何もかもが滑稽

何もかもが滑稽

映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「ぼくたちの哲学教室」感想 日本でもこんな教育した方がいい

どうもきいつです

ドキュメンタリー映画「ぼくたちの哲学教室」観ました

北アイルランドの街ベルファストの男子小学校で実施されている哲学の授業を記録したドキュメンタリー映画

アイルランドのドキュメンタリー作家ナーサ・ニ・キアナンとベルファスト出身の映画編集者デクラン・マッグラが共同監督を務めています

 

あらすじ
北アイルランド紛争によりプロテスタントとカトリックの対立が繰り返されてきたベルファスト
現代も「平和の壁」という分離壁が存在する
この街のホーリクロス男子小学校では哲学の授業が必須科目になっている
子供たちはケビン・マカリービ校長の教えのもと
他人の意見に耳を傾け、自ら思考し言葉にする
哲学的思考により問題解決を探るケビン校長の姿を追う

 

感想
何かを疑問に思い、問い、思考する
こんな教育は日本にも必要だと思う

 

気になっていた映画だったので観てきました

ドキュメンタリーなので少し退屈な映画かもしれないけど
個人的には観てよかったと思えた作品
この映画を通して日本の教育についても考えさせられます

 

哲学的思考の大切さ

本作の舞台となる街ベルファストは大きな問題を抱えた街です
近年までプロテスタントとカトリックの対立により内戦が起きており
現代でも完全に解決したとは言えず緊張感はいまだに漂ってます
その影響により犯罪や薬物乱用も頻発し
青少年の自殺率はヨーロッパの中で最も高くなっています
決して治安の良い街とは言えません
むしろ、治安が悪く絶望感さえ漂っている街です

そんな中で
ケビン校長が行う哲学の授業と
その授業を受ける子供たちの姿を追った作品な訳ですが

本作を観て感じたのは
最悪な状況の中で強く生き抜くための術は
考えること


ケビン校長は子供たちに考えることの大切さを教えています

哲学の授業と言っても
アリストテレスがどうとかデカルトがどうとか
そんな難しい話ではなく

もっと根本的な
何かを疑問に思いそれを問うて、答えにたどり着くために自分で考える
ということを教えています

例えば
先生は「他人に怒りをぶつけても良いか?」と子供たちに問います
そして、子供たちはそれぞれ考えて自分の意見を発言します

ここで重要なのは
先生は何が正しくて何が間違いなのか答えは用意していません
子供たちそれぞれの答えは正しくもあり間違いでもあり
様々な意見に耳を傾け価値観や思考の違いに気付く力を養わせています


子供たちが問題を起こしたときも
君たちは悪いことをしたんだと一方的に叱るのではなく
何故そんなことをしたのか?
その行為によってどんな影響があるのか?
などを子供たちに考えさせます


ケビン校長はとにかく子供たちに考えさせる
それが彼の教育方針なんです

何故それほどまでに考えることを重要視するのかというと
やはり、ベルファストのような混沌とした街で生き抜くには
考えることが生きるための武器にもなり鎧にもなるからです

考える力がないと言うことは
武器も鎧も持たずに戦場に放り出されるようなもの
そんな状態でつらい状況を生き抜くことなんてかなり難しいですよね

何も考えず感情の赴くままに行動すれば
犯罪や薬物に手を出すことは多くなるだろうし
突発的に自殺するなんてことにも繋がります

何も考えずに世間の流れに身を任せれば
自分はプロテスタントだから、自分はカトリックだからと
相手の言葉に耳を傾けることもなくいがみ合うことにもなってしまう

しかし、考える力があれば
何かに対抗することも自分を守ることもできる

みんなが哲学的思考で視野を広く持って考えることが出来れば
犯罪や薬物を未然に防げるだろうし
簡単に自殺しようなんて気持ちにもならないでしょう
宗教対立による争いの解決にも繋がるはず

ケビン校長はそこを目指して教育をしているんだろうと感じます

 

日本の教育は真逆

この映画を観ていると
やっぱり日本の教育と比べてしまいますね
日本の教育の問題点が見えてきます

日本の教育って答えありきでその答えを子供に押し付ける
って感じですよね

本作の中で「他人に怒りをぶつけても良いか?」
という問いがあったけど
日本の教育では
有無を言わさず「何があっても怒りをぶつけてはダメ」と先生が言って終わり

子供同士がケンカをしたとして
どちらか悪い方を決めて謝らせて終わり
みたいな

とにかく子供は
先生や親など大人の言うことを何も考えずに聞いとけ
という方針です

戦後すぐの日本では
こういう「何も考えずにとにかく社会や国のために働け」みたいな方針のおかけで高度成長に繋がったでしょうけど
今の時代にもそれを続けてるのが問題で
現代ではメリットなんてなく
むしろ、足枷にしかなってないわけです

日本での
幸福度の低さにしろ
自殺者の多さにしろ
SNSのギスギス感にしろ

こういうものの原因は
自分で考えることをさせない日本の教育による歪みのなのかもしれません

今の時代、何も考えずに生きていたら
その先にあるのは不幸だけ


そもそも、小学校や中学校で哲学なんて勉強しないですよね
僕は大学で初めて哲学の授業を受けましたけど
これはこれで小難しいこと言ってるだけだったし

本当はこの映画のような教育を日本でも取り入れるべきだけど
おそらく日本でこういう教育に切り替わることはまだまだないでしょうけど…

いまだにこんな時代遅れな教育が当たり前だなんて
日本の未来は絶望的だと思います

この映画をきっかけに日本の教育がいかに絶望的かも感じさせられました

 

暴力に対抗する手段が哲学という部分には違和感

ケビン校長の教育方針はとても素晴らしいものだし
日本も見習うべきだと思います

しかし、本作から感じる“哲学で暴力をなくそうキャンペーン”みたいなのに少し違和感がある

ケビン校長はおそらくそんな思いはないだろうけど
映画の作り手側のメッセージとして
哲学で暴力をなくそう
ということが込められてるのかな

でも、哲学って暴力をなくすものではなく
むしろ時には暴力を肯定することだってあり得るわけです

答えのないものに挑む学問が哲学なわけで
そこをnot暴力という一つの答えに当てはめてしまうことには矛盾を感じる

何があっても暴力をふるってはならない
という考えがあれば
暴力を使わなければ解決できないこともある
という考えもある

どちらの意見も尊重されるべきだし
そんな様々な考えを擦り合わせて答えに近づいていくのが哲学だとも思う


本作から感じる
哲学という言葉を使って一方的に暴力の否定するメッセージには
ちょっと違うんじゃない?
と思ってしまったのは否めない

 

まとめ

キリスト教同士の対立や哲学の授業など
日本人には馴染みがなくて
あまりぴんと来ないかもしれません

でも、だからこそこの映画には学びがある

本作を観ることで
北アイルランド紛争について
プロテスタントとカトリックの対立について
哲学について
もっと知りたいと学ぶきっかけになると思う

そして、自分の人生や日本の現状などについて
疑問に思い問うて、答えを求めて考えるきっかけにもなると思う

この映画を観ることが哲学的思考に繋がるのかもしれませんね

 

 

映画「シン・仮面ライダー」感想 歪だけど、それが仮面ライダー

どうもきいつです


特撮映画「シン・仮面ライダー」見ました

仮面ライダー50周年企画で作られた1作
1971に放送開始された「仮面ライダー」のリブート作品
仮面ライダーこと本郷猛の戦いが描かれます

監督は「エヴァンゲリオン」シリーズや「シン・ゴジラ」などを手掛けた庵野秀明
主演を務めるのは池松壮亮です

 

あらすじ
仮面ライダー・本郷猛は改造人間である
彼を改造した緑川博士の娘であるルリ子と共に
謎の組織SHOCKERの陰謀に立ち向かう
仮面ライダーは人間の自由のためにSHOCKERと戦うのだ

 

感想
映画としてはとても歪で好き嫌いが分かれそうな作品
でも「仮面ライダー」ってこうだよな
と思わされる
僕はこの映画がかなり好き

 

庵野秀明監督が手掛ける「仮面ライダー」のリブート
ということで楽しみにしていました

思った通りと言うか…
やっぱりクセは強いですね
庵野秀明らしい作品だと思いました

 

好き嫌いは極端に分かれる

本作を観て感じたのは
賛否が大きく割れるだろうなってこと
いろんな意味で好き嫌いは分かれると思います

好きな人はとことん好きになれるだろうし
嫌いな人はとことん嫌いかも…

これは
それぞれがこの映画に何を求めているかで違ってくると思います

完成度の高い脚本、上手い伏線、整合性、リアリティなどなど
そういうものを求めている人には本作はハマらないでしょう

実際に酷評しているような感想もよく見かけます


逆にこの映画がハマる人は
庵野秀明が描く「仮面ライダー」を見たい
と思っている人だけです

と言うか
庵野秀明が好きだと思っているものを
同じく好きだと思える人だけです

はい
めっちゃターゲット層は狭いです

 

ストーリーは背景でしかない

正直言って
本作のストーリーはあまり上手くないです

支離滅裂だったり唐突だったり
いまいち説明不足だったり
ストーリーの完成度はあまり高くないと思わされる

テンポはいいけど
展開があまりに急ぎ足でしたし
強引に話を推し進めているような…
ちょっと詰め込みすぎかな

でも、それは当然のことかもしれません
本作にとってはストーリーの優先度は低いように感じました

優先度の順番をつけるとしたら
格好いい画、様式美、リスペクトなどが上位で
ストーリーや設定は大して重要視されてないんじゃないでしょうか

庵野秀明の他作品を見ても
毎回、同じような優先度だと思います


なので、本作にとってのストーリーは
格好いい画を見せるための背景でしかないとも言えます

ストーリーを重視して映画を観たい人には
これが受け入れ難いのだと思う

 


ややこしい設定も所詮は背景

本作は設定がややこしく
その上、若干説明不足でもあるので
なかなか理解は難しい

プラーナとか当たり前に言ってるけどよくわからんし
SHOCKERの目的なんかもふわっとしてて不明確だったり

セリフではいろいろ難しいことを言ってるけど
全然頭に入ってこないですよね

ただ、これに関しても
結局は雰囲気を作り出すための背景でしかないのかな

ややこしい設定を完全に理解したところで意味なんてないでしょうしね

意味がわからないという部分で批判する人もいると思うけど
そもそも意味なんてわからなくていいと思う

てか、オリジナルの「仮面ライダー」もよくわからん設定や強引な設定が多かったし
それを再現している可能性もある

 

独特なアクションシーン

本作のアクションは少し独特で普通ではありません

テンポはいいけど場面の転換が唐突

なんでこうなった?
急に場所変わったけど?
みたいなシーンが多々あります
シュールな場面も結構ある

普通のアクション映画のつもりで観ていると
こういう場面に違和感を感じてしまうと思います

まあ、でもこれは
「仮面ライダー」だから
の一言ですね

「仮面ライダー」はこういうもんなんです

庵野秀明は自分の好きな「仮面ライダー」を
この映画の中に全て詰め込んでいる
オリジナルのオマージュだらけなわけです

庵野秀明の趣味嗜好が若干変態じみてるのもあり
いわゆる“普通の映画”を観たい人にとっては
こういう場面が理解不能な変な場面としてしか目に映らないかもしれません

 

残酷な描写も多々ある

本作の戦闘シーンでは
血しぶきな飛び散るような人体破壊描写があります
直接的な描写はありませんが
見ようによっちゃグロくもある

オリジナルの「仮面ライダー」では
もちろんこんな残酷な描写はありません

本作はちょっとバイオレンスな戦闘シーンに
なっていますが

この描写があるから
仮面ライダーの力の強大さと
その強大な力の危うさを感じることができる

例え悪を倒すためとは言え所詮は暴力
仮面ライダーとして戦う本郷猛の葛藤に説得力が生まれています

哀しみを背負い戦う仮面ライダーの姿にも説得力を感じました

個人的にもこのバイオレンスなアクションにテンションを上げられた
最高です

 

アニメ的な描写

アニメ的なアクションシーンも少し多い
実写ではあるけどアニメっぽいなと思わされる場面もありました

特にハチオーグ戦や1号と2号の対決など
やり過ぎなくらいの描写でしたね

これに関しては
特撮らしいアクション見たかった人には不評かもしれませんね
CGもガンガン使ってましたし

個人的には
斬新で面白い表現だったので普通に好きです

ハチオーグ戦なんかは
コマ送りした映像のように見せていて
これが勢いもあったし格好いい演出だと思いました

あと、ライダーキックは毎回すごくカッコよかった


そして、キャラクターは誇張されていて
そこもどこかアニメ的ですよね

セリフ回しは独特で
口癖とかもやり過ぎなくらいだし

基本的に本作の登場人物たちは
アニメに出てきそうな雰囲気であまりリアリティがない
実写だからよりそれが際立つ

「仮面ライダー」シリーズなどの特撮作品に慣れ親しんでいると
そんな誇張したキャラクター性にさほど違和感を感じないけど
“普通の映画”を観たい人には
そこも受け入れ難い要因になっているかも

 

ヒーロー像はブレない

ヒーローとしての仮面ライダーは全然ブレていません

ストーリーは背景でしかないと言いましたが
本郷猛や一文字隼人のヒーローとしての姿は一本筋が通っていて
最後には感動すらしてしまう

哀しみを背負い戦うヒーロー像は
仮面ライダーらしいなと思わされました

ラストには粋な演出もあり
結末もすごく良かったです

 

浜辺美波の顔面力

本作のヒロインを演じる浜辺美波ですが
顔面力が半端ないですね

ただ美人だからってわけでもなく
漠然としてるけど
とにかく顔面力がすごいんですよ

この映画を観て浜辺美波を好きになる人は多いんじゃないでしょうか

 

歪なのが「仮面ライダー」

この映画は“普通の映画”ではないわけです

整合性は悪いしストーリーはなんか変だし
設定は強引でよくわからん
SHOCKERに至っては何をしたかったんだよって感じ

まとまった綺麗な映画になんて全くなってません
だから、つまらないという意見もある


でも、オリジナルの「仮面ライダー」が
そもそもめちゃくちゃ歪で完成度の高いドラマなんかではなかった

怪人が唐突に現れて変な作戦を実行してたり
ただ急に襲ってくるだけだったり
てか、ショッカーが何をしたいのかわからんし

仮面ライダーが変なところから急に出てくるような
シュールな場面もすごく多い

回ごとに作風がなんか違ったりも…
2号ライダーが出てきてからは方向性も少し変わります

視聴者に媚びて方向性がブレてることもあるし
流行に乗っかりすぎで変になってることもある

本作は
そんなオリジナルの歪な部分をもひっくるめて
仮面ライダーが大好き
って気持ちをぶち込んだ映画なんです


例えば
仮面ライダーのマスクの後ろから髪の毛が出て
首は人間の肌がちょっと見えてる
これはオリジナルのオマージュです

初見ではなかなかシュールで違和感を感じる人もいると思います

オリジナル当時の「仮面ライダー」では
これをカッコいいと思ってやってるわけではないでしょうが
庵野秀明はこれが好きだからと再現してる


終盤の暗闇の中でのバトルはめちゃくちゃ見えづらく何が起きてるかすらよくわかりません

この場面を暗くて何も見えないと批判する人もいる

でも、庵野秀明は「仮面ライダー」を観て
暗くて何が起きてるかわからないけどそれがカッコいい
と思っている

だから、たぶんこのシーンは暗くて見えづらくなってるんだと思う


とにかくこの映画は
変態的なレベルで“俺の好きな仮面ライダー”をやっている作品なんですよ

その結果
庵野秀明の“好き”を理解できるか、共感できるかで
観客の好き嫌いが極端に分かれてしまうわけです

 

オリジナルの「仮面ライダー」を知らないと置いてけぼり

オリジナルの「仮面ライダー」を知っていると
テンションが上がったり
ついニヤニヤしてしまったり
観ていて楽しめる要素がたくさんある


僕は子供の頃にビデオや再放送で「仮面ライダー」を観いて「仮面ライダー」が大好きだったから
本作をすごく楽しんで観れたし
最高に好きだなと思えました

でも、オリジナルを観ていない人からすれば
置いてけぼりになるのは間違いないと思う
正直、マニアックすぎる

本来、普通の映画なら
リアリティを出すために避けること
整合性を保つために避けること
見やすくするために避けること
などをあえてやってたりもします

そりゃ“普通の映画”を求めている人から不評になのは避けれない

仮面ライダー愛の強い人ほど
これが見たかった!!
となるわけですが

 

まとめ

「シン・ゴジラ」や「シン・ウルトラマン」以上に愛の密度が高かったような気がする
もはや変態レベル
エンドロールの主題歌でもそれが伺えますよね

庵野秀明のやりたい放題とも言える
観客のことなんてたぶん考えてない

だからこそ
置いてけぼりになる人もいれば
めっちゃハマる人もいる

賛否両論はあるだろうけど
当たり障りのない万人ウケの映画より全然好感が持てます

僕は本作を最高に楽しめたので満足です

 


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特撮「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」感想 いろんな意味で掟破りの変な戦隊

どうもきいつです

特撮ドラマ「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」観ました

2022年3月から2023年2月まで
テレビ朝日系列で毎週日曜日に放送されていた特撮ドラマ
スーパー戦隊シリーズ第46作品目となる作品です
モチーフは日本のおとぎ話「桃太郎」
謎の男、桃井タロウと強制的に怪人との戦いに巻き込まれたお供たち4人が
怪人ヒトツ鬼や謎の存在である脳人との戦いを繰り広げる

 

あらすじ
女子高生で漫画家の鬼頭はるかは
不思議なサングラスを掛けたことで人間の中に紛れ込む怪人が見えてしまい
そして謎の男から「桃井タロウに忠誠を誓え」と告げられる
そんなはるかの前に怪人が現れ強制的に変身して戦うことになる
戦いの最中、ドンモモタロウが姿を現すのだった

 

感想
とにかくスーパー戦隊の型を破り
先の読めない展開に毎週ワクワクしながら観ていました
登場人物がみわな魅力的で好きになった
最終回の後はちょっとロスを感じた
まあ、いろいろ強引なのは否めない

 

先日、放送が終了した「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」
今回もスーパー戦隊は最後まで視聴したので感想を描きたいと思います

 

良くも悪くもクセが強い

本作は今までのスーパー戦隊とは違うものを作ろう
という心意気から作られた作品でもあるので
かなりクセの強い作風になっています

スーパー戦隊らしいスーパー戦隊を観たい人からすれば
本作は気に食わない可能性が高い

これまで培われてきたスーパー戦隊の定型を崩しまくっているので
こんなのスーパー戦隊じゃない!!
と、怒る人もいるかも

個人的には
そのブッ飛んたドンブラザーズの世界に最後まで楽しませてもらうことができました

まずタイトルがちょっと変
暴太郎戦隊ってなに?
ボウタロウじゃないよアバタロウだよ
アバタロウってなんだよ

 

なかなか団結しないドンブラザーズ

本作の型破りの1つがこれ
ドンブラザーズが全然団結しない

普通の戦隊は第1話で一致団結して敵と戦う
遅くても5話くらいまでには一致団結します

しかし、ドンブラザーズは違う
序盤は一致団結するどころかお互いの顔を知らないままの状態が長く続きます

黒担当のイヌブラザーに至っては
最終話目前くらいでやっとドンブラザーズの面々に顔が知れるほど

お互いが顔を知らないことでドラマが生まれたり
すれ違いコントのようなコメディ要素があったりと
これまのスーパー戦隊にはない面白いものを生み出す利点になってましたね

団結してないからこそ
スーパー戦隊お馴染みの名乗りも当然無く
これもかなりの掟破りだったと思う

そして、いざ名乗った時には
それだけでカタルシスが生まれてしまったり

最終回の名乗りなんかかなり盛り上がってました

欲を言えば
最終回まで全く名乗り無しが最高だったと思う
途中の回で中途半端に名乗りをしてしまったのはもったいなかったかな…

 

戦闘はおまけ

スーパー戦隊の目玉と言えば怪人との戦いだけど
本作に関しては戦闘パートがほぼおまけ
一応スーパー戦隊シリーズの1作だから戦ってる
って申し訳程度の戦いだったりします

そもそも、これまでのスーパー戦隊はと言うと
怪人が街で暴れるとかトラブルを起こすとか
物語の中心が怪人との戦いだったわけです

しかし、ドンブラザーズは違う

怪人なんて蚊帳の外で
物語の中心はドンブラザーズのメンバーであったり
敵の脳人であったりと
メイン登場人物のドラマが物語の中心になっています

なので、ドンブラザーズのメンバーがトラブルを引き起こすなんてしょっちゅう
てか、仲間が敵になる
キジブラザーこと雉野なんて3回くらい怪人になってるし

そんな作風だからこそ
それぞれの登場人物が深掘りされて
キャラクターの魅力が引き立ってくる

それぞれの関係性や
それぞれの思いや葛藤
それぞれの成長など
これまでのスーパー戦隊以上にメインの登場人物にスポットが当たっていたと思います

それもあってキャラクターに対する思い入れが強くなり
いつの間にかみんな好きになってる
最終回にはドンブラロスです

その反面、敵との戦闘が唐突で意味不明だったり
巨大ロボ戦が歴代史上で1番雑じゃないかと思ってしまうほどだったり…

これも良し悪しですかね
好き嫌いが分かれる部分かと思います

 

毎週シュールなコント

これはドンブラザーズが好きな理由の1つですね
基本的に毎回シュールなコントみたいになってます

物語自体はシリアスな面も大いにあるんです
登場人物たちは至って真剣だったりもする
でも、起きている出来事は妙に狂っていてカオスなんですよ

なんでそうなるんだよ?
って意味不明な展開も多々あるし
ストーリー全体を通しても結構ぐちゃぐちゃだったり…

まあ、それが勢い余って振り切れてると言うか
ここまでやられると笑うしかない

普通のスーパー戦隊なら破綻してるようなことも
ドンブラザーズだと何故か成立してしまってる
それがドンブラザーズの魅力であり個性でもあると思います

 

風呂敷を広げ過ぎた感

面白い作品だったけど
ちょっと収拾がつかなくなっていたのは否めない
結果、終盤はかなり強引にまとめていました

たくさん謎を散りばめて物語を進めていたり
いろんな要素をぶち混んでいたり
ボリューム満点な内容なんですが
いまいちそれらを扱いきれてなかったような…

スーパー戦隊や仮面ライダーなどのニチアサ作品は
1年を通したライブ感を重視しているので
リアルタイムでいろいろ変化して行くわけです
なので、物語が進むにつれさらにいろいろ付け足されて行くこともよくあります

ドンブラザーズもライブ感重視で変化はかなり多かったと思います

それもあってか
終盤は無理やり風呂敷を畳んだって感じ

最後のタロウの記憶が消えていくってやつとか
めっちゃ唐突で無理やり物語を終わらしにいってましたしね

放ったらかしの謎もそれなりに残ってるし
ブラックゼンカイザーとかね…

ドンムラサメが最終回で仲間になったのは
あまりに唐突すぎて逆に面白かった

とは言え
細かいことを気にする作品ではないのは観ていてわかっていたし
ドンブラザーズにとって1年を通したライブ感は
勢い余ったカオスにも繋がっていて利点の方が大きかったように思える

 

誰と戦ってるかわからない

これに関しても
マイナスなのかプラスなのか曖昧になるけど

戦闘パートがおまけなので
結局、ドンブラザーズが何と戦ってるのか不明です

物語の始まりは戦いに巻き込まれ
物語の終わりも巻き込まれただけ

明確に敵の組織なんかも存在しない
そもそもドンブラザーズが悪と戦ってる感もあまりなかったり

目の前に怪人が現れたから倒してるだけ
みたいな…

最初は敵っぽかった脳人とも途中から馴れ合う

ラスボスもかなり唐突でした
てか、ラスボスどうするか考えてなかったんじゃない?

最終回は
急遽それっぽい人をキャスティングして特撮スーツは使い回しって感じですよね
明らかに…


1話1話は面白いけど
全体を通して見るとさすがに目的が不明確で
終盤の盛り上がりに欠けるようにも思いました

かと言って
終盤を盛り上げで謎を回収し上手くまとまった作品になっていたとしても
それはそれでドンブラザーズっぽくないし…

結果的にこれが正解だったのかな?

唐突なタロウの記憶喪失展開にしても
キャラクターに愛着が湧いてるからエモさは感じてしまいましたし

むしろ、ドンブラザーズであの最終回は上手くまとめれていたのかもしれない

 

まとめ

スーパー戦隊らしくない作風に反感を覚える人もいると思います
明らかに万人ウケの作品ではないのは確か

でも、スーパー戦隊らしくはないけどドンブラザーズらしい作品
唯一無二の個性的な作品になっていたと思う

僕は1年間、最高に楽しませてもらったし
めちゃくちゃ面白いと思ってます

今までのスーパー戦隊と比べてもトップクラスに好きかもしれない

 


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映画「アントマン&ワスプ:クアントマニア」感想 新しさを感じない

どうもきいつです


アメコミアクション映画「アントマン&ワスプ:クアントマニア」観ました

MCUの1作「アントマン」シリーズの第3弾
世界最小のヒーローのアントマンとワスプたちが量子世界に迷い込み
新たな脅威の存在カーンとの戦いを繰り広げます

監督は前2作も手掛けてきたペイトン・リード
出演するのはポール・ラッド、エバンジェリン・リリーなどです

 

あらすじ
アベンジャーズとサノスとの最終決戦で
重要な役割を果たしたアントマンことスコット・ラング
戦いが終わり平和な日々を過ごしていた彼は
ある時、実験中の事故によりホープや娘のキャシーたちと共に
未知の量子世界に引きずり込まれてしまった
そこで待ち受けていたのは謎の男カーンだった

 

感想
すごく普通なアメコミアクション
新しいものは何も感じなかった
もはやワクワク感は全く無い
それにしてもカーンの顔が優しすぎない?

 

MCUの最新作ということで観てきました

MCUの作品に関しては
正直、そこまで期待はしてなかったりします

何年か前までは好きで観てたけど
今っとなっては新作が公開されれば観なきゃならない義務感と言うか…
もはや惰性で観ていると言うか…

まあ、思い入れはさほど無い

本作にも大して期待はしてなかったです
なので、面白くなかったから腹が立つ
みたいな感情は全く無い

 


ストーリーはシンプルでわかりやすい

これは本作だけでなくMCU作品全体で言えることですけど
基本的にストーリーはとてもシンプルです

本作も同じくシンプルでわかりやすい物語になっている

アントマンが家族や人々を守るため
そして、もとの世界に帰るため
立ちはだかる敵と戦いを繰り広げる
というストーリー

人間関係やキャラ設定にもさほど複雑なものはなく
あまり頭を使わずとも楽しめる内容になっています

いつもの如くクロスオーバーは意識されているので
過去のMCU作品を知ってることは前提だけど
本作はまだクロスオーバー色が薄めなような気もしました

「アントマン」シリーズ過去2作のことはうろ覚えだったけど
理解できないことはあまり無かったし
意外と単体でも観れる映画なのかもしれません

 


アクションもそれなり

本作もアメコミ映画らしいアクションは見せてくれます
MCUが好きな人なら満足できるんじゃないでしょうか

アントマンが縮小化して戦うのはもちろん
巨大化もするし
派手なバトルはそれなりに楽しい

今回はワプスだけでなく
娘のキャシーもアントマンスーツを着て活躍します

もしスコットがアントマンを引退したら
娘のキャシーが跡を次ぐのかな?

 

アントマンらしさが損なわれた

アントマンと言えば
小さくなったり巨大化したりする能力です
今回もその能力は存分に発揮するわけですが

今回の舞台が舞台だけに
過去作のような映像的な面白さは無くなっている

今回は量子世界が舞台になります
極小の量子の世界にも実は様々な生物がいて文明も築かれている
みたいな世界観

ビジュアルは「スター・ウォーズ」のような未来の宇宙って感じかな

新たなMCUシリーズの展開としてスケールを大きくしたんだろうと思いますが
その結果、「アントマン」らしい映像の面白さは皆無です

「アントマン」シリーズの面白さって
やはり、見慣れた風景の中で小さくなって戦うアンバランスな映像の面白さ
だと思うんですよね

1作目の最終決戦が子供部屋だったりしたのも他作品と差別化できてて魅力的でした

身近な物を巨大化させたり逆に縮小化させたり
アントマン自体も巨大化したり
日常の風景の中で活躍するアントマンがこのシリーズの魅力だったわけです

しかし、本作は背景が全てCGの架空の世界で現実離れした世界観
アントマンのサイズが変化しても対象物がないからいまいち面白味に欠ける

日常の中でのアントマンがギャグとして機能してたりもしてましたし
アクションの面でも面白い映像になっていたのは間違いない

せっかくの「アントマン」らしさが本作ではほぼ見れなかったので
ただただ作品としての個性が薄まっていたようにしか思えなかったですかね…

 

中途半端にシリアスなストーリー

これも「アントマン」らしさが損なわれている話になるけど
今回はコミカルな描写がかなり少なくなってましたね

「アントマン」シリーズは他のMCU作品と比べるとコミカルな作風で
そこが魅力的かつ差別化もできていました

でも、本作は他のMCU作品とさほど違わないかなって印象

特別コミカルなわけではなく
かと言って、シリアス重視で重い話にもなっておらず
なんか、毒にも薬にもならない映画でした

まあ、MCUらしいっちゃMCUらしいですけども

やっぱり1作目のようなおふざけ路線の「アントマン」が見たかったですかね

 

カーンの顔が優しすぎる問題

今回のメインヴィランであり今後のMCUの強敵ともなる征服者カーン
サノスに匹敵するほどの強敵らしいですが

そのカーンの顔が優しすぎない?

凶悪な敵と思えないほど顔から優しさが溢れ出ている

そのせいで強敵としての禍々しさを感じれず
今後、アベンジャーズの前に立ち塞がる姿もいまいち想像できない…

最後の方までカーンが悪いやつなのかどうなのか判断できず
終始、ブレブレの状態が続いていたように思う


本作の中でもカーンが最強ぶってる感は感じれて
めちゃくちゃ強い設定なのは理解できる
カーン本人がドヤ顔で強いアピールしてましたしね

ただ、そのわりにはちょっと弱かったような…
ラスボス的な存在なのに小者っぽかったりも…

アントマンが巨大化してやって来たときは狼狽えてばかりで何もしないし
最後は殴り合いて戦ってるし
結局はアントマンごときに倒されてるし

ここで強すぎちゃ駄目なのはわかるんですけどね

正直言ってモードックの方が敵としては断然魅力があった
モードックはコミックでは強キャラ扱いだし人気もあるし
今回のメインヴィランでもよかったんじゃないかな?

モードックの扱いも雑だったし
カーンは優しく見えるしで
本作はヴィランの魅力に欠ける作品かも

本作のカーンに関しては
カーンの中でも最弱のカーンだった
ということで納得すればいいのかな?

 

既視感満載で新しさを感じない

本作はいろんな意味で既視感満載
見たことあるようなものがとても多い

これはみんなによく言われているけど
世界観が「スター・ウォーズ」っぽい

設定は量子の極小世界だけど
見た目は「スター・ウォーズ」でいまいち新しさには欠ける

と言うか
MCU作品でも「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」や「マイティ・ソー」シリーズなんかとビジュアルは似かよってますよね

この時点で他作品とあまり差別化はできていません


ストーリーに関しても
実験の失敗から戦いに巻き込まれていく流れとか
親子愛の絆が…だとか
モブキャラ含めみんなで強大な力に立ち向かおうだとか

そろそろお腹いっぱいかな…
MCUだけでも毎回こんな感じだし

特に
みんなで力を合わせて敵に立ち向かうってのは
さすがにもう飽き飽きしてきたかな…
最近のMCUこの展開多すぎない?

 

キャシーが可愛い

本作にはあまり満足はできなかったけど
キャシーはすごく良かったです

可愛らしいキャラクターってのもあるけど
単純に物語の引っ張る推進力にもなってましたし
彼女の成長物語にもなってましたし

存在感と魅力のある生き生きとしたキャラクターになっていました

逆にキャシーがいなかったらと思うと…

彼女がいるから最後まで観れたような気もする

 

結局は今後の展開への繋ぎ映画

1作目の「アントマン」は1つの作品としても楽しめる作品になってましたけど

2作目は明らかに「アベンジャーズ エンドゲーム」への繋ぎでしかなかったし
本作も今後のMCUの展開への繋ぎでしかなかった印象です

MCUはちょくちょく繋ぎのための雑映画を連発してますよね
「マイティ・ソー」シリーズ、「キャプテン・マーベル」、「ブラック・ウィドウ」などなど
今回もそっち側の映画だったってことです

 


まとめ

MCUを追ってる人なら観ていた方がいい作品だと思います
今後も活躍する強敵カーンが登場しますし

逆にMCUに興味がなかったり冷めてきている人は観なくてもいい映画ですね
観たところで得るものは大してない

観てもそれなりに面白いとは思うので
別に止めはしないけど

 


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映画「バビロン」感想 ハイになる映像

どうもきいつです


ドラマ映画「バビロン」観ました

1920年代のハリウッドを舞台に
映画がサイレントからトーキーへ移り変わる激動の時代を生きる人々の運命が描かれます

監督は「ラ・ラ・ランド」などのデイミアン・チャゼル
出演するのはブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、ディエゴ・カルバなどです

 

あらすじ
1920年代のハリウッド
映画制作を夢見る青年マニーと新人女優のネリーは
サイレント映画業界を牽引してきた大スターのジャックが開催するパーティーで出会い意気投合する
その後、ネリーはスターの階段を駆け上がり
マニーもジャックの助手となる
そんな中、サイレント映画からトーキー映画への転換期に差し掛かるのだった

 


感想
映像と音楽の力によってどんどんと映画の中に引き込まれる
下品なはずなのになぜか心地よさすら感じます
その反面、ストーリーはいまいち掴み所がない
上映時間はさすがに長い

 

デイミアン・チャゼル監督の新作映画
ということで観てきました

彼の作品は「セッション」から全部観ていて
どれも普通に面白い映画
でも、個人的には妙に好きになれない部分もあったりして
毎回、面白いけどなんかモヤモヤする
みたいな絶妙な気持ちにもさせられていました

で、本作はと言うと
今までの作品と同じような雰囲気も感じるけど
どこか違うような気もする

結果、今までの作品と比べると
1番好きかもしれないと思わされました

 

映像と音楽でハイになる

本作で1番印象に残るのは
やはり映像と音楽
これが素晴らしい

映像を観て音楽を聴くだけで
この映画の世界に引き込まれ入り浸れる
それくらい吸引力があります

冒頭の
タイトルが出るまでの超下品最低パーティーの様子でさえ
すごく下品で気持ち悪いはずなのに
この映像をずっと見てたいな
という気持ちにさせられます

単純に最低すぎてインパクトが絶大なシーンだし
この場面が目に焼き付いてしまう

ただ、それが最低なだけで終わってなくて
見せ方が格好よかったり
音楽が心地よかったり
不快さは全く感じませんでした

まあ、人によれば不快で受け付けない可能性は大いにあるけど
不快さをセンスで補っている場面なのは間違いないと思う

このパーティーの場面が
その後のサイレント映画業界の栄枯盛衰の前フリにもなってるし
「バビロン」というタイトルにもリンクするし
本作がどういう作風なのかの説明にもなってるし
この冒頭のシーンがいろんな意味で効果的な映像になってます
なんかすごく上手い

超下品最低パーティーの場面がめちゃくちゃ長くて
タイトルが出たときは
今タイトル!?
と思ってしまうほど長尺でしたが

長いけど全然観てられる面白い映像なので
全く苦痛には感じなかった
音楽も耳に残る良い曲が多かったですね

 

ストーリーは掴み所がない

映像や音楽は素晴らしくて本作の最大の魅力ではあったけど
ストーリーに関しては掴み所がなく
どこかフワッとしていた印象
少し歪なようにも感じました

複数の登場人物のドラマを描いた群像劇のような作りになってますが
どのエピソードも別々の方向を向いてるように思えて
少しまとまりが悪いような

全体のテーマはサイレント映画の栄枯盛衰だと思いますけど
マニーとネリーの恋愛エピソードは変な方向に行ってるような気がしましたし
終盤のマフィアの場面や黒人のトランペッターのエピソードなどは蛇足に思えた

結局、この映画のストーリーはどこに向かって進んでるのかよくわからず

結果的にはかろうじて着地はしてるけど
思い返すとあまり話が上手く繋がってなかったような気もする

 

テンポが良いけど良すぎて置いてけぼり

本作はそこそこテンポは良いと思います
長尺の映画だけど無駄はあまり無いように思える

蛇足と感じるエピソードはあったけど
それがテンポを害しているわけではないですし

トントン拍子に物語が展開して
堕ちていく時もスピーディーに堕ちていく

このスピード感に心地よさを感じつつも
速すぎて置いていかれることも多々ありました

特に登場人物のサクセスストーリーが速すぎて
上り詰めるまでも堕落していくまでも
展開が速くちょっと物足りない
そして感情移入も全然できない

ネリーはいつの間にやら急に大スターだし
マニーも気付けは上の立場の人間に
かと思えば
みんな急激に落ちぶれていったりもします

激動の時代ということで納得はできつつも
無理やり自分を納得させながら映画を観てるような気にもなります

理解が追い付く前に次の展開が押し寄せて
少し忙しなかったように感じました

 

コントみたいで笑える

本作はコミカルな描写も多く
半分コメディ映画と言っても過言ではない

全体的にシリアスなドラマを描きながらも
個々の場面では笑えるようように作られています

個人的に好きだったのは
トーキー映画の時代に移り変わり
ネリーが音声を録音しながら撮影に挑む場面
ここが王道のコントみたいですごく面白かった

いろんな要因でNGとなり何回も撮り直しさせられるわけですが
NGが重なるごとに段々と盛り上がって
最終的にオチがドーンと来るので普通に笑わされてしまった

登場人物たちは至って真剣でシリアスなだけに
その反動でより滑稽に見えますよね


他にも
蛇と戦うやつとかめっちゃ笑ったし
マーゴット・ロビーのゲロ噴射も最高
マフィアとマニーのやり取りも良かったですね

所々にコントみたいな場面が散りばめられた作風は結構好きでした

 

溢れる映画愛

本作を観て強く感じるのは熱量の高さ


チャゼル監督の過去作「ラ・ラ・ランド」「ファースト・マン」は完成度が高く
ストーリーも上手くまとまっていました

それに比べると本作は
全体的にまとまりが悪く歪な印象

ただ、これって映画愛が故にそうなったようにも思える
本作は勢い重視で作られた映画なのかもしれません

良すぎるテンポにしろ
まとまりの悪いストーリーにしろ
長過ぎる上映時間にしろ
映画愛が故に全てを詰め込んだ結果なんじゃないでしょうか

映像や音楽に関してもすごく勢いを感じる作品でしたし
良くも悪くも映画に対する情熱と愛がこもった作品なのかなと思う

タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に雰囲気が似てるかな
題材も共通するものがありますし


ラストのあの場面なんか
映画への愛が爆発したような

サイケデリックで抽象的な映像だけど
ストレートに気持ちが伝わってきてカタルシスすら感じれましたよね

チャゼル監督のこれまでの作品はあまり好きではなかったんですけども
本作はすごく好きかもしれません

今までの作品に比べると歪な映画になってるけども
だからこそむき出しの感情が伝わってくると言うか…

チャゼル監督の人間味を感じることができたからかな

 

映画好きが知識をひけらかすには持ってこい

映画愛を込めている作品なので
本作にはオマージュもたくさんあります

特に「雨に唄えば」ですよね
本作は「雨に唄えば」になぞらえた作品です

観ている間ずっと
漠然とこの映画に既視感を感じていたんですよ
初めて観る映画のはずなのになんか知ってる?
デシャブ?
みたいな

で、終盤のマニーが映画を観賞するシーンで納得させられました
ああ、「雨に唄えば」か… と
時代背景から全体の流れまで「雨に唄えば」でしたね

他にもオマージュはあるでしょうし
ラストのあの場面ではそのまんまを数々の作品の映像を引用してましたし

こういう部分からも
本作の映画に対する熱量の高さを感じることができました


この映画を利用すれば
「古今東西いろんな映画を知ってるんだぜマンウト」を取れますね
この映画を語ればTwitterとかでドヤ顔できますよ
知識をひけらかせますよ
よかったね

 

まとめ

そこそこ賛否が割れてるようですが
それも納得できます

いろんな意味で好き嫌いが分かれる作品だと思う
「ラ・ラ・ランド」なんかに比べるとポップさは無いですしね

僕はそんな賛否が分かれる本作の歪さに惹かれ
結果的に好きな作品になりました

この映画からは不器用な愛を感じれる

 


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映画「呪呪呪 死者をあやつるもの」感想 ドラマ版よりエンタメ増し

どうもきいつです


ホラー映画「呪呪呪 死者をあやつるもの」観ました

2020年の韓国ドラマ「謗法~運命を変える方法~」の劇場版
最終回から数年後を舞台に
呪術により蘇った屍の集団に立ち向かうジャーナリストと呪術師の戦いが描かれます

「新感染 ファイナル・エクスプレス」のヨン・サンホが原作、脚本を手掛け
監督を務めるのはキム・ヨンワン
出演するのはオム・ジウォン、チョン・ジソなどです

 

あらすじ
ジニの前から呪術師ソジンが姿を消して数年後
閑静な住宅街で不可解な殺人事件が発生する
被疑者のそばで発見された容疑者らしき死体は死後3ヶ月が経過していた
ジャーナリストのジニは事件と関係する企業の陰謀を調査するが
そこには強大な呪いの存在も関わっていた
そんな中、再びジニの前にソジンが現れる

 

感想
ドラマ版とはうって変わって
かなりアクション重視のエンタメ映画になっていました
映画だからこその派手なアクションシーンには楽しませてもらえた
ただ、ドラマを観ている前提の作品ではあります

 

予告映像を見て気になっていました
が、どうやらドラマの続編ということを知り
ドラマ全話観てから本作を観に行ってきました

ドラマもなかなか面白くて一気に全部観終わった

謎に迫っていくミステリーな内容で
そこに呪というオカルトな要素も入ってくる
残酷な描写もしばしばあってホラーな魅力もあります
人間ドラマも細かく描かれている
個人的にも好きな作風のドラマでしたね

Netflixとかで配信されています
ドラマ版に興味がある方はぜひ観てみてください

で、ここからは本作の話です

 

あくまでドラマの続編映画

本作はドラマを観ていることが前提の映画
ドラマ未視聴だとやはり理解できないことは多いです

登場人物の関係性やバックボーンなどはほぼ説明されません
ドラマを観ていなければ
こいつ誰だよ?
みたいなのが当たり前にあります

主人公の1人であるソジンですら知らない人からすれば
急に出てくる謎強美少女でしかない

なぜソジンがいなくなったのか?…
と言うか、もともといたことも知らないでしょうし

ソジンの能力についても説明がないので
なぜゾンビたちの体がボキボキなってるのかも謎だと思います

最後の
所持品、写真、漢字の名前のやつとか
ドラマ観てなければ意味不明ですよね
ん?ってなると思う

ドラマを観てればあのシーンにテンション上げられるんですが…

対象の所持品、写真、漢字の名前があれば
ソジンは相手を呪い殺せるんですよ
これはこの作品では基本的な知識だったりします


基本的に味方の登場人物はほとんどドラマ版からの続投で
そんなキャラたちが当たり前のように活躍していたりする
なので、ドラマを観ていない人はちょっと疎外感があるかも…

たぶん、登場人物にはあまり感情移入できないと思います

 

ドラマを観ていればテンション上がる

ドラマを観ていなければの話をしてきましたが
逆にドラマを観ていれば
本作を楽しめる要素がたくさんある

ドラマの続編だからこそ
プラスの面とマイナスの面は表裏一体なわけです

特にドラマ版の登場人物が総登場で
しかも、みんなで力を合わせるという熱い展開

ジニと夫のソンジュンの2人は
ドラマではかなりすれ違っていてぶつかり合っていましたが
本作ではドラマ版を経て絆が深まっているので
連携がしっかりと取れている
ソンジュンはより頼もしくなってましたし

警察もドラマ版の時には呪いの存在に否定的だったけど
本作でははじめから呪いを認めてるからめっちゃ協力的

他にも都市探偵やら大学の教授やらも参加し
一丸となって強大な敵に立ち向かいます

オールスターで強大な敵と戦う
というのが、コナンの劇場版みたいで単純にテンションを上げられる

物語の後半では
最強少女のソジンも登場してさらに盛り上がります


それに、ドラマ版が基盤にあるから説明は最小限ですむので
全体のテンポもそれなりにいいですよね

人間ドラマを細かく描写しなくとも感情移入もできますし

ドラマ版さえ観ていれば
多少薄い内容であってもすんなり受け入れることができると思う

 

パワーアップして帰ってきたソジンちゃん

最強少女のソジンちゃんの登場シーンはやっぱりテンション上がる
しかも、前より強くなってる

焦らして焦らしての再登場なので
すごく盛り上がりますよね

呪いだけでなく身体能力もアップしてるし
なんか新しい術が使えるようにもなってるし
ただでさえ頼もしい彼女がより頼もしくなって帰ってきます

ゾンビ集団に襲われ危機的な状況でゾンビを次々に倒していくソジンちゃん
まるで少年漫画の主人公の登場場面のよう
熱い

ドラマ版のボーイッシュな都会っ子って雰囲気なソジンちゃんも可愛いけど
本作の修行を経て少しワイルドになったソジンちゃんも可愛い


まあ、ただこれに関しても
やはりドラマ版を観ていないとそんなに乗れないかもしれませんね

特に登場のタイミングがとても遅く感じると思う
ドラマを観てない人にとっては、ソジン登場までの焦らしが逆効果になってるわけです

待ってました!!って感覚も生まれないだろうし…

そもそもソジンが何者かもいまいちわからないでしょうしね

 

それでも面白い映画なのは間違いない

今までドラマ版を観ていなかった場合のマイナス点を挙げてきましたが
例えドラマを知らなくても楽しめる映画なのは間違いないと思います

細かいことを気にしなければ面白く観れるはず

本作はドラマ版に比べるとかなりエンタメ度が増しています
アクションシーンなんてかなり増えている
と言うか、ドラマ版ではアクションシーンらしいアクションシーンなんて全然無かった

本作は映画ということもあり
派手なエンタメ作品として作られています

特にゾンビ集団に襲われる場面なんて
なかなかド派手だし面白いシーンになっていますよね

肉弾戦あり銃撃ありカーチェイスありの
アクション全振りみたいな場面が長時間続く

このシーンがやっぱり最高に楽しい

視覚的に楽しいから
細かいストーリーとか人物描写とか関係なく
感覚的にテンションを上げられるんですよね

カーチェイスなんて「マトリックス リローデッド」みたいな格好いい場面になっていた

ソジン登場の時のバトルも
ちょっと中2っぽいアクションが格好よかった


ストーリーに関しても
細かい設定とかはわからないかもしれないけど
メインストーリーは1つの作品として成り立っていてます

ミステリーな謎解きや伏線回収やら
最終的に敵を倒す爽快感など
1つの作品としてちゃんと完結しているので普通に満足できる作りになっている

ドラマを知らなくても意味不明なストーリーにはなっていません

 

少しキャラが薄まった

本作には満足しましたが
少し文句を言うならば
キャラが薄い

このシリーズの目玉である最強少女ソジンの登場が後半まで無いのもありますし
そもそも、主人公のジニがドラマ版の時から少しキャラが薄め
本作の敵もドラマ版の敵に比べるとキャラが薄く感じました

本作はキャラクターのインパクトがかなり弱まっていましたかね…

ドラマ版では
成金風巫女ババアとその弟子の2人が強烈な存在感を放っていて
それくらいのインパクトのあるキャラは見たかったかな

この2人も映画に出てほしかったけど
ババアに関してはドラマで死んでるし…


でも、エンドロール後のおまけ映像では
ババアと弟子の再登場する続編を臭わしていたので
ここにはワクワクさせられました
続編に期待大です

 

宣伝が悪い

ドラマを観ているかどうかの話を中心にしてきましたが
何故そんな方向の話になってしまったのかと言うと
本作の宣伝があまり良くないから
なんですよね…

本作は
予告映像にしろ
公式サイトにしろ
映画の紹介文にしろ
明らかにドラマの続編であることを隠してるんですよ

僕はたまたまドラマの存在を知ることができたから映画の前にドラマを観ましたが
何も気づかずに本作を観てしまう人はかなり多いと思います

確かにそんな宣伝をする理由も理解できる

日本のテレビで大々的に放送されていたドラマじゃないので
ドラマの続編だと知れてしまえば敬遠されてしまうでしょう
隠してる方が客が入る

どんな形であれ本作が映画館で公開されことに感謝してもいいくらいかもしれません

まあ、でも
さすがにその情報を隠しすぎてるのもどうかと思う
これは騙してると言われても仕方がない

ドラマの存在を知らずこの映画を観た人の中には悪い印象を抱く人が必ずいるだろうし
本作にとってマイナスになっている部分も大いにありますよね

もう少しバランスを考えた方がよかったのかも

 

まとめ

僕はドラマを観た上で本作を観れたので
存分にこの映画を楽しむことができました
世界観も個人的に大好物なやつなので最高に満足です

単体の作品として観たとしても
エンタメ要素満載で楽しめるはず

できればドラマも観てから本作を観てほしいですけどね

ドラマ12話観るのはちょっとハードルは高いかも知れませんが
観ても全然損はしないと思います

 


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