どうもきいつです
ドラマ映画「土を喰らう十二ヶ月」観ました
水上勉のエッセイ「土を喰う日々-わが精進十二ヶ月-」を原案に作られたヒューマンドラマ
長野の自然に囲まれ生活を送るとある作家の日々が描かれます
監督と脚本を務めるのは「ナビィの恋」などの中江祐司
劇中の料理を手掛けるのは料理研究家の土井善春
主演はミュージシャンで俳優の沢田研二です
あらすじ
長野の人里離れた山荘で暮らす作家のツトム
彼は山で採れる実やキノコ
畑で自ら育てた野菜などを料理して
四季を感じながら日々を送り執筆をしていた
時々、東京から訪れる編集者であり恋人の真知子と幸せな時間を過ごす
一方、ツトムは13年前に亡くした妻の遺骨を墓に納められずにいた
感想
ストーリーや説明がほぼ無い映画
シンプルな料理、シンプルな自然、シンプルな人間、シンプルな人生が描かれている
如何に自分が添加物まみれの生き方をしているか気づかされた
間違って本作のチケットを買ってしまったので観てきました
本当はブラックパンサー観るつもりだった…
そもそも、この映画の存在すら知らなくて
どういった内容なのかも想像がつかず
全く未知の映画
まあ、こういう映画体験もたまには悪くない
かなり不安もありましたが
実際に観てみるとなかなか面白い映画でした
とは言え
わかりやすく面白い映画でもなくて
はっきり言ってエンタメではないです
ちょっと独特な作風なので
観る人を選ぶ映画かもしれません
僕はこんな映画は結構好きですかね
本作の特徴としては
ストーリーらしいストーリーはありません
大自然の中で生活するおじさんの生活が淡々と描かれる映画
所々にイベントらしい出来事もありますが
基本的に明確なストーリーはありません
そして、登場人物のバックボーンや関係性などもそこまで深く描かれず
全体的にかなり掴み所の無い映画かと思う
自然の風景と質素な食事がひたすら映し出され
主人公のツトムの日々を見せられるだけ
これだけだとつまらない映画と思われるかもしれないですが
全然そんなことなく
むしろ、とても興味深い内容だし良い映画です
本作を観ることで心を洗われたような気持ちにもなりました
本作は例えると
添加物のない素朴な料理
だと思ってください
ハリウッド超大作や日本の漫画実写映画とか
こういう作品は添加物まみれのジャンクフードみたいなもんですかね
伏線だとか
奇抜な設定だとか
定番の展開だとか
オマージュだとか
全米が泣いただとか
とにかくいろんな調味料をぶち込んだ味の濃いやつ
食べ過ぎたら体に悪いやつ
それはそれで美味しいんですがね
本作の場合は
そういったものを削ぎ落としたような作品で
味が薄いのは間違いない
ただ、だからこそシンプルな何かをストレートに感じることができる映画なんです
味わい深い映画だと思います
この映画で特に考えさせられるのは人生や生死についてです
明確にこちらへメッセージを突きつけてくるわけではないけども
ツトムの日々の生活を観ることで
自分の人生についてや生死についてを
つい考えてしまう
シンプルな料理を食べシンプルな自然に囲まれシンプルな日々を過ごしているツトムを観ていると
自分が如何に余計なものにまみれているか
いろんなものに縛られているのか
が見えてくる
生きることに意味を求めすぎてるのかな?
とも思えてきます
生きるということは動くこと
動けばお腹が減る
お腹が減ったときにご飯を食べれば美味い
みたいなことが劇中で言われますが
本当にそうですよね
結局、生きるってそういうことなんですよ
添加物にまみれた生き方をしていると
根本的なことを忘れてしまう
死に関しても
未来のことを考えてしまうから死が怖くなる
起きてから寝るまでの1日で生を実感できれば
自ずと死ぬことへの恐怖が薄れるのかもしれません
この映画を観たら
幸せとは何なのか?
生きることの目的とは?
みたいなことを考える前に
生死についての根本的なことを思い出させられる
それが結果的に生きる目的や幸せにも繋がってくるのかもしれませんね
日本の四季や自然そのものの風景
添加物のない精進料理などが本作のメインでもあるけど
これが添加物のないシンプルな作風ともマッチしていて
相乗効果でより本作に込められた思いが際立っています
背景である自然の景色に美しいと思わされたり
ツトムの作る料理を美味しそうと思わされたりすることで
自分が生きていることを感じさせられると言うか
この映画って理解するよりも
感じ取る映画なのかもしれませんね
それと、本作の面白いところは
明確なストーリーがないし説明も少ないけど
その向こう側にストーリーや登場人物のバックボーンが見えてくるところです
なんとなくいろんなことを想像させられてしまうんですよね
ツトムはこんな人生を送ってきたのかな?とか
この人たちの関係性ってこうなのかな?とか
観ているといろいろ頭に浮かんでくる
これは、やはり曖昧な中にも
その延長線上に何かが見えてくるような見せ方をしてるからなのかな
と思います
例えばツトムの妻の母親の葬式の場面
人付き合いが無かったから葬式にもあまり人が来ないだろう
と言っていたけど
実際に葬式をやると意外と人が集まってきた
というエピソードです
義母の内面やバックボーンは全くわからないけど
このエピソードから義母についてなんか想像させられてしまいます
基本的にドキュメンタリーのような作風なんですけども
その先にしっかりと人間を描いているので
ストーリーや説明がなくとも地に足が着いてるんですよね
生きている人間を感じることができる
ただストーリーが薄い映画というわけではなく
しっかりと中身は作られている映画たと思います
ちゃんと劇中の人間が生きているように思えるから
生死についてのメッセージにも説得力があります
あと、言っておきたいのが
犬が可愛い
ツトムが飼っている犬さんしょがめっちゃ可愛いです
癒しです
これだけで5億点の映画
実はこの犬
タレント犬ではなく一般家庭で飼われている犬らしい
だからこそ素朴で自然な飼い犬って感じですね
ちょっとぽっちゃりしてます
この犬のキャスティングも本作にはピッタリだったと思います
沢田研二がすごく良いキャスティングだったとか
土井善春監修だけあって料理がめちゃくちゃ美味しそうだとか
本作の魅力はまだまだある
たまたま観ることになった映画でしたが
とても良い映画に出会えた
添加物のない本作を観たことで
心を洗われたように思います
デトックスしたような
今の自分の精神状態にもピッタリとハマったような気がする
味の濃いジャンクフードもいいけど
たまにはこんな精進料理も悪くないですよ