何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「トゥモロー・ワールド」感想 映像は素晴らしいと思う ただ、物語は漠然としすぎ

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どうもきいつです


SF映画「トゥモロー・ワールド」観ました

人類に子供が生まれなくなった未来の世界を
舞台にした2006年のSFエンターテイメント大作
P・D・ジェイムズのディストピア小説
「人類の子供たち」を原作に描かれています

監督は「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」
などのアルフォソン・キュアロンが務めています

 

あらすじ
西暦2027年、人類は18年間の長期にわたり
子供が生まれないという異常事態が続いていた
そんなある日、国家官僚のセオが何者かに
拉致されてしまう
セオを拉致したのは彼の元妻ジュリアンが率いる
反対組織で、彼女らは世界をひっくり返すような秘密を掴んでいた

 

感想
多用される長回しのワンカットシーンは
臨場感が溢れていて
画面に引き込まれるような魅力がありました
ただ、ストーリーや設定には
そんなに魅力を感じれず
最後まで大きな盛り上がりを見せてくれませんでした

 

SF映画を観たくなったので
なんとなくこの映画を観てみました

内容や作風を知らずに観たので
良くも悪くも新鮮な気持ちで
この映画を観ることができました


すごく面白かったとは思えなかったんですけど
所々に素晴らしいものを感じることが
できましたし
最後まで飽きることはありませんでした

 

この映画で特に印象に残るのは映像です
映像のセンスが素晴らしいと思います

本作はかなりワンカットシーンが
多い作品なんですよ

今となっては長回しの多い作品は
かなり増えてきていて普通に使われてますけど
この当時ではまだ珍しかったんじゃないでしょうか

ワンカットと言っても
本当のワンカットではなくて
いろいろ編集や加工はされてるでしょうけど
ワンカットに見えるシーンをたくさん使っています


その見せ方もただ淡々と長いシーンを
見せるわけではなくて
長いシーンの中で状況の変化や時間の流れなどを
表現しいていて
とても臨場感を感じる事ができます


例えば、セオたちが車で検問所へ向かう途中に
暴徒に襲われるシーンでは
はじめはほのぼのとした空気感で
セオとジュリアンがふざけ合ってるんですが

そこから一転して
前方から暴徒たちが襲ってきて
ジュリアンが命を落とすという
かなり緊迫感のある空気へ変わっていくんです

状況が真逆へと変化していく様子を
1つのシーンの中で見せられるので
すごく感情が揺さぶられる

まるで自分もその場にいるかのような
臨場感を味わえるんですよね


終盤の戦場の中セオがキーと赤ん坊を
助けに行くワンカットの場面も
かなり見応えがありました

戦場の銃撃の中でセオが立ち回っているだけでも
かなりの緊張感なんですが

戦闘が激しくなっていくにつれ
徐々に緊張感も高まっていきますし
このギリギリの状況でのスリルも味わえます

そして、キーと赤ん坊を救ってからの静寂の場面

観ていると頭がクラクラしてくるような
すごい場面になっていると思う
迫力もものすごいです

このワンカットシーンだけでも
とても面白いと思えます


本作の監督の後の作品もいくつか観てますが
「ゼロ・グラビティ」「ROMA/ローマ」
などにしても
とても映像にこだわりを持っている監督なんだと
思わされます

ワンカットというだけでなく
それぞれの見せ方も細かいですし
臨場感を大切にしている人なのかな
と思いました

 

そんな感じで
映像にはすごいこだわりを感じるし
素晴らしい映像に仕上がっているんですが

この監督の他作品を観ても思うことなんですけど

映像はすごい
でも、ストーリーはいまいちで
伝えたいメッセージもわかりづらい


すごい映像や作品の雰囲気で
観客を飲み込む力はあるんです

だから、この映画にしろ他の映画にしろ
絶賛している人はたくさんいます
僕自身も映像によってこの映画に引き込まれたし
面白いと思わされました

ただ、冷静になって考えてみると
物語の展開や世界観の設定などが
味気ないようにも思うし
結構雑なんじゃないかとも思える


ストーリーはとてもシンプルで
わかりやすい流れなんです
世界の希望である赤ん坊を目的地位に送り届ける
ただそれだけの話


そんなシンプルなストーリーを
とてもテンポ良く見せてる映画でもあって
とても観やすい作品なんですが

テンポが速すぎて
感情があまり追いつかないんですよね
余韻とかが全然無いんですよ


次々と人が死んでいったり
出会いと別れの多い物語で
そこにはいろんな感情が渦巻いているはず
なんですけど

そういった感情表現はあまり無く
とにかく主人公がミッションをこなしていってる
だけの映画になってしまってる

ジュリアンが死んだ場面でも
セオにとって大切な人だったはずですが
そんなに感情的になることも無く
さっさと次の展開に移り変わっていきます

キーの出産の場面でも
子供はありえないほどあっさりと産まれていますし
その後は幸せをかみしめるというわけでもなく
すぐに次の話へと流れていきます


こんな風にキャラクターの心情の変化や
感情の余韻などよりテンポが優先で
感情移入がとてもしづらいです
観ている側が気持ちを揺さぶられるようなことが
全然無いんですよ

だから、この映画が
無機質で作業的な印象になってしまう
映像の面ではリアリティがあるのに
物語にはリアリティを感じれないんですよね

 

そして、世界の設定や主人公の目的などが
あまりにも曖昧で漠然としている
というのもちょっと問題だと思う


設定に関しては

子供が産まれなくなった出生率0%の世界
イギリスへの世界中からの移民問題
奇跡的に妊娠したキーの存在

これらがこの映画の中でも
特に重要な要素なんですけど

この設定がことごとく漠然としている
なぜそうなったのかということが
全く掘り下げられないんです


子供が産まれなくなった原因は
完全に不明です
男性の異常なのか女性の異常なのか
何が原因でそうなったのか

そういうことはどうして起きたかわからないけど
なぜか起きてしまって世界が危機に陥っている
ってだけで済ましてしまう

キーの妊娠も
奇跡的に起きたこと
ただそれだけなんですよ


移民問題にしてみても
なんでイギリス以外の国が
崩壊してしまったのかは不明

移民を拒否している理由も
明確に説明されていないです

そもそも、少子化と移民問題は
全く別物だろうと思うんですけど
1つの原因があるから起きているように
語られています

そこにいまいち納得できない

原因が1つだったとして
それらの因果関係を説明してくれないと
こっちは全く腑に落ちません


そんな設定の曖昧さが
物語の終着点も曖昧にしてしまっています

 

主人公セオがキーと赤ん坊を
トゥモロー号という船に
送り届けようとするんですが

このゴール地点自体が曖昧過ぎるんですよ
送り届けたことで何が起きるのかは
全くわかりません

まず、赤ん坊がこの世界にとって
どう重要なのかが全然説明されない

この存在によって世界が変わるかのように
物語は進んで行きますが
なぜ変わるのか
どう変わるのか
そういった所は最後まで曖昧なまま


それに、終着点であるトゥモロー号も
結局なになのかは不明なんですよ
世界にとってどんな存在なのか
何をしている船なのか
そんな説明は全くありません


そんな曖昧な目的や
どんな重要性があるかわからない赤ん坊を
めぐって
命懸けで送り届けようとするセオや
赤ん坊を奪おうとする人間たちを
描いているんですけど

正直言うと
コイツら何やってるの?
と冷めた目で見てしまいますよね

結局、全員何やってるかわからないんですもん
世界のために戦っている風には
見せていますけども
こんなのは茶番にしか見えないですよ

この結末には
希望なんて感じれないし
何も解決なんてしていません

全部を奇跡で済ましてしまってる感じが
ちょっとバカっぽくも感じましたね

 

そして、この作品の
メッセージ性に関しても
少しわかりづらさを感じます

風刺的な要素もたくさんあると思いますが
いろいろと詰め込み過ぎで
まとまりが無いように思う

少子化、難民、テロ、紛争などの
様々な問題を取り上げているんでしょうし
それらの問題提起でもあると思いますが
何を中心に考えればいいのかわからないんですよね

なんかゴチャゴチャしてるんです

それに深いようで
そんなに深くないようにも思います

全てがストレートに描かれているので
ちょっと表面的に触れてるだけの気も
してしまうし
設定が曖昧というのもあって
テーマ自体も曖昧になってました

最終的には何を伝えたいのかということが
全く伝わってきませんでした

 

映像に関しては
素晴らしいレベルの作品でしたが

それ以外はあまりにフワッとしているので
いまいち面白さに欠ける映画でした

プラマイゼロくらいの映画だと思う

 


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