何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「浅草キッド」感想 真面目すぎて個性がない

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どうもきいつです


ドラマ映画「浅草キッド」観ました

ビートたけしが自身の師匠である深見千三郎と過ごした日々をつづった自伝を映画化した作品
たけしが個性豊かな仲間たちと交流しながら
やがて芸人として頭角を現していく姿が描かれます
2021年12月よりNetflixで配信されています

監督と脚本を務めるのはお笑い芸人の劇団ひとり
出演するのは大泉洋、柳楽優弥などです

 

あらすじ
昭和40年の浅草
たけしは浅草フランス座に転がり込み
深見千三郎に弟子入りを志願する
そして、お茶の間で活躍する人気芸人を育てた深見の下でたけしは修行に勤しむ
しかし、テレビの普及により
演芸場への客入りはどんどん減っていくのだった

 

感想
つまらないわけではなかったけど
綺麗にまとまりすぎて個性が無く面白味がありませんでした
テレビのスペシャルドラマを観ている感覚
良くも悪くも大衆向けの映画って感じ
個人的には全く刺さらなかった


話題になってる上になかなか評判も良く
気になったので観てみました

観てみると評判が良い理由はなんとなくわかった

すごく観やすいし
全体的に上手くまとまってるし
感動できたり笑えたりと
みんなが好きそうな映画ですね

みんなが知ってるビートたけしが
人気芸人になるまでのサクセスストーリー
というのも馴染みやすい理由なのではないでしょうか

僕はビートたけしを特別好きってわけでもないけど
昔からテレビで見てきた人だし
それなりにこの映画の物語には興味を惹かれました


ただ、やはり
すごく無難と言うか
当たり障りがないと言うか

個人的には全く面白味に欠ける映画かなという印象

この映画が人生で初めて観る映画だったなら
大絶賛できるでしょうけど

いろんな作品に触れているのなら
この映画から特別に得られるものはないのかな
と思います

 

劇団ひとりって
お笑い芸人としてもタレントとしても
何でもそつなくこなせる有能な人で
映画に関してもそつなくこなせているんだと思います

以前に観た「青天の霹靂」でも思いましたが
すごく上手く作れてるんですよね
感動させるのも笑わせるのも
すごく上手いんですよ

でも、その反面
劇団ひとりだからこその特有の個性は全く無くて
普通すぎる映画になってしまってます

劇団ひとりじゃなくても作れるだろうな
と思えてしまうくらい普通なんです


全体的に
どこかで見たことのあるような場面の繰り返しで
確かに面白い感じはするけど
なんかこんなの知ってるな…
みたいな

この映画だからこその強みやクセみたいなものは全然感じることができないんですよね


ストリップ劇場やお笑い芸人など
どこかアンダーグラウンドな世界でもあると思いますが

この映画の場合は
そういった暗い部分は全く無く
全体的に綺麗すぎる

せっかくNetflix配信の作品で自由度も高いのに
規制が多いテレビドラマのように小奇麗な映画になってしまっているのももったいないですよね

 

それと同時に
ちょっと臭すぎる映画でもあって
感動にしろ笑いにしろ
狙っているのがわかってしまう

良く言えばわかりやすい映画ってことなんですけど
そこがちょっと過剰なのはマイナスなようにも思います

音楽にしろ演出にしろ
ここ泣くところですよ
ここは笑うとこですよ
と、いちいち言われているような感じなんです

そこが伝わってしまうと
やっぱり冷めると言うか…
作り物っぽさが出てしまいますよね

感動も笑いもさりげなさが重要で
本作の場合はさりげなさとはほど遠いかなと思います

セリフ回しもかなり臭くて
ちょっと恥ずかしくなるくらいでしたし
劇団ひとりがこんな臭い感じが好きで
あえてのことかもしれないですけど


ラストの長回しのシーンもちょっとやりすぎですかね…
あれはさすがに痛さすら感じてしまった

やりたいことはわかるんですけど
そもそも、最後にあれは必要なのかな?
と疑問にも思ったし
流れてる歌も序盤に使ってたので
とてもくどかった

ラストがいろんな意味でうるさい場面になってたと思います

 

で、はじめに上手くまとまった映画と言いましたが
それは上手く作られた映画と言うわけではなく
上手く見える映画ってことなんですよ

真面目で堅実に作られた作品だとは思うけど
それがレベルの高い位置なのかと言うと
ちょっと微妙で

やはり無駄なシーンは多いと思ったし
テンポもそんなに良くないし
全体の繋がりもいまいち

特に
たけしが漫才師になるためフランス座を出ていく場面が
この作品の目玉でもあると思いますが
ここがあまり盛り上がらず埋もれてしまってる気がする

それの原因は
そこに至るまでの積み重ねが無かったからなのかな
と思います

たけしがフランス座をやめる直前くらいから
急に師匠をだらしなく見せたり
鳥のエサだとか客の自慰行為だとかのエピソードが入ったり
唐突なんですよね

序盤にどうでもいいダラダラした場面が多く
途中で急に詰め込んだりするから
バランスも悪いと思うし

序盤の無駄なシーンを省いて
大きい展開のための伏線とかはあった方が良かったんじゃないでしょうか

あとは
タップダンスの場面での画面の切り替わりは
楽しげな雰囲気はあるけど無意味に感じたし
時系列が行ったり来たりするのに関しても
無駄にややこしくなってるだけで意味は無かったです

変に複雑にして深い映画っぽくはしてるけど
それが逆に薄っぺらく感じてしまいました


それと、登場人物が機能してないのも気になります
たけしと深見以外のキャラが
なんのためにいるのかな?
ってほど物語の中で機能してない

ヒロインなんかも
それっぽいキャラには仕上がってるけど
別にいてもいなくてもいいというか…

他の登場人物たちも
基本的にただいるだけで空気のよう
関係性なども深掘りされない

そのわりに
でしゃばってくる人が多かったですしね

出すなら出すで
もっと意味のある使い方をするべきだと思いますかね

 

あと、やっぱりこの映画で強く感じたのは
ビートたけしを演じることの難しさ

みんなが知ってる大御所お笑い芸人で
まだ健在どころかいまだにテレビで活躍している
その上、特徴のある人でもあって
1番モノマネされてる芸能人ではないでしょうか

それ故に
映画の一人のキャラクターとして演じるのはかなり難しいと思うんですよね

本人に寄せすぎればモノマネになってしまう
かと言って普通に演じてしまえばビートたけしじゃないってなる

本作ではそこに苦戦してるな
って印象も受けました

柳楽優弥は能力の高い俳優ではあるものの
やはりビートたけしを演じるとなると難しかったのか
安定してないように見えました

ナチュラルに演じれている時もあれば
モノマネになっちゃってる時もあったし
柳楽優弥そのものの時もあったし

ただこれは誰のせいでもなく
単純に難しかったんだろうなと思います

むしろ、この安定してなさが監督も俳優も試行錯誤している証で
真摯にビートたけしを演じることへ向き合っていたのには好感が持てました


まあ、さすがに現代のビートたけしには笑ってしまいましたが

特殊メイクでそっくりにしてたけど
「猿の惑星」みたいになってたし

そもそも、現代のビートたけしは必要なかったんじゃない?
現代の場面がことごとく無意味だったし
無いほうがよかった

たぶん、最後の長回しがしたかったんだろうけど
あの場面が無駄ですしね

ただ、もしかすると
あの特殊メイクが本作唯一のクセであり個性なのかもしれない
そう考えれば無駄ではなかったのかも

 

劇団ひとりってマルチなタレントでありつつ
尖ってる部分や独自の視点がある人でもあって
そんな部分をこの映画でも出せば
もっと面白くなったかもしれません

それにお笑い芸人ならではの視点でも
この作品を描けたと思います

そう思うと
無難な映画になってるのがすごくもったいない

クセが無いからこその好評価というのもあるだろうけど
個人的にはもっとクセのある映画が観たかった

 


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