何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「バビロン」感想 ハイになる映像

どうもきいつです


ドラマ映画「バビロン」観ました

1920年代のハリウッドを舞台に
映画がサイレントからトーキーへ移り変わる激動の時代を生きる人々の運命が描かれます

監督は「ラ・ラ・ランド」などのデイミアン・チャゼル
出演するのはブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、ディエゴ・カルバなどです

 

あらすじ
1920年代のハリウッド
映画制作を夢見る青年マニーと新人女優のネリーは
サイレント映画業界を牽引してきた大スターのジャックが開催するパーティーで出会い意気投合する
その後、ネリーはスターの階段を駆け上がり
マニーもジャックの助手となる
そんな中、サイレント映画からトーキー映画への転換期に差し掛かるのだった

 


感想
映像と音楽の力によってどんどんと映画の中に引き込まれる
下品なはずなのになぜか心地よさすら感じます
その反面、ストーリーはいまいち掴み所がない
上映時間はさすがに長い

 

デイミアン・チャゼル監督の新作映画
ということで観てきました

彼の作品は「セッション」から全部観ていて
どれも普通に面白い映画
でも、個人的には妙に好きになれない部分もあったりして
毎回、面白いけどなんかモヤモヤする
みたいな絶妙な気持ちにもさせられていました

で、本作はと言うと
今までの作品と同じような雰囲気も感じるけど
どこか違うような気もする

結果、今までの作品と比べると
1番好きかもしれないと思わされました

 

映像と音楽でハイになる

本作で1番印象に残るのは
やはり映像と音楽
これが素晴らしい

映像を観て音楽を聴くだけで
この映画の世界に引き込まれ入り浸れる
それくらい吸引力があります

冒頭の
タイトルが出るまでの超下品最低パーティーの様子でさえ
すごく下品で気持ち悪いはずなのに
この映像をずっと見てたいな
という気持ちにさせられます

単純に最低すぎてインパクトが絶大なシーンだし
この場面が目に焼き付いてしまう

ただ、それが最低なだけで終わってなくて
見せ方が格好よかったり
音楽が心地よかったり
不快さは全く感じませんでした

まあ、人によれば不快で受け付けない可能性は大いにあるけど
不快さをセンスで補っている場面なのは間違いないと思う

このパーティーの場面が
その後のサイレント映画業界の栄枯盛衰の前フリにもなってるし
「バビロン」というタイトルにもリンクするし
本作がどういう作風なのかの説明にもなってるし
この冒頭のシーンがいろんな意味で効果的な映像になってます
なんかすごく上手い

超下品最低パーティーの場面がめちゃくちゃ長くて
タイトルが出たときは
今タイトル!?
と思ってしまうほど長尺でしたが

長いけど全然観てられる面白い映像なので
全く苦痛には感じなかった
音楽も耳に残る良い曲が多かったですね

 

ストーリーは掴み所がない

映像や音楽は素晴らしくて本作の最大の魅力ではあったけど
ストーリーに関しては掴み所がなく
どこかフワッとしていた印象
少し歪なようにも感じました

複数の登場人物のドラマを描いた群像劇のような作りになってますが
どのエピソードも別々の方向を向いてるように思えて
少しまとまりが悪いような

全体のテーマはサイレント映画の栄枯盛衰だと思いますけど
マニーとネリーの恋愛エピソードは変な方向に行ってるような気がしましたし
終盤のマフィアの場面や黒人のトランペッターのエピソードなどは蛇足に思えた

結局、この映画のストーリーはどこに向かって進んでるのかよくわからず

結果的にはかろうじて着地はしてるけど
思い返すとあまり話が上手く繋がってなかったような気もする

 

テンポが良いけど良すぎて置いてけぼり

本作はそこそこテンポは良いと思います
長尺の映画だけど無駄はあまり無いように思える

蛇足と感じるエピソードはあったけど
それがテンポを害しているわけではないですし

トントン拍子に物語が展開して
堕ちていく時もスピーディーに堕ちていく

このスピード感に心地よさを感じつつも
速すぎて置いていかれることも多々ありました

特に登場人物のサクセスストーリーが速すぎて
上り詰めるまでも堕落していくまでも
展開が速くちょっと物足りない
そして感情移入も全然できない

ネリーはいつの間にやら急に大スターだし
マニーも気付けは上の立場の人間に
かと思えば
みんな急激に落ちぶれていったりもします

激動の時代ということで納得はできつつも
無理やり自分を納得させながら映画を観てるような気にもなります

理解が追い付く前に次の展開が押し寄せて
少し忙しなかったように感じました

 

コントみたいで笑える

本作はコミカルな描写も多く
半分コメディ映画と言っても過言ではない

全体的にシリアスなドラマを描きながらも
個々の場面では笑えるようように作られています

個人的に好きだったのは
トーキー映画の時代に移り変わり
ネリーが音声を録音しながら撮影に挑む場面
ここが王道のコントみたいですごく面白かった

いろんな要因でNGとなり何回も撮り直しさせられるわけですが
NGが重なるごとに段々と盛り上がって
最終的にオチがドーンと来るので普通に笑わされてしまった

登場人物たちは至って真剣でシリアスなだけに
その反動でより滑稽に見えますよね


他にも
蛇と戦うやつとかめっちゃ笑ったし
マーゴット・ロビーのゲロ噴射も最高
マフィアとマニーのやり取りも良かったですね

所々にコントみたいな場面が散りばめられた作風は結構好きでした

 

溢れる映画愛

本作を観て強く感じるのは熱量の高さ


チャゼル監督の過去作「ラ・ラ・ランド」「ファースト・マン」は完成度が高く
ストーリーも上手くまとまっていました

それに比べると本作は
全体的にまとまりが悪く歪な印象

ただ、これって映画愛が故にそうなったようにも思える
本作は勢い重視で作られた映画なのかもしれません

良すぎるテンポにしろ
まとまりの悪いストーリーにしろ
長過ぎる上映時間にしろ
映画愛が故に全てを詰め込んだ結果なんじゃないでしょうか

映像や音楽に関してもすごく勢いを感じる作品でしたし
良くも悪くも映画に対する情熱と愛がこもった作品なのかなと思う

タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に雰囲気が似てるかな
題材も共通するものがありますし


ラストのあの場面なんか
映画への愛が爆発したような

サイケデリックで抽象的な映像だけど
ストレートに気持ちが伝わってきてカタルシスすら感じれましたよね

チャゼル監督のこれまでの作品はあまり好きではなかったんですけども
本作はすごく好きかもしれません

今までの作品に比べると歪な映画になってるけども
だからこそむき出しの感情が伝わってくると言うか…

チャゼル監督の人間味を感じることができたからかな

 

映画好きが知識をひけらかすには持ってこい

映画愛を込めている作品なので
本作にはオマージュもたくさんあります

特に「雨に唄えば」ですよね
本作は「雨に唄えば」になぞらえた作品です

観ている間ずっと
漠然とこの映画に既視感を感じていたんですよ
初めて観る映画のはずなのになんか知ってる?
デシャブ?
みたいな

で、終盤のマニーが映画を観賞するシーンで納得させられました
ああ、「雨に唄えば」か… と
時代背景から全体の流れまで「雨に唄えば」でしたね

他にもオマージュはあるでしょうし
ラストのあの場面ではそのまんまを数々の作品の映像を引用してましたし

こういう部分からも
本作の映画に対する熱量の高さを感じることができました


この映画を利用すれば
「古今東西いろんな映画を知ってるんだぜマンウト」を取れますね
この映画を語ればTwitterとかでドヤ顔できますよ
知識をひけらかせますよ
よかったね

 

まとめ

そこそこ賛否が割れてるようですが
それも納得できます

いろんな意味で好き嫌いが分かれる作品だと思う
「ラ・ラ・ランド」なんかに比べるとポップさは無いですしね

僕はそんな賛否が分かれる本作の歪さに惹かれ
結果的に好きな作品になりました

この映画からは不器用な愛を感じれる

 


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