実在の画家、熊谷守一の姿を描いた映画
「モリのいる場所」観ました
30年もの間ほとんど自宅から
出ることなく庭の生命を描き続け
97歳で亡くなるまで生涯現役だった画家
熊谷守一を主人公に描いた2018年の作品
晩年のとある1日を描いています
監督は「南極料理人」「横道世之介」
などの沖田修一です
ベテラン俳優の山崎努と樹木希林が
初共演を果たした作品
あらすじ
昭和49年の東京
熊谷守一が暮らす家の庭には
草木が生い茂りたくさんの虫や猫が
住み着いていた
そんな庭の生命たちを眺めるのが彼の日課
そして、妻の秀子と暮らす家には
毎日のように来客が訪れる
感想
なにげない日常を描いた作風が
ほんわかして癒される
熊谷守一という
不思議なおじいちゃんに
いつの間にか興味津々に
なっている自分がいる
正直、僕は熊谷守一の事は
あまり知らなかったです
結構すごい画家なんですけど
実物の絵を観たことも無かったし
存在自体もそんなに知らなかった
もしかしたら観たことあるけど
記憶に残ってなかっただけかもしれませんが
画風は
猫、虫、鳥などの生物が多く
写実的な絵というより
若干抽象的なデフォルメされた絵です
どことなく可愛さのある絵ですね
この映画は
そんな画家を主役にした映画ですが
画家の一生や画家としての姿などは
描かれていなく
熊谷守一の
なにげないたった1日の出来事を描いた
とても不思議な作品
そこには明確なストーリーも無いし
目立ったドラマも存在しない
ただ守一が庭を観察する姿と
彼の妻や家に訪れた人々との
交流が映し出されてるだけ
かなり地味な映画だと思います
派手な映画や
わかりやすいエンターテイメント
などを求める人には
合わない映画かもしれません
でも、そんな地味な中には
たくさんユーモアが詰め込まれてるし
哲学的な何かを感じることもできる
そして何よりも
熊谷守一という人間の魅力に
惹かれていきます
こういう作風は
沖田監督らしいですよね
淡々としている中にも
面白いものが詰め込まれている
「横道世之介」なんかそんな作風で
とても好きな作品ですが
本作もかなりそれに似た作風だと
思いました
ちょっと変わり者の人間中心に
変わり者だからこそ人を惹きつけ
そして周りに影響を与えていく
そういうのも共通していると思います
本作は
とにかく熊谷守一ことモリが
魅力的ですね
めちゃくちゃ変わり者ですが
愛嬌があって可愛らしいですし
どことなく悟りを開いた超人
みたいな雰囲気も醸し出している
序盤の家から出て池を目指す
というくだり
ここは面白くもあるし
モリの人間性や感性が
どういうものかを感じられる
池に行くまでに
今まで無かった葉っぱに
気をとられたり
虫を観察したり
そんな事をしていると
結局、家に戻ってきてしまう
で、池まで遠いな
とか言ってる
しかも、池っていっても
庭の中にあるちっちゃな池ですよ
それも毎日見ている自宅の庭で
それが起きてる
この感性が天才的な画家たる
所以だなと思える
こんな感性に憧れます
いつも見ている風景の
なにげない変化に気付ける目
それは、ただ観察眼が優れている
というだけでなく
普通の人がわかった気でいて
見ることもしていないものを
モリはちゃんと観ている
普通は蟻がいるという知識だけで
わかった気になってしまい
地面すら見なくなりますが
モリは蟻とは何なのか
それを観察する
横に寝そべってずっと観る
蟻が最初にどの足を出して歩くのか
そこまで観察してます
モリは単純に知りたいだけなんでしょうね
知ったかぶりをせずに
知りたいからとにかく観察する
知る事って
絵を描くにあたって
かなり重要なことだと思いますし
絵の上手さって
才能や技術を
重要視する人多いですけど
1番大事なのは
観察してそのものを知る事
だと思います
だからこそものの本質が
見えてくるし
魅力的な絵が描けるんだと
思います
このなにげないモリの行動の中には
画家としてのこだわりや生き様を
感じる事ができます
そして、魅力的な人間だとも思えます
人々とのやり取りも
なかなかユーモアがあって
くすっと笑えます
爆笑するような
インパクトのある笑いは無いですけど
ちょうどいいふんわりした笑いがある
モリと妻の秀子とのやり取りも
すごくいい
長年連れ添ってきた夫婦だからこその
絶妙な掛け合いが笑えます
お互いが空気のような存在に
なってるんですよね
それは悪い意味でなく良い意味でです
相手に気を遣わず
でも、お互いに敬ってるように
感じます
家を訪れる人たちも
個性豊かで見ていて楽しい
特に家の手伝いをやっている
美恵ちゃんがいいキャラしてる
ちょうどいい感じで
おばちゃん感が出ていて
言動が妙に面白い
全体的に
大したエピソードも無いのに
なんか引き込まれてしまっています
それは、キャラの魅力や
そのキャラたちの絶妙な
会話の掛け合いの賜物だと思います
そんな感じで
とてもユーモアのある作風なんですが
シュール過ぎるシーンなんかもあって
それはちょっとどうなのかな
と思いました
頭上から急にタライが落ちてきたり
宇宙人的なのが登場したり
タライのシーンは
ドリフの話をしていた流れからの
タライなんで
意味はわかるんですけど
あまりに唐突でびっくりした
そんな映画なの?
と戸惑ってしまいます
宇宙人的なのが出てくるのも
必要性が感じられないし
唐突過ぎて面食らいます
意味があるかもしれないんですけど
結局、意味不明だし
笑いを狙ってのことなのかも
いまいちわからない
この2つは明らかに異質で
ノイズに感じてしまいました
あまりに淡々とした内容だったんで
攻めたものを入れてみた
ってだけなんですかね?
ここは未だに消化しきれない
とても淡々として
地味な映画だったんですが
なかなか面白くて笑え
ほっこりと気持ちが癒されるような
不思議な魅力の作品でした
熊谷守一という人物と
彼の作品にも興味が湧きました
下手も絵のうち
この言葉が心に響きます
下手も絵のうち
この言葉が心に響きます