何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「TITANE チタン」感想 発想が変態 そして愛

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どうもきいつです


スリラー映画「TITANE チタン」観ました

頭にチタンを埋め込まれた女性がたどる数奇な運命を描いた異色のスリラー
第47回カンヌ国際映画でパルムドールに輝いたフランスの作品です

監督は「RAW 少女のめざめ」のジュリア・デュクルノーが務めています

 

あらすじ
幼い頃に交通事故に遭ったアレクシアは手術により頭部にチタンプレートを埋め込まれた
それ以降、彼女は車に対し異常な執着心を示し
危険な衝動を押さえきれなくなる
やがて、自身の犯した罪により行き場を失ったアレクシアは
消防士のヴィンセントと出会うのだった

 

感想
発想が常軌を逸している
マジで変態映画
あまりのブッ飛んだ内容に主人公に感情移入すらできないけど
何故か引き込まれてしまう魅力もある
どこか不思議な映画でした

 

前から気になっていたので観に行ってきました

独特な映画だという情報はありましたけど
実際に観てみると想像以上でしたね
とんだ変態映画でした

本作はグロいと言うか痛々しい場面も多く
その上、なんかよくわからない映画でもあるので観る人を選ぶかな
という印象

無理な人は絶対この映画が無理ですかね

面白いのかどうかと言うと
それもちょっとわからない

なんかすごい映画だとは思えますが…

とにかく変な映画

 

まずは
やっぱり設定がブッ飛んでますよね

主人公のアレクシアが妊娠するわけですけど
原因が車とヤっちゃったからという

よくもまあそんな発想できるよね
と、感心してしまう

しかも、そのブッ飛んだ発想をちゃんと映像として表現してししまってるし
ビジュアル的にもインパクトは半端ない

前半のアレクシアの暴走っぷりもなかなかイカれてて衝撃的でしたしね


後半になってからの
主人公アレクシアと消防士のヴィンセントの関係性にしてもとても奇妙で

この2人を軸に愛を描いてるわけだけど
こんな愛があるんだと
新しい世界を見せられたような気がする


正直言って意味わからないんですけど
この常軌を逸した世界観に引き込まれてしまったのは否めない

 

それと、この映画の特徴と言えば
痛さですね

観てるだけで痛くなる場面がかなり多いです
直接的なグロい映像なんかはあまりないのに
痛くて目を背けたくなるシーンが多い

人を殺すシーンは基本的にめちゃくちゃ痛いし
乳首を噛むのとか洗面台で鼻を折るとか
些細な場面でも痛さを出してくる

それにしても痛さの表現が上手い
観てるだけでもちゃんと痛いですからね

この表現に拒否感を覚える人も多いでしょうし
この“痛さ”が利点なのかどうかはわからないけど
こういう体験も映画体験の1つと言えると思う

 

そして、本作が面白いのは
前半と後半との作風の違いです

前半と後半では180度作風が変わる
その対比が本作のテーマにも繋がっていると思います

前半はかなりテンポがよく
バイオレンススリラーって感じで
刺激的な場面も多く観ていてどんどん乗っていける
低俗なホラー映画を観ている感覚

主人公が次々に多様な方法で人を殺していき
音楽もノリノリだったりで
軽い気持ちで楽しめるスラッシャー映画のような作風です


一方、後半になるとかなりスローテンポで
前半のような刺激的なシーンも少なくなります

その代わりに人間ドラマが中心で
繊細な感情の変化などを言葉でなく映像で表現しています
どこか上品さすら感じれる

後半は上質なヒューマンドラマを観ているような感覚なんですよね
前半に比べると重さもある

この前半と後半の対比が
愛というテーマを際立たせていると思います


前半は無機質な金属のような冷たさを感じ
後半は有機的な生命の暖かさのようなものを感じれます
アレクシアを中心にその変化を見せることで
愛の素晴らしさを表現している


前半のアレクシアは
愛を与えることも与えられることもなく
ただただ人を傷つけて生きていく
他人も自分も傷つけていきます


後半になると消防士のヴィンセントが現れ
そこからアレクシアの運命も変わっていく

ヴィンセントはアレクシアを自分の息子だと信じ無償の愛を与え続けていくわけです
てか、息子でなくても愛そうとする決意すら感じれる

実際にアレクシアが何者であろうが最後まで愛し続けます

そんなヴィンセントの姿に感化され
成り行きではあるけど消防士として人を救い生かすことで
アレクシアも少しずつ変化していきます

そして、アレクシアの中にも子供に対する無償の愛が生まれていく

最終的には
こんな異形な世界の中で
異形な人間を無償の愛で包み込む

そこには光と暖かさが溢れていて
愛の素晴らしさをこれでもかと突き付けられます

すごく変な映画で意味不明でもあるけど
映画を観終わったときには
愛の素晴らしさを確信できる

 

まあ、いろいろ御託を並べたけど
結局、この映画って
最初から最後まで予測不能と言うか…

全然こちらが思った通りには進んでいかない
そこがこの映画の面白さかなと思います

本作はやっぱり斬新で
今までで見たことないようなものをたくさん見せつけられた

変態的な発想や表現に引き込まれ
最後には愛の素晴らしさに感動できてしまう

なにこの変な映画


全てが想像の斜め上でしたね
だからこそすごいものを観たという気持ちになれる


それに映画としての演出も上手かったですよね
めちゃくちゃなクレイジーな映画の反面
見せ方はちゃんとしてる

観客の気持ちの煽りかたなんてお手本のようだし
音楽の使い方もしっかりしてる

人間ドラマの繊細な表現なんかも
言葉なく感情が伝わってきましたし

ただ奇抜なだけでなく
ちゃんとしてるところはちゃんとしてる

そこが賞を取るにあたった所以だと思います

 

あと、1つ思ったのが
妊娠を散々引っ張ったわりに
生まれてきた赤ちゃんがまあまあ普通でした
それがちょっと拍子抜けでしたかね…

あれだけ引っ張ったら
もっとすごいのが生まれてくると期待してしまうのが人間の性

まあ、些細なことですけどね

 

なかなか変な映画で
エンタメ的な面白さはあまりありません

でも、興味深い映画なのは間違いなくて
観て損はなかったと思います

自分の中には存在しない新しい世界を見ることができた

 


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