何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「NOPE/ノープ」感想 これはもはや怪獣映画

どうもきいつです


ホラー映画「NOPE/ノープ」観ました

広大な田舎町の空に現れた謎の飛行物体をめぐるスリラー
飛行物体の撮影を試みる兄妹の運命が描かれます

監督は「ゲット・アウト」「アス」などのジョーダン・ピール
出演するのはダニエル・カルーヤ、キキ・パーマなどです

 

あらすじ
広大な牧場をするヘイウッド家
ある日、長男OJが父親と話をしていると
突然空から異物が降り注ぎ
それが直撃した父親が亡くなってしまう
その後、OJは空に巨大な飛行物体を目撃者する
そして、彼は妹エメラルド共に飛行物体の撮影を試みるのだった

 

感想
ちょっと思っていたのと違ったけど
これはこれで面白い
ホラーと言うより怪獣映画
意味深な場面も多く考察好きな人もハマるかも
皮肉が多い映画かとも思う

 

ジョーダン・ピールの新作映画ということで観てきました

今回もホラーサスペンス的な内容なのかな
と思っていましたが
なんかちょっと毛色が違う

「ゲット・アウト」や「アス」みたいなのを期待している人からすれば
少しズレを感じる映画かもしれません

ホラー的な演出はありますが
全体的にホラーっぽさはあまり無いですね

それもあってか本作に否定的な感想の人もそこそこ見かけます


ただ、メッセージ性やテーマなどは
相変わらずのジョーダン・ピールって感じで
いろいろと深読みできる映画になっています

これに関しても
よくわからなかったとか難しいとか
否定的な人はいると思います


僕の場合は最後までかなり楽しんで観ることができました
個人的に好きな要素が多かったですね
普通に面白かった

 

本作は深読みできる要素も多いんですけど
それ抜きでも楽しめるエンタメでもあります

まあ、言ってしまえば「ジョーズ」みたいな映画ですね
本作の場合はサメじゃなくてUFOですが

ストーリーはシンプルで
家の近所にUFOが出るからそれを撮って大儲けしよう
って話です

なので、ストーリーだけ追っていけばさほど難解な映画でもなくて
すごくわかりやすく観やすい映画だと思う

変に深読みしようとか考察しようとこの映画に挑んでしまうと
難しくてよくわからんな
と、なってしまうかもしれませんが
そのへんはスルーすればいいと思います

難しく捉えずに観る方が
この映画を単純に楽しめるのではないでしょうか
考察なんて後からすればいいし

 

で、個人的に
この映画はホラー映画と言うよりも怪獣映画みたいな感覚で楽しんでいました

巨大な何かが迫ってくる恐怖だったり
いろんな物がブッ壊されたり
怪獣映画のそれですよね

やっぱり大画面で本作を観ればより迫力があり
巨大なものへの畏怖も感じることができます

OJが馬のラッキーを助けにテーマパークに行った時に迫ってくる場面とか
かなりゾクゾクとしました

家の上に来たときの見つかったら終わり
みたいな緊張感も最高


それに音の使い方も良いですよね

奴が近づいてきたときに流れていた音楽が止まるのは面白い
音楽が止まったときの絶望感と再び流れ出したときの安心感
精神が不安定になってしまう

奴が迫り来るときの音も緊張感を高めてくれます


あとは
空に何かがいる
という見せ方は新しく感じた

UFOが空から攻めてくるSF映画はよくあるけど
本作のような空を見上げてそこに違和感を感じさせる
って見せ方はあまりなかったように思う

空を見上げることに恐怖を感じさせるのは
ホラーとしても斬新でした


終盤にはエンタメ的に派手で盛り上る展開になっていましたし
エヴァやAKIRAなどのオマージュが盛り込まれていたりと
楽しめる要素はたくさんあります

普通に面白い映画だったなと僕は感じました

 

そして、本作はそれだけでは終わっていなくて
やはりジョーダン・ピールらしい作品にもなっています

本作は皮肉に満ちているなと思わされます

さっきまで僕も面白かった楽しめたと言ってきましたけども
娯楽として作品を消費しているそんな観客達を嘲笑うかのような映画でもあります

この作品自体がエンタメを消費する人間への皮肉になっている

わかりやすいところで言えば
チンパンジーのコーディですよね

コーディは人間に手懐けられエンタメとして消費され
最終的に牙を剥き人間に襲いかかるわけです

単純に
何でも制御できると思い込んでいる人間の愚かさを描いてるだけにも見えるけど
それだけではなくて

コーディを人間に当てはめることもできますし
それが人種差別に繋がったりも

主人公のOJの一族も
手懐けられ消費され忘れ去られた存在という境遇だったりする

それらは最近のポリコレ配慮の風潮に対する皮肉のようにも思えます

最近のポリコレ配慮の映画とか
黒人とかLGBTとか社会的弱者とか
そういう人たちをとりあえず出してエンタメとして消費している感じしません?

そういう人たちも手懐けられ消費されている存在だと言える


さらに本作は
消費されていた人間たちも消費する側に回ります

主人公たちはUFOを撮影して金持ちになろうと画策します
かつてコーディ事件に巻き込まれたリッキーもUFOを手懐けショーにしようとしています

ここが人間の愚かさの極みで
人間はどこまで行っても人間だなって感じです

 

そして、OJたちの滑稽さもこの映画では重要

OJたちのやってることって
UFOを撮影して金持ちになりたい
それだけなんですよ

映画を観ていると感情移入もできてOJたちを応援してしまってるんですけど
冷静に考えるとこいつらめっちゃ滑稽です

これって最近で言えば無茶してバズろうとするユーチューバーみたいな感じ

OJたちもある意味バズろうとしてるわけですよね
それで最終的に撮影成功しますけど

で、結局こいつらが最終的に得たものって何だったんだよ
と思ってしまう

命をかけ撮影するため戦ってきて
それ相応に得たものって無いですよね…

確かにこれを期にお金を得て有名人にもなれるかもしれませんが
結局、これに関しても消費され忘れ去られていく存在でしかない

YouTubeとかSNSも同じ
みんな必死になってバズろうとか再生数を稼ごうとして
そして、みんな消費され忘れられていくんですよ

それはエンタメ全体にも言えることで
金稼ぎや話題作り中心で記憶に残らず消費されて忘れられる作品も多い

この映画はそんなエンタメへ警鐘を鳴らしている作品のようにも思えた

消費して忘れ、消費して忘れを繰り返す人間の愚かさを表現した映画だったんじゃないでしょうか

そして、そんな本作を観て
面白いか面白くないかで判断し消費してしまっている我々観客への皮肉にもなっている…

ジョーダン・ピール性格悪いですね

 

賛否分かれているみたいですが
僕は普通に面白いと思ったし楽しめました

で、この映画を観て
単純に面白いと言って大丈夫なのか?
と考えさせられたりもした

監督の作家性が出ていてとても興味深い映画でした

 


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