何もかもが滑稽

何もかもが滑稽

映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「愛がなんだ」感想 自分の痛いとこをチクチクつつかれる

 

どうもきいつです



恋愛映画「愛がなんだ」観ました

 

「八日目の蝉」「紙の月」などで知られる
直木賞作家、角田光代の恋愛小説を
映画化した作品
片思いの相手を
一途に追い続ける女性の姿を描いています

 

「パンとバスと2度目のハツコイ」などを
手掛けた今泉力哉が監督を務めます





あらすじ
28歳の会社員のテルコはマモルの事を
好きになって以来
仕事や友人の事がどうでもよくなるくらい
マモル一筋の生活を送っていた
一方、マモルにとってテルコは
ただ都合のいい女でしかない
しかし、ある日を境にマモルからの連絡が
突然途絶えてしまう



感想
人を好きになるのは
理由や理屈なんか無いんだと思える
そして、バカで愚かな登場人物たちが
とても滑稽でなんかモヤモヤする
最後には、自分自身も大丈夫かな?
と少し不安になりました



アラサー世代のラブストーリーということで
同じアラサー世代として興味が湧き
観てきました

思ってた通り
全くキュンキュンしない
嫌な恋愛を見せてもらえました

嫌な恋愛と言っても
ドロドロしてるとかではなく
どことなくリアルで
人間の愚かな部分を浮き彫りにしたような
でも、だからこそ愛おしい

この映画の中で描かれている
恋愛感情は大なり小なり
誰もが共感できると思う

てか、共感と言うより
痛いとこつつかれている感じです

お前ってそういうとこあるよな
って言われてる気がする



まず、登場人物たちが
みんな愚か者です

主人公のテルコも
テルコ片思いしているマモルも
テルコの友達の葉子も
ナカハラやすみれも

みんなちょっと人間として
欠けてる部分があります

でも、共感できるところもあるし
自分に共通する部分も感じる

基本的に
このキャラたちを見てると
なんなん? コイツら
ってイライラしてしまうことが多いんですが
しかし、嫌いにもなりきれない

ムカつきつつキャラたちの人間臭さに
妙に愛着が湧いてきます
憎めない


主人公のテルコなんかは
典型的な
クズ男に利用されるようなタイプで
完全な都合のいい女です

マモルから連絡があれば
どんな状況でも会いに行く女
相手に気を使って
何でもやってあげようとする

そして、勝手に1人で
盛り上がったり落ち込んだり

人に気を使っているようで
実は全部自分の心の隙間を
埋めるためだけにやっている
自己中女なんですよね

本当にダメな女だな
と思うんですが
自分にもそういうとこあるよな
とも思えてしまう


マモルに関しても

言ってることがすごくテキトーで
日によってコロコロ言動が変わる
妙に、自分はわかってますよ感を出したり
自分の事が客観的に見えてますよ
ってな発言もする
その割に全然何もわかってないんですよ

普通にバカな男なんです
こんなヤツいるよなって男
見ててムカつくんですが

やっぱりなんか共感もできる
テルコをないがしろに扱う気持ちもわかるし
マモルの嫌な部分が
自分にもあるなと思えます


この2人を見てると
イライラするしモヤモヤする

でも、このイライラやモヤモヤは
自分の痛いとこをつつかれてるから
なのかもしれません



そして、この映画の登場人物たちは
自分の事は見えてないくせに
他人の事は客観的に分析できるし
それについてアドバイスしたりする

言ってることは至極真っ当で
間違ったことは全然言ってない

でも、それお前が言うかよ
って感じなんですよ

自分のことを棚に上げて
他人に正論かましてる

友達の葉子なんかは
わかりやすくそれで
マモルのことを批判しまくってるけど
自分も全く同じことをしてる

でも、それに気付いてないし
全然悪気があるわけでもない
むしろテルコのことを思っての発言です

これに関しても
すごくムカつくんですけど
自分もやってんな
って思います

友達とかにめっちゃアドバイスしてるけど
実際自分はどうかと言えば
そんなこと言える立場じゃなかったり…

しかも、これって
結構みんなやってると思う
たぶんみんな無自覚でしょうね

でも、思い返せば絶対やってますよ


結局、この映画を観て
登場人物の言動が
バカだとか理解できないだとか
罵ったり、滑稽だと笑ったり
してしまいますが

でも、それって
この映画の登場人物たちと同じで
他人を批判してるけど
自分のことは全く見えてない人
なんですよね

これがこの映画の皮肉な部分
かもしれないです



この映画の
恋愛に関して思うことは

愛だとか恋だとか
好き嫌いとか
そういうことに意味を見出すことが
無駄なんじゃないかと

そこには法則なんか無いんですよね

誰になんと言われようが
心を曲げない時もあれば
急になんか冷めてしまうこともあるし

一目惚れでも
死ぬほど好きになることもあったり
相性が悪くても好きになったり
相性が良くても上手くいかなかったり

そこを深く考えても
結局、何も見つからないような気がする

この映画では
恋愛を通りこして
最後には意地になってましたし

タイトルどおり「愛がなんだ」
って感じですよ



で、いろんな感情を
描いている映画なんですが

そういう感情はあまりセリフでは
説明されていなくて

役者の演技や演出などで
表現されていることが多い映画でした

だから、観る側に
多くが委ねられる作品です

登場人物の目線や
その時の空気感
会話の間とか

全体的に抽象的なんですが
それでもちゃんと伝わってきます

こういうところで
とてもリアルに感じます


役者の演技もとても自然で
なんかこういう人いそうだな
と思わされました

特にマモル役の成田凌が良かったですね
この人は本当にいけ好かない男が似合う
絶妙にムカつく感じを出しますよね

テルコ役の岸井ゆきのも良かった
ちょうどいい可愛さですよね
この映画にはぴったりの
ルックスだと思いました


基本的に自然な雰囲気の映画なのに
たまに変なシーンがあって
そこがまたインパクトがあり
印象に残りました

しかも、自然な流れの中で
急に変になるんですよ

テルコが急にラップしだしたり
心象風景であろう子供の頃のテルコが
普通に横にいたり

急すぎて驚くけど
なんか面白いし嫌いじゃないです



なかなか面白い映画だったと思います
甘いラブストーリーでは
全然なかったけど
いろいろ思わされる部分はありました

自分自身の嫌な部分を
鏡に映されたような気持ちになる映画でした




愛がなんだ (角川文庫)