動したんだよ!!
と堂々と胸を張れるでしょう
美術館へ行ったとき
小難しい知識とかそんなのは抜きにして
自分はどの作品が好きなのかを探すように鑑賞すれば
知識が無くても美術館を十分に楽しむことができると思います
むしろ、そっちの方が純粋に美術を楽しめているかも
僕はアートに値段をつけることに全然否定的ではないし
「サルバトール・ムンディ」がダ・ヴィンチ作なのかどうかということも重要なことだとは思っています
歴史的な価値がある作品なのは間違いなくて
そこを追求することは大切です
ただ、やはりお金や欲望が絡んでしまうと
不純なものが入り混じって
話がこじれる
その結果がこのバカバカしい騒動というわけですよね
特に現代美術はお金が絡みすぎて
アートの価値が本当に曖昧
何がいいのか
何がすごいのか
が、いまいち不明で
値段だけがつり上がっている作品もよくある
日本でも
投資のためと美大生の作品を
有名になる前に買っている人なんかもいるみたいですし
こういうのって
アートの純粋な価値を下げてしまっているような気がして
僕はあまり好きじゃないんですよね
「サルバトール・ムンディ」に関しても
クリスティーズが現代美術のような扱いにしたからこそ
莫大な値がついたけど
そのかわりにこの絵画の本来の価値は下がってしまったように思えました
この映画を観ると
アート作品を観て下手に感動できなくなりますね
ただ「サルバトール・ムンディ」を取り巻く
不純物だらけのアートの世界を目の当たりにすることで
本来のアートの価値というものを
あらためて考えさせられました
所詮アート
小難しいことは考えず
好きか嫌いかくらいで判断するのがちょうどいい
最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望