何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「ナイトメア・アリー」感想 まさに悪夢

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どうもきいつです


サスペンス映画「ナイトメア・アリー」観ました
1946年に出版された小説「ナイトメア・アリー 悪夢小路」を原作にしたサスペンススリラー
ショービジネス界での成功を目指す野心家の男の運命が描かれます

監督は「シェイプ・オブ・ウォーター」などのギレルモ・デル・トロ
主演を務めるのは「アメリカン・スナイパー」などのブラッドリー・クーパーです

 

あらすじ
1939年
カーニバルを訪れたスタントンは
その怪しげなカーニバルの一座のメンバーとして働くこととなる
そこで読心術を学んだスタントンは
人を惹き付ける才能とカリスマ性で人気興行師になる
そして、彼は一座を離れて活動を始めるが
思いがけない運命が待ち受けていたのだった

 

感想
主人公が登り詰めて堕ちていく様はまさに悪夢
その姿にハラハラさせられました
暗くジメジメとした陰湿な世界観に
不快さを感じつつもどんどん引き込まれていく

 

ギレルモ・デル・トロの最新作
ということで楽しみにして観に行ってきました

ギレルモ・デル・トロ作なので
多くの人がダークファンタジー的な映画を
期待していたり想像していたりはするでしょうが
ちょっとそういう作品ではありません

とは言え
ギレルモ・デル・トロらしさは存分に堪能できる作品でした

 

本作は傲慢な男の転落人生を描いた作品で
主人公は最低野郎だし
ラストはあまり後味がいいとは言えないし

全体的にネガティブな印象の映画ではあるけど
普通に面白いなと思える映画でもあって
絶妙な味わいのある作品だと思います

ダークファンタジーを求めていた人なら
思ってたのと違う
となるでしょうけど
それでも本作に面白さを感じることはできると思います

 

まず、やっぱりストーリーは面白い

特に捻ったような物語ではなく
先の展開なんかも容易に予測できる内容なんですけど
この映画はまさしくジェットコースターですよね

本当に絵に描いたようなジェットコースター映画で
男が登り詰めて一気に転落していくストーリーなわけです

その転落人生には
もはや気持ち良さすら感じてしまう


前半部分は少しゆったり物語が進んでいきます
スタントンがカーニバルの中で様々な人と交流を深めたり
モリーと出会い恋に落ちたり

カーニバル自体に闇の部分が見え隠れしつつも
そんな陰湿な環境の中に暖かさも感じれるような

ここまでは転落人生とはほど遠いようにも感じます


ただ、スタントンとモリーがカーニバルがら出てからは
物語が加速していきます

外の世界で成功し成功したスタントンですが
ここからは傲慢な男が傲慢が故にドツボにはまっていく

転落しだしてからは
もはやスタントンが可哀想にも思えてしまいが
正直
めっちゃ面白いんですよね

やっぱりハラハラドキドキするんですよ

スタントンがやってることは完全に詐欺なわけで
更に金や名誉のため周りの助言には聞く耳持たず
どんどんと勝手に突っ走っていきます

この危うさが緊張感を生み出して
観ている側もどんどんと引き込まれていく

終盤の
絶対に騙しちゃダメなヤバいおっさんとのやり取りなんて
恐怖すら感じてしまうと言うか
ピリピリとした緊張感にゾクゾクさせられる

スタントンと精神科医のリリスとの関係性もとても不安定で
そこに不安な気持ちを煽られる
そしてなんかすごくエロい


終盤になると瞬く間にスタントンは真っ逆さまに堕ちていって
その過程のスピード感と勢いが気持ち良いほど

1人の人間が崩れ落ちていく様なのに
ここがめちゃくちゃ面白いと思わされるんですよね

完全に堕ちきってからのラストシーンも素晴らしい
最後のスタントンの笑いには何とも言えない気持ちにさせられます

この結末は因果応報の自業自得ではあるけど
どこか寂しさや切なさも感じてしまう
なんかちょっと可哀想と言うか…

かと言って
こいつが成功して終わっても納得いかないし
やってきたことから考えれば
こうなることは当然の報いだという気持ちもある

そして、このラストシーンを観ると
やっぱりこの映画は面白かったな思わされる

まさしく悪夢のようなスタントンの転落人生は
もはやアトラクションで
楽しいとさえ思ってしまいましたよね

 

それと、ストーリーだけでなくスタントンという人間も面白い

結果的に最低な男には間違いないけど
何故か嫌いにはなれない
とても魅力を感じる主人公です

これはブラッドリー・クーパーの存在感や演技もあるだろうけど
スタントンの繊細な描写に
最低な人間だけどどこか感情移入もできてしまうキャラクターに仕上がっています

詐欺師で人を騙し金を儲け
より多くを求め高みを目指す強欲さ
人の優しさを蔑ろにして突き進む傲慢さ
人として最低だと思わされる人物だけど

所々に後悔、優しさ、暖かさ、弱さ、夢や希望など
共感できたり好きになれるような部分が垣間見れます

スタントンの最低な部分すらもやはり人間らしさであって
最低と思いつつも共感できたりもしてしまいますしね

最低だと思いつつも
スタントンのことをどこか好きにもなってしまっています


そんな細かい彼の人物描写があるからこそ
彼の転落人生を共に感じることができる

よりこの映画に入り込むことができて
ジェットコースターのような転落人生を楽しむことができるんです

 

あと、やっぱりギレルモ・デル・トロらしさもたっぷり堪能できます
本作の悪夢のような世界観は彼だからこそ出せたんじゃないでしょうか

「シェイプ・オブ・ウォーター」や「パンズ・ラビリンス」のような
あからさまなファンタジー描写が本作には全然ありません

それでも
この世界は夢の中の世界なのかな?
と思わされるような雰囲気は作り出されています

カーニバルの雰囲気なんかも
どこか現実離れしてるように思えるし
ちょっと不思議な空気感はありますよね
カーニバルの造形なども独特で
夢の世界を感じさせられる

それに全体的にジメジメとした湿度を感じる映画でもあって
そこには現実と違う悪夢のようなものを感じさせられたりもします

ジメジメの表現も
臭いすら感じてしまいそうなほどの嫌なジメジメだったし


何よりも面白いと思わされたのは
冒頭のスタントンが家を燃やしてからバスで揺られている場面と
ラスト付近のひげ面になったスタントンが目を覚ます場面

この2つの部面があるからこそ
この間のことは全て夢だったのかな
と思わされる

この映画が全て悪夢だったかのように感じさせられます

こういう表現は「シェイプ・オブ・ウォーター」や「パンズ・ラビリンス」と通じるものがありますよね

 

悪夢のようなスタントンの人生には
最後まで飽きずにハラハラと楽しむことができました

人間の転落人生を楽しむって性格が悪いようにも思うけど
でも、この映画はアトラクションのように楽しめてしまう
面白い作風の映画だったと思います

 


ナイトメア・アリー 悪夢小路 (海外文庫)